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『シスター 夏のわかれ道』

『シスター 夏のわかれ道』(原題:我的姐姐)
監督:イン・ルオシン
出演:チャン・ツィフォン,シャオ・ヤン,ジュー・ユエンユエン,ダレン・キム,
   ドアン・ボーウェン,リャン・ジンカン,ワン・シェンディー他
 
日曜日に1本だけ、大阪ステーションシティシネマにて。
どれを観るか、他劇場の他作品と迷いに迷って決めましたが、すごーくよかった。
 
背景となっているのは、2015年まで続いた一人っ子政策
こんなことになっていたのかと唖然としてしまいます。
 
アン・ランは望まれて生まれてきた子どもではなかった。
息子がほしかった両親、特に父親は、アン・ランに障害があるふりをさせ、
「第一子に障害があるため、第二子を持つことを許可してほしい」と申請。
両親の世話になることをあきらめてアン・ランは勉学に励み、
高校を卒業すると一人住まい。看護師の資格を得て働いている。
今も医者を目指して勉強中で、まもなく北京の大学院の試験を受ける予定。
 
ところが、アン・ランの両親が交通事故に遭って死亡。
葬儀の日に初めて会った弟でまだ6歳のズーシーを引き取るようにと言われるアン・ラン。
待望の男の子ゆえに甘やかされて育ったズーシーは超わがまま。
 
両親に恨みこそあれど感謝の念などない。弟なんてどうなろうが知るか。
憤るアン・ランはズーシーを養子に出すことに決めるのだが……。
 
酷い話があったものです。そこまでして男の子がほしいのか。
アン・ランのように悲しい思いをさせられた子どもがどれほどいたことか。
男の子さえ生まれれば、母体は死んでもかまわないとも思われているのですから、
子どものみならず母親だってつらい立場にあったでしょう。
 
早くから独り立ちして生きてきたアン・ランに、親族は好き勝手なことを言う。
金を稼いでいるんだから大丈夫だろう、姉なんだから弟を育てるのは当然だろ。
両親が名義をアン・ランにしていた物件を売ればいいじゃないか。
そればかりか、売った金を少しは回せ、みたいなことまで言う。
 
伯母さんの言い分にはいちばん腹が立ったけど、終盤になると、
この伯母さんが女だというせいでどれだけ割を食って生きてきたかがわかる。
彼女とアン・ランがふたりでスイカを食べるシーンにはボロ泣き。
ろくでなしの叔父だけど、子どもが女でも男でも気にしない、そこだけはイイ。
叔父さんがお父さんだったらよかったのに、という台詞にも少しホロリ。
 
そうそう、本作でいちばん驚いたのは、葬儀の席で皆が麻雀をすることです。
いくつも卓が並べられていて、麻雀をすることは故人の供養になるのですと。ひょえ~。
 
という驚きのシーンはさておき、めちゃくちゃ良い作品でした。
先月鑑賞した中でいちばん泣かされた作品。
泣ける映画がいい映画とは限らないけれど、これはとても良かった。

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『ミドリムシの姫』

『ミドリムシの姫』
監督:真田幹也
出演:河井青葉,大高洋夫,青野竜平,三田村賢二,樋渡真司,岡田正,
   ほりかわひろき,鈴木歩己,大草理乙子,今村美乃,仁科貴,金田賢一他
 
1本だけ映画を観られそうな時間ができた日。
キタやミナミの劇場の上映スケジュールをいくらめくっても、観たい作品と時間が合わない。
ならば十三はどうだろうと開いてみたら、ノーマークだったけどこれなら行ける。
シアターセブンにおじゃましました。たまたま公開初日で舞台挨拶付きの会。
 
前作があるそうです。『ミドリムシの夢』(2019)は現在Amazonプライムビデオで視聴可能。
突然十三へ行くことに決めたので、その存在も知らず未見ですみません。
 
ミドリムシとは何なのか。
大阪市内でもよく見かけるあの駐車監視員の人たちを揶揄してこう呼ぶらしい。
前作ではおじさん駐車監視員2人を主人公にしていたそうですが、
この第2弾では訳あって駐車監視員になった女性をが主人公。
 
幼少期の夢は「お姫様」になることだった野上幸子(河井青葉)。
駐車監視員になって数週間経つが、駐車違反のシールを貼られて憤る運転手にどやされたり、
蔑むような態度を取られたりして、一向にこの仕事に自信を持てない。
 
そんなとき、ベテランで成績もダントツの知念道夫(大高洋夫)とコンビを組むことに。
とっつきにくくて変わっているという評判の知念だったが、
何を言われようが毅然とした態度で臨む彼に幸子は尊敬の念を抱く。
 
