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『ブギーマン』

『ブギーマン』(原題:The Boogeyman)
監督:ロブ・サヴェッジ
出演:ソフィー・サッチャー,クリス・メッシーナ,ヴィヴィアン・ライラ・ブレア,
   デヴィッド・ダストマルチャン,マリン・アイルランド,マディソン・フー,リサゲイ・ハミルトン他
 
イオンシネマ茨木にて、予告編の上映開始時刻が17:15。これは私の終業時刻と同じなんです。
本編の上映開始に間に合うはずもないんですが、仕事帰りに2本ハシゴしようというときに、
こんなホラー作品がその日の〆だなんて嫌じゃないですか。
ダッシュで帰らせてもらい、本編開始10分後に入場しました。
 
原作はスティーヴン・キングが1973年に発表した短編小説『子取り鬼』。
『ブギーマン』って聞いたことのあるタイトルだから、リメイクかと思って調べてみました。
だって、以前はホラー作品というだけで避けていたので、全然知らないんですもの。
 
で、『ハロウィン II』(1981)がもともとは『ブギーマン』という邦題で劇場公開されています。
でも本作はそのリメイクというわけではない。
また、サム・ライミ監督も2005年に同名で撮っていますが、そのリメイクでもない。
“ブギーマン”とは、子どもを狙う怪物で、世界各国に存在する民間伝承なのですね。
 
見逃した最初の10分間に何があったかわかりませんが、あまり影響はなかったと思われます。(^^;
 
両親と長女と次女4人家族だったハーパー家。
しかし母親が事故に遭って急逝し、深い悲しみに暮れる毎日が続いている。
さて、私が観たのはこの後から。
 
ある日、セラピストの父親ウィル・ハーパーのもとへやってきた男性レスター・ビリングスは、
悲しみの淵にいるウィルならばわかってくれるはずだと言って、荒唐無稽な話を始める。
レスターには3人の子どもがいたが、末っ子を乳幼児突然死症候群で失ったあと、
家に怪物がいると上2人が言い出し、それを信じずにいたら、2人とも相次いで死んでしまったと。
明らかに様子がおかしいレスターに恐れをなし、ウィルは席を外して警察に通報する。
 
その間、ハーパー家の長女で女子高生のセイディは、物音と争うような声を聞き、
亡き母が使っていた部屋に足を踏み入れてみると、
なんとクローゼットでレスターが首を吊って死んでいた。
 
レスターは自らの子どもを殺害したのではと疑いがかけられていたらしく、
それを苦に自殺したのだろうというのが警察の見解だが、
この事件以来、ハーパー家の次女でまだ幼いソーヤーが「家に怪物がいる」と言うように。
 
最初はソーヤーの妄想だと思っていたセイディも、次々と起こる異変に信じざるを得なくなり、
レスターの妻リタの話を聴くためにビリングス家へと向かう。
荒れ果ててまるで廃屋と化したその家の中には銃を構えたリタがいて……。
 
いや~、怖かった。
おそらく90分のうち、7割ぐらいの時間は目を閉じている、あるいは薄目状態だったと思います(笑)。
とにかく私、クローゼットが怖いんですよ、『クローゼット』(2020)を観て以来。
自分が衣装持ちじゃなくて良かった、誰かが隠れられるようなクローゼットが家になくて良かったと思う。
 
子どもの心に隙間があるのを察知して、その家に入り込むブギーマン。
天井に不気味なシミを発見したら、それがブギーマンに居座られているしるしです。
自分も悲しいのはわかるけど、子どもに向き合わない親に任せていられないとばかりに、
ブギーマン退治に挑むセイディが頼もしいし、ブギーマンを寄せつけない方法を考えるソーヤーのなんと可愛いこと。
 
ラストの地下室の対決シーンで、母親の存在がかいま感じられたところは泣きました。
怖いけどいい話だったのに、そんな終わり方しないでよ。まだおるんかいっ!(^O^;

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『星くずの片隅で』

『星くずの片隅で』(原題:窄路微塵)
監督:ラム・サム
出演:ルイス・チョン,アンジェラ・ユン,パトラ・アウ,トン・オンナー他
 
シネ・リーブル梅田にて4本ハシゴの〆は香港作品。
 
ラム・サム監督の単独デビュー作品なのだそうです。
主演のルイス・チョンはシンガーソングライターとしても活躍するコメディ俳優らしい。
共演のアンジェラ・ユンはえらく可愛い人だなと思ったら、トップモデルなのだとか。
10代か、せいぜい20歳にしか見えないのに、今年30歳と知ってビックリ。
 
