MENU
ChatGPT-Image01
ChatGPT-Image02
ChatGPT-Image03
ChatGPT-Image04
ChatGPT-Image05
previous arrow
next arrow

2022年3月に読んだ本まとめ

2022年3月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3098ページ
ナイス数:729ナイス
■あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇(時代小説文庫)
なぜかこれが最終巻だと思い込んで最後まで読みました。先に読了した人から「安心して読めるよ」と聞いていたから、さすがに最終巻は悪いこと何も起こらず心穏やかにいられるのだなぁなんてニコニコしながら。常に身構えていないとどんな苦境に立たされるかわからないのが高田先生のシリーズ。でも、本巻ではムカつく音羽屋忠兵衛と結の名前が申し訳程度に出てくるのみで迫力なし。結とは和解しないまま終わるのね。でもええわ、あんな奴。そう思ったのに。えっ、まだ終わらないんですか。ということは次ぐらいに来ますかね、ドッカーンと。ひぃぃ。
読了日:03月04日 著者:高田 郁
■下着の捨てどき (文春文庫 ひ 20-12)
そうなんですよ。下着の捨てどきってすごく悩むんです。下着代に糸目をつけずにいつでも勝負下着を身につけているような人はいざ知らず(笑)。十年以上経っても、確かにへたっちゃいるがまだ使えるよねぇ、てなものばかり。特にブラジャーは、盛ることさえ意識しなければ、ビヨンビヨンになろうとも使えるんですってば。というような気持ちから、スルーできないタイトル。老いてゆくことを悲観せずにしみじみ優しい気持ちで見つめたくなるエッセイ。映画の話も見逃せないけど、やはり食べ物の話に目が行きます。食い意地は歳をとっても収まらない。
読了日:03月07日 著者:平松 洋子
■群青の魚 (光文社文庫)
登場人物がとりわけ多いわけではなかろうに、かなり頭がこんがらがります。所轄の刑事と交番勤務の警察官ら、似たタイプが入り乱れるうえに半グレ集団の幹部も混じり、各々の行動が描かれるから、アンタはどこのモンでしたかと聞きたくなる。肩入れしたくなるキャラの人もほぼいないけれど、とても面白かったのは確か。事の顛末が気になってやめられません。舞台は特別養護老人ホーム。認知症の老人が殺されて、容疑者も認知症。想定以上に大がかりで嫌な話。介護職は重労働で低賃金の一方で、老人を喰いものにして楽して稼ぐ輩がいる。どうなのさ。
読了日:03月10日 著者:福澤徹三
■デジタルリセット (角川ホラー文庫)
還暦を過ぎてから作家デビューした方らしく、沼田まほかるの上を行く。何事も始めるのに遅すぎることはないんだなぁ。誰もが見惚れてしまうようなイケメンのシリアルキラー。彼が現在の勤務先から姿を消す中盤以降、いきなりハードボイルドの様相を呈してきます。彼の気持ちは想像するしかないのがちょっと物足りなくもあり。何もかもデジタルで評価しておいて、取引先との関係には忖度せよというのは理不尽なような。5回アウトで抹消されるなら世界から誰もいなくなる。何でも効率化を最重要視していたら、彼のような人が生まれるかもしれません。
読了日:03月14日 著者:秋津 朗
■めぐり逢いサンドイッチ (角川文庫)
食べ物がらみの小説を書くのってニッチだなぁと思います。ビストロだったりお弁当屋さんだったり、各種スイーツもあったりして、さまざまなお店を舞台にした小説がすでに存在しているから、入り込む隙を探すのが大変。でもニッチを上手く見つけられたらその時点で成功。シリーズとしていくらでも続けられるし。サンドイッチとちょっとした謎。ミステリーというほどではないけれど、食に関する思い出は、他人には想像できないほど大切なものかもしれません。苦い気持ちもサンドイッチを通じて変わる。ツナとレンコンとコロッケサンド、お願いします。
読了日:03月15日 著者:谷 瑞恵
■看守の流儀 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
映画の世界では看守による受刑者への虐待なども見かけますが、もちろんそんな看守ばかりではないわけで。出所する彼らをこんなふうに送り出そうとする看守の姿に心を掴まれました。確かに最後は唖然。人の思い込みって困ったもの。でももしそれがなかったとしても大満足の1冊。というのか、その驚きは別になくてもよかったか。だって私の頭の中にはすっかり訳あり傷ありイケメン刑務官ができあがっていましたから(笑)。『このミス』関連は好きじゃない場合もあるけど、これは好き。「どうりで」が「どおりで」になっていた点だけ残念でマイナス。
読了日:03月20日 著者:城山 真一
■ママがやった (文春文庫)
このボリュームですし、「ママ」と呼ばれるにふさわしそうな若い母親が何かやらかす軽めのイヤミスかと思って読み始めました。予想は冒頭で裏切られます。傘寿を迎えようかという居酒屋の女将が、7歳下のモテモテ亭主を殺す。母親から電話を受けた娘や息子が大集合。各々の人生が語られる章仕立てで、池上冬樹の解説どおり、まさしく純文学の世界。もしも井上荒野をお読みになったことがなくても、角田光代がお好きならハマると思います。ここまで耐えてなぜ殺す。ここまで耐えたから殺したか。女にだらしない人は睡眠中も気をつけましょう(笑)。
読了日:03月24日 著者:井上 荒野
■下町ロケット ヤタガラス (小学館文庫 い 39-6)
「頭に血が上る度」としては『空飛ぶタイヤ』や最初の『下町ロケット』には及びませんが、それでもじゅうぶんヒートアップ。これがフィクションだということを忘れて怒りに燃えます(笑)。肩書きが自分の力だと思っている人のなんと多いことよ。もちろんその肩書きを手に入れるための苦労はあったでしょう。でも、大きなものを作れるからって小さなものも作れるとは限らない。大人にものを教えることができても子どもには上手く教えられない人がいますが、幼児に上手く教える人ほど大人にも上手に教えたりしますよね。ふとそんなことを思いました。
読了日:03月28日 著者:池井戸 潤
■ふたつのしるし (幻冬舎文庫)
震災に絡めた話は偽善的に感じるときもあって、正直なところ少し苦手です。本作も大好きな作家だから買ったのに放置していました。でも5年経過して読んでみたら、いつもの宮下奈都でした。いわゆるアスペルガーが疑われそうな少年ハル。同じハルという呼び名を持ちながら、ハルとは対照的に才色に富む少女遙名。接点は何もないであろうふたりの1991年からの20年間がそれぞれ描かれ、震災で「しるし」を見つけます。もしもこの話が偽善的であったとしても、何も書かないより、何もしないより、偽善であってもするほうがいい。逢えてよかった。
読了日:03月30日 著者:宮下 奈都
■ルーヴル美術館の楽しみ方 (とんぼの本)
今月どうしてもあと1冊読みたいんだけど、と思ったのが31日の19時だった場合はどうすればいいですか。本棚に突っ込んだまま20年経っている本書を読むしかありません。私のこれまでの人生で、読んでほしいと誰かに勧めた回数が最も多い本は『超芸術トマソン』です。赤瀬川さんのそのトマソン的ものの見方は、ルーブル美術館へ足を運んでも変わらない。ここはパリのメインディッシュ。モギリ嬢について言及したり、流血している絵に注目したり、微笑みを探したり。芸術に疎くてもしっかり楽しめます。赤瀬川さんがもうこの世にいないのが残念。
読了日:03月31日 著者:赤瀬川 原平

