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『愛について語るときにイケダの語ること』

『愛について語るときにイケダの語ること』
監督:池田英彦
 
ずっと気にはなっていました。だけど、ものすごくキツそうじゃないですか。
だいたい、ナナゲイやシアターセブンの上映作品はキツイものが多いんです(笑)。
観たことを後悔しないだろうかと思いつつ、シアターセブンへ。
結果、観てよかった。
 
監督の池田英彦(故人)は四肢軟骨無形成症という生まれつきの障害を抱えていました。
これは通称小人症と呼ばれ、成長軟骨の異常によって低身長だったり、
四肢や指の短さだったりが引き起こされる病気です。
この障害を持って活躍する俳優もいて、代表格はピーター・ディンクレイジでしょう。
 
40歳を前にスキルス性の胃癌の宣告を受けた池田さんは、
残りの人生でやりたいことをやると決意。
そのうちのひとつがセックスで、しかもそれを記録として収めようとします。
風俗を利用してはカンパニー松尾監督さながらのハメ撮りを敢行。
 
そして彼は、20年来の友人である脚本家の真野勝成さんに連絡を取り、
闘病生活の中で撮った映像素材を基にして、
自身の死後に映画として完成させてほしいという遺志を伝えます。
 
身長は112cmですが、イケメンなんです(私のタイプではないけれど(^^;)。
スポーツカーに乗り、オシャレな帽子も似合う知的なメガネ男子
神奈川の市役所に勤務して、その体躯以外、すべて理想的に持ち合わせていると言えます。
 
しかしその体躯ゆえ及び腰になるのか、本当に愛した女性がいない。
同棲までした彼女のほうは結婚も視野に入れていたのに、彼のほうに踏ん切りつかず。
そんな彼が望むもうひとつのことは純愛。
紹介された女性と擬似純愛のためにデートをする様子も収められます。
 
遠くない日に死ぬことがわかって撮っていると思うとつらい。
でも彼はこんなにも落ち着いていて、やりたいことをやっている。
勃てば生きていることが実感できる。なんかすごく切ない。
 
真野さんとの会話は本当に楽しげ。
初体験はいつだったのかと尋ねられた池田さんは、「それ聞く!?」と少し照れたふうに、
大学生のとき、わざわざ名古屋まで出向いて風俗に行った話をして答えます。
近所のお店に行くのはなんとなく恥ずかしかったらしく(笑)。
好みの風俗嬢を指名したかったところ、自分を見たら拒否されるかもしれないと、フリーで入店。
やってきた風俗嬢に嫌じゃないかと尋ねたら、「だって、同じ人間でしょ」と言われたとか。
 
生まれつき手足が短いということを除けば同じ人間。
癌で闘病生活を送っているのだって、別に変わったことではない。
余計に大変というわけじゃないのですよね。
こんな体に生まれてきたことを呪うどころか、
もしもこんなイケメンで体型まで恵まれていたら、
いけ好かない奴になっていたかもと自分で言う池田さん、すごくないですか。
 
あなたが自由に生きていた証、しかと見ました。

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『エッシャー通りの赤いポスト』

『エッシャー通りの赤いポスト』
監督:園子温
出演:藤丸千,黒河内りく,モーガン茉愛羅,山岡竜弘,小西貴大,上地由真,
   縄田カノン,鈴木ふみ奈,藤田朋子,田口主将,諏訪太朗,渡辺哲,吹越満他

シアターセブンから第七藝術劇場へ移動。
その間に遅めのお昼ごはんを食べようと、向かいの“和食がんこ十三総本店”へ行ったら満席。
致し方なく通りを渡って“松のや”でロースカツとエビフライの定食を食す。
女ひとりで食べに来ている客なんてほかにおらんな(笑)。
 
園子温監督がワークショップを開催。
応募者697名から参加者51人を監督自身が選抜し、全員が出演する作品を撮り上げました。
146分という長尺ですが、その長さを感じさせない青春群像劇です。
こんな作品も撮る監督なのだということを忘れかけていました。とても良かった。
 
カリスマ映画監督の小林正(山岡竜弘)は、次作『仮面』の出演者を公募すると宣言。
助監督の三井丈(小西貴大)をはじめとするアシスタントたちはそのビラを配る。
応募はいまどき郵便のみで受け付け、インターネット等の受け付けは無し。
 
この情報に嬉々とする面々。
地元で劇団を立ち上げている女性陣や、小林監督を崇める信者集団、
役者を夢見ていた夫を亡くした切子(黒河内りく)、
自殺した父親の遺体としばらく暮らしていた安子(藤丸千)などなど。
 
