MENU
ChatGPT-Image01
ChatGPT-Image02
ChatGPT-Image03
ChatGPT-Image04
ChatGPT-Image05
previous arrow
next arrow

『焼け跡クロニクル』

『焼け跡クロニクル』
監督:原將人
 
アップリンク京都にて、3本目に観たのは本作。
ドキュメンタリーばかり続けて観るつもりはなかったけれど、
ハシゴするにはこれを観るしかありません。
 
原將人監督は東京のご出身ですが、京都にお住まい。
上京区のご自宅が2018年に火事で全焼しました。
本作中では出火の原因が不明のままとなっていましたが、
大正時代の古い建築で、漏電が起きたようですね。
 
何もかも煤と化してしまったものの、妻のまおりさん、長男の鼓卯くん、
まだ幼い双子の娘であるまみやちゃんとかりんちゃんは無事。
PCを取りに火の中に戻った原監督は上半身と顔に火傷を負ったもののなんとか快復。
 
近くの公民館の一室を借りることができ、そこに数日間寝泊まり。
不謹慎にも笑ってしまったのが、騒然とする火災現場での双子の娘たちの言葉。
幼いのに心配なのはお金のことで、「お金、あるよね?」。
そして「だけどね、私おなかがぺこぺこなの」。
どういうときでもおなかは減るもんですよねぇ。
 
長男と双子ちゃんはえらく歳が離れているなと思ったら、
間に妊娠7カ月で流産してしまった次男がいたとのこと。
焼け落ちてしまった自宅は危険だから近寄らないようにと注意されていたにもかかわらず、
原監督は後日何か拾えるものはないかと見に行きます。
するとまっさきに拾ったものが次男のお骨だったと。
 
家族全員の命があれば、こうしてなんとか立ち直れる。それに次男も一緒にいる。
完成した映画が、力となり支えとなってくれた人々への御礼。
あと、やっぱりいろいろ保険は掛けておかにゃあ駄目だなぁとシビアに思う。

—–

第94回アカデミー賞のもろもろ受賞作品について

ご存じのとおり、第94回アカデミー賞の授賞式が昨日おこなわれました。
ノミネートの対象は2021年の3月から12月にかけて公開された作品です。
 
こうして日本の作品が受賞したときは特に、友人知人から「あれ観た?」と聞かれます。
本ブログで探したけれど、見つけられないとも。
このブログのプロフィール欄の下、検索の窓をお使いいただくと簡単なのですが、
あいまい検索はできないため、一字ちがうだけでヒットしません。
でも前方一致検索はできますから、たとえば “『ドライブ” だとか “『パワー” というふうに、
始め二重括弧のみで閉じ二重括弧なし、中黒の前までで検索をかけてもらうと簡単です。
 
と書き始めたついでに、今回の主な受賞作の私の記載ページを挙げますけれど、
配信のみで未見の作品、先週末公開されたばかりで未見の作品があります。
 
主演男優賞:『ドリームプラン』のウィル・スミス
主演女優賞:『タミー・フェイの瞳』のジェシカ・チャステイン ←配信のみで未見。
助演男優賞:『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァー
助演女優賞:『ウエスト・サイド・ストーリー』のアリアナ・デボーズ
脚本賞:『ベルファスト』 ←先週末封切りで未見。
脚色賞:『コーダ あいのうた』
長編ドキュメンタリー映画賞:『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』 ←観る機会があったのにスルー。
衣装デザイン賞:『クルエラ』
 
短編ドキュメンタリー映画賞と短編映画賞、短編アニメ映画賞受賞作品は日本未公開。
いずれ配信で観られるかもしれませんね。
 
『DUNE/デューン 砂の惑星』は作曲賞のほか、音響賞、美術賞、撮影賞、編集賞、視覚効果賞も受賞しています。
受賞個数でいえば最多6冠なのに、監督としてはちょっと不本意でしょう。
でも裏方の皆さんにとってはとても嬉しい受賞だと思います。確かにワクワクする映像でした。
 
ノミネートされたものの受賞を逃した作品のうち、鑑賞済みで上記にないものはこちらに。
 
作品賞にノミネート:『ドント・ルック・アップ』
主演女優賞にノミネート:『ロスト・ドーター』のオリヴィア・コールマン
長編アニメ映画賞にノミネート:『ラーヤと龍の王国』
国際長編映画賞にノミネート:『ブータン 山の教室』
短編ドキュメンタリー映画賞にノミネート:『私の帰る場所』
メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネート:『星の王子ニューヨークへ行く2』『ハウス・オブ・グッチ』
衣装デザイン賞にノミネート:『シラノ』
 
