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『不思議の国の数学者』

『不思議の国の数学者』(英題:In Our Prime)
監督:パク・ドンフン
出演:チェ・ミンシク,キム・ドンフィ,パク・ビョンウン,パク・ヘジュン,チョ・ユンソ他
 
前日、アップリンク京都で3本ハシゴして終電で帰宅したため、結構へろへろでした。
この日の晩は動物園前に落語を聴きに行くことになっていて、
夕方まで家でおとなしくしていようかと思いましたが、
これだけはどうしても観逃したくなくて、シネマート心斎橋へ。
 
チェ・ミンシクソン・ガンホに引けをとらないほど素晴らしい俳優だと思います。
だけど、すごく怖い作品に出ているイメージが強いのです。
特に『オールド・ボーイ』(2003)が凄絶すぎて、彼の顔を見るだけで狂気を思い出す。
しかしこの無愛想ながら愛情深い訳あり数学者には心底惹かれました。
 
母子家庭に育ったジウは、名門私立高校に特別枠で入学。
特別入学とは、経済的に恵まれないけれど成績優秀な子どもが学費を免除される制度。
富裕な家庭の子どもが圧倒的に多く、保護者たちは特別入学者をよく思っていない。
そんな状況下では友だちもできず、勉強もはかどらなくて落ちこぼれ寸前。
 
全寮制のこの高校で、同級生たちからいいように利用されているジウは、
ある日、酒やらつまみやらの持ち込みを託され、運悪く警備員ハクソンに見つかってしまう。
脱北者らしいハクソンのことを生徒たちはひそかに「人民軍」と呼んでいる。
 
教師に問い詰められても同級生の名前を口にしなかったジウは、罰として1カ月間の退寮を迫られるが、
母親に心配をかけたくないから、家に帰ることはできない。
校舎の隅に隠れているところをまたしてもハクソンに見つかり、
せめて雨が止むまではここにいさせてほしいと頼んだところ、しぶしぶ彼の部屋に入れてくれる。
 
翌朝、登校したジウは、自分には解けるはずもない宿題が解かれていることに気づく。
ハクソンが数学を得意とすると知り、自分に教えてほしいと懇願するのだが……。
 
学歴がすべての韓国社会で、親が子どもに望むのは、とにかく良い大学へ行くこと。
幼い頃に父親を亡くしたジウは、母親の期待に応えて進学校へ入学できたまではよかったけれど、
同級生たちとは暮らしが違いすぎるから、ちっとも親しくなれません。
教師は教師で、特別入学者たちをとっとと落ちこぼれにして追い出したいと思っています。
よその公立高校へ行けばトップの成績を取れるのだから、そっちのほうがいいじゃないか、てな感じで。
 
チェ・ミンシク演じるハクソンがジウに数学を教えるシーンが本当に面白い。
結果は関係ない、過程が大事だから、とにかく考えろと。
公式をまるごと暗記するのではなく、なぜそうなるのかを考える。
試験でいい点を取って成績を上げることしか考えられなかったジウの思考がだんだん変わってゆきます。
 
クラスで誰からも相手にされていないジウになぜか興味を示す女子生徒ボラム。
最初はウザイやっちゃなと思っていましたが、彼女には彼女の悩みがある。
「こいつのことが好きなの」とサラっとハクソンに明かしちゃうところがすごく可愛かった。
 
ハクソンにジウが音楽を聴かせてみるシーン、またその逆のシーンも素晴らしい。
円周率が音に変わる。生でこのピアノ演奏を聴いてみたいと思いました。
 
先月観た作品の中でいちばん好きでした。チェ・ミンシクのこと、もう怖くない。

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『高速道路家族』

『高速道路家族』(英題:Highway Family)
監督:イ・サンムン
出演:チョン・イル,ラ・ミラン,キム・スルギ,ペク・ヒョンジン,ソ・イース,パク・タオン他
 
アップリンク京都にて3本ハシゴの3本目。
 
監督はこれが長編デビューとなるイ・サンムン。
なんというのか、つらかった、しんどかった。
つらくてしんどくても面白い韓国作品はいろいろありますが、
本作は新鋭らしくて、あと一歩ほしいというところでしょうか。
 
