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2021年5月に読んだ本まとめ

2021年5月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:4506ページ
ナイス数:1144ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly

■オブリヴィオン (光文社文庫)
どうしようもない暗さにどんどん気持ちが沈むけれど、救いのないまま終わることはないのが遠田潤子だとわかっているから、その一条のひかり見たさに最後まで。ある特殊な才能のせいでギャンブル狂の父親を死なせてしまった主人公。ようやく掴んだ幸せも自らの手で終わらせてしまう。出所後の彼を待っていたのは、自分に敵意剥き出しの娘と、切れないしがらみ。非科学的なその才能が遠田作品の中にあっては異質に感じられましたが、特異な才能のせいで虐待を受ける子どもはいるかもしれません。最初と最後では実兄を見る目が180度変わる。泣いた。
読了日:05月04日 著者:遠田 潤子
https://bookmeter.com/books/15499857

■京都スタアホテル (小学館文庫)
最近コロナ禍を反映した小説にしばしば遭遇します。そのたびに、ちゃっちゃと時世を盛り込んで書ける作家ってすげぇなと思います。コロナで客もまばらなホテルのレストラン。たとえ客がひと組であっても開けるであろうそれぞれの店。ただ食事に来ただけではない客たちは、今日この席にさまざまな想いを抱いています。その想いを汲み取り、最大限のもてなしに努めるスタッフの面々。さすがの作家も終日酒類提供禁止の日まで来るとは想像しなかったでしょうから(^^;、お料理とアルコールをきっちりペアリング。今だからこその心洗われる話ばかり。
読了日:05月05日 著者:柏井 壽
https://bookmeter.com/books/16942584

■角の生えた帽子 (角川ホラー文庫)
これまでに読んだ宇佐美さんの著作の中ではやっぱり『愚者の毒』がいちばん読み応えがあったように思うのですが、短編もお得意の様子。怖さとしてはホラー苦手の私でも全然平気な程度。映像化すればそれなりに怖いでしょうけれど、想像力を働かせて読まなければ夢に見ることもありません(笑)。嫌ミス的なオチもあれば、少し切ないオチも。怨念がその地に棲み着いたかのような話がいくつかあって、ヤン・シュヴァンクマイエルの『オテサーネク』を思い出したりもしました。ちょっと物足りない気もしつつ、サクサク読めてまぁいっか、てな感想です。
読了日:05月07日 著者:宇佐美まこと
https://bookmeter.com/books/16853848

■最後の証人 (角川文庫)
プロローグは今まさに殺人がおこなわれようとしている場面。次章からはその殺人に至るまでの過程と法廷の場面。ないアタマで真相について推理しながら読んでいたのに、そっちか!中山七里の『能面検事』の「検察は被疑者に罪を与える機関ではない」という一文を思い出し、罪を与える気バリバリの庄司検察官のことが好きになれません。罪はその罪で裁かれなければならないという佐方弁護士の持論に、能面検事との共通点を感じます。被告人が責任を転嫁して、その罪で裁けない現実を見ると、どんな形であれ天罰を下してほしいと思ってしまうけれども。
読了日:05月09日 著者:柚月裕子
https://bookmeter.com/books/12891706

■失礼な敬語 誤用例から学ぶ、正しい使い方 (光文社新書)
先週首相が「さ入れ」で答弁しているのを聞きました。舞台挨拶付きの映画上映会に行けば、「○○役をやらさせていただきました」という俳優も「いらっしゃいます」。社会に出れば自分が敬語を使えないことに気づくでしょうか。気づくことすらないかもしれません。しかしこの本を手に取るのは、正しい日本語を使いたいと常日頃から思っている人であって、何でもかんでも「~させていただく」と言って丁寧な日本語を喋っているつもりになっている人は読まないのではないでしょうかね。あぁ、何だか上から目線のレビューになってしまった。すみません。
読了日:05月10日 著者:野口 恵子
https://bookmeter.com/books/6878864

■TAS 特別師弟捜査員 (集英社文庫)
初期の中山七里をすっ飛ばして御子柴弁護士シリーズからずっぽりハマった身としては、初期寄りの登場人物たちに軟らかさというのか軽さを感じて、そこまではハマれません。単に面々が若いだけで、その若さに私が戸惑っているのか(笑)。しかし思いの外、彼らの演劇への情熱にほだされ、脚本がよければどうにかなるところを見せてもらえました。誰にでも優しくて努力家で自分をひけらかすような真似をしない人だからこそ恨まれる。こうして考えてみると、世間の殺人の動機のほとんどが「嫉妬」で括れてしまうのかも。若い子と組むなら葛城刑事!?
読了日:05月16日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/17783226

