『呪儀 BODY PARTS』(原題:Body Parts)
監督:チェ・ウォンギョン,チョン・ビョンドク,イ・グァンジン,ジサム,キム・ジャンミ,ソ・ヒョンウ
出演:キム・チェウン,チョン・ジュンウォン,クォン・アルム,ハン・サンヒョク,カン・ジュンギュ,カン・ハンセム他
観るものがないからって、わざわざこんな怖そうなやつを観に行かんでもええやんと思いつつ、ついつい興味を惹かれて観に行ってしまった韓国ホラー。韓国のインディペンデント映画で初週第1位を記録、『呪詛』(2022)、『呪葬』(2022)に続く衝撃のアジアンホラーという触れ込みです。イオンシネマ茨木にて。
新米女性記者シギョン(キム・チェウン)は先輩男性記者ジェピル(チョン・ジュンウォン)と共にカルト教団の取材に向かう。シギョンが信者を装って儀式がおこなわれる場に潜入。貢ぎ物としてジェピルから札束を渡されるが、シギョンは教団が求める貢ぎ物が果たして金銭なのかどうか疑わしいと考えている。実際、潜入してみると、どうやら貢ぎ物は人間の体の部位らしく。信者たちはそれぞれ苦労して人間の体の部位を手に入れている模様で……。
この先、オムニバス形式になっていて、監督は6人。怖そうな作品を観るときの私の常、眼鏡を外して鑑賞したうえに、画面がかなり暗かったせいで詳細がよくわからなかったものもあるのですが、信者自身が体の一部を入手する様子を描いているというわけではないようです。
最初の話は、中古の鏡台を買った若い女性が主人公。引き出しに入っていた香水らしきものを使用したところ、その香水のにおい以外をたまらなく臭く感じるようになります。自分のにおいまで臭いと思い込み、皮膚がボロボロになるほど体を洗った挙げ句、鼻を取っちゃう。こわっ。
以下、こんな話が続きます。
幽霊が見えるせいでいじめられている男性が、嘘つき呼ばわりする知人たちに幽霊を見せようとする話。悪魔に憑かれたとしか思えない親友を救うため、それをなんとか祓おうとする女子高生たちがその様子を生配信する話。お手頃価格で部屋を手に入れた女性が「前の住人」を名乗る人から早く出て行くように言われる話。目覚めると首にワイヤーが巻き付けられていた男性が、そのワイヤーが隣の部屋の女性と繋がっていることを知る話。それなりに全部怖くて、相変わらず直視できないのに、なんで観るんでしょうね、私。(^^;
最後にはまたシギョンの潜入現場が出てきて、彼女が信者ではないことがバレてしまう。ああ、殺されてしまうんだわと思ったら、わはは、笑った。彼女も貢ぎ物を求められ、殺したいほど憎い奴を挙げろと言われます。
横暴な先輩は後輩の怒りを買わないように気をつけましょうね。
『ラ・コシーナ/厨房』
『ラ・コシーナ/厨房』(原題:La Cocina)
監督:アロンソ・ルイスパラシオス
出演:ラウール・ブリオネス,ルーニー・マーラ,アンナ・ディアス,モーテル・フォスター,ローラ・ゴメス,オデッド・フェール,リー・セラーズ,スペンサー・グラニース,ベルナルド・ベラスコ他
テアトル梅田で観る時間はつくれなさそうだなとあきらめていたら、少し遅れて塚口サンサン劇場で公開。口コミでは賛否両論、というのか低い評価のほうが多くて、観に行くかどうかかなり迷いました。けれど『ディナーラッシュ』(2001)とか『ボイリング・ポイント/沸騰』(2021)といった厨房ものは好きですから。それに観なきゃ文句も言えませんしね(笑)。監督はメキシコの俊英アロンソ・ルイスパラシオス。キャストの中で知っているのはルーニー・マーラのみ。さてどうなるか。
ニューヨークのレストラン“ザ・グリル”。スタッフのほとんどが移民で、ターゲットとしているのは観光客の大箱店。厨房に新しく雇われたメキシコ人女性エステラは、故郷で慕っていたペドロに会いたくてここにやってきた。ちょうど店では売上金の紛失騒ぎがあり、盗難を疑う社長とマネージャーは犯人捜しに躍起になっているところ。ペドロの腕は確かだが、性格に難があってトラブルメーカーらしい。フロアを担当するアメリカ人女性ジュリアはペドロの子を身ごもっているが、中絶しようと決めている。どうしてもジュリアに自分の子を産んでほしいペドロは、ジュリアに懇願するのだが……。
原作はイギリス人の劇作家アーノルド・ウェスカーの戯曲なのだそうです。メキシコやモロッコの移民が忙しく働く店の様子は面白く映るものの、厨房の酷さは直視がつらいほど。全編モノクロだから観ていられるけれど、これがカラーだったらオエーっです。
ジュリアを演じるルーニー・マーラは40歳になっても可愛いまま。しかしペドロ役のラウール・ブリオネスについては役柄も顔も好きになれないから、ちと厳しい。話もテンポがよいとは言えず、寝たり起きたり起きたり寝たりを繰り返しながらの140分となりました。
