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『ノイズ』

『ノイズ』
監督:廣木隆一
出演:藤原竜也,松山ケンイチ,神木隆之介,黒木華,伊藤歩,渡辺大知,酒向芳,迫田孝也,鶴田真由,
   波岡一喜,菜葉菜,諏訪太朗,大石吾朗,飯島莉央,寺島進,余貴美子,柄本明,永瀬正敏他
 
予告編が大嫌いでした。「誰がノイズかな」という女性の歌声が流れるところが。
普通に歌えばいいものを、どうしてこんなおどろおどろしげに歌うのか。
薄気味悪さを醸し出そうとしているのでしょうが、耳栓をしたくなるほど嫌でした。
 
が、映画自体は面白そうでしたからね。
まさか劇中であの歌が流れることはないだろうと、109シネマズ箕面にて。
はい、流れませんでした。ほっ(笑)。
 
原作は集英社発行の漫画雑誌『グランドジャンプ』に掲載された筒井哲也の同名コミック。
監督は廣木隆一で、私の中の作品イメージは瀬々敬久監督や三木孝浩監督と近い。
 
過疎に悩む孤島“猪狩島”。
救世主となりそうなのは、幼い頃からこの島に住む泉圭太(藤原竜也)。
幼なじみの妻・加奈(黒木華)と結婚して農園を営む圭太は、黒イチジクの栽培に成功。
おかげで特別交付金も貰えそうだと町長・庄司華江(余貴美子)はほくほく顔。
 
ある日、圭太とその親友・田辺純(松山ケンイチ)は、島をうろつく怪しげな男(渡辺大知)と揉み合いになり、
圭太が男を押しのけたところ、はずみで男は転倒、頭を強打して死亡する。
その場に居合わせた新米警官・守屋真一郎(神木隆之介)は、今こそ町を守らねばと思い、
つい「すべてなかったことにしよう」と言ってしまう。
 
その後、死んだ男の名前は小御坂睦雄で、かつて本土で幼女殺人事件を起こした犯人だと判明。
そんな奴はいなくなっても誰も探しに来ないだろうと、隠し通せると考えた圭太たちだったが、
県警から2人の刑事(永瀬正敏伊藤歩)がやってきて……。
 
以下、ネタバレ全開です。
 
嘘をつき通すのって大変ですね。
特に人と人との結びつきが強い小さな町では、住民が住民を守らざるを得ません。
ほぼ全員共犯者というのは『99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE』と同じ。
 
刑期は終わっているとはいえ、島にやってきたよそ者はおぞましい殺人犯。
死んだっていい奴だし、死んでいれば何も心配することはない。
だから刑事もこれ以上調べずにとっとと立ち去ってほしいのに、
永瀬正敏演じる刑事といったら、もうしつこいのなんのって(笑)。
 
彼以上に嫌な人間だったのは、余貴美子演じる町長。
小御坂が圭太に殺されたのを知ったうえで、圭太はこの町の星だから、
純なり真一郎なりが罪をすべてかぶればいいと言い切る非情さ。
 
ぼけが進んでいたはずが町の未来をいちばん考えていたかもしれない老人(柄本明)、
老人の息子(酒向芳)とその嫁(菜葉菜)、町長の側近(迫田孝也)、
特別交付金の交付が妥当かどうか調査に来る超軽いお役人(波岡一喜)、
町唯一の病院の医者(大石吾朗)などなど、実にバラエティ豊かなキャストです。
善人だったせいであっちゅうまに殺された諏訪太郎は気の毒すぎて唖然。
 
町を守るためにここまでしなければいけなかった真一郎の死が切なすぎる。
そして想像していたとおりの純の思いと、
それをわかっていたと言う圭太に呆然としました。
 
廣木監督作品の中では骨太と言ってよいのではないかと思える作品でした。
ちなみに私は藤原竜也より松山ケンイチのほうがタイプです(笑)。
藤原竜也の泣き顔は美しくない。そして後味もよろしくない。(^^;

