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『ツーアウトフルベース』

『ツーアウトフルベース』
監督:藤澤浩和
出演:阿部顕嵐,板垣瑞生,工藤遥,後藤剛範,渋川清彦,諸星翔希,渡部龍平,
   趙民和,宮崎秋人,成松修,佐野和真,新羅慎二,カトウシンスケ他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて、前述の『ナイトメア・アリー』の後に。
 
なんと、この夜の客も私ひとり。
3日前にアップリンク京都で“おひとりさま”だったのですけれど、
まさか週に2度も劇場ひとりで貸切状態になるとは。
 
どうしても観たかったわけではありません。むしろ観なくてもいいと思っていました。
でもこれを観ないと、今年に入って守ってきた毎月25本の劇場鑑賞が達成できなくなる。
渋川清彦以外、名前を聞いてもピンと来ない役者ばかり。
主演の阿部顕嵐板垣瑞生、どっちがどっちの役だったかわからんし、
ビッチなヒロイン役の工藤遥にしても、出演作を観ているわりに思い出せないのでした。
 
まぁいいや。25本を達成するためだし。タイトルがタイトルだし。
一応野球の話だろうと思って観はじめたけど、そうでもなかった。(^^;
脚本を担当したのは『ミッドナイトスワン』(2020)の監督、内田英治。
で、本作の監督は『歌謡曲だよ、人生は』(2007)で助監督を務めた藤澤浩和。
競技ダンス大会をテーマにした『レディ・トゥ・レディ』(2019)が面白そうだったのに、
昨年劇場で見そびれたままです。すみません。
 
イチ(阿部顕嵐)とハチ(板垣瑞生)は同じ高校の野球部出身。
甲子園を目指す強豪校だったが、その夢が破れて以来、自堕落な日々を送っている。
麻薬を買いたいのにその金がなく、イチの宝物であるレスポールを売ることに。
 
ヤバイものなら何でも用意してくれるアントニオ(新羅慎二)に連絡を取り、
レスポールと麻薬の交換してもらおうと待ち合わせ場所に向かう。
そのときふたりが乗り込んだアメ車は、不良先輩のヒロポン(後藤剛範)からハチが借りたもの。
 
ところが、ちょっとヨソ見運転をしていたら、
ヤクザのオニヘイ(渋川清彦)とその手下2名が乗る軽自動車にコッツン。
因縁をつけられて、アメ車を奪い取られてしまい……。
 
ごめんなさい、この後しばし眠ってしまったのです。(^^;
どうやら、野球部のマネージャーだった早紀(工藤遥)がクスリをほしいがために要らんことをして、
ヤクザのベンツをくすねたせいで、オニヘイは軽自動車に乗るハメになった模様。
オニヘイは早紀を追い、それに巻き込まれたイチとハチ。
ここに完全にイッているヒロポンも絡むわ、手柄を立てたい刑事も絡むやらで、
わやくちゃになりかけている辺りで完全に覚醒しました。
 
面白くないことはないと思うんですが、全体的に軽い。
そもそも最初にクスリが出てくる時点で嫌悪感。
ヤクだと思って吸っていたら小麦粉だったというシーンから始まりますが、全然笑えない。
暴力的なシーンも多くて凄惨。人もボコボコ死にます。
 
最後はイチとハチと早紀がしっかり生き残り、レスポールも返ってきて、
ハッピーエンドが待っているからいいんだけれど。
映画を観たなぁという感慨(!?)はありません。でもおかげで25本観られそうだから悔いはない(笑)。

—–

『ナイトメア・アリー』

『ナイトメア・アリー』(原題:Nightmare Alley)
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:ブラッドリー・クーパー,ケイト・ブランシェット,トニ・コレット,ウィレム・デフォー,
   ルーニー・マーラ,ロン・パールマン,メアリー・スティーンバージェン,デヴィッド・ストラザーン他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて、仕事帰りに2本ハシゴ。
その1本目はギレルモ・デル・トロ監督の最新作。
デル・トロ監督はここ5年間、『パシフィック・リム:アップライジング』(2018)をプロデュースしたり、
『魔女がいっぱい』(2020)の脚本を書いたりと、なかなかにご多忙ではありますが、
監督作となると『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)以来です。
 