「どうやったら駐車監視員になれるのか」と突然聞いてきた青年トミーもやがて仲間入り。
プライドを持つところまでは行かずとも、この仕事に楽しさを感じはじめた幸子。
 
ところが街で駐車監視員を追いかけまわして動画を撮る若者たちが現れる。
その行為は“ミドリムシ狩り”として話題になり……。
 
駐車監視員に確かに良い印象はありませんが、
若者たちの人でなしぶりは本気でハラワタ煮えくり返りそう。てめぇら、鬼畜。
 
幸子と知念が拉致されて、ほかの監視員たちが助けに来る展開は見え見えですが、
そのほうがいい話であることは明らかだし、応援しながら観ることができました。
 
上映終了後の監督の話で「へーっ」と思ったのは、駐車監視員というのは「みなし公務員」だから、
職務に関するあれこれを喋ってはいけないのだそうです。
だから、彼ら彼女らがどこへ出勤してどんなふうに仕事するのかは想像の域を出ない。
本作に登場するような事務所があるのかどうか定かではないし、
もしかすると警察署の一角にこんな部屋があるのかもしれず。
 
少しぐらい停めててもええやん。駐車場代高いし。
5分と停めてないのに切符切るって。思います、とても。
でも、車をそこに停めていたせいで死角ができ、誰かの命が奪われたら。
確かに、事故が起きてからでは遅い。
 
