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『アンテベラム』

『アンテベラム』(原題:Antebellum)
監督:ジェラルド・ブッシュ,クリストファー・レンツ
出演:ジャネール・モネイ,エリック・ラング,ジェナ・マローン,ジャック・ヒューストン,
   カーシー・クレモンズ,ガボレイ・シディベ,マルク・リチャードソン,リリー・カウルズ他
 
CS(クライマックスシリーズ)第1戦の敗戦に打ちひしがれ、ヤケ酒ならぬヤケ映画。
もっと明るい作品を観ればよいものの、時間的にちょうどよかったのがこれ。
大阪ステーションシティシネマにて。
 
監督は本作で長編デビューを飾ったコンビ、ジェラルド・ブッシュとクリストファー・レンツ。
批評家の評判は芳しくないそうですが、私にはかなり面白かった。暗いけど。
 
アメリカ・ルイジアナ州、綿花を栽培するプランテーション
奴隷として白人に虐げられている女性エデンは、何度か脱走を試みたが失敗。
毎晩のように陵辱され、声を潜めながら次の脱走を計画している。
 
一方、黒人女性のリーダーとして活躍するベストセラー作家ヴェロニカ。
いくら知名度が上がろうとも、ホテルで、レストランで、まだまだ差別を受けている。
ある日、友人たちと食事した後、何者かに拉致されて……。
 
どこから話してもネタバレになりますので、鑑賞予定の方はご注意ください。
 
エデンとヴェロニカはジャネール・モネイの一人二役。
エデンは南北戦争前夜の時代に生きる女性。ヴェロニカは現代に生きる女性。
同じ容貌のふたりの人生が交錯する、てな話かと思っていました。
 
そうしたら、このふたりは本当に同一人物だったのですよ。
160年の時を超えて、とかではなく、どちらも現代。
 
最初に「えっ!?」と思ったのは、エデンを手込めにしている白人のオッサンが、
夜中にスマホの音で目覚めるシーンです。
1860年代にスマホってなんでなの、どーゆーこと!?と目が点に。
ありえないファンタジー仕様の映画なのかこれは?と、疑問がぐるぐる頭の中を回る。
その謎がわかるのは最後の最後なんですけれど。
 
拉致されたヴェロニカが連れて行かれたのがこのプランテーション。
エデンと名乗らされ、過酷な日々を送らされている。
プランテーション自体がテーマパークだとわかるのはラストシーンで、
なんたる悪趣味なテーマパークなんだとたまげました。
 
こんなテーマパークを作るのは人種差別主義者以外の何者でもないわけで、
ジェナ・マローン演じる地主の妻かと思われた女がテーマパークの経営者一家のひとり。
命懸けの脱走をはかったエデン=ヴェロニカを物凄い形相で追いかけながら、
「私だけ殺したところで、この状況は変わらない」と告げるのが怖い。
 
いつになろうが人種差別主義者は必ず存在する。
ヴェロニカがなんとか生還して夫と愛娘に再会できたことにホッとしながら、
恐ろしい現実を思うのでした。
 
“Antebellum”は「南北戦争前の」の意。南北戦争前のテーマパークの名前を指すとは。
「恐怖が不足してたいして面白くもない作品になっている」というのが批評家のコメントらしいけど、
じゅうぶん怖くないですか。私はおぞましさに震えました。

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『劇場版 きのう何食べた?』

『劇場版 きのう何食べた?』
監督:中江和仁
出演:西島秀俊,内野聖陽,山本耕史,磯村勇斗,マキタスポーツ,高泉淳子,
   松村北斗,田中美佐子,チャンカワイ,奥貫薫,田山涼成,梶芽衣子他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
 
面白いとの噂は常々聞いておりましたが、TVドラマまで観る時間が作れず。
まずは劇場版を押さえて、老後の楽しみに取っておくというのはどうでしょう!?
 
原作はよしながふみのコミックで、『モーニング』に月1ペースで連載。
現在も連載は継続中で、18巻まで刊行されているそうです。
てなことはすでに皆さんご存じか。(^^;
 
『劇場版 ルパンの娘』同様、これも何の前知識もなくても楽しめます。
ふたりがゲイのカップルだということさえ知っていれば。
それを知らずに観たらやっぱり驚きますよね?
 
