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『偽りの隣人 ある諜報員の告白』

『偽りの隣人 ある諜報員の告白』(英題:Best Friend)
監督:イ・ファンギョン
出演:チョン・ウ,オ・ダルス,キム・ヒウォン,キム・ビョンチョル,イ・ユビ,
   チョ・ヒョンチョル,チ・スンヒョン,キム・ソンギョン,ヨム・ヘラン他
 
シネマート心斎橋にて3本ハシゴの2本目。
最初こそ笑えなくてゲンナリしましたが、終わってみればめちゃめちゃ良かった。
 
野党の政治家イ・ウィシクは激しい弾圧から逃れて海外に身を置いていたが、
次期大統領選への出馬を表明して緊急帰国する。
 
ところが、なんとしてでも出馬を阻止したいキム室長率いる国家安全政策部は、
ウィシクを空港で拉致して自宅軟禁に処す。
軟禁している間に、ウィシクを共産主義者に仕立て上げようという魂胆。
 
そこら中に盗聴器を仕掛けたイ家を隣家から見張るように命じられたのは、
愛国心は強いがちょっと間の抜けた諜報員ユ・デグォン。
彼がチーム長となり、部下にドンシクとヨンチョルを従えて盗聴と監視を開始するのだが……。
 
冒頭、公園のボットン便所の中にデグォンが入って盗聴器を探すシーンがあります。
こんなクソまみれの汚いところは見たくないねん。
テンションがダダ下がりだったので、この後どうなることかと思ったら、心配無用でした。
 
ウィシク役には私が顔を見ただけで笑ってしまうオ・ダルス
本作ではいつものように観客を笑わす役目はデグォン役のチョン・ウに任せ、
根っからの善人である次期大統領候補を演じています。
 
前半は笑えるシーンがいっぱい。
まさか諜報員3人で隣に住んでいますなんて言えないから、
ウィシクと彼の家族や家政婦とは出会わないようにしていたのに、
何かと遭遇する機会が生まれてしまう。
そのたびにオタオタするところが本当に可笑しい。
 
中盤からは徐々にシリアス色が濃くなってゆきます。
キム室長たちが陰謀を企んでいるとはつゆとも知らないデグォンは、
ウィシクが共産主義者だという証拠を探しますが、
そうじゃないんだからそんな証拠が出てくるはずもない。
すると今度は証拠の捏造を命じられ、当然のごとくそれを受け入れる。
でもどこかでこんなことはおかしいと思いはじめます。
 
英語タイトルの“Best Friend”の意味がわかると泣けてくる。
このラストシーンはこれまでにもありがちと言えなくもない。
でもやっぱりこういうシーンが観たいのですよね。
 
家政婦役のヨム・ヘランも最高。今後はこの人の顔を見るたびに笑ってしまうかも。
 
さすが『7番房の奇跡』(2013)のイ・ファンギョン監督。
すごく良かった。

—–

『Summer of 85』

『Summer of 85』(原題:Ete 85)
監督:フランソワ・オゾン
出演:フェリックス・ルフェーヴル,バンジャマン・ヴォワザン,フィリッピーヌ・ヴェルジュ,
   ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ,メルヴィル・プポー,イザベル・ナンティ他
 
シネマート心斎橋にて3本ハシゴの1本目。
目当てはこの後に観た2本目と3本目でしたが、これもかなりよかった。
 
原題が“Summer of 85”の作品が過去にもあったんですね。
1981年のアメリカ作品で、どうもエロいやつらしいです。
だって邦題が『ワイルド・ポルノ/みだりに後ろから』だから(笑)。
と思ってさらに調べたら、原題が“Summer of ’72”で、
邦題が『ワイルド・ポルノ/みだらに後ろから』というのもあるよ。
何かの間違いでは。まぁ、どうでもええか。(^^;
 
さて、本作はポルノではありません。
フランソワ・オゾン監督によるボーイズラブものというには重い作品。
英国の児童文学作家エイダン・チェンバーズの『おれの墓で踊れ』の一部が原作ということですが、
たぶん原作には性的な意味合いはないのでしょうね。なんとなく。
と思って、今、原作のあらすじを調べてみたら、ちゃんと同性愛の話のよう。
特別なことじゃなく普通のこととして描かれるのはいいと思う。
 
