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『ヤジと民主主義 劇場拡大版』

『ヤジと民主主義 劇場拡大版』
監督:山崎裕侍
ナレーション:落合恵子
 
3連休の中日、伏見稲荷大社にお詣りに行く前に、十三・第七藝術劇場にて1本。
観た順にUPしていると、3連休っていったいいつでしたかって感じですけど。(^^;
 
2019年7月15日、北海道札幌市内で、参院選立候補者の応援にやってきた安倍晋三首相が演説。
その最中にヤジを飛ばした人たちが北海道警の警察官に排除される騒動が起きました。
本作はその「ヤジ排除問題」を北海道放送報道部の取材班が追ったドキュメンタリーです。
 
お詣りの前に1本観たかっただけで、この問題に興味を持っていたわけではありませんでした。
前日も映画をハシゴして疲れていましたし、観ながら寝てもいいかな、ぐらいのつもりで。
そうしたら、面白くて眠くならず。
 
ヤジを飛ばしたりプラカードを持ち上げようしたりして警察官に取り囲まれた、
あるいは腕などを掴まれてその場から移動を強要された人は少なくとも10人はいたそうですが、
本作では主に2名、ソーシャルワーカーの男性と大学生だった女性に焦点を当てています。
裁判を起こしたのもこのふたりだからということもあるのでしょうかね。
 
2名は特定の政治団体に所属しているわけではなく、無党派の一般人です。
もしも私がこの場にいたら、あぁ、なんかおかしい人だと思ってしまったかもしれません。
しかしこうしてインタビューを見ると、私なんかよりよほど社会を知っている、
少なくとも知ろうとしている人でしょう。
 
2名は共にヤジを飛ばしたのではなくて、先の男性が叫ぶのを聞いて、
後の女性も声を上げなければ後悔すると思ったそうです。
 
安倍政権を批判するヤジだったから排除されたのか。そりゃそうでしょう。でもそうは言わない。
北海道県警の言い訳はとても苦しく聞こえます。
 
表現の自由を侵害された」とふたりが訴えた裁判。
一審では原告の2名が勝訴しましたが、二審では女性のみが勝訴。
北海道県警の何十名も動員して作成したという再現イメージ映像は少し笑ってしまいました。
茶番にしか見えないのですけれど。
 
演説中のヤジに私は賛成とは言えません。でも私は何にもしないから。
何にもしない、声を上げない私にヤジを非難する権利はありません。
どうせ何を言ったって何も変わらないと思うけれど、何もしなければ絶対に何も変わらないのですよね。
 
こういう裁判があったことを今まで気にも留めずに来ました。
せめてもう少し興味を持たなければいけない。
 
ヤジだけで、誰かに危害を加える可能性などなかったこのふたりを排除して、

—–

『笑いのカイブツ』

『笑いのカイブツ』
監督:滝本憲吾
出演:岡山天音,片岡礼子,松本穂香,前原滉,板橋駿谷,淡梨,
   前田旺志郎,管勇毅,松角洋平,菅田将暉,仲野太賀他
 
シネ・リーブル梅田にて2本ハシゴの2本目。前述の『市子』の次に。
 
原作はツチヤタカユキの自伝的小説。
彼は、NHKの『着信御礼!ケータイ大喜利』で「レジェンド」の称号を獲得した後、
ラジオ番組や雑誌などにネタを投稿しまくって「伝説のハガキ職人」と呼ばれた人です。
これまでテレビドラマを撮ってきた滝本憲吾の長編劇映画デビュー作品。
 
ツチヤ(岡山天音)はおかん(片岡礼子)とふたり暮らし。
5秒にひとつ、笑いのネタを書くことを自らに課しており、その才能はなかなかのもの。
テレビ番組の『デジタル大喜利』でレジェンドの座についた後、
人気漫才コンビのベーコンズが担当するラジオ番組にネタを書いて投稿しまくり、
コンビの片方・西寺(仲野太賀)からの呼びかけに応じて東京へ行く。
 