—–

『愛なのに』

『愛なのに』
監督:城定秀夫
出演:瀬戸康史,さとうほなみ,河合優実,中島歩,向里祐香,丈太郎,毎熊克哉他
 
アップリンク京都で4本ハシゴの〆。
 
今泉力哉監督と城定秀夫監督がそれぞれ脚本を書き、
今泉監督の脚本で城定監督が、城定監督の脚本で今泉監督が撮るという試み。
R15+指定のラブストーリーを競作するプロジェクト“L/R15”の1本です。
 
今泉監督作品のファンなので、『猫は逃げた』のほうを先に観ました。
とてもよかったのですけれど、こっちのほうがもっとよかった。
城定監督の手腕によるところは大きいと思いますが、
私はやっぱり今泉監督の脚本が好きなのではないでしょうかね。
 
古書店を営む多田浩司(瀬戸康史)は30歳、独身。
かつてのバイト仲間・一花(いっか)(さとうほなみ)に告白してフラれてからずいぶん経つのに、
いまだに彼女のことが忘れられずにいる。
 
ある日、古書店にやってきた女子高生・矢野岬(河合優実)がおもむろに万引き
岬は逃げながら多田が追いかけてくるのを確認し、
息が上がって立ち止まった多田にミネラルウォーターのボトルすら差し出す。
 
やっと岬をつかまえて話を聴いたところ、
岬はかねてから多田に想いを寄せており、自分を認識してもらいたくて万引きしたらしい。
そしていかに多田のことを好きかを語り、「結婚してほしい」とまで言う。
 
女子高生とつきあうなんて下手したら犯罪で捕まる。
それに自分には忘れられない人がいるのだと多田は断るが、
岬は以降も足繁く古書店に通い、多田にラブレターを渡し続ける。
 