コロナ禍で静まり返る香港
“ピーターパン・クリーニング”という清掃会社を起業した青年ザクは、
今にも潰れそうな中古のバンで顧客のもとを走り回っている。
 
ある日、事務所を置くビルの階下に入居するシングルマザーのキャンディが、
どうしても雇ってほしいと言ってザクを訪ねてくる。
人を雇うような余裕はないけれど、このところ腰痛が酷いから、手伝いはほしい。
試用期間ということで3日間、キャンディを働かせることに。
 
仕事自体は丁寧で早いが、幼い娘ジューを抱えて生活に困っているキャンディは手癖が悪い。
かつて近所のコンビニでアイスクリーム万引きするのをザクは見かけたことがある。
今回は清掃に入った個人宅からマスクを数箱盗んだのがバレて、契約を打ち切られてしまう。
怒りが収まらないザクはキャンディをクビに。
 
しかしどうにもキャンディ母子のことが気になるうえに、
彼女がいるほうが明らかに仕事がスムーズに行く。
もう盗むなと約束させ、再びキャンディと仕事を始めるのだが……。
 
悪くはなかったのですが、期待していたほどには良くなかったかなぁ。
子どもを抱える母親には行きづらい世の中で、同情の余地はあるものの、
こんな信用の置けない女の面倒をどうして見続けるのか。
ザクおじさん、お人好しにもほどがあるやろ。
これがブスだったら同じように面倒を見たか。若くて美人だからだよねぇと思ってしまう(笑)。
 
ただ、香港の景色には息を飲む美しさがありました。
彼らが暮らしている付近はちっとも綺麗とは言えないのに、だから余計に切ない。
英語タイトルは“The Narrow Road”。狭い路地から彼らはいつ出ていけるのか。
 
清掃に使う機材はケルヒャーのもの。
去年亡くなったの部屋にあったケルヒャーのスチームクリーナーは私が使っています。
そんなこんなで、期待したほどの作品ではなかったのに、いろいろと想う。

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『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』

『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』(原題:QT8: The First Eight)
監督:タラ・ウッド
出演:ゾーイ・ベル,ブルース・ダーン,ジェイミー・フォックス,サミュエル・L・ジャクソン,
   ジェニファー・ジェイソン・リー,ダイアン・クルーガー,ルーシー・リュー,
   マイケル・マドセン,イーライ・ロス,ティム・ロス,カート・ラッセル,クリストフ・ヴァルツ他
 
シネ・リーブル梅田にて4本ハシゴの3本目は、この日いちばん楽しみにしていた作品。
もうめちゃめちゃ楽しかった!
 
私がクエンティン・タランティーノを知ったのはいつだったでしょうね。
デビュー作のレザボア・ドッグス』(1991)が最初だったかもしれないけれど、
もしかすると『パルプ・フィクション』(1994)を先に観たかもしれません。
映画オタクで、日本贔屓で、愛すべき人柄のタランティーノ。
かねてから10本撮ったら引退すると宣言していたそうです。寂しいやんか。
 
そんな彼について話しまくるのは、上記の俳優たち。
それに加えて、映画関係者やルームメイトなどが実に楽しげに話しています。
 
『ジャッキー・ブラウン』(1997)、『キル・ビル』(2003&2004)、
『イングロリアス・バスターズ』(2009)、『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)、
『ヘイトフル・エイト』(2015)それぞれについて、撮影秘話的な話も含めながら。
 
レオナルド・ディカプリオが「ニガー」と言えずに困っていた話などは、
翌日からのレオの演技が本当に黒人を奴隷扱いするものになっていたとか、
その後のシーンでも流血の惨事となっているのもかまわず演技を続けたとか、
レオ様やっぱり凄いんだわと思える話もあって楽しい。
 
『それでも夜は明ける』(2013)とタランティーノ作品を比較して表した言葉も面白く、
また、スパイク・リーが『ジャンゴ』の黒人差別表現に怒っていたことに対して、
黒人俳優のジェイミー・フォックスがウケていた理由になるほど。
 
女優であり、スタントウーマンでもあるゾーイ・ベルの話も楽しかったなぁ。
スタントマンって、反射的に顔が映らないようにしてしまうそうですが、
女優として彼女がアクションシーンを演じたときは、
タランティーノが「君の顔は絶対映るようにしなきゃ」と撮り直しになったこととか。
 