晴れてプロの構成作家になれたかと思いきや、人づきあいが極端に苦手。
挨拶すらろくにできないものだから、彼をかばってくれるのは西寺のみ。
ほかの構成作家やプロデューサーから総スカンをくらってどうしようもなくなり……。
 
およそ可愛げがあるとは思えない主人公。
パンツ一丁でひたすらネタを書き、髪の毛はボサボサ、目がすわっています。
ハガキ代を捻出するためだけに働いているわけですが、
バイト先でもネタを考えることで頭がいっぱいだから、ミスばかりやらかす。
当然バイトはすぐにクビになります。
 
しかし、とにかく人を笑わせたいんだという心意気が伝わってきて憎めません。
彼をこの道で生きられるようにしたいと考える西寺は、
人づきあいのいろはからツチヤに教え、それに素直に従おうとする頃には可愛げも出てきます。
 
フードコートでネタを書き続けるツチヤに興味を抱いて声をかけるミカコに松本穂香
街角で泥酔するツチヤを放っておけずに拾うムショ帰りのチンピラに菅田将暉
仲野太賀にしても菅田将暉にしても、今さら脇に回るような俳優ではないにもかかわらず、
脇役で「ちょうどいい」存在感を放つのは凄い。主役を食うわけではなく、実に良い塩梅。
 
ただ、この手の「お笑い」に関わる人を主人公にした作品で私がいつも不満なのは、
本作でいちばん笑ったのは、缶コーヒーを買いに行ったツチヤが転ぶシーンでしたからね(笑)。
 
おかん役の片岡礼子も素晴らしかったことを付け加えます。
そういえば、男をとっかえひっかえ連れ込んでいるらしいおかんが、
その日連れ込んでいた相手に「おまえの息子、アホなんか」と言われて、
「アンタよりは賢いわ」というシーンも笑ったのを思い出しました。
どうあろうと息子は息子。応援しつづけるオカンとのラストのやりとりもめちゃくちゃよかった。
 
うん、私はやっぱりこの映画が好きだ。

—–

『市子』

『市子』
監督:戸田彬弘
出演:杉咲花,若葉竜也,森永悠希,倉悠貴,中田青渚,石川瑠華,大浦千佳,渡辺大知,宇野祥平,中村ゆり他
 
シネ・リーブル梅田にて2本ハシゴの1本目。
昨年末に公開したときから気になっていました。年が明けてから鑑賞の機会に恵まれる。
 
戸田彬弘監督自身が手がけた舞台『川辺市⼦のために』を映画化した作品なのだそうです。
125分と、2時間超の割と長尺なのですが、もっと長くて濃密に感じる時間でした。
けれども、1秒たりとも飽きることはありません。
 
3年間の同棲を経て川辺市子(杉咲花)にプロポーズした長谷川義則(若葉竜也)。
涙を浮かべて感激していた市子だったのに、翌日長谷川が帰宅すると、彼女の姿はなかった。
警察に相談したところ、刑事の後藤修治(宇野祥平)が話を聴きに来てくれる。
 
長谷川と市子はお互いの過去についてほとんど話したことがなかったから、
後藤に話そうにも市子のことを何も知らないと改めて思い知らされる長谷川。
10年以上前に白骨死体が生駒山中で発見された事件について、
市子とその母親・なつみ(中村ゆり)が関わっていた可能性を示唆されて驚く。
 
後藤から聴いた話をもとに、過去に市子と関わりがあったとおぼしき人を訪ねはじめた長谷川は、
彼女が壮絶な人生を送ってきたことを知るのだが……。
 
とてもつらい話です。
市子とはいったい誰なのか。かつての彼女は月子と名乗っていたらしい。
彼女の過去など何も知らなくても問題ないし、それで幸せだった長谷川。
きっと彼女のほうもそうだったし、プロポーズされて嬉しかったのは事実なのに、
「結婚」となると困る。解決できない問題がいろいろ出てきてしまう。
 
無戸籍、重い障害のあるきょうだい、こうして生きて行くしかなかった母と子。
こういうエキセントリックな女性を演じるときの彼女は素晴らしい。
そして彼女を探す長谷川役の若葉竜也の胸の内を思うとつらくて仕方ありません。
 