「どうやったらもっとお客さんを呼べるでしょうか」。切実です(笑)。
シネコンでの上映は無理だとしても、十三にはまたぜひお越しくださいませ。待ってます。

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2022年11月に読んだ本まとめ

2022年11月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2971ページ
ナイス数:886ナイス
■今宵も喫茶ドードーのキッチンで。 (双葉文庫)
コロナ下にあってこその物語。この連作短編集に登場する主人公たちは、ていねいな暮らしや免疫力、ワクチン接種、在宅勤務、オンライン会議などにさまざまな思いを抱いているようです。喫茶ドードーの店主は相当変わり者とお見受けしますが、飲み物とお料理お菓子が彼女たちの心を癒やす。絵本にでもなりそうな雰囲気で、イラスト入りで読みたかった。第4話までは店主の様子を描くときだけ「ですます調」なのも面白い。ご存じでしたか、ブータンってインフラは進んでいないけどネット環境は発達していて、江戸時代にスマホがあるみたいな国だって。
読了日:11月01日 著者:標野 凪
■その本は
160頁目で「悪魔にも若気の至りがあるのか」と笑い、第12夜174頁目でさざなみのような感動が押し寄せる。そうだ、だから本がある、私は本を読むのだと。メッセージを受け取る人が世界にたったひとりであっとしても、本がこの世に存在する意味があると。エピローグ、王様逝去の様子にまた胸打たれていたのに。189頁目で「やられた」とひっくり返って笑いました。又吉さんとの共著ゆえ油断して、ヨシタケさんの絵本にオチが付き物だということを忘れていた。たとえどこにも行けなくても、その本を開けば世界中いつの時代へも飛んでゆける。
読了日:11月03日 著者:ヨシタケシンスケ,又吉直樹
■Aではない君と (講談社文庫)
心身共にそれなりに元気なときじゃないと読めない薬丸さん。妻と離婚したものの仕事は絶好調だし、新しい彼女もできて毎日が楽しい。唯一の気がかりは妻が引き取った息子のことぐらいだが、会うのは数ヶ月に一度。そんな折、息子が同級生を殺した罪で捕まったとしたら。両親、特に父親が「どうするどうする」と悩むだけの約470頁と言えなくもありません。だけど一緒になって深く考えさせられてしまう。心と体、どちらを殺すほうが悪いのかについては父親の返答に唸りました。著者が誰であろうと京極さんの選評にはついつい注目してしまう私です。
読了日:11月08日 著者:薬丸 岳
■むらさきのスカートの女 (朝日文庫)
変ですよね、むらさきのスカートの女。でもそれよりももっと変なのが、むらさきのスカートの女に異常に執着している語り手。むらさきのスカートの女のために席を空け、求人誌をさりげなく置き、自分の勤め先に彼女が就職するのを待ちわび、日々の彼女をつぶさに観察しつづける。あなたの生活こそどうなっているのですかと言いたくなる。正体がわかるシーンは予期せぬサスペンスを見せられた気分。芥川賞作家なのに読みやすく、だからってどんな小説だったかと人には説明しづらく、なのにクセになる作家。まさにスルメイカのような人。ずっと書いて。
読了日:11月13日 著者:今村 夏子
■ミュージアムグッズのチカラ
博物館に勤めています。自分が働いている博物館が出ているとなるとついつい嬉しくて買ってしまう。楽しい本ではありますが、熟読するには字が小さめでツライ。写真中心に眺めては気になる箇所を拾い読みする感じになり、1冊読みましたと言うのは後ろめたいような気が(笑)。載ってますよとミュージアムショップに言いに行ったら、該当する販売品の前にドーンとこの本が鎮座ましましていました。撮影しに来られているのだから当たり前か。失礼しました~。ウキウキわくわくするミュージアムグッズ。毎年クリスマスセール期間が来るのが楽しみです。
読了日:11月14日 著者:大澤夏美
■母性 (新潮文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】5年以上前に読んだ本の内容を覚えているはずもなく、とても不愉快な気分になりながら読んで最後に呆然としたことだけを思い出す。とすると、この映画版はずいぶんと救われるラストだから、原作とは趣を異にしているのか。高畑淳子演じる義母が菓子をほおばるシーンや、大地真央演じる母親の最期のシーンはあんなに写さなくてもいいのに。戸田恵梨香のこんな疲れた顔を見ると結構堪えます。どれだけ虐められようが、義母に敬意を払うよう努める姿は凄い。所詮、幸か不幸かなんて人が決めるものじゃない。
読了日:11月24日 著者:湊 かなえ
■渇きと偽り (ハヤカワ・ミステリ文庫)
地味に公開されてひっそり終映になった感のある映画ですが、とても気に入ったので原作を購入。良い感じに歳を取っているエリック・バナに見惚れ、そのイメージで原作も読む。自殺を装って銃殺してバレないものなのかというのは映画版を観たときにも引っかかったことですが、それが瑣末なことに思えるぐらい面白かった。ただ、映画版を観ていなければ、読むのにもっと時間がかかったことでしょう。この分厚さならやはり先に映画版を観たい。あっと驚く真相。こんな職業の人が犯人であるはずがないと頭のどこかで思っているのかもしれません。余韻大。
読了日:11月26日 著者:ジェイン ハーパー
■ファミリーランド (角川ホラー文庫)
生まれも育ちも阪急宝塚沿線の者としてはタイトルからしてウキウキ。しかし内容は決してウキウキできるものではありません。澤村さんってこんなSFも書いちゃうのか。連作短編とまでは言わないけれど、あらこの人という人物が後のお話にもちらりと姿を現します。日々の生活も出産も葬式もシステム化されて人間の考える余地なし。果たして狂っているのは誰なのでしょう。会話にしばしば登場する映画の名前や亡くなった芸能人=逸見(いつみ)さんを知っていれば、その頃が懐かしくてノスタルジーを感じたりも。今のお葬式の良さを改めて教えられる。
読了日:11月27日 著者:澤村伊智
■背中の蜘蛛 (双葉文庫 ほ 10-03)
映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』(2014)と『スノーデン』(2016)を公開当時に観ています。最初に観たとき、スノーデン氏のことを被害妄想に囚われたおかしな人だとか思えませんでした。事実だと知って、こんな恐ろしいことがあってよいものだろうかと衝撃を受けました。犯人は誰かと推理しながら読むはずだった本作も、読み始めたら犯人のことはどうでもいい。こんなふうに自分のやることなすことすべてが政府に監視されているのだとしたら怖すぎる。犯罪に無関係の気にくわない人を潰すことも可能。メール一語にも気をつけて。
読了日:11月30日 著者:誉田 哲也

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『グリーン・ナイト』

『グリーン・ナイト』(原題:The Green Knight)
監督:デヴィッド・ロウリー
出演:デヴ・パテル,アリシア・ヴィカンダー,ジョエル・エドガートン,サリタ・チョウドリー,
   ショーン・ハリス,ケイト・ディッキー,バリー・キオガン,ラルフ・アイネソン他
 
イオンシネマ茨木にて、前述の『ストレンジ・ワールド もうひとつの世界』とハシゴ。
 
デビュー当時から鬼才と呼ばれているデヴィッド・ロウリー監督はまだ41歳。
すでに結構いろんなタイプの作品をお撮りになっています。
 
本作は作者不詳の中世の英雄奇譚『サー・ガウェインと緑の騎士』を映画化したもの。
主演は『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)から15年近く経ち、
着実にキャリアを築き上げながら良い役者になっているデヴ・パテル
 