弁護士の筧史朗(西島秀俊)と美容師の矢吹賢二(内野聖陽)は同棲中のカップル。
史朗は倹約家ながらも大の料理好きで、いつも美味しい食事を作ってくれる。
ふたり一緒に食卓につくのが何よりも幸せな時間。
 
ある日、史朗が賢二の誕生日プレゼントとして京都旅行を提案。
大喜びする賢二だったが、史朗のあまりの優しさが不気味。
もしや史朗は別れ話を切り出すつもりか、それとも大病を患って余命わずかとか。
賢二はついついよからぬことを考えてしまい……。
 
それだけの話といえばそれだけの話。
でも、彼があまりに優しい理由が、共に帰郷できないことのお詫びだというのは、
もしかしたらあり得ることなのかもしれません。
 
愛する息子の愛する相手のことは、男であろうが女であろうが認めたい。
そう自身に言い聞かせて賢二のことを一旦は受け入れた史朗の両親(田山涼成梶芽衣子)。
しかし、頭ではわかっていても、やはり男同士のふたりを目の前にすると、
見たくないと心が反応してしまう。そう気持ちを吐露する母親。
史朗の選択、それに対する母親の返答、どちらも優しい。
 
賢二の母親(鷲尾真知子)と姉たちもいいですね。
息子、弟の彼氏の写真を見て「カッコイイ」「昔からこの子がいちばん女子力高かったから」、
そんな会話をいいな~と思いました。
 
『ザ・カセットテープ・ミュージック』の放送が終了してしまって、
マキタスポーツを見られなくなったことを残念に思っていたので、彼の自虐ネタが嬉しかった。
もともと髪の毛が少なくて最近さらに減ってきた私にとっては笑い事じゃないです(笑)。
 
個人的には唯野未歩子演じるスーパーの店員が結構ツボ。
富樫さん(田中美佐子)が教えてくれる簡単ローストビーフなんかも○。
これ観たらいろいろと作りたくなりますよね。
 
キャストを眺めているだけで楽しい作品はそれなりにいいものです。

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『〈主婦〉の学校』

 『〈主婦〉の学校』(原題:The School of Housewives)
監督:ステファニア・トルス
 
劇団☆新感線昼飲み映画3本という12時間コース、
充実しすぎの文化の日の〆は本作鑑賞でした。
 
アイスランドって、12年連続でジェンダーギャップ指数ランキング1位なのだそうです。
ジェンダーギャップとはつまり男女格差。
経済、教育、医療、政治の4分野において、14項目のデータで男女比を算出。
スコアが1に近いほど男女が平等であることを表します。
ジェンダーギャップ指数が公表されるようになったのは2006年。
初めのほうこそアイスランドは1位ではありませんでしたが、それでもスコアは0.8近く。
今では0.9を少し切るぐらいになりました。ちなみに日本はずーっと0.6台。
 
そんなアイスランドには、1942年来の歴史を誇る家政学校があります。
“主婦の学校”と呼ばれて親しまれているそうな。
それを聞いたとき、今時なんだそりゃ、花嫁修業の学校か、と思いました。
そういう要素はあるものの、それだけではないから驚きです。
 
掃除、洗濯、料理。当然、こういったことの方法を学びます。
けれど、男性も受け入れているのです。
性別問わずに受け入れるようになったのは1990年代以降ですが、
最初の男子学生となった人のインタビューが面白い。
入学希望の彼に校長が尋ねたのは、「掃除をするように言われて屈辱的だと感じるか」ということ。
まったく抵抗がないという彼に、入学が認められたのだそうです。
 
その最初の男子学生の志望動機のひとつは、消えゆくものへの興味。
食洗機の登場で自らの手で洗うことは不要になり、
掃除だってルンバみたいなやつが勝手におこなってくれる。
食洗機を使うようになったら読書の時間が増えたと聞き、
それはそれでありだなと思いましたが、私は食器は手で洗う派です。
ま、家族が少ないですし、食洗機を動かすのがすでに手間だというのが大きいだけですけれども。
 
花嫁になるわけではなくても、この学校にかよって一通りのことは知り、
やることやらないことを自分で選びながら暮らしていけるといいですね。
どこの手を抜くべきかは、何も知らなきゃわからないもの。
 
変な映画ばかりの国だと思っていましたが、見方が変わりました。

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『ジョゼと虎と魚たち』

『ジョゼと虎と魚たち』(英題:Josee)
監督:キム・ジョングァン
出演:ハン・ジミン,ナム・ジュヒョク,ホ・ジン,パク・イェジン,チョ・ボクレ,
   イ・ソンウク,イ・ソヒ,キム・グムスン,チャン・セウォン ,ユン・ヘリ他
 
シネ・リーブル梅田にて、『TOVE/トーベ』の次に。
 
原作はご存じ、田辺聖子の同名小説。
2003年に池脇千鶴妻夫木聡の共演で映画化され、
2020年には中川大志清原果耶が声を担当するアニメ版も公開されました。
それが韓国でリメイクされたという。
予告編が良かったので、これは観に行かなくちゃと思いました。
だから、本作がこの日の本命です。
 