なんだか書き出すとキリがないくらい、楽しい話てんこ盛りでした。
楽しくない話としては、ハーヴェイ・ワインスタインの話にも言及しています。
タランティーノ作品を必ず配給してきたミラマックス
あの事件が業界にどれほどの影を落としたことか。見るのもキモい、ハーヴェイ。残念なことです。
 
それを除けば、ずっとニヤニヤしながら観ていました。
タランティーノ作品のファンだと言っても、私なんて全部せいぜい数度観ただけ。
登場人物がこんなに繋がっているなんて知らなかったよ。
まるで伊坂幸太郎じゃあないか。遊びごころ満載。
こりゃ一度、全作品続けて観なきゃいいけませんね。
 
「クエンティン・タランティーノの書くものには、“不誠実さ”はまったくない。」by サミュエル・L・ジャクソン。

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『ふたりのマエストロ』

『ふたりのマエストロ』(原題:Maestro(s))
監督:ブリュノ・シッシュ
出演:イヴァン・アタル,ピエール・アルディティ,ミュウ=ミュウ,キャロリーヌ・アングラーデ,
   パスカル・アルビロ,ニルス・オトナン=ジラール,アンドレ・マルコン他
 
シネ・リーブル梅田にて4本ハシゴの2本目。
 
第64回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したイスラエル作品『フットノート』(2011)のリメイク。
『コーダ あいのうた』(2021)の製作陣が手がけたフランス/ベルギー作品です。
 
フランソワ・デュマールとドニ・デュマールは、共に著名な指揮者
父親のフランソワは40年以上のキャリアを誇るベテランだが、ここ最近はくすぶり気味。
それに対して息子のドニはヴィクトワール賞を受賞するなど、勢いに乗っている。
フランソワはドニの活躍を素直に喜べないばかりか、それを態度に露骨に出すものだから、
父子は顔を合わせれば喧嘩ばかり。
 
そんなある日、フランソワのもとへ1本の電話が入る。
それはミラノのスカラ座からで、音楽監督に就任してほしいという依頼。
夢にまで見た世界最高峰からの依頼に有頂天になるフランソワ。
自然とドニへの態度も和らぎ、ホッとする家族たち。
 
ところが翌朝、今度はドニにスカラ座の総裁マイヤーから電話があり、呼び出される。
聞けば、マイヤーの秘書カルラが父子を間違って電話してしまったらしい。
フランソワから何度も留守電が入っていたせいでそのことに気づいたと。
 
マイヤーはドニからフランソワに話をするように言うが、
あんなにも喜んでいるフランソワにどのように伝えればいいのか。
苦渋のまま時間が経ち、焦るドニだったが……。
 
予告編を観てとても良さそうだと思いました。
『テノール! 人生はハーモニー』並みの出来を期待して観に行ったのですが、うーん、だいぶ残念。
 
ピエール・アルディティ演じるフランソワにまったく魅力なし。
息子のほうが人気者でスネる爺ちゃんといえば可愛いかもしれないけれど、大物指揮者ですよ。
こんな器のちっちぇえところを見せられてもねぇ。
団員に八つ当たりして、自分の携帯が鳴っているのにも気づかず怒る。
このシーンって、本国ではウケるところなのですか。まったく笑えない。
 
だいたい、スカラ座が間違って電話したくせに、それを息子から父親に伝えろと言うのはいかがなものか。
「ウチの美人秘書が阿呆で間違っちゃったんだ。申し訳ないけど頼むよ」とでも言うならまだしも、
「おまえから父親に言え。時間はない。スカラ座だぞ。就任したい奴はほかにいくらでもいる」って、超高圧的。
 
自分の勘違いだと知った後にフランソワの取る行動も腑に落ちません。
ドニの家に押しかけ、陰で笑い者にしたんだろと悪態をつく。
どうやら帰り際にドニに言い渡したことは息子を羽ばたかせるための言葉だったようだけど、
私にはただ嫌味を言って帰ったようにしか思えません。
善人面、被害者面をしていて、顔を見ているだけで嫌になった(笑)。
 
一方、ドニ役のイヴァン・アタルはアラン・リックマンを彷彿とさせ、悪くありません。
別れた妻は変わらずドニのエージェントを務め、恋人は美人ヴァイオリニスト
彼女が難聴という設定は別に要らないんじゃないかと思いましたが、
その彼女から「クソじじぃ」呼ばわりされるところなんかは気の毒すぎてちょっと笑いました。
 