アーサー王の甥でありながら自堕落な日々を送るガウェイン。
クリスマスの日、王から招待を受けて円卓の騎士たちが集う宴の席へ。
 
そこに現れたのは、異形の緑の騎士。
ゲームを提案する緑の騎士に対して円卓の騎士たちは押し黙るが、ガウェインはこの挑発に乗ることに。
 
ゲーム前に緑の騎士が挙げた条件は、以下のとおり。
ガウェインが緑の騎士の首を切り落とすことに成功した場合、
来年のクリスマス、ガウェインは緑の騎士の居場所を探し出さなければならない。
そして、自らの首を緑の騎士に差し出さなければならない。
 
しばし不安げな顔を見せるガウェインに王は言う、「ただの遊び事」だと。
王から受け取った剣で緑の騎士の首を即座に切り落としたガウェインは、英雄視される。
 
しかし翌年のクリスマス、緑の騎士との約束を果たすために旅に出なければならなくなり……。
 
変な物語です。
だって、ゲームの前から来年は自分が首を切り落とされる運命だってわかっているのですよ。
強くはあるもののただの呑んだくれに見えるガウェインがなぜわざわざ旅に出るのか。
 
彼の母親はアーサー王の妹だけど、なんだか魔女みたい。でもすごく温かく優しい。
ボンクラ息子に試練を与えようとしているのか。
王妃もガウェインに「今はあなたに語るべき話がないだけ」と言い、
この旅を終えればガウェインに語り継げる話ができるということらしい。
 
旅先では悪そうな三人衆に身ぐるみ剥がれ、人の言葉を話すキツネと出会い、
無人の民家だと思ったところで休んでいると首を探してほしいという女性が現れる。
倒れたところを助けてくれたお屋敷の夫婦も不気味だし、眼に包帯を巻いた老女も謎。
 
謎だらけではあるのですが、映像がとにかく美しい。
自分の首を切られに行く馬鹿がおるかと思いつつ、その世界に魅せられて、
彼の行動の不可解さはどうでもよくなってしまいます。
 
エンディングではなぜか心が温まるという、不思議な映像体験でした。
異形の緑の騎士の笑顔に癒されるとは。
ダークで奇天烈で冷たそうでありながらぬくもりもあるファンタジー。

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『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』〈吹替版〉

『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』(原題:Strange World)
監督:クイ・ヌエン
声の出演:原田泰造,大塚明夫,鈴木福,松岡依都美,沢海陽子他
 
字幕版を観たかったけれど、仕事帰りに寄れる劇場では吹替版の上映しかなし。
致し方ありません。イオンシネマ茨木にて。
 
アバロニアは周りを険しい山に囲まれた国。
この国に暮らす人々は外に出たことはないし、外に何があるかも知らない。
冒険家のイェーガー・クレイドは息子のサーチャーを含む仲間を引き連れ、
国の向こう側を目指す旅に出かけるが、その途中でサーチャーが不思議な植物を発見。
 
アバロニアの発展に繋がるやもしれぬこの植物を一旦持ち帰ろうとサーチャーは提案。
そんなものはどうでもいい、とにかく向こうへ行くのだと主張するイェーガーに対し、
仲間たちもサーチャーに賛成して、アバロニアへ帰ろうと言い出す。
イェーガーはたったひとりで山の向こうを目指すことに。
 
25年が経過し、サーチャーは妻メリディアンと息子イーサンと幸せに暮らしていた。
アバロニアはサーチャーが持ち帰った不思議な植物パンドのおかげで発展。
人々は行方不明のイェーガーを伝説の冒険家として崇めると共に、サーチャーを英雄視。
サーチャー一家はパンドを育てる農家として大繁盛している。
 
ところが、かつてイェガーと旅をした仲間で今は首相となったカリストがやってきて、
パンドの根っこの部分に異変が起きていると言う。
すべてをパンドに頼っているアバロニアがこのままでは危ない。
パンドの調査のために一緒に地底へ行ってほしいとサーチャーは言われ……。
 
自分たちが暮らしている国が実は巨大な生物の体内だったという。
へ〜っと驚く話でした。
心臓だ免疫だと言われても私にはよくわからなくて、これが子ども向けだとしたら、
全部理解できる子どもってめちゃくちゃ賢いなぁと思った次第。
 
首相は女性。サーチャーは白人、メリディアンは黒人という夫婦。
イーサンの恋する相手は男子で、サーチャーもメリディアンもイーサンをひやかす。
なんというのか、こういう世の中がもう普通ですよというディズニーのメッセージか。
なんだかちょっと偽善的な部分を感じなくもありません。
でもこのほうが教育的には絶対いいよなぁとも思う。

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