てなところです。

—–

『クラム』

『クラム』(原題:Crumb)
監督:テリー・ツワイゴフ
 
アップリンク京都にて、前述の『夢みる小学校』の次に。
今年2度目の“おひとりさま”。まだ3月なのに場内ひとりがすでに2度目とは。
 
1994年のアメリカ作品をリバイバル上映中です。
プロデューサーとしてデヴィッド・リンチが名を連ねています。
 
確かに絵は見たことがあります。でもその作者の名前は知りませんでした。
1943年生まれ、ペンシルヴェニア州フィラデルフィア出身の漫画家ロバート・クラム。
1960年代のアンダーグラウンドコミックスの代表作家といえる人。
“フリッツ・ザ・キャット”は本人の望まぬ形で映画化されるもヒットしました。
 
彼自身に密着したドキュメンタリー作品です。
5人兄弟妹の次男で、妹たちは本作への出演を拒否したそう。
兄チャールズと弟マクソンにロバートが会いに行くシーンが頻出しますが、
なんとも歪んでいて正気とはいえない家族です。
 
チャールズは高校を卒業してから40代後半に至るこのときまで引きこもり。
精神安定剤を飲みつづけ、母親と同居しています。
一方のマクソンは家を出てひとりで暮らし、針の筵の上で毎日座禅を組んでいる。
チャールズにもマクソンにも絵の才能はあるようですが、どちらの絵もどことなく恐ろしい。
 
3兄弟が語るのは、暴君だった父親のもとで性的に抑圧されていたということ。
その影響がロバートの絵にも表れていて、大人気を博す一方、
LSDに手を出した後は卑猥で、特に女性に嫌悪感をもたらすもの。
また、差別主義者であることも作品からは見て取れるけれど、それを隠そうともせず、
なんというのか一事が万事、投げやりな態度なんです。
当時の評論家や漫画家、編集者の作品評も面白い。
 
“フリッツ・ザ・キャット”の映画版が気に入らなくて、
二度と映画に登場させられないように、主人公のフリッツを自作の中で殺した話が可笑しい。
しかもフリッツの殺され方がえげつなくて、ダチョウ女にアイスピックで刺されるという。(^^;
 
幸せとはいえない幼少期を過ごした彼が、
フィラデルフィアのヘイトストリートの街並みに文句を言いながらも住みつづけ、
やがて南フランスへと渡るまでの日々が綴られています。
 
観終わってから知りましたが、『アメリカン・スプレンダー』(2003)で、
ポール・ジアマッティ演じる主人公の友人役で出てくるのがロバートなんですね。
 
本作の完成後にチャールズが自殺したというテロップがあり、途轍もない喪失感に襲われる。
ロバートは存命。彼のことを現代のゴヤブリューゲルと称賛する批評家もいました。
いま彼はどこで何をしているのか。

—–

『夢みる小学校』

『夢みる小学校』
監督:オオタヴィン
ナレーション:吉岡秀隆
 
京都で晩ごはんを予約した日、朝から京都シネマで映画ハシゴを企図しました。
ところが京都シネマだとどうがんばっても鑑賞可能本数は3本。
アップリンク京都でなら4本観られる。アップリンクの会員になりました。
ちなみにアップリンク会員になると、平日は1,100円、土日祝日は1,300円で鑑賞できます。
 
“いただきます”シリーズのオオタヴィン監督の作品。
南アルプス子どもの村小学校に密着したドキュメンタリーです。
 
京都大学教育学部出身の堀真一郎さんがイギリスの自由教育を目にして、
こんな学校を作りたいと、和歌山にきのくに子どもの村学園を創設したのは1992年のこと。
大自然のなか、子どもたちの個性を尊重した教育をおこなう。
小学校は1年生から6年生までの縦割りで全学年児童が入り混じり、
算数や国語といった授業もなければ、宿題もテストもありません。
 
堀さんはその後、福井、山梨、福岡、長崎などに学園を創設。
そのうちの山梨県南アルプス市に作ったのが南アルプス子どもの村小中学校です。
 
こういった学校は正規の学校法人ではないと思いがちですが、
文部科学省の学校教育法にちゃんと準じています。
 
入学すると、子どもたちは5つのプロジェクトから好きなものを選ぶ。
そのプロジェクトは、クラフトセンター、むかしたんけんくらぶ、
おいしいものをつくる会、劇団みなみ座、アート&クラフト。
何かを作ったり表現したりすることで暮らしについて考える趣旨があり、
どこの子どもの村学園もプロジェクト名は違えども同様だと思われます。
 
学校教育の基本的な科目がないなんて。算数、要るでしょ。国語、要るでしょ。
そう思って訝っていたら、たとえば料理の材料の値段や重さを計算するし、
子どもたちが訪問したい施設に自ら電話をかけてアポイントメントを取るし、
とにかく大人社会で必要なことはたぶんすべて身につけているのです。
修学旅行の行き先を決めるのも子どもたちで、必要経費の計算ももちろん自分たちで。
1万円を「安っ!」という小学生にはちょっと引きますが。(^^;
 