書類審査合格の知らせを受けた応募者らは喜ぶが、実は全員合格。
オーディション会場に訪れた面々の審査が始まるのだが……。
 
小林監督は初心に戻って映画を撮りたいと思う。
だからこうして自身が面接に臨み、出演者を選抜しようとしているのに、
渡辺哲演じるスポンサーは、諏訪太朗演じるプロデューサーに圧力をかけ、
自分が目をかけているお色気女優(縄田カノン&鈴木ふみ奈)を起用させようとします。
弱みを握られているプロデューサーは断れずに、
あの手この手で監督にその女優たちを使わせようとするんですねぇ。
 
あながちフィクションじゃないのでしょう。
こうしていま園監督が本作を撮ったのも、こんなしがらみを忘れて、
本当に自分の撮りたいものを撮ろうとしたのだと邪推してしまいますよね(笑)。
『愛のむきだし』(2008)や『冷たい熱帯魚』(2010)を思い出させるシーンもあるからなおさらのこと。
 
オーディションに落ちた面々が、悔しいからとエキストラに応募して押し寄せます。
エキストラの中には田口主将演じる老人のようにエキストラを極めたい者もいれば、
やがてここから抜け出して役者になりたいと思っている者もたくさんいる。
たかがエキストラ、されどエキストラ。
エキストラ役で出演している吹越満も笑わせてくれます。
 
凄絶な人生を送ってきた登場人物がいるのはさすがに園監督ですが、
どこにでもこうして郵便ポストがあって、勇気を出して投函するかどうかで人生が変わるのかも。
いや〜、面白かった。そして元気もらえた。

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『終わりの見えない闘い 新型コロナウイルス感染症と保健所』

『終わりの見えない闘い 新型コロナウイルス感染症と保健所』
監督:宮崎信恵
ナレーション:益岡徹
 
年末、あまりの寒さに電車で出かけるのが嫌になり、
車で行っても駐車場代が安い十三で映画を観ることに。
まずはシアターセブンにて本作を鑑賞。
 
新型コロナウイルスの襲来で、逼迫した医療の現場はよく取り上げられますが、
病院に比べて保健所の模様はそれほどクローズアップされていません。
本作は2020年の初夏から2021年3月にかけての約10カ月間に渡って保健所に密着取材。
保健師や保健所職員たちの奮闘を描いています。
 
これまで私が持っていた保健所のイメージは、野良犬や野良猫を見つけたら連絡するところ。
今は野良犬なんてほとんど見かけない時代だから、
何らかの事情で飼い主を失った犬や猫が殺処分されるところ。
今はコロナに感染したら連絡するところだけど、
だからってなんとかしてもらえるところだとも思っていませんでした。
酷い認識です。すみません。
 
ひたすら増え続けるコロナ感染者。
鳴り続ける電話に応対するため、24時間休みなく働く職員たち。
各地から応援に来ている保健師や医師もいます。
 
PCR検査を受けた人の陽性が判明すると、即連絡を取ろうとしますが、
相手になかなか連絡がつかなかったりする。
むなしく響く電話のコール音に「居てよぉ、陽性なんだから」。
在宅で治療を望む患者に入院を促すと、「枕が替わると眠れない」という相手。
観ている私は「んなこと言うてる場合ちゃうやろ」と思うわけですが、
「そっか、じゃあ枕だけ持って病院へ行こうか」とどこまでも優しい。
 
感染者は家族のうち無職の夫で、家計は妻が支えている。
夫は妻には感染を伏せておきたいと思っている。
また、感染した事実を知られたら派遣の契約を切られることを心配する人も。
入院が決まっても自宅の前まで迎えに来られると困る人も大勢いる様子です。
 
入院治療を進める場合がある一方で、もう寿命が近いと思われる高齢者が感染すると、
本人と家族が望むように、家に帰してあげる方法を模索する。
 
感染者は日本人だけではないから、外国人の相談にも応対し、
コロナのみならず、ビザの取得などについてもアドバイスします。
なんとも大変な仕事に頭の下がる思い。
 
一時と比べて保健所の数が半数以下になっているという事実にも驚きました。
ようやく収まりかけたと思っていたらまた変異株の出現。
皆さんの心身が休まる日が来ますように。

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『ただ悪より救いたまえ』

『ただ悪より救いたまえ』(英題:Deliver Us from Evil)
監督:ホン・ウォンチャン
出演:ファン・ジョンミン,イ・ジョンジェ,パク・ジョンミン,
   パク・ソイー,チェ・ヒソ,白竜,豊原功補他
 
冬休み初日、テアトル梅田で『私はいったい、何と闘っているのか』を観たあと、
梅田ブルク7へ移動して本作を鑑賞。
北新地でのひとりディナーまでの空き時間にピッタリだという理由のみで選びましたが、
さすがファン・ジョンミンイ・ジョンジェ、面白かったぁ。
 
