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『クーリエ:最高機密の運び屋』

『クーリエ:最高機密の運び屋』(原題:The Courier)
監督:ドミニク・クック
出演:ベネディクト・カンバーバッチ,メラーブ・ニニッゼ,レイチェル・ブロズナハン,
   ジェシー・バックリー,アンガス・ライト,ジェリコ・イヴァネク,キリル・ピロゴフ他
 
TOHOシネマズ伊丹にて。
 
ベネディクト・カンバーバッチを見るのは久しぶりだと思ったけれど、
『エジソンズ・ゲーム』(2019)って去年観たばかりだったのですね。
やっぱり演技も上手いし、声がとにかく良い
 
実話を基にした作品で、監督はドミニク・クック。シビれました。
 
米英それぞれの諜報機関CIAMI6は協力してソ連の動きを探るべく、スパイを送り込むことに。
ソ連に怪しまれぬよう、送り込むのは一般人が良い。
適任者として白羽の矢が立ったのは、英国人セールスマンのグレヴィル・ウィン。
 
グレヴィルは、東欧諸国に工業製品を卸すごく平凡なセールスマン。
商談を申し込まれていそいそと出かけてみると、
そこにいたのは実はCIAの職員エミリーとMI6の職員ディッキーで、
ふたりからスパイになってほしいと言われて驚く。
 
彼に託されたミッションは、取引先の開拓という名目で、モスクワの科学委員会を訪ねること。
そこでソ連側の情報提供であるオレグ・ペンコフスキーと接触し、機密情報を受け取って持ち帰るのだ。
一介のセールスマンに過ぎない自分がスパイだなんて。
あり得ないと思いつつも成り行きで情報の運び屋となってしまったグレヴィルだったが……。
 
これって実際にあることなんですね。一瞬「え、私が?」と心が躍るかもしれません。
だって、そんなことって普段の生活では絶対にないことですから。
でも危険な目には遭わせないなんていうのは嘘でしょう。バレたらきっと殺される。
 
グレヴィルは一瞬も心躍ったようには見えません。
身の程をちゃんと知っているというのか、無理だと速攻で断る。
しかし、核戦争を回避するためだと聞いて躊躇う。
もしも自分の行動が世界を救う、いや、そんな大きなことではなくて、
妻と子どもを救えるならば、やってみるべきではと思う。
 
オレグは反逆者などではなく、ソ連という国を心から愛しています。
それゆえに、核戦争など起こしてはならぬと考え、
フルシチョフの手を止めるためには機密情報を流すしかないと決心します。
 
キューバ危機を描いた作品としては、『13デイズ』(2000)が印象に残っていますが、
あの影でこんな動きがあり、核戦争を回避に至らせた人がいたとは。
しかもそのときには投獄されていて、回避の事実を知らずにいる。
自分は国家も家族も救えなかったのだという無念を胸に、
しかし巻き込まれたグレヴィルのことだけは必ず救おうとしたオレグ。
 
グレヴィル役のベネディクト・カンバーバッチとオレグ役のメラーブ・ニニッゼ、
どちらも素晴らしかったし、エミリー役のレイチェル・ブロズナハンもよかった。
グレヴィルの妻役のジェシー・バックリーもよかったですね。
「シーラは勘が働くから気づく。しかも自分には疑われる前科がある」という、
グレヴィルの台詞には笑ってしまいました。そしてきっちり浮気を疑われる(笑)。
すべての事実を知ったシーラが「夫に謝らなくては」と涙目になるシーンも良いです。
 
ひとりの力では世界は何も変わらないかもしれない。
でも何かを変える力があるかもしれない。

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『総理の夫』

『総理の夫』
監督:河合勇人
出演:田中圭,中谷美紀,貫地谷しほり,工藤阿須加,松井愛莉,木下ほうか,
   米本学仁,国広富之,寺田農,片岡愛之助,嶋田久作,余貴美子,岸部一徳他
 
TOHOシネマズ伊丹にて。
 
原田マハの同名原作を河合勇人監督が映画化。
原作を読んだのは4年前なので、ほとんど内容を覚えていません。
ただ、原田マハのほかの著作と同様に、中盤以降のヒートアップを苦手に感じた記憶があります。
本作は不覚にも(笑)そのヒートアップに涙してしまいました。
 