本作は第94回アカデミー賞作品賞美術賞、撮影賞、衣装デザイン賞にノミネートされ、
無冠に終わってしまいましたが、私はデル・トロ監督の描く世界がやっぱり大好きです。
ただし、デル・トロ監督ファンならご存じのとおり、結構グロいし、暗い。
「映画慣れ」していない人で、楽しい作品を観たい人にはお薦めできません。
 
原作は1946年にアメリカで出版されたウィリアム・リンゼイ・グレシャムの同名ノワール小説。
“Nightmare Alley”とは「悪夢小路」という意味です。
 
1939年のアメリカ。
ブラッドリー・クーパー演じる主人公スタンが、遺体が入っているとおぼしき袋を床下に放り投げ、
その家に火をつけて立ち去るシーンから始まります。
 
列車に揺られてなんとなく降りた駅で、スタンは怪しげで華やかなカーニバルにたどり着く。
そこでは「獣人」と呼ばれる男が生きた鶏に食らいつくフリークショーが繰り広げられていた。
ショーの後、逃走を図った男をスタンがなんとか捕まえたところ、
カーニバルを仕切るクレムは、流れ者のスタンを使えると見て雇うことに。
 
スタンは千里眼の見世物を担当するジーナと親しくなり、
彼女のアル中の夫ピートから読心術のテクニックを学びはじめるが、ピートが急逝。
それを機に、電流ショーのヒロイン、モリーを連れて一座を抜け出す。
 
時は経ち、2年後。スタンとモリーはコンビを組んで大成功していた。
一流ホテルで金持ち相手に披露する読心術のショーは連日盛況。
ところがある日のショーで、客のうちのひとりである心理学者リリスから、
スタンの読心術はイカサマだと文句をつけられ……。
 
クレム役にウィレム・デフォー
カーニバルの芸人の中にはデル・トロ監督作品の常連、ロン・パールマンもいます。
リリス役にケイト・ブランシェット、モリー役にはルーニー・マーラ
スタンのカモとなる富豪エズラ役をリチャード・ジェンキンスが演じています。
 
怪しげな雰囲気がなんとも言えません。
ジーナから「幽霊ショーはやっては駄目。悪いことが起きる」と忠告されていたのに、
金に目がくらんでいるスタンはペテンを続けます。
人を騙すことに良心の呵責を感じるモリーが止めても気にしない。
 
結果、どんな結末を迎えるかは想像どおり。
想像どおりなのに、その結末が訪れたときのスタンの台詞が心に突き刺さりました。
 
この宿命を受け入れますか。
 
余談ですが、ブラッドリー・クーパーの起用が決まる前は、
レオナルド・ディカプリオに出演オファーが行っていたとのこと。
なるほど、それもありだったかなと思います。

—–

『アンビュランス』

『アンビュランス』(原題:Ambulance)
監督:マイケル・ベイ
出演:ジェイク・ギレンホール,ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世,エイザ・ゴンザレス,
   ギャレット・ディラハント,A・マルティネス,キーア・オドネル,ジャクソン・ホワイト他
 
イオンシネマ茨木にて『ヴォイジャー』を観た後、109シネマズ箕面へ移動。
月曜日からこんな過酷なハシゴをする必要があるのかと思いながら(笑)。
 
ところで「過酷」と「苛酷」ってどう使い分けるのでしょうか。
ついでに調べてみたところ、「過酷」を主に使う新聞が多いようです。
そこにさらに無慈悲なさまが加わると「苛酷」になるようで。
私のハシゴは別に誰に強いられたわけじゃなし、「過酷」で済みますね。
 
さて、本作はデンマーク映画『25ミニッツ』(2005)のリメイクなのだそうです。
監督はマイケル・ベイ。もう御大だと思っていたら、まだ57歳でした。
私が唖然とした『パール・ハーバー』(2001)は別として、
カネのかかったド派手な、エンターテインメント性の高い作品を撮るというのか、
エンターテインメント性しかない作品を撮る監督です。
 
海兵隊員のウィルには癌に罹っている妻とまだ赤ん坊の息子がいる。
妻に手術を受けさせるために保険を使いたいが、
戦争の英雄ウィルに対しても軍は冷たく、いつも電話を切られてしまう。
 
妻に心配をかけたくなくて、保険が下りることになったと嘘をついたウィルは、
金を工面するため、血のつながらない兄ダニーのもとを訪ねる。
 
20万ドルほど貸してほしいというウィルをダニーは鼻で笑い、
銀行強盗で3200万ドル稼げる話があるから協力せよと言う。
強く拒むウィルだったが、妻のことを思えば金を手に入れる方法はそれしかない。
 