働かせてやっている、給料もちゃんと渡している、食事だって与えている。何が不満だというのか、どうしたいのかと問う社長。上から目線だし、スタッフに尊厳はないのかとも思うけれど、それにしてもペドロの態度はどうですか。少なくともこの店で食事したいとは思えません。病気になりそう。(^^;
『でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男』
『でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男』
監督:三池崇史
出演:綾野剛,柴咲コウ,亀梨和也,大倉孝二,小澤征悦,高嶋政宏,迫田孝也,安藤玉恵,美村里江,峯村リエ,東野絢香,飯田基祐,三浦綺羅,木村文乃,光石研,北村一輝,小林薫他
109シネマズ大阪エキスポシティにて、前述の『罪人たち』とハシゴ。
2003(平成15)年に教師による児童へのいじめが日本で初めて認定された事件。それを取材した福田ますみのルポルタージュ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』が原作です。結末を知らないまま映画版を観る勇気がなくて、先に読みました。そのときの感想はこちら。三池崇史監督による映画化ゆえ、さらなる覚悟が必要だと思いました。
小学校の教師・薮下誠一(綾野剛)は、担任する児童・氷室拓翔(三浦綺羅)の家庭を訪問する。その数週間後、拓翔の父親・拓馬(迫田孝也)と母親・律子(柴崎コウ)が来校し、校長(光石研)と教頭(大倉孝二)に担任の交替を要求。わが子が薮下から酷い体罰を受けていると言うのだ。身に覚えのない言われように薮下は驚き否定するが、校長と教頭は場をおさめるために謝れと言う。理不尽に思いつつも、どちらかといえばいじめっ子ですらある拓翔を叱るために軽く頬をピタピタしたことはある。憤る拓翔の両親をなだめるには、体罰を認めて謝罪するしかないとそのときは考える。
ところがこうして一度認めてしまったせいで、律子がさらに騒ぎ立てる。薮下は誰からも見られないところで拓翔をいじめている、自殺を強要したとまで言われ、新聞に取り上げられてしまう。さらには週刊誌の記者・鳴海三千彦(亀梨和也)が薮下のことを実名報道。薮下の家にマスコミが押し寄せる。やがて氷室夫妻は市と薮下を相手に民事訴訟を起こし、550人もの大弁護団を結成。
これ以上は家族に迷惑をかけられないと妻の希美(木村文乃)に離婚を申し出ると、希美から「やっていないことはやっていないと言うべき」と叱責され、戦うと決める。しかし、弁護団を仕切る弁護士・大和紀夫(北村一輝)から厳しく詰め寄られ、どうしてよいのかわからない。弁護士を探すも、殺人教師と言われる薮下の弁護を引き受けてくれる人はなかなかいない。そんなとき、本件にはリアリティを感じないという弁護士・湯上谷年雄(小林薫)が引き受けてくれて……。
自分の子どもが教師からいじめを受けたとして訴えた母親と訴えられた教師による双方の供述として描かれています。まず最初の「氷室律子の供述」の章では心が折れそうになり、退出したくなりました。それでも結末を知っていたおかげでなんとか最後まで。
原作では、律子が薮下を貶めようとしたきっかけがまるでわからず。映画版ではわずかながらそれが提示され、親から叱られた子どもが咄嗟についた嘘だったことになっています。真実もそうであればまだわかる。けれど、実際はどうだったかわからないから余計に怖い。律子の話は明らかに怪しいのに、マスコミも医者も弁護士も氷室親子の味方をして教師を悪人にする。柴崎コウの演技が怖すぎてゾッとしました。
こんな冤罪は決してあってはならない。たとえ冤罪だと証明されても、一度ズタズタにされた人生。偏見を持って接する人だっているはずで。特ダネだと飛びついた後に冤罪が濃厚になっても知らん顔のマスコミ、どうなんですか。
三池監督、今回はふざけたところひとつもなし。
『罪人たち』
『罪人たち』(原題:Sinners)
監督:ライアン・クーグラー
出演:マイケル・B・ジョーダン,ヘイリー・スタインフェルド,マイルズ・ケイトン,ジャック・オコンネル,ウンミ・モサク,ジェイミー・ローソン,オマー・ミラー,デルロイ・リンドー他
なんとなく気になる作品ではあったものの、よくわからんホラーをIMAXで観る必要があるのかと思いながら、ほかにちょうど良い時間帯の上映作品もないので、109シネマズ大阪エキスポシティでIMAXレーザーGT版を鑑賞。そうしたら意外と客が入っているうえに、外国人が5人以上で連れ立って来ていたりもして驚く。
ライアン・クーグラーとマイケル・B・ジョーダンといえば『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)と『ブラックパンサー』(2018)の監督・主演コンビ。どちらも面白かったし、私はそもそもマイケル・B・ジョーダンが結構好きです。