ニルス・オトナン=ジラール演じる一人息子マチューも良い。
両親が別れてもこんなに面白い子に育つ。ピアノに料理に、彼はいつでも楽しげ。
 
オチもあまりに唐突です。
万事オッケーということで後味は悪くないけど、丸くおさめすぎだってば。

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『アウシュヴィッツの生還者』

『アウシュヴィッツの生還者』(原題:The Survivor)
監督:バリー・レヴィンソン
出演:ベン・フォスター,ヴィッキー・クリープス,ビリー・マグヌッセン, ピーター・サースガード,
   ダル・ズーゾフスキー,ジョン・レグイザモ,ダニー・デヴィート,ミヒャエル・エップ他
 
シネ・リーブル梅田にて4本ハシゴ。
 
4本もハシゴするつもりはなかったのです。
目覚ましかけずに適当に起きて、昼ぐらいに家を出るつもりでいましたが、
そんなに長いこと寝ていられないんですよね。目が覚める(笑)。
 
昼から3本はあらかじめ予定を立てていたけれど、午前中にあと1本観るとすれば何にしよう。
本当は避けるつもりでいた作品。アウシュヴィッツと聞いただけでめげるから。
でも、だからこそ劇場で観ておかないと、DVDや配信では逃げてしまってきっと観ない。
気乗りせずに選んだ作品ではありますが、結論としては観てよかった。とても。
 
アウシュヴィッツを生き延び、ボクサーとして活躍したユダヤ人
ハリー・ハフトことヘルツコ・ハフトの人生を映画化したもの。
実話に基づくハンガリー/アメリカ作品。
 
1949年、ナチスドイツ強制収容所アウシュヴィッツから生還したヘルツコ・ハフトは、
アメリカで付けられたハリー・ハフトという名前でボクサーとして活躍していた。
しかし試合中に当時のフラッシュバックに悩まされることも多く、このところ敗戦続き。
 
ハリーは戦時中に生き別れた恋人レアのことを今も忘れられずにいる。
彼女は別の強制収容所へ送られたはずだが、無事なのか。手を尽くして探しても手がかりなし。
だが、自分がボクサーとして名を揚げれば、彼女のほうが知り得るかもしれない。
その一念でボクサーを続けているが、よほど強い相手と試合を組まないかぎり、
ハリーのことが全国紙で取り扱われる可能性はない。
 
悶々とする彼のもとに取材を申し込みに来た記者エモリー・アンダーソンは、
アウシュヴィッツでどのように生き延びたのかを聴きたいと言う。
もしハリーのことが話題に上れば、次期チャンピオンと言われるロッキー・マルシアノと戦えるのではと言われ……。
 
どうやって生き延びたか。凄絶です。
 
ハリーは収容所で殺されそうになっていた親友をかばって暴れました。
その場面に出くわした親衛隊員がハリーを拾う。
親衛隊員たちは、腕に覚えのあるユダヤ人を見つけると自分のペットとして飼い、
余興としてリングに上げて戦わせていました。
どちらか片方が倒れるまで戦わせ、負けたほうはその場で射殺されます。
賭け事として楽しんでいますから、勝ち続けるハリーは貴重な稼ぎ手。
儲けさせてくれるハリーにタバコを与え、風呂にも入らせて可愛がる。
 
そんなふうに生き延びたハリーですが、それが新聞記事になった途端、
裏切り者と言われて唾を吐きかけられる。
戦争が終わったときに恥ずかしくないように。それは確かにそうだけど、それも生きてこそ。
誰かを密告したり、陰でこそこそ振る舞っていたりしたわけではないのに、
リングで同胞相手に戦って生き延びた彼を誰が責められましょうか。
 
次期チャンピオンと戦ったおかげで昔の恋人と再会できてめでたしめでたし、
というようなヤワな話ではありません。
 
主演のベン・フォスター、役者魂は認めますが、そこまで体重を増減させて大丈夫ですか。
『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)のときのマシュー・マコノヒーが思い出されて、ちょっと心配です。
ハリーが所属するジムのトレーナー役のジョン・レグイザモ、やっぱり大好き。
マルシアノのトレーナーを演じるダニー・デヴィートもさすがです。最高。
 
戦争が人々の心に残した傷は、戦争が終わった後に出会った人たちの絆にも影響を及ぼす。
どちらかと言えば最近はエンタメのほうに振れていたバリー・レヴィンソン監督。
久々に見応えのある作品でした。

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