数々の銀行強盗を成功させてきたダニーは今度も失敗しないはず。
ところが想定外のことが起こって失敗、追いかけられるはめに。
しかも、乗っ取った救急車には撃たれた警官ザックと救命士キャムが乗っていて……。
 
137分の大半が救急車とパトカーやヘリコプターの逃走・追走劇です。
 
前者は白人、後者は黒人で、ふたりの少年時代にダニーの父親がウィルと養子縁組し、
肌の色は違えども、とても仲の良い兄弟として共に育った様子。
そのおかげでウィルはいじめを受けることもなく、楽しく過ごしたふうです。
 
しかし、ふたりの父親は筋金入りの犯罪者でサイコパス
その血を引くダニーは、自分は父親とは違うと言いつつ、
父親の勧めで警察学校に通うなど、警察の戦略を熟知しています。
その学校で彼と友だちになったFBI捜査官も追走に加わり、
マイケル・ベイ監督らしくとにかく派手にぶっ飛ばす。
 
キャム役のエイザ・ゴンザレスは本作まであまり印象に残っていない女優でしたが、
これぐらい出突っ張りだとさすがに顔を覚えますね。
どんな怪我人も20分間は生かすけれどその後どうなろうが無視するという噂のクールビューティー。
でもこの事件が終わったとき、彼女の気持ちが動くシーンはよかったです。
 
現場の指揮を執るモンロー警部役のギャレット・ディラハント
最初は犯罪者側かと思われるようなチャラい服装だったり、
ダニーの父親と旧知の闇社会の大物パピ役のA・マルティネスもイカれていたりと、面白い役回り。
 
んで、やっぱりエンターテインメント性しかありません(笑)。
『ザ・ロック』(1996)だとか『バッドボーイズ2バッド』(2003)だとか、
自身の監督作の名前をしきりと出したがるのって、歳を取ったせいですか。(^^;
「エンターテインメント性しかない」って、結局イコール面白いんですけどね。

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『ヴォイジャー』

『ヴォイジャー』(原題:Voyagers)
監督:ニール・バーガー
出演:タイ・シェリダン,リリー=ローズ・デップ,フィオン・ホワイトヘッド,
   コリン・ファレル,シャンテ・アダムズ,アイザック・ヘンプステッド・ライト他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
あらすじを読んだときからビミョーな感じなうえに、タイ・シェリダンが別に好みじゃない。
批評家の評価は芳しくないらしく、「ありふれたSF映画」ですと。
コリン・ファレルが出演していなければスルーするところです。
彼目当てに観に行ったら、途中で死んでまうし(泣)。と、最初からネタバレ全開ですみません。
 
地球温暖化により、世界滅亡の危機は刻一刻と迫っている。
ようやく移住可能な惑星を見つけた人類は、探査隊を送り込むことに。
その惑星に到着しようとすれば86年という月日を要するから、
政府は3世代をかけて惑星を目指す計画を立てる。
 
まず第1世代として選抜されたのは、最初から宇宙船の乗組員となるべく、
人工授精でこの世に生を受けた子どもたち30人。
遺伝子工学を駆使して誕生した少年少女は揃いもそろって優秀。
彼らの世話役であり指導教官を務めているのがリチャード。
子どもたちは彼に懐き、絶大な信頼を置いている。
 
子どもたちだけを宇宙船に乗せて地球を出発するはずだったが、
リチャードは二度と地球に戻れないことは承知のうえで自分も乗船すると志願する。
 
10年が経過し、宇宙船が順調に航行するなか、船内で子どもたちも成長。
そのうちのクリストファーとザックが規則正しい生活にふと疑問を抱く。
ふたりで調べてみると、自分たちが毎日飲まされている水に薬が含まれていると判明。
その薬とは、人間の欲望を抑えるための薬だった。
反発したふたりはリチャードを信じられなくなり、薬の服用をやめる。
すると今まで抑えられていた欲望が次々に湧き上がってきて……。
 
欲望にもいろいろありますが、知識欲なんかは抑えられることがなく、
彼ら彼女らがこれまで持たずにいたのは、主に性欲とか食欲とか。
触れ合うことが禁じられていた船内で、触れたいという気持ちすら湧かなかったのに、
薬をやめた瞬間に目の前の異性に触れたくなる。
異性に限ったことではなく、クリストファーとザックは取っ組み合いを始め、
じゃれることの楽しさを知ります。
 