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『アダムス・ファミリー2 アメリカ横断旅行!』

『アダムス・ファミリー2 アメリカ横断旅行!』(原題:The Addams Family 2)
監督:コンラッド・ヴァーノン,グレッグ・ティアナン
声の出演:生瀬勝久,杏,二階堂ふみ,秋山竜次,堀江瞬,京田尚子,
     大塚明夫,森川智之,多田野曜平,ならはしみき他
 
日本全国で字幕版を上映しているのは2館のみ。
渋谷シネクイントとTOHOシネマズ梅田しかないやないかい。
いくら洋画は字幕で観る派だからって、
仕事帰りにこの字幕版を観るためだけに梅田までは行けません。
仕方なくTOHOシネマズ伊丹にて吹替版で手を打つ。
 
“アダムス・ファミリー”にまったく思い入れがないんです。
シリーズの何本かを観た記憶すらあやふや。
覚えているのはタリラリ♪タリラリ♪タリララッラララララッラララララ♪ヒュゥゥゥゥ♪の音楽だけ。
こういうときって眠気に襲われる確率高いんですが、大丈夫でしょうか。
 
もともとは1937年に発売された雑誌『ザ・ニューヨーカー』に掲載された一コマ漫画だと知る。へ~っ。
それが30年近く経ってからTVドラマ化され、さらにその後TVアニメとして登場。
1991年にはアンジェリカ・ヒューストンがモーティシアを演じて実写映画化。これはもちろん覚えています。
ウェンズデー役のクリスティナ・リッチが人気を博し、1993年には第2弾公開。
ヒットを飛ばして第3弾も制作するはずが、ゴメズ役のラウル・ジュリアが54歳で急逝したために頓挫。
そしてそして2019年、本作の前作となる新たなアニメ『アダムス・ファミリー』が作られたのでした。
 
……観てないよ私と思ったのに、一昨年しっかり観てましたがな、前作を。
そういえば思い出しました。しかも前作はちゃんと字幕版を観てるやん。
あれは“アダムス・ファミリー”じゃなくて“モンスター・ホテル”の続編だったと思っていたよ。
記憶って、ほんとに当てにならんもんだなぁ。ガックリ。
 
思春期まっただ中のウェンズデーは、両親や弟および学校への不満を膨らませる。
科学技術コンクールで誰にも負けない発明品を披露したのに、
学校は参加者全員を優勝とし、1等を決めようとしない。馬鹿げている。
 
そのコンクールを見ていたドクター、サイラス・ストレンジは、
ウェンズデーこそ自分の本当の娘だと主張し、アダムス家からウェンズデーを奪う計画を練る。
 
やってきたサイラスの使いの者を鼻で笑って追い返したゴメズとモーティシアは、
ウェンズデーを元気づけて家族の絆を取り戻そうと旅行を計画。
浮かない顔のウェンズデーを連れてキャンピングカーに乗り込むと、
アメリカ横断の旅へと出発するのだが……。
 
睡魔に襲われるかもとの懸念は当たり、序盤うとうとしました。
そもそも何の割引もない日に貯まったポイントで観ているから、寝てもいいと思っている(笑)。
記念すべき、今年初めて寝た作品かも。
 
が、ウェンズデーがサイラスを本当の父親だと考えて一家のもとを離れるところで覚醒しました。
ウェンズデーにフランケンシュタイン似の執事ラーチが同行し、
このふたりの旅のシーンで使われる音楽がとても楽しいんです。
オッサン暴走族軍団はモーターヘッドの曲に乗って登場し、リーダーの名前はレミーならぬロニー。
ラーチが突如ピアノを奏でながら歌いはじめるのはグロリア・ゲイナーの“I Will Survive”だし。
この曲、邦題は『恋のサバイバル』でしたよねぇ。ヘイヘーイ。
 
と、なかなか楽しい中盤以降は眠らずに鑑賞しました。
そうですか、ウェンズデーの吹替の声は二階堂ふみが担当しているのですね。
それはそれでよかったけれど、やっぱり観たいよ、字幕版。