森永悠希演じる高校の同級生の「僕にしか彼女を守れない」というのは傲慢だと思う。
彼女のことを何も知らなくても、一緒に夢を持とうと言うキキ役の中田青渚には救われます。
 
市子は今も生きている。別の誰かとして。
彼女が市子として生きられることはないのかと思うと悲しすぎる。

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『コンクリート・ユートピア』

『コンクリート・ユートピア』(英題:Concrete Utopia)
監督:オム・テファ
出演:イ・ビョンホン,パク・ソジュン,パク・ボヨン,キム・ソニョン,キム・ドユン,パク・ジフ他
 
封切り日、実家へ寄った帰りに109シネマズ箕面へ。21:25からのレイトショーにて鑑賞しました。
こんな遅い時間からではありますが、結構客が入っています。
イ・ビョンホンパク・ソジュンが出演しているからでしょうか。
 
未曾有の大災害に襲われ、一瞬にして壊滅したソウル
その中にあってただ1棟だけ倒壊を免れたマンション“皇宮(ファングン)アパート”を目がけて、
家を失った生存者たちが押し寄せてくる。
 
建物という建物は壊れ、地盤沈下も起こしているせいで都市機能は麻痺。
救助隊の到着もまったく見込めないまま、治安は悪化してゆくばかり。
食糧も底を突くことが危惧され、ファングンアパートの207号室の住人グメ(キム・ソニョン)がまず声を上げる。
 
婦人会の会長を務めるグメは、このマンションの住人を守ることが第一だと主張。
そのためには自己犠牲精神の高い者を代表として行動するべきだと。
ほかの住人もそれに賛同し、代表として902号室の住人ヨンタク(イ・ビョンホン)を選出する。
 
ヨンタクは寝たきりの母親の世話をひとりでしている冴えない男だが、
倒壊後のマンションの一室で出火騒ぎがあった折、部屋に飛び込んで火を消し止めたことがあった。
まさに彼こそがこのマンションと住人を守る精神を持つ者に違いない。
 
そんなヨンタクから防衛隊長に指名されたのはミンソン(パク・ソジュン)。
ミンソンは看護師の妻ミョンファ(パク・ボヨン)とふたり暮らしで、
こういう状況にも詳しそうな公務員だということが買われて、防衛隊長を任されたのだった。
 
もともとのマンションの住人以外は追い出すことに決まり、
ヨンタク統率のもと、まとまりを見せはじめるマンションの住人たち。
ミンソンもヨンタクに心酔している様子だが、
そもそも住人以外の排除に反対していたミョンファは不安をおぼえて……。
 
見ていて気持ちのいい話ではありません。最初から最後まで暗い。
だいたい、この災害はいったい何だったのかさっぱりわからないのですが、それはまぁいいか。
 
ぬぼーっとしたイケていないオッサンだったヨンタクがどんどん変わってゆきます。
イ・ビョンホンの演技には舌を巻くしかありません。
いたって普通の、根は善いはずの人たちが、この状況下で恐ろしい人間になる。
強奪も殺人もなんちゅうことのないものになってゆくのですね。
 
以下、ネタバレです。
 
ヨンタクは実は902号室の住人ではありません。
本物のヨンタクに騙されて全財産を失い、そのせいで妻子を路頭に迷わせそうになっている。
金を返せとヨンタクのもとを訪ねて怒鳴り合いになり、怒りに駆られてヨンタクを殺してしまう。
直後に災害に見舞われてそのまま居座ることになります。
 
どうしようもなくなっていた自分がこのアパートでは崇拝されている。
それに酔ってどんどん圧政を敷くようになるわけですが、
彼のおかげでマンションの住人の暮らしが安定しているのも事実。
彼のやり方に反対するミンファが本物のヨンタクの死体を見つけて偽ヨンタクを追及するけれど、
そのせいでさらに事態は悪化することになります。
 