それだけならよかったのでしょうけれど、暴力をも楽しいと感じてしまう。
誰かを殴ること、支配すること、怯えさせること、それも面白くて仕方ない。
そちらに走ってしまうのがザックで、殺しも厭わなくなります。
みんな賢いはずなのに、子どもたちのほとんどがザックの側につき、
クリストファーとセラとごく一部の者だけが善き心を失わない。
 
観ていて気持ちのいい作品ではありません。ザック役の俳優が悪役面すぎて。
と思ったら、彼はフィオン・ホワイトヘッドではないですか。
『ゴヤの名画と優しい泥棒』であんないい子を演じていたのに。
ということは、上手い役者だということなのかしら。今後にも期待。
 
あと注目すべきはやはりセラ役のリリー=ローズ・デップでしょうか。
ジョニー・デップヴァネッサ・パラディの娘。もうお母さんにホントに瓜二つ。
 
鑑賞前の予想どおり、ニール・バーガー監督の作品はいつもビミョーです。
退屈はしないけど、めっちゃ良くもない。
何でもかんでも観る私みたいな人間は別として、1年に数本しか観ない人には薦めません。

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2022年3月に読んだ本まとめ

2022年3月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3098ページ
ナイス数:729ナイス
■あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇(時代小説文庫)
なぜかこれが最終巻だと思い込んで最後まで読みました。先に読了した人から「安心して読めるよ」と聞いていたから、さすがに最終巻は悪いこと何も起こらず心穏やかにいられるのだなぁなんてニコニコしながら。常に身構えていないとどんな苦境に立たされるかわからないのが高田先生のシリーズ。でも、本巻ではムカつく音羽屋忠兵衛と結の名前が申し訳程度に出てくるのみで迫力なし。結とは和解しないまま終わるのね。でもええわ、あんな奴。そう思ったのに。えっ、まだ終わらないんですか。ということは次ぐらいに来ますかね、ドッカーンと。ひぃぃ。
読了日:03月04日 著者:高田 郁
■下着の捨てどき (文春文庫 ひ 20-12)
そうなんですよ。下着の捨てどきってすごく悩むんです。下着代に糸目をつけずにいつでも勝負下着を身につけているような人はいざ知らず(笑)。十年以上経っても、確かにへたっちゃいるがまだ使えるよねぇ、てなものばかり。特にブラジャーは、盛ることさえ意識しなければ、ビヨンビヨンになろうとも使えるんですってば。というような気持ちから、スルーできないタイトル。老いてゆくことを悲観せずにしみじみ優しい気持ちで見つめたくなるエッセイ。映画の話も見逃せないけど、やはり食べ物の話に目が行きます。食い意地は歳をとっても収まらない。
読了日:03月07日 著者:平松 洋子
■群青の魚 (光文社文庫)
登場人物がとりわけ多いわけではなかろうに、かなり頭がこんがらがります。所轄の刑事と交番勤務の警察官ら、似たタイプが入り乱れるうえに半グレ集団の幹部も混じり、各々の行動が描かれるから、アンタはどこのモンでしたかと聞きたくなる。肩入れしたくなるキャラの人もほぼいないけれど、とても面白かったのは確か。事の顛末が気になってやめられません。舞台は特別養護老人ホーム。認知症の老人が殺されて、容疑者も認知症。想定以上に大がかりで嫌な話。介護職は重労働で低賃金の一方で、老人を喰いものにして楽して稼ぐ輩がいる。どうなのさ。
読了日:03月10日 著者:福澤徹三
■デジタルリセット (角川ホラー文庫)
還暦を過ぎてから作家デビューした方らしく、沼田まほかるの上を行く。何事も始めるのに遅すぎることはないんだなぁ。誰もが見惚れてしまうようなイケメンのシリアルキラー。彼が現在の勤務先から姿を消す中盤以降、いきなりハードボイルドの様相を呈してきます。彼の気持ちは想像するしかないのがちょっと物足りなくもあり。何もかもデジタルで評価しておいて、取引先との関係には忖度せよというのは理不尽なような。5回アウトで抹消されるなら世界から誰もいなくなる。何でも効率化を最重要視していたら、彼のような人が生まれるかもしれません。
読了日:03月14日 著者:秋津 朗
■めぐり逢いサンドイッチ (角川文庫)