■完璧すぎる結婚 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
分厚い。重い。手が疲れる。酒飲みながら読んだら寝るよねぇと思っていたのに。眠くなる隙一瞬たりともなしの3部構成。27歳のキュートな保育士は36歳のイケメン金持ちと婚約中。しかし前妻が彼に執着している模様。血生臭いことは起きず、修羅場にもならず、だから余計にこの先どうなるのかが気になって仕方がない。そして第1部が終わるとき、えっ、えっ、えーっ。これ以上は書けません。酔っぱらいの頭も覚醒するほど驚いた。『完璧な家』と併せて読めば、世間から完璧に見えている夫というものがいかに怖いかを考えてぞっとします。ご用心。
読了日:05月19日 著者:グリア・ヘンドリックス,サラ・ペッカネン
https://bookmeter.com/books/17441670

■真犯人 (小学館文庫)
長い年月にわたる話ゆえ関係者がやたらと多く、とっとと読まないと誰が誰やらわからなくなります。そしてとっとと読まなかったから、ほとんど錯乱状態(笑)。けれどもようやく頭の中で登場人物を整理できた頃には、その真相に胸が痛む。ちょっと古めかしい気はするものの、ごつごつした警察小説でした。「時効」は警察小説には有効な存在ですが、時効の廃止が捜査を停滞させることなく進められていると思いたい。大阪で営業中の映画館は2つしかない今、『狼をさがして』を観たばかり。東アジア反日武装戦線の話があまりにタイムリーで驚きました。
読了日:05月21日 著者:翔田 寛
https://bookmeter.com/books/13014894

■ゴーストハント1 旧校舎怪談 (角川文庫)
本作が1989年に“悪霊シリーズ”の第1巻として刊行されていたことを解説を読むまで知らず。中山七里といい小野不由美といい、還暦だというのに高校生を主人公にしたシリーズを書けるなんて凄いなぁと思っていました。いや、今でもきっとお書きになれるでしょうけれど、道理でケータイもスマホも出てこないわけですね。麻衣の素振りが癇に障ったりしつつ、しかし彼女がこんなふうでなければ、基本的にホラーが苦手な私はビビって読めなかったかも(笑)。連絡手段に困る時代の話であっても過ぎ去る青春は同じ。何十年経とうが色褪せない楽しさ。
読了日:05月24日 著者:小野 不由美
https://bookmeter.com/books/15926386

■蚊がいる (角川文庫)
今日はもうとっとと寝たいんだけど、ほとんど義務感からちょっとだけ何か読んで寝ようかなぁというとき、穂村さんってピッタリ。第1章の「蚊がいる」はだいたい4頁前後。第2章の「かゆいところがわからない」なんてそれよりさらに短いから、ちょっとだけのつもりがどんどん読める。いるよ、私も「お土産はブールミッシュかスイカの人」とかイメージの固まっている人が(笑)。「あるある」な話にきっちりオチがあって、笑って心地よく眠れます。映画『花束みたいな恋をした』にも彼の名前がチラリ出てきたから、ますます人気者になっているかも。
読了日:05月26日 著者:穂村 弘
https://bookmeter.com/books/11493922

■検事の本懐 (角川文庫)
弁護士に転向してからの佐方を描いた『最後の証人』を読んだのがついこの前。あまりに面白くてその前日譚だという本作に突入。結局、検事であろうが弁護士であろうが、彼の仕事との向き合い方は変わらない。事件の上っ面だけ見るのではなく、人を見る彼にしょっちゅう胸が熱くなります。この若さで経験も浅いのに手練れの刑事みたいな趣は出来過ぎ。でも、だからこそ読まされるのでしょうね。髪の毛ぼさぼさスーツしわくちゃなのは残念だけど、もとは精悍な顔つきらしい。やはりそれなりのイケメンでいてほしいような、だらしないままでいいような。
読了日:05月28日 著者:柚月裕子
https://bookmeter.com/books/12918383