凄腕の暗殺者インナムは引退を決意、最後の仕事を引き受ける。
それは東京で悪の中の悪、ヤクザのコレエダ(豊原功補)を殺害することで、難なく完遂。
ところがコレエダの葬式にならず者のレイ(イ・ジョンジェ)が参列していたことを知る。
実はコレエダは在日コリアンでレイとは兄弟。
怒りに燃えるレイは、インナムを見つけ出して復讐しようとする。
 
また、インナムのかつての恋人ヨンジュ(チェ・ヒソ)がバンコクで殺されたことも知る。
しかもヨンジュにはユミン(パク・ソイー)という娘がいて、何者かに連れ去られたらしい。
ユミンは9歳、もしやそれは自分の娘ではないかと考えるインナム。
 
手がかりを探しながら東京から韓国へ、そしてタイへと飛んだインナムは、
ニューハーフのユイ(パク・ジョンミン)にガイドを頼み、ユミンの行方を探す。
レイも手下を総結集して血眼になりながらインナムを追ってきて……。
 
つらい話です。人身売買がこうも簡単におこなわれているのかと思うと。
現在ダンナはタイに駐在中ですが、本作を観ると、バンコクが途轍もなく怖い場所に思える(笑)。
児童をかっさらってきて臓器を取り出し、売買する。
現地の子どももそんな目に遭うけれど、それよりも韓国人の子どもの臓器が高く売れるとか。
警察は闇組織からしっかり賄賂をもらっていて、このような蛮行にも見て見ぬふり。
 
レイ役のイ・ジョンジェの鬼気迫る演技が怖すぎる。
彼が『イカゲーム』に出演しているとはつゆ知らず。そりゃ観なくっちゃ、『イカゲーム』も。
 
重苦しい空気の中、パク・ジョンミン演じるユイが笑わせてくれます。
インナムが死ぬわけないと思って安心して観ていたのに、マジか。(T_T)
でもユイがついてくれていたならば大丈夫でしょう。あ、ネタバレすみません。

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『私はいったい、何と闘っているのか』

『私はいったい、何と闘っているのか』
監督:李闘士男
出演:安田顕,小池栄子,岡田結実,ファーストサマーウイカ,SWAY,金子大地,
   菊池日菜子,小山春朋,田村健太郎,伊藤ふみお,伊集院光,白川和子他
 
「今年観た映画50音順」を開始した後、旧年中に観た作品をしばらくはUPします。
本作は仕事納めの翌日、冬休み初日にテアトル梅田にて。
 
原作はお笑い芸人つぶやきシローの同名小説。
予告編を観たときはバカバカしくて笑える話だろうと思っていましたが、
なかなかどうして、数箇所に渡って涙が頬を伝いました。マスク濡れるがな。(^^;
 
スーパーマーケット“ウメヤ”に勤める45歳の伊澤春男(安田顕)は、万年主任ではあるものの、
店長の上田(伊集院光)から頼られる存在で、従業員たちの人望も厚い。
 
一方、家庭での彼は空回りしっぱなしだが、しっかり者の妻・律子(小池栄子)が切り盛り。
長女・小梅(岡田結実)、次女・香菜子(菊池日菜子)はいずれも美人で優しく、
末っ子でデブの長男・亮太(小山春朋)もユーモアたっぷりの可愛げのある奴。
 
ある日、上田店長が急逝し、次期店長は春男で間違いなしと誰もが噂する。
ついに昇進だと本人も家族も高揚を隠せないが、
本社の経理部にいたという西口(田村健太郎)が新店長として就任して……。
 
こんなに美人で年頃の娘たちが、冴えない父親に何故ここまで優しいのか。
ネタバレになりますが、ふたりとも春男の実の子どもではありません。
沖縄出身の律子はかつて地元の男とつきあっているときに身ごもり、
そのとき相手に逃げられたというのに、再会してまた妊娠、そしてまた逃げられました。
傷心の彼女と出会ったのが春男で、彼は何もかも承知のうえで律子と結婚。
じゃないと娘たちが父親をこれほど持ち上げるのは変だとは言わんけど。(^^;
 
本当に良い家族なのです。
頼りない父親をみんなで見守り、勇気づけて、盛り立てる。
その理由は、このお父さんがいなければどうしようもなかったと、
長男を除く全員がわかっているからなのですね。
 
スーパーでただひとり春男に冷たい従業員、高井役のファーストサマーウイカが素晴らしい。
彼女が異動する春男に贈った言葉は、
「努力しても報われない奴はいる。ただ、成功した奴は必ず努力している」。
長州力の名言だそうな。私も覚えておこう。
それと、春男がたまに寄る食堂のマダム役に白川和子
彼女の台詞は「それだけ食えりゃ大丈夫さ」3回と「それだけ叫べりゃ大丈夫さ」1回のみ。
そうだよね、いくら落ち込んでいたとしても、それだけ食えりゃ、人間大丈夫。

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