食べ物がらみの小説を書くのってニッチだなぁと思います。ビストロだったりお弁当屋さんだったり、各種スイーツもあったりして、さまざまなお店を舞台にした小説がすでに存在しているから、入り込む隙を探すのが大変。でもニッチを上手く見つけられたらその時点で成功。シリーズとしていくらでも続けられるし。サンドイッチとちょっとした謎。ミステリーというほどではないけれど、食に関する思い出は、他人には想像できないほど大切なものかもしれません。苦い気持ちもサンドイッチを通じて変わる。ツナとレンコンとコロッケサンド、お願いします。
読了日:03月15日 著者:谷 瑞恵
■看守の流儀 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
映画の世界では看守による受刑者への虐待なども見かけますが、もちろんそんな看守ばかりではないわけで。出所する彼らをこんなふうに送り出そうとする看守の姿に心を掴まれました。確かに最後は唖然。人の思い込みって困ったもの。でももしそれがなかったとしても大満足の1冊。というのか、その驚きは別になくてもよかったか。だって私の頭の中にはすっかり訳あり傷ありイケメン刑務官ができあがっていましたから(笑)。『このミス』関連は好きじゃない場合もあるけど、これは好き。「どうりで」が「どおりで」になっていた点だけ残念でマイナス。
読了日:03月20日 著者:城山 真一
■ママがやった (文春文庫)
このボリュームですし、「ママ」と呼ばれるにふさわしそうな若い母親が何かやらかす軽めのイヤミスかと思って読み始めました。予想は冒頭で裏切られます。傘寿を迎えようかという居酒屋の女将が、7歳下のモテモテ亭主を殺す。母親から電話を受けた娘や息子が大集合。各々の人生が語られる章仕立てで、池上冬樹の解説どおり、まさしく純文学の世界。もしも井上荒野をお読みになったことがなくても、角田光代がお好きならハマると思います。ここまで耐えてなぜ殺す。ここまで耐えたから殺したか。女にだらしない人は睡眠中も気をつけましょう(笑)。
読了日:03月24日 著者:井上 荒野
■下町ロケット ヤタガラス (小学館文庫 い 39-6)
「頭に血が上る度」としては『空飛ぶタイヤ』や最初の『下町ロケット』には及びませんが、それでもじゅうぶんヒートアップ。これがフィクションだということを忘れて怒りに燃えます(笑)。肩書きが自分の力だと思っている人のなんと多いことよ。もちろんその肩書きを手に入れるための苦労はあったでしょう。でも、大きなものを作れるからって小さなものも作れるとは限らない。大人にものを教えることができても子どもには上手く教えられない人がいますが、幼児に上手く教える人ほど大人にも上手に教えたりしますよね。ふとそんなことを思いました。
読了日:03月28日 著者:池井戸 潤
■ふたつのしるし (幻冬舎文庫)
震災に絡めた話は偽善的に感じるときもあって、正直なところ少し苦手です。本作も大好きな作家だから買ったのに放置していました。でも5年経過して読んでみたら、いつもの宮下奈都でした。いわゆるアスペルガーが疑われそうな少年ハル。同じハルという呼び名を持ちながら、ハルとは対照的に才色に富む少女遙名。接点は何もないであろうふたりの1991年からの20年間がそれぞれ描かれ、震災で「しるし」を見つけます。もしもこの話が偽善的であったとしても、何も書かないより、何もしないより、偽善であってもするほうがいい。逢えてよかった。
読了日:03月30日 著者:宮下 奈都
■ルーヴル美術館の楽しみ方 (とんぼの本)
今月どうしてもあと1冊読みたいんだけど、と思ったのが31日の19時だった場合はどうすればいいですか。本棚に突っ込んだまま20年経っている本書を読むしかありません。私のこれまでの人生で、読んでほしいと誰かに勧めた回数が最も多い本は『超芸術トマソン』です。赤瀬川さんのそのトマソン的ものの見方は、ルーブル美術館へ足を運んでも変わらない。ここはパリのメインディッシュ。モギリ嬢について言及したり、流血している絵に注目したり、微笑みを探したり。芸術に疎くてもしっかり楽しめます。赤瀬川さんがもうこの世にいないのが残念。
読了日:03月31日 著者:赤瀬川 原平

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