1985年の夏休み。
16歳の少年アレックスは、友人から借りたヨットでひとり沖へと出る。
うとうと居眠りして目覚めると、遠方に大きな雨雲。
慌てて戻ろうとしたときに操縦を誤って転覆してしまう。
 
絶体絶命かと思われたが、偶然通りかかった18歳の少年ダヴィドに助けられる。
ずぶ濡れのアレックスはダヴィドの家に招じ入れられ、
彼の母親から風呂に着替えに食事にと手厚いもてなしを受ける。
 
すぐに意気投合するふたり。
やがてアレックスはダヴィドの母親が営む店でバイトをし始める。
始終一緒にいるふたりは親密な関係になるのだが……。
 
生気のない顔をしたアレックスを映し出すシーンから始まります。
どうやらダヴィドがすでに亡くなっているらしく、
ダヴィドの墓でアレックスが何かやらかしたこともわかる。
現行犯で捕まった彼がいったい何をしたのか、そしてどうしてそんなことをしたのか、
理由を徐々に明らかにする形で、回想シーンとして物語は進みます。
 
アレックス役のフェリックス・ルフェーヴルとダヴィド役のバンジャマン・ヴォワザンは
共にオーディションで選ばれたそう。
フェリックスは男女どちらからもモテそうな美少年。
一方のバンジャマンはワイルドな感じで、この顎はヴァンサン・カッセルを思い出す。
目つきも何もかもやらしいので、こんな奴にハマるなよアレックスと思わなくもない(笑)。
 
アレックスに文学の才能を見いだしていた教師は、
心を閉ざしたアレックスに気持ちを文章にしてみることを勧めます。
イケメンのメルヴィル・プポーがその教師役なのですが、
頭頂部が薄くなったモジャモジャ頭をしていたので、最初そうだとは思わずビックリ。
イケメンのままじゃ駄目だったのかしら。
 
自分が将来何をしたいのかなんて聞かれてもまだわからない年頃。
「僕に何をしてほしいか」と問う息子に対して、
父親はひたすら「仕事に就け」と言い、母親は「あなたが幸せだと感じることをしてほしい」と言う。
ゲイであることを公表しているフランソワ・オゾンやグザヴィエ・ドランの作品を観ると、
両親共に葛藤があるとしても、息子にとってはやっぱり母親なのかなと思わずにはいられません。
 
重い部分もありますが、クスッと笑えるシーンもあって爽やかな余韻も。
女性向きだと思う。

—–

『レミニセンス』

『レミニセンス』(原題:Reminiscence)
監督:リサ・ジョイ
出演:ヒュー・ジャックマン,レベッカ・ファーガソン,タンディ・ニュートン,
   クリフ・カーティス,ブレット・カレン,アンジェラ・サラフィアン他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
 
原題も邦題も“Reminiscence”。こんな単語、知らんっちゅうの。
「記憶潜入」という意味なのかと思っていたら、「回想」なのですね。
 
監督のリサ・ジョイは、人気TVドラマ“バーン・ノーティス 元スパイの逆襲”シリーズの脚本家。
また“ウエストワールド”シリーズでは企画と製作総指揮を務めています。
映画を撮るのはどうやらこれが初めてのよう。
なんと言っても気になるのは、本作の製作者にジョナサン・ノーランの名前があること。
『ダークナイト』(2008)や『インターステラー』(2014)の脚本家でもあります。
こういう兄弟の会話って、どんなふうなんでしょうね。
 
さて、そんな弟プロデュースの本作は、兄監督の作品よりもわかりやすい。
SFを理解するアタマのない凡人にもわかりやすいように作ってくれてありがたい。
ま、難しいSFでも、鑑賞時は理解できた気がしているんですけどね。
 
舞台は近未来。海面上昇が進んで、各地の都市は水に覆われています。
主人公のニックが暮らすマイアミもそうで、人々は暑さを逃れ、
自然と夜型の生活を送るようになっています。
 