災害下でどう行動するのが正しいのか。人間らしいのか。
マンションの住人の誰にも共感はできません。
 
詐欺に遭っていたとはいえ、人を殺し、その人のふりをしてリーダーにまでなった偽ヨンタク。
責められることしかないのでしょうけれども、
偽ヨンタクが吊し上げられそうになったとき、ヨンタクの母親が叫ぶ言葉が頭から離れません。
本当の息子よりも偽ヨンタクのほうがよほどちゃんと彼女の世話をしていたことがわかります。
 
正月早々大地震に見舞われた今年だから、さらにいろいろ考えるのでした。

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『雪山の絆』

『雪山の絆』(原題:La sociedad de la Nieve)
監督:J・A・バヨナ
出演:エンソ・ボグリンシック,アグスティン・パルデッラ,マティアス・レカルト,
   エステバン・ビリャルディ,ディエゴ・ベヘッシ,フェルナンド・コンティジャーニ・ガルシア,
   エステバン・ククリツカ,フランシスコ・ロメロ,ラファエル・フェデルマン,バレンティノ・アロンソ他
 
年が明けてから2日に5本ハシゴ3日に2本ハシゴしたから、
翌日から仕事の4日は家から一歩も出ることなくこのブログ用の記事を書きつづけ、
夕方になってようやくNetflixにて1本だけ観ることにしました。
4日に配信が開始されたばかりで、塚口サンサン劇場でも1週間限定で公開されていました。
 
1972年10月に起きたウルグアイ空軍機571便遭難事故を描いています。
この事故は映画化には打ってつけの内容というと不謹慎かと思いますが、たびたび映画化されていて、
いちばん有名なのはイーサン・ホーク主演の『生きてこそ』(1993)。
ドキュメンタリー作品としては『アライブ 生還者』(2007)などもあり、いずれも鮮烈な印象。
 
若者たちがラグビーをするシーンから始まります。彼らはウルグアイのラグビーチームの面々。
その年、チャーター機でチリへ旅行できることになり、
所属メンバーはもちろん、家族や友人知人も誘って、総勢45名でサンティアゴへと向かいます。
 
ところが途中、アンデス山脈の雪山墜落
大破した航空機から放り出されて即死した人もいますが、生き残った人たちも。
無線は壊れて連絡するすべはなく、パイロットも死んでしまったから自分たちが今どこにいるかわからない。
すぐに救助が来ると信じていたのに来ず、数日後に荷物の中からラジオを見つけてつけてみると、
無情にも捜索が打ち切られたというニュースが流れてきます。捜索の再開は雪解け後になると。
 
何もできないまま日々は経過し、その間に次々に誰かが死んでゆく。
氷点下何十度という世界ですから、航空機が墜落しなくともここにいるだけで凍死する。
皆で励まし合い、時に怒鳴り合いながらもなんとか生き延びようとする若者たち。
 
やがて食糧が底を突き、食べられそうなものは亡くなった人の肉だけ。
解体作業を買って出た人が、正気を失う者が出ないようにと、皆から見えないところで解体。
これは犯罪だ、人肉を食べることが許されるのかなどと葛藤しながら、
でも「生きてこそ」。食べなければ死ぬ。生きる望みがあるかぎり、食べる。
 
ホラー作品ではないので、生々しいシーンはほとんど映りません。
本人の許諾なく肉を食べるなんてという会話のあと、「自分が死んだら食べてくれ」と言い始めるところや、
自らの命が友人の命を救えるならこれほど素晴らしいことはないという遺言には泣いてしまいます。
 
最後まで生きる望みを捨てず、いちばん体力のある2名が人里まで歩いてたどり着いたおかげで、
生存者がいると世界中が知ることになり、16名が生還。
人肉を食べて生き延びたことに批判もあったかと思います。でも、誰がそれを責められましょう。
 
生還した人ではなく、途中亡くなった若者のナレーションという形で進められるのが切ない。
 
どんなときにも自然は雄大で美しい。星空の美しさに余計苦しくなります。
劇場に観に行けばよかったとちょっぴり後悔しました。

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