機械工学を専攻する大学生のヨンソク(ナム・ジュヒョク)は、
ある日、路上で転倒して動けなくなっている車椅子の女性(ハン・ジミン)を助ける。
車椅子が壊れていたため、近所の店で金を払ってリヤカーを借り、
赤の他人であるその女性を家まで送り届けたのに、
彼女を迎えた老婆からはあらぬ疑いをかけられ、当の彼女も愛想がなさ過ぎる。
退散しようとするヨンソクに、「ごはんを食べて行って」と彼女が声をかける。
 
老婆が回収してくる廃品に囲まれてふたりで暮らしているらしい。
フランソワーズ・サガンの小説の登場人物の名前ジョゼを名乗る彼女のことが気になり、
それからちょくちょくジョゼを訪ねるヨンソクだったが……。
 
アニメ版の大学生・恒夫はやたら好青年でした。
本作の大学生・ヨンソクはオリジナルに倣い、とても女性にだらしない。
既婚の女性教授といい仲になり、部屋に泊まるのは普通。
モテるのをいいことに、可愛い子に誘われればホイホイついていくような男です。
 
対するジョゼはオリジナルやアニメ版ほど気が強くはない。
いえ、気は強いのですが、口数が少ないゆえに暴言も控えめ。
そして池脇千鶴よりもずいぶんと可愛い。千鶴さん、すみません。(^^;
 
オープニングの風吹く路地の情景がこのうえなく美しく、
心を鷲掴みにされたものの、全体的には単調でいささか退屈。
 
憐れんだだけとは言わないけれど、彼女の面倒を見るためにそばにいたところで、
職もなければこの恋が続くわけはありません。
無理でしょと思ったとおりに恋は終わり、それぞれ想い出を胸に生きてゆく。
 
ひきこもっていたジョゼが車の免許を取る。前向きなのはいいけどね。
なんだかだいぶ物足りん。
ナム・ジュヒョクのファン限定でどうぞ。

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『TOVE/トーベ』

『TOVE/トーベ』(原題:Tove)
監督:ザイダ・バリルート
出演:アルマ・ポウスティ,クリスタ・コソネン,シャンティ・ローニー,ヨアンナ・ハールッティ,
   カイサ・エルンスト,ロベルト・エンケル,ヤーコプ・エールマン,エーヴァ・プトロ他
 
文化の日、オリックス劇場にて劇団☆新感線の『狐晴明九尾狩(きつねせいめいきゅうびがり)』を観て、
ご一緒した人と軽く昼飲みした後、余韻もそのままにシネ・リーブル梅田へ。これはひとりで。
夕方から無謀と思われる映画3本ハシゴを敢行。もうへろへろよ(笑)。
 
あの“ムーミン”の生みの親として知られるトーベ・ヤンソンの半生を映画化。
監督のザイダ・バリルート、主演のアルマ・ポウスティ、共にフィンランド人です。
 
ヘルシンキに暮らすトーベは彫刻家の父親と挿絵画家の母親の間に生まれた。
芸術家として身を立てることを特に父親から求められ、絵を描くことに勤しむが、
そのかたわらで彼女が楽しみを見いだしていたのは、
不思議な生き物“ムーミントロール”を主人公にした物語を作ること。
 
彼女の絵画は、保守的な美術界にあっては高い評価を受けられず、
その鬱憤もあってか、自由奔放に生きるように。
既婚者である男性とも逢瀬を重ね、恋愛を謳歌する。
そんな彼女が舞台演出家ヴィヴィカ・バンドラーと出会って……。
 
ムーミンみたいな絵を描いてお話を作る人って、
イメージとしては人の好さそうなおばあちゃんだったりしませんか。
全然そうではないことにひたすら驚かされます。
 
不倫しているときも彼女には暗さのかけらもない。
どちらかといえば相手の男性のほうに余裕がなくて、
彼女はただただ楽しんでいるように見えます。
 
父親からのプレッシャーたるや凄まじいものだったでしょうが、
生活のために描かねばならぬこともトーベは理解しているようで、
ひどく反抗的になることはありません。
ぼちぼちとムーミンの絵を描き、それを父親に蔑まれてもスルー。
 
時代が近くて国が同じだからか、『トム・オブ・フィンランド』(2017)を思い出します。
トウコ・ラクソネンがつらい人生を送ってきたのは明らか。
同性愛が法律で禁じられていたのですから、トウコにとっては茨の道。
バイセクシュアルのトーベもその道を歩いてきたかもしれないけれど、奔放さに救われる。
 
今もいてくれてありがとう、ムーミン。

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