ニックの仕事は、顧客が見たいと望む記憶を呼び起こして追体験させること。
顧客の誰しもが幸せな記憶に浸る時間のために金を払う。
 
ある日、自室の鍵をどこに置き忘れたか記憶を辿りたいという女性メイが現れる。
その美しさに一目惚れしたニックは、後日彼女が歌う店を訪れ、交際を開始。
深く愛し合っていたはずなのに、突然ニックの前から姿を消すメイ。
 
どうしても彼女のことが忘れられず、ニックは来る日も来る日も自分の記憶を辿り、
メイの行き先についてヒントが隠されていないかを調べる。
やがて、ギャング組織の犯罪に彼女が巻き込まれていると知り……。
 
驚いたのは、ギャング組織のボス役がダニエル・ウーだったこと。
なんだかもうすっかりたるんだオッサンになってしまって、
『美少年の恋』(1998)の頃の彼はいったい何処へと思うけど、
こうして元気で活躍しているのは嬉しい。
 
序盤のニックとメイのやりとりには結構イライラ。
ニックはメイにぞっこんで、彼女が姿を消したときも騙されていたなんて微塵も思わない。
みんなが彼女のことを悪く言うけれど、本当の彼女を知っているのは俺だけ、なんて、
男性にありがちじゃないですか(笑)。
本当の彼女はそんなじゃないし、もしそうだとしても立ち直らせることができるのは自分だけだなんて、
思い込みも甚だしいぜ。傲慢だよ。そう思いませんか。
タンディ・ニュートン演じるアシスタント女性のほうがよっぽどええのに、
もう、美人に弱いんだからっ!などと若干憤ったりもする私(笑)。
 
でね、傲慢だなんて方向には話は進みません。
やっぱり彼女のことをわかっているのは彼だけだったのだから、
男性の夢を叶えていますよねぇ。
 
と、一見文句に聞こえるかもしれませんが、わかりやすくて面白かったです。
観る人に夢は与えなきゃいけないし、映画の中だけでも夢は叶えてほしいもの。
 
『グレイテスト・ショーマン』(2017)でもイチャイチャしていました。
このような共演が多いと、ほんとにデキちゃうのではと思ったり。
レベッカの歌はどの作品のときも素晴らしいです。聴き惚れた。
 
やっぱり自分が愛した相手は善人だった。ちょっぴり切ないです。

—–

『岬のマヨイガ』

『岬のマヨイガ』
監督:川面真也
声の出演:芦田愛菜,粟野咲莉,大竹しのぶ,伊達みきお,富澤たけし,宇野祥平,
     達増拓也,天城サリー,江原正士,桑島法子,佐藤拓也,広瀬裕也他
 
歌うようになってからの大竹しのぶがなぜか苦手なんです。
おかげで映画までなんとなく避けてしまい、
原作が大好きな『漁港の肉子ちゃん』も観ないまま終映してしまいました。
 
本作も芦田愛菜は気になるものの、積極的に観に行く気分にはなれず。
イオンシネマ茨木で早い時間帯の上映のみになっていましたが、
ある日ふとスケジュールを覗いたら、晩1回の上映になっている。
ちょうどほかに観るものもなくなりかけていたので、思いきって鑑賞。
 
やっぱり観なきゃわからんもんです(笑)。
私は『竜とそばかすの姫』より好きでした。
 
東日本大震災に見舞われてからしばらく経った岩手県のある町。
避難所を訪れた訳ありの17歳のユイは、8歳のヒヨリと出会う。
ヒヨリは両親を交通事故で亡くした後、親戚に引き取られてこの町に来たが、
震災でみんな亡くなり、たったひとり生き残ったらしい。
 
行き場を失ったふたりのことを自分の孫たちだと市役所の職員に偽り、
一緒に暮らそうと言ってくれたのは、キワという不思議なおばあさん。
キワに連れられて向かった岬に建つ古民家は「生きていた」。
 
驚くふたりにキワは言う。
心配しなくていい、この家はふたりのことを決して傷つけない。
温かくもてなしてくれるマヨイガだよ。
最初は訝っていたユイだが、マヨイガでの生活に少しずつ心が解きほぐされてゆく。
 