相馬日和(田中圭)は母親・崇子(余貴美子)が総帥として君臨するグローバル企業の御曹司
亡き父親のあとは日和の兄・多和(片岡愛之助)が継ぎ、
鳥オタクの日和は鳥類研究所に勤務して、思う存分に鳥を愛でている。
 
そんな日和の妻・凛子(中谷美紀)は頭脳明晰な政治家で、直進党の党首だが、
ある日、日和が出張から戻ってくると、いきなり内閣総理大臣に就任していた。
電波も届かない山にこもりっきりだったせいで、そんなことになっているとはつゆ知らず、
初の女性総理大臣の夫となった日和は、待ち受けていた記者からもみくちゃにされる。
 
戸惑う日和の前に現れたのは、内閣広報室担当・富士宮あやか(貫地谷しほり)。
出かけるときは必ず富士宮が運転する車で、日和の居場所はGPSで監視。
日和自身にもファンがついたものだから、平穏だった日常は一変。
総理公邸への引っ越しも余儀なくされて、大好きな鳥の研究もままならず、
心身共にくたくたになっていく日和だったが……。
 
出来すぎですよ、この夫婦(笑)。
総理に就任して体調がおかしくなるほど多忙なのに、凛子は常に穏やか。
帰宅すれば日和に感謝の意を示すことを忘れないし、いらつくこともなし。
一方の日和も凛子に迷惑をかけることがないように考え、
それがかえって凛子を困った状態に陥れることもあるけれど、
アンタはどこぞのエージェントかというぐらいデキる富士宮が収拾します(笑)。
凛子を心の底から応援する、優しくて誠実でちょっと天然ボケの日和に、
女性なら誰しも「こんな夫がほしい」と思うことでしょう。
 
原作を読んだときには笑ってしまうようなシーンはなかったと思いますが、
田中圭は天然のシーンを上手く演じて笑わせてくれます。
序盤、ふきだしたところもいくつかあったような気が。
 
凛子の秘書役の工藤阿須加は、かつては竹内涼真とイメージがかぶっていました。
今は工藤阿須加のほうが断然いいなぁ。
凛子を支える内閣官房長官役の嶋田久作もとてもいいし、
「腹黒いだけに原九郎」の岸部一徳も当たり前のようにさすがです。
そしてなんといっても、やっぱり余貴美子。
彼女の後継者になれそうな女優って、誰ですかね。思いつかない。
 
最後は日和の熱いスピーチに泣いてください。

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『整形水』

『整形水』(英題:Beauty Water)
監督:チョ・ギョンフン
声の出演:沢城みゆき,諏訪部順一,上坂すみれ,日野聡,たかはし智秋,杉村理加,根本泰彦他
 
シネマート心斎橋にて3本ハシゴの3本目。
 
どこの国に限らず、できるだけ吹替版ではなく字幕版で観たいと思ってはいますが、
韓国のアニメならまぁええかなと思い、吹替版を選択しました。
同劇場では字幕版も上映しているので、動線次第では字幕版を観たかったですけれど。
 
ホラーのアニメ作品です。
この日、これより前に観た2本とはあきらかに客層が違う。
若くて綺麗な女性客が多いのは、美容整形に興味のある人が多いからでしょうか。
 
芸能事務所でタレントのメイクを担当するイェジ。
子どものときにはバレエを習い、コンクールでも上位入賞を果たしたが、
自分がブスのせいで1位にはなれなかったと思い込んでいる。
バレエをあきらめてからはブクブク太り、今はブスでデブ。
事務所一の人気美人タレント、ミリからはいつも蔑まれている。
 
コンビニで食料を大量に買い込めば、レジの店員は鼻で笑い、
路上で転べば、警備員から「痩せろよ」と言われる。
自分の気持ちをわかってくれる人など誰ひとりとしていない。
どうしてこんなブスに両親は産んだのか腹立たしい。
 
ある日、バカ食いする映像に出演してほしいとスタジオのスタッフから頼まれ、
顔はほとんど写らないと聞いて承諾する。
ところが帰宅すると「今日のブス」としてイェジの映像がSNSを賑わせていた。
あまりの言われようにひきこもるようになったイェジ。
 