一方、一花は亮介(中島歩)という男との結婚を控え、式の準備に没頭中。
担当ウェディングプランナー・美樹(向里祐香)と亮介が浮気していることにも気づいておらず……。
 
この日ハシゴした4本中、3本はひとりで観ましたが、
最後の1本だったこれだけ、晩ごはんをご一緒する人も合流して鑑賞。
すでに後期高齢者である彼女に「R15+指定の映画やけど」と伝えたら、
「R指定の映画って生まれて初めて観るかも」とのこと。
R指定の映画っちゅうたってたいしたことありませんけど、簡単に言うと、
エロの部分では「女性の乳首が映るかどうか」がR指定になるかどうかの境目だと私は思っています(笑)。
 
そういう意味では『猫は逃げた』も本作も堂々のR指定作品。
さとうほなみと向里祐香、両者の脱ぎっぷりがとても良い。
でもエロだからと敬遠する人がいるとしたらもったいない、ユーモアに溢れる良作でした。
 
もっと歳の近いカッコイイ男子がおるやろに、わざわざ30のオッサンを好きにならなくても。
でも岬の恋心が可愛くて、多少強引なところも憎めなくて、ニッコリしてしまう。
多田は一花のことが忘れられないくせに、亮介の浮気を知った一花から
「同じことをしたいから、して」と言われて思いっきり怯みます。
「最悪だ」と言いながら事に及ぶ姿が滑稽でありながら痛々しくて、これも笑う。
 
笑いすぎやろと言いたくなる男性客にも引っ張られて笑ってしまったところ多数。
劇場内の雰囲気もとてもよかった。笑いが伝染する作品は大好きです。
 
『猫は逃げた』の主演のひとり、毎熊克哉が多田の友人としてゲスト出演。
また、あの逃げた猫カンタが本作にも古書店周辺をうろつく猫として出ています。
 
たぶん、今年の終わりになっても「よかったな~」と振り返る作品だと思う。
愛を馬鹿にするな。

—–

『焼け跡クロニクル』

『焼け跡クロニクル』
監督:原將人
 
アップリンク京都にて、3本目に観たのは本作。
ドキュメンタリーばかり続けて観るつもりはなかったけれど、
ハシゴするにはこれを観るしかありません。
 
原將人監督は東京のご出身ですが、京都にお住まい。
上京区のご自宅が2018年に火事で全焼しました。
本作中では出火の原因が不明のままとなっていましたが、
大正時代の古い建築で、漏電が起きたようですね。
 
何もかも煤と化してしまったものの、妻のまおりさん、長男の鼓卯くん、
まだ幼い双子の娘であるまみやちゃんとかりんちゃんは無事。
PCを取りに火の中に戻った原監督は上半身と顔に火傷を負ったもののなんとか快復。
 
近くの公民館の一室を借りることができ、そこに数日間寝泊まり。
不謹慎にも笑ってしまったのが、騒然とする火災現場での双子の娘たちの言葉。
幼いのに心配なのはお金のことで、「お金、あるよね?」。
そして「だけどね、私おなかがぺこぺこなの」。
どういうときでもおなかは減るもんですよねぇ。
 
長男と双子ちゃんはえらく歳が離れているなと思ったら、
間に妊娠7カ月で流産してしまった次男がいたとのこと。
焼け落ちてしまった自宅は危険だから近寄らないようにと注意されていたにもかかわらず、
原監督は後日何か拾えるものはないかと見に行きます。
するとまっさきに拾ったものが次男のお骨だったと。
 
家族全員の命があれば、こうしてなんとか立ち直れる。それに次男も一緒にいる。
完成した映画が、力となり支えとなってくれた人々への御礼。
あと、やっぱりいろいろ保険は掛けておかにゃあ駄目だなぁとシビアに思う。

—–

第94回アカデミー賞のもろもろ受賞作品について

ご存じのとおり、第94回アカデミー賞の授賞式が昨日おこなわれました。
ノミネートの対象は2021年の3月から12月にかけて公開された作品です。
 
こうして日本の作品が受賞したときは特に、友人知人から「あれ観た?」と聞かれます。
本ブログで探したけれど、見つけられないとも。
このブログのプロフィール欄の下、検索の窓をお使いいただくと簡単なのですが、
あいまい検索はできないため、一字ちがうだけでヒットしません。
でも前方一致検索はできますから、たとえば “『ドライブ” だとか “『パワー” というふうに、
始め二重括弧のみで閉じ二重括弧なし、中黒の前までで検索をかけてもらうと簡単です。
 