高速道路サービスエリア脇にテントを張って暮らす家族4人、
夫ギウ、妻ジスク、長女イニ、長男テク。
サービスエリアで人の良さそうなドライバーを見つけて近づくと、
妻の実家からの帰りに財布を落としたから金を貸してほしいと声をかけるのだ。
相手が渋ると子どもたちが登場。「お父さん、早く帰りたいよぉ、おなか空いたよぉ」などと言って。
 
そんな子どもたちの様子を見て、相手は可哀相に思いはじめる。
それに、貸してほしいという額が2万ウォン(=2千円足らず)なものだから、
返ってこなくてもまぁいいかと思ってしまうのだ。
 
そんなふうに食いつないでいたギウ一家だったが、
ある日、以前2万ウォンを騙し取った中年女性ヨンソンに再び遭遇し、手口を見抜かれる。
しらを切るどころか、ヨンソンをクソババア呼ばわりしたギウは、
防犯カメラに映る姿が動かぬ証拠となって逮捕される。
 
捕まったのはギウのみ。どこへも行くところのない家族3人は途方に暮れる
警察の前でジスクたちを見かけたヨンソンは、3人を連れ帰ることにするのだが……。
 
期せずしてこの直前に観た『午前4時にパリの夜は明ける』同様に、
居場所のない人を連れ帰って面倒をみる話。
 
どういう理由でこうなったのか、ホームレス一家の姿は見るに堪えません。
ギウは人に騙されて一文無しになったようだけど、そもそも上手い儲け話などあるはずもない。
儲かる話を人に教えるのは、詐欺を働こうとしている人間かバカ、でしょ?
それまでも仕事を転々としていて、真面目に働いていた男ではないわけです。
 
家も金もないくせに、ジスクのお腹の中には3人目の子ども。
どないするつもりやねんと言いたくなります。
 
一方のヨンソンは中古家具店を営み、夫と共につましく生きてきた女性ですが、
実は子どもを事故で失った過去がある。だから、イニとテクを見捨てられない。
亡くなった息子を思い出しながらふたりを可愛がり、ジスクにも目をかけます。
 
家族にこだわるジウの気持ちはもっともだけど、ならば生活をなんとかしろ。
子どもたちを学校にも通わせず、詐欺の片棒を担がせるような真似をして、ヨンソンを逆恨みするのですから。
 
イニを見ているのが特につらかった。最後の彼女の笑顔が救いです。

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『午前4時にパリの夜は明ける』

『午前4時にパリの夜は明ける』(原題:Les Passagers de la Nuit)
監督:ミカエル・アース
出演:シャルロット・ゲンズブール,キト・レイヨン=リシュテル,ノエ・アビタ,エマニュエル・ベアール,
   ティボー・ヴァンソン,ロラン・ポワトルノー,ディディエ・サンドル他
 
アップリンク京都にて3本ハシゴの2本目。
 
1980年代パリを舞台にした作品です。
監督は結構好きだった『アマンダと僕』(2018)のミカエル・アース。
主演は50歳を過ぎても可愛いシャルロット・ゲンズブール
 
乳癌を克服した主婦エリザベートだったが、夫は女を作って家を出てしまう。
残されたのは彼女と長女ジュディットと長男マチアス。
養育費を払うつもりは毛頭ない夫のせいで、エリザベートはどう生活すべきかわからない。
仕事を探すといっても、エリザベートに就職経験はなく、ずっと専業主婦。
なんとか見つけたパート先も、まったく仕事ができずに即日クビになる。
 
そんななか、彼女は長年のファンである深夜のラジオ番組に手紙を送る。
真摯に気持ちを綴った手紙が番組DJを務めるヴァンダの心に響いたらしく、
エリザベートは番組中にリスナーからの電話を受けてヴァンダに繋ぐ仕事にありつく。
 
ある日、ラジオ局を直接訪ねてきた家出少女タルラが出演。
番組終了後、帰途についたエリザベートは、タルラが外で寝泊まりしていることを知り、
ついつい放っておけずに自宅へと招き入れるのだが……。
 
映像があまり1980年代っぽいとは思えず、しばし戸惑いました。
街なかのデモやミッテラン大統領が映るのを見て、
そうか、これは回顧のシーンというわけではなく、ずっと1980年代の話なのかと気づく。
 