■明日の食卓 (角川文庫)
児童文学のイメージしかなかった作家なのに一転。仮名で書けば同じ名前の少年3人。殺されたのはこのうちの誰だろうというサスペンスを想像していたら、そうではないのですね。幼稚園のときにいじめられっ子だった私は、自分の子どもがそんな目に遭うのも、ママ友同士のつきあいに神経をすり減らすのも、絶対に耐えられるはずがないと、子どもを持とうとせずに来ました。本作を読んでやはり私には無理だったろうと思うと共に、自分の母親には深い感謝の念をおぼえます。ひとりの「ユウ」の、人間は試さずにはいられないものでしょという言葉が怖い。
読了日:05月30日 著者:椰月 美智子
https://bookmeter.com/books/13552227

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『悲しみより、もっと悲しい物語』

『悲しみより、もっと悲しい物語』(原題:比悲傷更悲傷的故事)
監督:ギャヴィン・リン
出演:アイヴィー・チェン,リウ・イーハオ,チャン・シューハオ,アニー・チェン,
   エマ・ウー,ダー・チン,ハー・ハオチェン,ヤオ・アイニン,シー・チーティアン他
 
クォン・サンウが主演した『悲しみよりもっと悲しい物語』(2009)を台湾でリメイク。
Amazonプライムビデオでも視聴できますが、見放題作品ではなくて509円。
“おうちでシネマート”なら440円で視聴可能。
 
大人気の歌姫A-Linは、新曲に大いに不満を感じ、レコーディングの途中で退席。
帰宅途中も愚痴をこぼしていると、運転手がある曲を聴かせてくれる。
それは未発表のデモ曲で、まさにA-Linの望む曲。
運転手の友人パンが所持していた曲だと聞き、A-Linはパンのもとを訪れる。
 
曲のタイトルは『ある悲しみ』。
歌い手は音楽プロデューサーのK、詞を書いたのは作詞家のクリーム。
パンによって語られるのはとクリームの悲恋で……。
 
Kとクリームが知り合ったのはふたりが高校生のとき。
ウマが合って常に一緒にいるようになりますが、彼氏と彼女というわけではない。
どちらも家族を失った身で、ふたりでいるときは心がほかほか。
しかし、同棲を始めてもお互いの生活を束縛せず、肉体関係もなし。
 
実はKは白血病に冒されていて、そのことを自分で知っています。
クリームのことを大切に思いすぎて、恋愛関係になどなれない。
自分が逝った後もクリームには幸せでいてほしいから、
生きている間に安心できるよう、クリームの相手探しを始めます。
 
Kから「いい人を探せ」と言われたクリームはいいオトコ探しに精を出す。
高学歴で高収入のイケメンを見つけたとクリームから聞けば、
Kはイケメンの身辺調査をして、美人の恋人と別れさせることまでやる。
そこまでするかと思わなくもないけれど、
最愛の女性のことを考えると、彼女の相手の男性まで探そうとするものですかね。
 
思いっきりお涙頂戴やんと思いましたけれど、泣きますね(笑)。
だってこんな後出しの種明かしをされたら、そりゃもう泣く。
この『ある悲しみ』という曲がまためちゃくちゃいいんです。
 
あなたの願いが私の幸せならば、私は幸せになったふりをする。
みんないい人なんだもの。
泣きたいときは、観て。

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『MAMA』

『MAMA』(原題:Mama)
監督:アンディ・ムスキエティ
出演:ジェシカ・チャステイン,ニコライ・コスター=ワルドー,メーガン・シャルパンティエ,
   イザベル・ネリッセ,ダニエル・カッシュ,ハビエル・ボテット,ジェーン・モファット他
 
久しぶりにAmazonプライムビデオにて鑑賞。
もちろんプライム会員なら見放題作品のうちの1本です。
 
2013年のカナダ/スペイン作品。
監督はアルゼンチン出身のアンディ・ムスキエティで、
2008年に発表した短編がギレルモ・デル・トロの目に留まって甚く気に入られ、
ホラーは苦手と言いつつ、スペイン語圏やポルトガル語圏の映画は大好きです。
 
そしてこのムスキエティ監督って、なんか聞いたことがあると思ったら、
この後『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)でブレイクしているではないですか。
続編の『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』(2019)はイマイチでしたけど。
 