と書き始めたついでに、今回の主な受賞作の私の記載ページを挙げますけれど、
配信のみで未見の作品、先週末公開されたばかりで未見の作品があります。
 
主演男優賞:『ドリームプラン』のウィル・スミス
主演女優賞:『タミー・フェイの瞳』のジェシカ・チャステイン ←配信のみで未見。
助演男優賞:『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァー
助演女優賞:『ウエスト・サイド・ストーリー』のアリアナ・デボーズ
脚本賞:『ベルファスト』 ←先週末封切りで未見。
脚色賞:『コーダ あいのうた』
長編ドキュメンタリー映画賞:『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』 ←観る機会があったのにスルー。
衣装デザイン賞:『クルエラ』
 
短編ドキュメンタリー映画賞と短編映画賞、短編アニメ映画賞受賞作品は日本未公開。
いずれ配信で観られるかもしれませんね。
 
『DUNE/デューン 砂の惑星』は作曲賞のほか、音響賞、美術賞、撮影賞、編集賞、視覚効果賞も受賞しています。
受賞個数でいえば最多6冠なのに、監督としてはちょっと不本意でしょう。
でも裏方の皆さんにとってはとても嬉しい受賞だと思います。確かにワクワクする映像でした。
 
ノミネートされたものの受賞を逃した作品のうち、鑑賞済みで上記にないものはこちらに。
 
作品賞にノミネート:『ドント・ルック・アップ』
主演女優賞にノミネート:『ロスト・ドーター』のオリヴィア・コールマン
長編アニメ映画賞にノミネート:『ラーヤと龍の王国』
国際長編映画賞にノミネート:『ブータン 山の教室』
短編ドキュメンタリー映画賞にノミネート:『私の帰る場所』
メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネート:『星の王子ニューヨークへ行く2』『ハウス・オブ・グッチ』
衣装デザイン賞にノミネート:『シラノ』
 
てなところです。

—–

『クラム』

『クラム』(原題:Crumb)
監督:テリー・ツワイゴフ
 
アップリンク京都にて、前述の『夢みる小学校』の次に。
今年2度目の“おひとりさま”。まだ3月なのに場内ひとりがすでに2度目とは。
 
1994年のアメリカ作品をリバイバル上映中です。
プロデューサーとしてデヴィッド・リンチが名を連ねています。
 
確かに絵は見たことがあります。でもその作者の名前は知りませんでした。
1943年生まれ、ペンシルヴェニア州フィラデルフィア出身の漫画家ロバート・クラム。
1960年代のアンダーグラウンドコミックスの代表作家といえる人。
“フリッツ・ザ・キャット”は本人の望まぬ形で映画化されるもヒットしました。
 
彼自身に密着したドキュメンタリー作品です。
5人兄弟妹の次男で、妹たちは本作への出演を拒否したそう。
兄チャールズと弟マクソンにロバートが会いに行くシーンが頻出しますが、
なんとも歪んでいて正気とはいえない家族です。
 
チャールズは高校を卒業してから40代後半に至るこのときまで引きこもり。
精神安定剤を飲みつづけ、母親と同居しています。
一方のマクソンは家を出てひとりで暮らし、針の筵の上で毎日座禅を組んでいる。
チャールズにもマクソンにも絵の才能はあるようですが、どちらの絵もどことなく恐ろしい。
 
3兄弟が語るのは、暴君だった父親のもとで性的に抑圧されていたということ。
その影響がロバートの絵にも表れていて、大人気を博す一方、
LSDに手を出した後は卑猥で、特に女性に嫌悪感をもたらすもの。
また、差別主義者であることも作品からは見て取れるけれど、それを隠そうともせず、
なんというのか一事が万事、投げやりな態度なんです。
当時の評論家や漫画家、編集者の作品評も面白い。
 
“フリッツ・ザ・キャット”の映画版が気に入らなくて、
二度と映画に登場させられないように、主人公のフリッツを自作の中で殺した話が可笑しい。
しかもフリッツの殺され方がえげつなくて、ダチョウ女にアイスピックで刺されるという。(^^;
 
幸せとはいえない幼少期を過ごした彼が、
フィラデルフィアのヘイトストリートの街並みに文句を言いながらも住みつづけ、
やがて南フランスへと渡るまでの日々が綴られています。
 
観終わってから知りましたが、『アメリカン・スプレンダー』(2003)で、
ポール・ジアマッティ演じる主人公の友人役で出てくるのがロバートなんですね。
 
本作の完成後にチャールズが自殺したというテロップがあり、途轍もない喪失感に襲われる。
ロバートは存命。彼のことを現代のゴヤブリューゲルと称賛する批評家もいました。
いま彼はどこで何をしているのか。

—–