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『テレビで会えない芸人』

『テレビで会えない芸人』
監督:四元良隆,牧祐樹
 
京都シネマにて、前述の『なん・なんだ』の次に鑑賞。
 
鹿児島出身の芸人、松元ヒロ。
かねてからいろんな人に「面白いよ」とYouTubeなどで観るように勧められていました。
しかしそこに時間は割かないまま月日が過ぎ、ようやく私にも観る機会が訪れたのは、
『誰がために憲法はある』(2019)が十三・第七藝術劇場で上映されたときでした。
こんなライブやっている人がいるのかと驚き、感動すらおぼえたものです。
 
そのヒロさんをもっと知るにはうってつけの作品がこれ。
もともとはテレビにもよく出ていた、というのかテレビに出たくて芸をしていたヒロさんが、
1990年代末にはテレビの世界から距離を置きはじめます。
歯に衣着せぬ政治風刺は規制が多すぎるテレビに向かない。
言いたいこと、言うべきことを言うため、ヒロさんは舞台の人になります。
 
テレビで会えない芸人に密着取材する作品を鹿児島テレビ放送が作る。
日の目を見ない可能性もあったでしょうが、こうしてしっかり劇場公開されて嬉しい。
 
舞台の様子、そこに至るまでの練習の風景、家族の話、どれをとっても面白い。
電車の中で優先座席に座ってスマホをいじる女子に注意した奥様と、
気まずそうなその女子をフォローするヒロさんの話には大笑い。
 
『こんな夜更けにバナナかよ』の映画版は私は好きになれなかったのですが、
ヒロさんが舞台で話す姿を見て、原作も読んでみようと思いました。
 
いつもニコニコ。でも言っていることは辛辣。
辛辣だけど、人格を否定するようなことはできるだけ言わないように心がける。
政治家についてはちょっと言っちゃうこともあるけれどと舌を出す。
 
永六輔や立川談志からも可愛がられていたヒロさん。
「(日本国憲法)9条を頼む」という永さんの遺言を守るため、「憲法くん」を演じ続ける。
「70年間、誰も殺さなかった。それが僕の誇り」という台詞は、聴くたびにジワッ。
 
舞台を観に行きたいですねぇ。

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『なん・なんだ』

『なん・なんだ』
監督:山嵜晋平
出演:下元史朗,烏丸せつこ,佐野和宏,和田光沙,吉岡睦雄,外波山文明,三島ゆり子他
 
晩はおそらく35年ぶり、京都のライブハウス“磔磔”へ。
お誘いいただいて大西ユカリと憂歌団の木村充揮を聴きに。
木村さんって今おいくつなのかと思ったら、来月68歳。
ということは、私がよく聴いていた頃は30代前半でいらっしゃったのですね。
そんな年齢のときからあんな酔っぱらいであんなダミ声であんな歌。凄いよ。
天使のダミ声とはよく言ったものです。確かに天使だわ。
 
そのめっちゃ楽しかったライブの前に京都シネマで映画を2本、まずは本作を鑑賞。
上映前にプロデューサー、寺脇研氏のご挨拶がありました。
寺脇氏は、本作の主人公夫婦と同世代の70歳。
それに対して山嵜晋平監督は40歳。スタッフは監督より年下の20~30代。
若い世代が撮る親世代はどんな感じなのでしょう。
 
小田三郎(下元史朗)と美智子(烏丸せつこ)は東京に暮らす熟年夫婦
結婚してまもなく40年が経とうとしている。
 
ある日、美智子が出先で交通事故に遭い、昏睡状態に陥っているとの連絡が入る。
文学教室に行くと言って美智子は出かけたのに、搬送されたのは京都の病院。
事情がわからず困惑しながら三郎は病院に駆けつける。
 
容体は安定しているというのに目を覚ます気配のない美智子。
三郎が彼女の所持品を確認すると、長年愛用していたカメラも含まれていた。
フィルムを現像に出してびっくり、そこには写っていたのはホテルとおぼしき場所で、
三郎の知らない同世代の男が被写体となっているではないか。
 