雪の舞う光景でスタート。
荒れた天候の中で何かが起きるのも大好きな私。ウキウキわくわく。
 
投資仲介会社を経営するジェフリーは、経営難から精神を病み、
共同経営者を殺害した後に自らの妻をも手にかける。
幼い娘ヴィクトリアとリリーを乗せると、
ふたりと心中する場所を探し求めて車を走らせる。
 
たどり着いたのは森の中の古びた小屋。
窓の外を眺めるヴィクトリアを涙ながらに背後から撃ち殺そうとしたとき、
ジェフリーは小屋に潜んでいた不気味な影に絡め取られてしまう。
父親をも失い、ふたりきりになった幼い姉妹。
 
ジェフリーの弟ルーカスは財産をはたいて兄の行方を捜し続け、
5年後、彼に雇われた男たちが奇跡的に小屋で生き延びていた姉妹を発見する。
 
ヴィクトリアとリリーは野生化しているようで、凶暴性を発揮する。
しかし以前ヴィクトリアがかけていた眼鏡をルーカスが差し出すと、
父親そっくりのルーカスのことを認識し、徐々に心を開きはじめる。
 
姉妹を診察した博士ドレイファスは、姉妹が架空のママの存在を作り上げ、
それにすがって生き延びたと想定。
ルーカスは恋人アナベラと共に姉妹を引き取り、
ドレイファスが用意した屋敷で共同生活を始めるのだが……。
 
屋敷に引っ越すと、次々と不可解な現象が起こります。
姉妹以外にも子ども部屋に誰かいる様子で、
ルーカスは壁に広がった黒い染みに襲いかかられて負傷、入院。
ルーカスがいない屋敷で、姉妹と3人で過ごすことになったアナベル。
 
ジェフリーとルーカスの二役を演じるニコライ・コスター=ワルドー、男前。
デンマーク人の男性って結構イケメンが多いような。
 
彼女がよく演じるエリート女性でも貞淑な妻でもありません。
濃いメイクを施したロッカーで、ルーカスのために我慢しているけれど、
実のところは子どもなんて引き取りたくない。
冷ややかな姉妹の態度がめちゃくちゃ怖くて、いつも思うことですが、
 
「ママ」は本当に存在するのか。その正体は何なのか。
やっぱりスペイン語圏やポルトガル語圏のホラーは切なくて○。
アナベルが母性を見せるシーンとか、グッと来ます。
クローゼットに隠れるのはやめて、怖いから(笑)。
 
遺体には眠る場所が必要。
たとえ信心深くなかったとしても、遺体を粗末に扱ってはいけない。
その過ちは正すべし。

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『あなたの頼み』

『あなたの頼み』(英題:Mothers)
監督:イ・ドンウン 
出演:イム・スジョン,ユン・チャンヨン,イ・サンヒ,ソ・シネ他
 
またまた“おうちでシネマート”。これも独占配信、1,200円。
2017年の韓国作品です。
 
ヒョジンは32歳、友人と学習塾を営んでいる。
事故で夫を亡くした後、独身のまま。
心身共に不調でカウンセリングにかよいつつ仕事中。
 
ある日、亡夫の弟が訪ねてくる。
バツイチだった夫には、前妻との間に一人息子ジョンウクがおり、
当時小学生だったジョンウクを彼の祖母が引き取ったが、
祖母に認知症の兆候が現れ、これ以上ジョンウクと暮らせないと言う。
 
亡夫の前妻はどこにいるのかわからず、義弟が頼れるのはヒョジンだけ。
そう聞かされても血のつながらない息子の面倒を見るなんて無理。
どうにか断ろうとするヒョジンだったが、断りきれず。
ヒョジンのもとへ16歳になったジョンウクがやってくるのだが……。
 
きちんと挨拶もするし、礼儀正しい。
しかし無口すぎるジョンウクにどう接すればいいかヒョジンは悩みます。
祖母に会いに行くから交通費を貸してほしいと言われ、
送り出したらジョンウクはそのまま女友達と家出。
 
ジョンウクは祖母に会いに行ったのではなく、
生みの親を探しに行ったのだということがわかります。
だけどその生みの親も実はジョンウクの実母ではありません。
それを知っていながら会いに行くジョンウクの心境が複雑。
 
“おうちでシネマート”で最初に観た『愛の終わり、私のはじまり』と少し似た雰囲気。
あちらのほうが沈鬱ですが、亡夫の影がちらついたり、
その亡夫の誕生日を残された者で祝ったり、
「同じ人を愛した人間」が、その人のことを想いながら生きていくところは同じ。
 
