『チベット犬物語 金色のドージェ』
監督:小島正幸
声の出演:濱田龍臣,筧利夫,平幹二朗,山像かおり,若本規夫他
第七藝術劇場にて3本ハシゴした日、1本目に観たアニメ。
たったひとつのスクリーンで、午前・午後・夕方・晩と、
上映作品がちがうナナゲイはハシゴにうってつけ。
3本目をまず決めて、2本目もまぁついでに、1本目はついでのついで。
2本目、3本目とは同じ映画館でも客層ががらりと異なり、
子ども連れの若いお母さんがいっぱい。
原作は中国のベストセラー小説で、キャラクターの原案は漫画家、浦沢直樹。
『マイマイ新子と千年の魔法』(2009)のアニメーション制作会社、マッドハウスが、
中国最大の映画会社である中国電影集団とタッグを組んだ、日中合作映画です。
それゆえ、見た目はもろ日本のアニメなのに、おもしろい味わいに。
都会で母親と暮らしていた少年テンジンは、その母親を病気で亡くしたため、
チベットの高原で医者をしている父親のもとへ連れてこられる。
テンジンが生まれたばかりの頃、高原での生活になじめずに都会に戻ると言った母。
父は医者としての務めを果たさねばならぬと高原に残った。
自分と母は父から見捨てられたのだという思いが頭にあり、
反抗的な態度は取らないまでも、父に心を許すことはできないでいる。
都会からやってきたテンジンのことを高原の少年たちはバカにして疎む。
テンジンは涙は見せず、父の言いつけを守って羊の世話をしていた折り、
子犬のワラとともに熊に襲われる。
観念しかけたときにどこからともなく現れたのが、金色の毛並みのチベット犬。
その犬に噛みつかれるや熊はスタコラ逃亡。テンジンとワラは助かる。
テンジンはその犬を“ドージェ”と名づけ、心をかよわせてゆく。
その頃、あちこちの村で人間や動物が殺戮される事件が起きていた。
ドージェの出現と時期がかぶっていることから、
ドージェが犯人ではないかと人びとは疑うのだが……。
キャラクターはすべて文句なく愛らしいです。
物語も人間と犬のどちらかに比重を置くことなく、どちらも主役。
そこが逆に物足りなかったりもしますが、これは善し悪しでしょう。
たとえば、テンジンと父親が涙ながらに抱き合って和解なんてことはありません。
そうしたほうが盛りあがるけれど、それは言わずもがなのことのような気もします。
殺戮の犯人である化け物ラセツの正体が明かされないままなのは消化不良。
日本単独の作品だったら、なぜどんな理由でこんな化け物が出てきたのか、
多少の説明はありそうなもの。
と書いてはみましたが、とにかくテンポよくまとまっていて、
大人も子どもも楽しめる一作です。満足。
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