何カ月も経った頃、イェジのもとに1通のDMが届く。
そこには、塗るだけで美人になれる不思議な水“整形水”の案内が。
訝りながらも注文して使用してみると、本当に美人になって……。
 
イェジにはあまり同情できません。
だって、顔がブスなだけでなく、すごい性格ブス。
どうせ私なんかと言いながらそれだけ食べたらあかんやろ。
 
美人になると、道行く人がみんな振り返り、
男性たちの対応も以前とは180度どころか540度ぐらい違う(笑)。
すっかり美しくなったイェジが性格もよくなるかというと、
手のつけようもないほどワガママな女になってゆきます。
 
顔だけ綺麗になっても体がそのままじゃ変ですからね、
体にも整形水を塗って肉をそぎ落として行く。
整形水の風呂に浸ってナイスバディが完成したというのに、
入浴時間を超過すると、浸かりすぎてゾンビに。怖い。
 
ナイスバディに戻すには肉が必要ということで、
娘のために両親が肉を削る。
それでもイェジは「自分をブスに産んだ責任」だと、
両親に肉と整形水を購入するための金を求め、
ナイスバディになったらなったでブランド服を買い漁る。
 
悲惨なエンディングが待っていますが、自業自得ですな。
ホラーらしい最後にニヤリとしてしまいました。
 
そりゃ女に生まれたからには美人のほうがいいですよ。
でも美人じゃないことを親のせいにして、世間を悪者にして、
それこそ豚みたいに食ってばかりじゃいけない。
性格ブスにはならないようにしなきゃいけませんね。

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『偽りの隣人 ある諜報員の告白』

『偽りの隣人 ある諜報員の告白』(英題:Best Friend)
監督:イ・ファンギョン
出演:チョン・ウ,オ・ダルス,キム・ヒウォン,キム・ビョンチョル,イ・ユビ,
   チョ・ヒョンチョル,チ・スンヒョン,キム・ソンギョン,ヨム・ヘラン他
 
シネマート心斎橋にて3本ハシゴの2本目。
最初こそ笑えなくてゲンナリしましたが、終わってみればめちゃめちゃ良かった。
 
野党の政治家イ・ウィシクは激しい弾圧から逃れて海外に身を置いていたが、
次期大統領選への出馬を表明して緊急帰国する。
 
ところが、なんとしてでも出馬を阻止したいキム室長率いる国家安全政策部は、
ウィシクを空港で拉致して自宅軟禁に処す。
軟禁している間に、ウィシクを共産主義者に仕立て上げようという魂胆。
 
そこら中に盗聴器を仕掛けたイ家を隣家から見張るように命じられたのは、
愛国心は強いがちょっと間の抜けた諜報員ユ・デグォン。
彼がチーム長となり、部下にドンシクとヨンチョルを従えて盗聴と監視を開始するのだが……。
 
冒頭、公園のボットン便所の中にデグォンが入って盗聴器を探すシーンがあります。
こんなクソまみれの汚いところは見たくないねん。
テンションがダダ下がりだったので、この後どうなることかと思ったら、心配無用でした。
 
ウィシク役には私が顔を見ただけで笑ってしまうオ・ダルス
本作ではいつものように観客を笑わす役目はデグォン役のチョン・ウに任せ、
根っからの善人である次期大統領候補を演じています。
 
前半は笑えるシーンがいっぱい。
まさか諜報員3人で隣に住んでいますなんて言えないから、
ウィシクと彼の家族や家政婦とは出会わないようにしていたのに、
何かと遭遇する機会が生まれてしまう。
そのたびにオタオタするところが本当に可笑しい。
 
中盤からは徐々にシリアス色が濃くなってゆきます。
キム室長たちが陰謀を企んでいるとはつゆとも知らないデグォンは、
ウィシクが共産主義者だという証拠を探しますが、
そうじゃないんだからそんな証拠が出てくるはずもない。
すると今度は証拠の捏造を命じられ、当然のごとくそれを受け入れる。
でもどこかでこんなことはおかしいと思いはじめます。
 