人種差別がはびこる1932年のアメリカ南部の田舎町。アル・カポネのもとにいたという噂で誰もが恐れる黒人の双子兄弟スモーク&スタック・ムーアが帰郷し、黒人向けのダンスホールをオープンするべく古びた製材所を購入。
ふたりの従弟サミー・ムーアとは父親同士が兄弟。サミーの父親は牧師で、スモーク&スタックの父親は悪党。兄弟でありながらまるで違う。ブルースを弾かせたら天下一品のサミーだが、父親はギターは悪魔を呼ぶとして音楽に反対。どうしてもギターを手放したくないサミーは、スモーク&スタックの店で演奏することに。
スモークはダンスホールのオープンに向けてツテを駆使し、必要な人とモノを調達。ハーモニカとピアノの名手デルタに出演を求めたり、疎遠だった妻アニーと再会して料理を頼んだり。こうして慌ただしくもダンスホールは無事にオープンにこぎつける。
ところが、黒人しかお呼びでないこの店に楽器を携えた3人の白人がやってきて、演奏させてほしいと言う。追い返した後に店の売り上げを予想してみると、米ドルで払える客が少ないせいですぐに赤字になる日が来るとわかる。そこで、さっきの3人が金を持っているかどうか確かめようと、スタックの元カノでこの日唯一の白人客メアリーが店の外にいた3人に声をかけるのだが……。
面白いですねぇ。白人客はバンパイア(吸血鬼)だったという展開に唖然としつつ笑う。バンパイアって、招いてもらえないと屋内に入ることができないんですね。これって常識なんですか。とにかく、ダンスホールの入口から入れないバンパイアたちは、相手に「どうぞ中へ」と言わせたい。言ったが最後、大変なことになるわけで。
製材所の持ち主がKKKのメンバーで、とんだ差別主義者。そんな時代背景もきちんと描かれているなか、ブルースが人々を魅了する様子も素晴らしい。ダンスホールでの演奏にはなるほどこれは大画面で観る価値ありだと思いました。バンパイアもみんな音楽が大好きで、ブルースとは違う曲をダンスホールの外で演奏して踊る。
ふざけているのか真面目なのかわからない面白さ。エンドロール後もお見逃しなく。観に行ってよかった1本です。
『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』
『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』
監督:小林健
声の出演:栗田貫一,大塚明夫,浪川大輔,沢城みゆき,山寺宏一,片岡愛之助,森川葵,鈴木もぐら, 水川かたまり他
前述の『かたつむりのメモワール』の後、TOHOシネマズなんばにて21:50からのレイトショー。
“ルパン三世”の2D劇場版アニメーションは約30年ぶりだと書いてありましたが、『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』(2018)とか『ルパン三世 THE FIRST』(2019)とかも観たし、『ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE』(2013)なんてのもあったし。ルパン三世は常に近くにいる感じではあるものの、ルパン三世マニアではないから、どんなシリーズがいつ作られてそれらがどう繋がっているのか私にはわかりません。
ルパン三世と次元大介、石川五ェ門、峰不二子はこれまで何者かから命を狙われること多数。そのたびに刺客を倒して生き延びてきたが、黒幕が誰なのかが気になる。ある日、邸を丸ごと焼かれたルパンは、犯人がメッセージ代わりに謎の島の地図を残しているのを見つけ、次元たちと乗り込むことに。ルパンを追ってもれなく銭形警部がついてくる。
目的地であるバミューダ海域上空を飛んでいると、何者かによって飛行機が撃墜される。不時着した島には大昔の対戦の頃に用いられたとおぼしき兵器や核ミサイルが積まれ、かつて戦っていた兵士たちが人間とも思えない姿で徘徊していた。
そんな兵士たちを支配しているのは不死身のムオム。世界から無用な人間を排除して統率しようとしているムオムは、ルパンたちをも過去の遺物とみなす。島に呼びつけて皆殺しにするつもりらしく、立ち込める濃霧は毒。24時間以内に島から脱出しなければ、ルパンたちの体は毒によって砕け散ってしまう。頭を撃ち抜こうが全身を焼こうが死なないムオムを葬る手段などあるのか。
寝不足の状態で観に行ったのに、寝ませんでしたねぇ。やっぱりルパンは面白い。次元と五ェ門がカッコイイのも相変わらずで、特に五ェ門には惚れそうです。不死身のキモい怪物が相手でも負けないのがルパン。ルパンが目の前で溶岩の海に落ちるのを見た銭形のオッサンがルパンの死を悼むシーンも笑えます。死ぬわけないやろ!って。
エンドロール後もお見逃しなく。洒落てるなぁ。利子は1本。