素晴らしいとは思います。
でも自分が子どもだったとして、この学校に行きたいかと聞かれたら迷う。
 
ルールとは何だろう、決まりきったルールなんて要らないと言う。
でも、子どもたちが教室で寝そべったり床に座り込んだりしている姿に、
じっとしていなければいけないこともあるよねと思わなくもない。
 
職員室でも教室でも先生の膝の上に座る子どもたち。
そもそも「先生」という考え方はなくて、「先生」とも呼ばないそうですが、
誰かを師として崇める感覚はあるのだろうかとも思う。
 
脳科学者、作家、人類学者、尾木ママといった各界の先生方もインタビューで絶賛。
こんな学校ならそりゃ楽しいだろうと思うメリットしか語られません。
よい学校だと紹介したい作品なのですから当然のことですが、
デメリットがひとつも出て来ないとなると、いろいろ疑問に感じます。
 
いじめとかないのかな。ないんでしょうね。
でも、入学したものの馴染めないという子どももいると思うんです。
ここには馴染めた子どもしか出て来ませんし。
 
「普通」の学校でアスペルガーと診断された子どもたちが
この学校に救われた例も多いという談話もありました。
それも素晴らしいことだと思うけれど、もしも「普通」の場に戻ることがあるならば、
大丈夫なんだろうかという気持ちもあって、考え込んでしまいます。
「普通」になんて戻らなくてもいいわけですから、これはこれでいいかと思ったりも。
 
それはそうとして、いちばん大きな謎だったのはこの日の客。
家族連れで来られていましたが、幼児に本作が面白く映るはずもなく、
座っていられなくてドッタンバッタン。
それを横目にパパは鑑賞中にスマホを開くこと数回。
映画の上映中にスマホを見るのはあかんという「ルール」はどうなるんでしょ。
 
それと、校則や定期テストをやめたという世田谷区の中学校の元校長先生。
「校長をさせていただきました」は「校長を務めました」で良くないかい?
別の小学校のカリキュラム表に「ら抜き」があったのも気になりました。(^^;
 
こういう作品を意地悪な目で観てしまうのはよろしくないと思っています。
でも、いくら用意すれば入学できるのか、通学できるのか、
寮生活みたいなものを送っているのかどうかもまったくわからない。
入学を検討している人たち向けというよりは、
卒業生の皆さんが「いい学校だったよね」と再認識する作品のように思えます。

—–

『運命のイタズラ』

『運命のイタズラ』(原題:Windfall)
監督:チャーリー・マクダウェル
出演:ジェイソン・シーゲル,リリー・コリンズ,ジェシー・プレモンス,オマー・レイバ
 
2022年のアメリカ作品で、原題の“Windfall”は「棚ぼた」の意。
なんとセンスのない邦題だと思いましたが、同じ邦題の他作品が複数あるようですね。
真っ先にヒットするのは台湾のTVドラマ。
副題が「私たちは友達になれない」。なんかこっちのほうが面白そう。
 
2006年には『Windfall 運命のいたずら』というルーク・ペリー主演のTVドラマがありました。
これの劇場版というのかリブート作品なのかなと思いましたが、別物らしく。
ま、でも、この作品の邦題に倣ったと考えてもよさそうな。
 
さてさて、そのセンスのない邦題の本作は、先週Netflixにて配信が開始されました。
92分という短さに惹かれてドタバタコメディを想定して観はじめたところ、
なんだ、この冒頭の不穏な空気は。
流れる音楽も薄気味悪くて、楽しい映画鑑賞にならないことは確定(笑)。
 
避暑地の別荘で空き巣を働いていた男(ジェイソン・シーゲル)。
ハイブランドの腕時計、あちこちに隠された金、拳銃などを物色して盗む。
いざ退散しようとしたとき、表に停まる車の音。
 
降車してきたのはこの別荘の持ち主の富豪(ジェシー・プレモンス)とその妻(リリー・コリンズ)。
逃げることをあきらめて開き直った男は、夫婦を脅してさらなる金を要求する。
ところが要求額が少なすぎると富豪から鼻で笑われ、結局50万ドルもらうことに。
その額の金はここにはないから、従業員に連絡して明朝持って来させると富豪が言い……。
 
登場人物は上記の3人に加えて、別荘の庭師(オマー・レイバ)のみ。
犯人の男がたまたまこの別荘に泥棒に入ったのではないことや、
ラブラブだと思われていた富豪夫婦の間に何やら問題があったことなどがわかります。
気の毒な庭師が事故に等しい撃たれ方で亡くなったあとは揉める揉める(笑)。
 
さて、棚から落ちたぼた餅は誰の手に渡るのか。
でもこれは決して棚ぼたなんかじゃない。幸運というには不幸が多すぎる。
 
リリー・コリンズの眉がいつもながらすげぇな、可愛いけどと思うのでした。
その黒々とした眉の一部をぜひとも父フィル・コリンズに分けてあげてください。(^^;

—–