英語タイトルの“Best Friend”の意味がわかると泣けてくる。
このラストシーンはこれまでにもありがちと言えなくもない。
でもやっぱりこういうシーンが観たいのですよね。
 
家政婦役のヨム・ヘランも最高。今後はこの人の顔を見るたびに笑ってしまうかも。
 
さすが『7番房の奇跡』(2013)のイ・ファンギョン監督。
すごく良かった。

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『Summer of 85』

『Summer of 85』(原題:Ete 85)
監督:フランソワ・オゾン
出演:フェリックス・ルフェーヴル,バンジャマン・ヴォワザン,フィリッピーヌ・ヴェルジュ,
   ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ,メルヴィル・プポー,イザベル・ナンティ他
 
シネマート心斎橋にて3本ハシゴの1本目。
目当てはこの後に観た2本目と3本目でしたが、これもかなりよかった。
 
原題が“Summer of 85”の作品が過去にもあったんですね。
1981年のアメリカ作品で、どうもエロいやつらしいです。
だって邦題が『ワイルド・ポルノ/みだりに後ろから』だから(笑)。
と思ってさらに調べたら、原題が“Summer of ’72”で、
邦題が『ワイルド・ポルノ/みだらに後ろから』というのもあるよ。
何かの間違いでは。まぁ、どうでもええか。(^^;
 
さて、本作はポルノではありません。
フランソワ・オゾン監督によるボーイズラブものというには重い作品。
英国の児童文学作家エイダン・チェンバーズの『おれの墓で踊れ』の一部が原作ということですが、
たぶん原作には性的な意味合いはないのでしょうね。なんとなく。
と思って、今、原作のあらすじを調べてみたら、ちゃんと同性愛の話のよう。
特別なことじゃなく普通のこととして描かれるのはいいと思う。
 
1985年の夏休み。
16歳の少年アレックスは、友人から借りたヨットでひとり沖へと出る。
うとうと居眠りして目覚めると、遠方に大きな雨雲。
慌てて戻ろうとしたときに操縦を誤って転覆してしまう。
 
絶体絶命かと思われたが、偶然通りかかった18歳の少年ダヴィドに助けられる。
ずぶ濡れのアレックスはダヴィドの家に招じ入れられ、
彼の母親から風呂に着替えに食事にと手厚いもてなしを受ける。
 
すぐに意気投合するふたり。
やがてアレックスはダヴィドの母親が営む店でバイトをし始める。
始終一緒にいるふたりは親密な関係になるのだが……。
 
生気のない顔をしたアレックスを映し出すシーンから始まります。
どうやらダヴィドがすでに亡くなっているらしく、
ダヴィドの墓でアレックスが何かやらかしたこともわかる。
現行犯で捕まった彼がいったい何をしたのか、そしてどうしてそんなことをしたのか、
理由を徐々に明らかにする形で、回想シーンとして物語は進みます。
 
アレックス役のフェリックス・ルフェーヴルとダヴィド役のバンジャマン・ヴォワザンは
共にオーディションで選ばれたそう。
フェリックスは男女どちらからもモテそうな美少年。
一方のバンジャマンはワイルドな感じで、この顎はヴァンサン・カッセルを思い出す。
目つきも何もかもやらしいので、こんな奴にハマるなよアレックスと思わなくもない(笑)。
 
アレックスに文学の才能を見いだしていた教師は、
心を閉ざしたアレックスに気持ちを文章にしてみることを勧めます。
イケメンのメルヴィル・プポーがその教師役なのですが、
頭頂部が薄くなったモジャモジャ頭をしていたので、最初そうだとは思わずビックリ。
イケメンのままじゃ駄目だったのかしら。
 
自分が将来何をしたいのかなんて聞かれてもまだわからない年頃。
「僕に何をしてほしいか」と問う息子に対して、
父親はひたすら「仕事に就け」と言い、母親は「あなたが幸せだと感じることをしてほしい」と言う。
ゲイであることを公表しているフランソワ・オゾンやグザヴィエ・ドランの作品を観ると、
両親共に葛藤があるとしても、息子にとってはやっぱり母親なのかなと思わずにはいられません。
 
重い部分もありますが、クスッと笑えるシーンもあって爽やかな余韻も。
女性向きだと思う。

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