何が起きているのかをどうしても知りたい。
三郎は一人娘の知美(和田光沙)に美智子の浮気疑惑について話し、
ふたりは美智子の実家である奈良へと向かうのだが……。
 
夫・三郎のあまりの駄目駄目ぶりに失笑が客席に生まれることしばしば。
相方がやきもちを焼くほど実際にはモテないものなのでしょうが、
この夫婦の場合は「浮気は気のせい」ではありません。
美智子の浮気相手・甲斐田一雄(佐野和宏)を探し当てて問いただしてみれば、
ふたりが初めて出会ったのは53年前、再会したのは33年前で、
以来ずーっと不倫関係にあったというではないですか。三郎唖然(笑)。
 
三郎は憤りますが、知美は美智子の味方。
お母さんの気持ちがわかる、それにこれは浮気じゃなくて本気だとも言います。
もう三郎の立つ瀬はないうえに、自身に認知症の兆候が現れていることも感じている。
こういうとき、夫は、妻は、そして浮気じゃなくて本気の相手はどうするでしょう。
 
でもねぇ、玄関あがって「水」とだけ言うような奴はこんな目に遭いますよ(笑)。
社会的ステータスもそうだけど、男としての器の大きさが違いすぎる。(^^;
「オレの人生、なんなんだ」。アンタの人生、そんなもん。
 
いろんな立場から見ることができて面白かった。

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『スティルウォーター』

『スティルウォーター』(原題:Stillwater)
監督:トム・マッカーシー
出演:マット・デイモン,アビゲイル・ブレスリン,カミーユ・コッタン,
   リル・シュヴォ,イディル・アズーリ,ディアナ・ダナガン他
 
TOHOシネマズ西宮で4本ハシゴの〆。
21:10の上映開始時点でへろへろでしたが、これがまた超面白くて。
奇跡的に4本ともまったく眠気に襲われず。
 
“スティルウォーター”が地名だとは知りませんでした。
と思ったら、偶然読んでいた『償いの雪が降る』に出てきたのがまさにそこで。
 
アメリカ・オクラホマ州スティルウォーターに暮らす肉体労働者ビル。
油田の閉鎖で職を失い、今は建設現場で日銭を稼いでいる。
 
彼の一人娘アリソンは現在フランス・マルセイユの刑務所にいる。
留学していた彼女は、ルームメイトのリナを殺害した容疑で有罪になり、5年前から服役中。
面会に訪れたビルにアリソンは無実を訴え、弁護士に再調査を依頼してほしいと言う。
しかし、弁護士は再調査の価値はないとビルを追い払う。
 
娘からの信用は皆無のビルは、弁護士に追い返されたことをアリソンに告げられず、
代わって自分が真犯人を見つけることを決意。
金はない、言葉も通じない異国の地にしばらく滞在するのだが……。
 
娘の信用がない理由は途中で明かされますが、妻を喪った後の彼は酒浸り。
アリソンの世話は亡き妻の母親シャロンに任せっきりで、
父親らしいことは何ひとつしてきませんでした。
今は断酒して娘のためになりたいと思っていますが、なかなか。
 
そんな彼に手を差し伸べるのは、シングルマザー舞台女優ヴィルジニー。
『ハウス・オブ・グッチ』でパトリツィアから追い出された女性パオラ役だった、
フランス人女優のカミーユ・コッタンが演じています。
彼女の娘マヤ役のリル・シュヴォがこのうえない可愛らしさ。
このふたりが荒んだビルの心を解きほぐしていきます。
 
アリソンを演じるのは子役から着々とキャリアを伸ばしているアビゲイル・ブレスリン
あの可愛らしさはもうなくて(笑)、ちょっとおばちゃん化しているふうですらありますが、
この役にはまぁ合っていたかなぁ。
 
真相は如何に、という面白さもありますし、
スティルウォーターからマルセイユへとやってきてまた戻ってゆくビルの、
その心情は計り知れないものがあります。
マルセイユの公営住宅は『レ・ミゼラブル』(2019)のそれを思い出して怖いぐらいでした。
タクシーの運転手に行き先を告げて「正気か」と言われるような場所って、日本にもありますか。
 
幸せな話ではない。
でもしみじみと噛みしめたい物語です。

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