やがてキワはマヨイガに客を呼ぶ。その客とはなんと河童たち。
人々の悲しみを食べて巨大化していくアガメという魔物が
どうやらこの町を乗っ取ろうとしていることに気づいたキワが、
河童をはじめとする“ふしぎっと”と呼ばれる善き妖怪たちに相談したのだが……。
 
まずマヨイガの建つ岬の風景が素敵です。
そして、家も人と同じできちんと育つのだという考え方。
実際に家が動いたりしたらポルターガイストを疑いますが、
こんなふうに家が笑えば怖くない(笑)。
 
震災や虐待で心身共に傷つけられた子どもたちが、
優しく不思議なおばあちゃんによってたくましく育ってゆく姿が良い。
ユイはいったいどこから逃げ出してきたのか、
学校はどうなっているんだという疑問が最初こそ湧きますが、
キワおばあちゃんならそんなことを片付けるのはお茶の子さいさい。
魔法使いではないようだけど、こんなふうに生きていれば、
人間じゃないものとも心を通わすことができるのかもしれません。
 
今、自分にできることをする。
良いアニメでした。

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『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』

『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』(原題:Sound of Metal)
監督:ダリウス・マーダー
出演:リズ・アーメッド,オリヴィア・クック,ポール・レイシー,ローレン・リドロフ,
   マチュー・アマルリック,マイケル・トウ,チェルシー・リー,ビル・ソープ他
 
これも前述の『The Guilty/ギルティ』と同じくシネ・リーブル梅田で公開中。
しかしAmazonプライムビデオで配信中なのですよね。
タダで観賞できるとなれば、ついついそっちを選んでしまう。
 
第93回アカデミー賞で作品賞など6部門にノミネートされ、編集賞と音響賞を受賞しました。
受賞は逃しましたが、リズ・アーメッドが主演男優賞、ポール・レイシーが助演男優賞にノミネート。
また、主人公の恋人役でオリヴィア・クック、その父親役をマチュー・アマルリックが演じています。
 
ドラマーのルーベンは、恋人のルーとバンドを組んで活動中だったが、
ある日、自分の耳が聞こえにくくなっていることに気づく。
病院で診察を受けたところ、ルーベンの耳は数割程度しか聞こえていないらしく、
手術するしか聴力を取り戻す方法はないという。
しかし手術には多額(日本円にして何百万円)もの費用が必要で、とてもそんな金は工面できない。
 
ボーカルのルーが合図さえくれれば演奏は続けられるはず。
そう訴えて、だましだまし続けようとするルーベン。
それは無理だと考えたルーは、聴覚障害者の自助グループにルーベンを連れて行く。
 
グループをまとめているのは初老の男性ジョー。
彼によれば、ルーは一緒に入所することはできず、電話等で連絡を取るのも禁止。
ルーベンと同じ聴覚障害者だけで共同生活を送るのだ。
そんな生活は受容できそうにもなく、頑なに拒もうとするルーベンに、
ルーは応援していると言って立ち去ってしまうのだが……。
 
批評家に絶賛されているとのことだったせいか、期待が大きすぎました。
あるいは、なぜか序盤、日本語字幕が声と大いにずれていたせいで集中できなかったのかも。
あまりにずれるので、吹替版に切り替えたのですが、やっぱり嫌。
字幕版に戻して再生し直したら、ずれなくなりました。これってよくあること?
 
期待ほどではなかったけれど、良作だったことは確かです。
昨日まで何の問題もなく聞こえていたのに、ある朝突然聞こえなくなる。
シャワーの水の音、不味すぎるスムージーを作るときのジューサーの音、
何もかも聞こえなくなったときの衝撃。
 
「難聴はハンデではないし、治療すべきものでもない」。
ジョーからそう言われてもハンデとしか捉えられないルーベンは、金を作って手術をする。
この手術で驚いたのは、聴力を復活させるものではないのですね。
聞こえているように脳に錯覚を起こさせているだけで、聞く機能は失ったまま。
手術後は聞こえるようになったとはいえ、雑音が入り乱れる。
その状態に慣れるしかないなんて。
 
聞こえないことを不幸にしか感じられなかったルーベン。
静寂こそが幸せなのかもしれないと思い始めるラストが秀逸です。
 
これもやっぱり劇場で観るべき1本だろうなぁ。

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