その街を知らないのに、ノスタルジーを感じる作品ってあるじゃないですか。
これがまさにそんな感じ。1980年代が私の思い出の年代だからなのでしょうね。
 
自らの生活すら苦しいのに、家出少女を見捨てられない。
いい子だけれどヤク中で、息子に悪影響を与えていることも明らかなのに。
夫に捨てられて、目の前にある次の恋にもなかなか進めない。
彼女の葛藤が伝わってきて、イライラしつつも見守りたくなりました。
冷ややかでもあり温かくもあるヴァンダ役のエマニュエル・ベアールもよかったです。
 
反抗してばかりだと思われた娘と息子に救われていた彼女。
パリの夜明け、素敵です。

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『大阪古着日和』

『大阪古着日和』
監督:谷山武士
出演:森田哲矢,光石研,花梨,東ブクロ,森島久他
 
義姉母娘と京都に出かけた日、墓参→祇園花月→遅めのランチのあと解散。
最初から解散後は映画を観る気満々だったため、
アップリンク京都にて18:20からの2本は予約済みでしたが、
もしかしてその前にもう1本観られるかどうかの瀬戸際。
16:30に新風館に到着し、まさにその時間から上映開始の本作も観ることに。
 
“東京古着日和”というYouTube発のドラマシリーズがあるそうで。知りません。
主演は光石研、監督を谷山武士が務めるそのシリーズの劇場版は、
“さらば青春の光”の森田哲矢を本人役で迎えて製作。
私が観たくなる要素はほぼ皆無なのですけれども、まぁ観てみるか。
 
古着を愛してやまない森田哲矢は、単独ライブのために訪れた大阪で古着屋巡り。
初めて行った古着屋で、店員の女性・中嶋ナナ(花梨)に恋をする。
このナナが光石研演じる中嶋六の姪という設定です。
 
あらすじにするとこれだけ。3日間の出来事が描かれています。
“さらば青春の光”のファンでもなければ森田哲矢のファンでもない。
そもそも彼らが大阪出身ということすら本作を観て知りました。
それぐらい興味がなかったし、本作を観たところでファンになることもない。
 
ただ、いくつも登場する大阪の古着屋や飲食店には興味を惹かれました。
誰かが着倒してボロボロになった服に何十万も出すとか、私には「ない」。
でも面白いなぁとは思いました。
 