ヒョジンとジョンウクの関係のみならず、
ヒョジンとその母親、ジョンウクと生みの親などなど、さまざまな関係が描かれています。
英語タイトルが“Mothers”である所以。
ジョンウクの茶髪の女友達の話には『朝が来る』(2020)を思い出したりも。
ちなみに韓国語の原題を直訳すると「あなたの願い」のようです。
 
気持ちの整理をつけることは容易くない。
でも、日々何かを選択して、諦めることがあっても受け入れて、前向きに生きてゆく。

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『AWAKE』

『AWAKE』
監督:山田篤宏
出演:吉沢亮,若葉竜也,落合モトキ,寛一郎,馬場ふみか,
   川島潤哉,永岡佑,森矢カンナ,中村まこと他
 
TSUTAYA DISCASでDVDをレンタル。
観る時間がないくせして定額レンタル契約を継続中だから、観なければ。
 
人気の吉沢亮主演なのに、わりとひっそり公開された記憶があります。
ま、このコロナ禍では派手に公開もできませんよね。
確か昨秋、なんばパークスシネマへ行った折にポスターを見て、
こんな映画が公開されるんだ、観たいな~と思っていたのに、
気づいたときには上映終了していたという。
3月末よりDVDレンタルおよびセル共に開始されています。
 
監督はこれが商業映画デビューとなる山田篤宏。
2015年に将棋の一流棋士と将棋プログラムが対決したイベントをモチーフに、
山田監督が書き上げたオリジナル脚本
オリジナル脚本を書ける人は偉いという思い込みが私にはあります。
たまにスベることもありましょうが、本作はとても面白かった。
 
将棋の天才少年が集まる将棋会館。
近所では大人も負かすほどの天才ぶりを発揮していたとしても、
ここに来れば自分よりも強い子どもがうようよいる。
 
清田英一(吉沢亮)もかつてはそんな子どものうちのひとりだった。
プロ棋士の養成機関である奨励会に所属していたが、
同世代の浅川陸(若葉竜也)に力を見せつけられ、プロの道を断念。
将棋の道からは外れるべく21歳で大学を受験して入学する。
 
ゴルフ部に勧誘されて一旦は入部したものの、すぐに喧嘩。
その翌朝、父親がコンピュータ将棋と対決する音で目が覚める。
指し手を見てびっくり。自分でこのプログラムを組みたい。
英一はさっそく大学のサークル、人工知能研究会を訪ねる。
 
その研究会の部員は磯野達也(落合モトキ)ただひとり。
何の知識もない英一を達也は追い返そうとするが英一は引かず、
プログラミングの本を数冊渡されると、驚くべき速さで暗記する。
 
こうしてコンピュータ将棋のプログラム開発を始めた英一だったが……。
 
英一の開発した将棋AI(人工知能)“AWAKE”が陸と対戦することになります。
どちらが勝つのかももちろん注目のしどころですが、
英一と陸、それぞれの思いも丁寧に描かれていて面白い。
 
機械に負けるのは人間の恥。
だからこんなイベントに本当なら誰も出たくない。
陸が期待の星だからこの大役を任せられたということはあるけれど、
押しつけられた感じもなくはありません。
「無理をするなよ」と声をかける人に陸は言います、「しますよ」。
勝ちたいという気持ちがなくなったときは将棋のやめ時。
だからその気持ちがある限り、無理しますよと言うんですね。
 
一方の英一がAWAKEの開発に没頭する姿からも目が離せません。
本作を観て知ったことですが、プロ棋士なら絶対に選ばない指し手があるそうで。
奇襲のようですから、これは品格にかかわるということなのでしょうか。
それをやっちゃあおしまいよ、みたいな。
 
棋譜を叩き込まれたAWAKEは、誰も使わない手を安全だと認識する。
人間なら選ばないであろう指し手を人間が選べば、AWAKEは負ける。
AWAKEに勝ちたいならその指し手を選べばいいのですけれど、
それをはたして陸が選ぶのかどうか。
 
本作はフィクションではありますが、
“AWAKEに勝てたら100万円”などのイベントは実際におこなわれたもの。
エンドロールでは人間と将棋プログラムのその後もざっと記されるので、
将棋好きな人も将棋わからないという人も楽しめる作品だと思います。
 
ついついタイプのほうを応援してしまう(笑)。

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