ナナ役の花梨はモデルでコラージュアーティストとのこと。
こんな店員さんがいたら、そら惚れるわな。
 
登場したお店がある辺りに行ってみたくなる作品です。

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2023年4月に読んだ本まとめ

2023年4月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2742ページ
ナイス数:771ナイス
■シャイロックの子供たち (文春文庫)
読んだことがあるはずなのに、映画版を観ても一向に思い出せず。読メ開始の遥か前に読んでいた模様。再読してなるほど。登場人物はほぼ同じであるものの、原作は連作短編のうえに、初章の主役は杉本哲太が演じた副支店長だから、映画版とまるでイメージが違う。そして決定的に異なるのは、柄本明演じる爺様が原作には不在ゆえ、倍返しがない。いちばん悪いと思われた柳葉敏郎演じる支店長も単なる小物に終わる原作のほうに驚きました。面白かったけれど詰め込みすぎに思えた映画版も、これの映像化ならそうなるか。西木と阿部サダヲは生きている!?
読了日:04月02日 著者:池井戸 潤
■うつくしが丘の不幸の家 (創元文芸文庫 LA-ま 1-1)
引っ越してきた人に向かって、事故物件でもないのに「この家の住人は不幸になる」とわざわざ言いに来る口さがないオバハン。幸せか不幸せかなんて他人が決めることではないのに、気弱になっているときにはそんな言葉を真に受けてしまいそう。町田そのこの物語に出てくる人たちは、辛い過去を持っている場合が多い。しかし「読み終えた後に、明日もちょっとだけでも頑張ろうと思ってもらえたら」という彼女の言葉どおり、優しい。現在の家から遡る形で、どの住人にとっても後ろ向きな退去ではなかったことがわかります。うん、今日も明日も頑張ろう。
読了日:04月04日 著者:町田 そのこ
■さえづちの眼 (角川ホラー文庫)
今までの平仮名4文字に比べると、本作の「さえづち」はいちばんありそうだから、タイトルの不気味さとしては控えめか。ただ、中身にはやはり終始不穏な空気が漂う。3編とも「母と子」の関係がテーマになっていて、子どもを産み、育て、想うことが歪んだ形であらわれた結果に思えます。もっとガッツリ比嘉姉妹の活躍を見たかった気もするけれど、表題作の琴子姉の格好よさは格別。ニコリともしないクールな彼女なのに、いつだったか“レリゴー”を歌っていたシーンを思い出して笑ってしまう。いずれまたそのギャップを見せてもらえるのでしょうか。
読了日:04月07日 著者:澤村伊智
■逢魔宿り (角川ホラー文庫)
澤村伊智と続けて読んだら、頭の中で話が混在。どちらも擬態語が怖いのよ。ざっざっざっとか、ぺた、とか。もうやめて(笑)。5話独立した「モキュメンタリー」かと思ったら、5話目で全部まとめてかかられたうえに、三津田信三の著作中で私が最もおののいた「入らずの森」まで出てきたよ、と思ったらそれは宇佐美まことでしたね。あれは『ついてくるもの』の中の短編「八幡藪知らず」でした。嗚呼、どうしてホラー苦手なのにこんなに読んでしまうのか。インターフォン怖いがな。で、これ、モキュメンタリーですよね!? 実話ではないことを祈る。
読了日:04月12日 著者:三津田 信三
■掟上今日子の挑戦状 (講談社文庫)
シリーズ全巻積んだまま、いつぶりかの3作目。これだけ強烈なキャラだと、たとえ幾晩眠ろうとも私は今日子さんのことを忘れたりしません(笑)。アリバイ作りのためにナンパしたのが今日子さんとは不運すぎて笑ってしまう。いったん眠ればすべてを忘れてしまう彼女が守銭奴というのも可笑しいし、いつのまにか彼女のペースに巻き込まれて頼ることになるオッサン刑事たちも憎めません。忘却探偵であるがゆえに最速で事件を解決する今日子さん、大好きです。TVドラマ版は未見なのですが、ガッキーはきっとピッタリのキャストだったのでしょうね。
読了日:04月14日 著者:西尾 維新
■少女は卒業しない (集英社文庫)
映画版が思いの外よかったので、原作も読むことに。映画版では卒業式前日から当日にかけての少女たちの様子が同時進行で描かれていましたが、原作では1人ずつ1話ずつ、連作短編形式。登場人物はほぼ同じだけれど、友達ゼロの子にもともと友達がいたり、いろいろと少しずつ違う。何より驚いたのは、原作ではキーパーソンかと思われた田所くんの存在。映画版に彼はいたかしらと記憶を辿るも思い出せず。どちらにも良さがありました。「幽霊って怖いものなのかな。化けてまで会いたい人がいるって、素敵なことじゃないのかな」という言葉が心に残る。
読了日:04月17日 著者:朝井 リョウ
■教室が、ひとりになるまで (角川文庫)
『ノワール・レヴナント』と同様に、特殊な能力を授けられた若者たち。その能力は羨ましがるには結構微妙なもので、相手が嘘をついているかどうか見破るとか、人の好き嫌いがわかるとか、そういったもの。しかも1人に対して3回までしか使えない。だけど使いようによっては人を殺せる力もあるとしたら。私もこんなクラスは嫌いです(笑)。腹の底では何を考えているかわからないのに、全員好きで仲良しなふりをする。毎日息が詰まりそう。だからって殺していいわけはない。こういう状況下にいて鬱々とした日々を過ごしている人には響くと思います。
読了日:04月20日 著者:浅倉 秋成
■クスノキの番人 (実業之日本社文庫)
私は東野圭吾に相当辛くなっていることに気づく。不憫な生い立ちの主人公は、特に拗ねたふうもないけれど逆境をはね返すつもりもないから、流されるままに生きてきました。彼に救いの手を差し伸べたのは、その存在すら知らなかった伯母。彼女から与えられた仕事はなんと「クスノキの番人」。ファンタジーの要素を含む「良い話」でそれなりに没頭して読みましたが、これまで幾度もここに書いてきたように、やっぱり昔の東野圭吾ほどには切なさがないんだなぁ。こうなると、切なさを感じられない最近のこちらに問題があるような気がしてきます(笑)。
読了日:04月30日 著者:東野 圭吾

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