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『コット、はじまりの夏』

『コット、はじまりの夏』(原題:An Cailin Ciuin)
監督:コルム・バレード
出演:キャサリン・クリンチ,キャリー・クロウリー,アンドリュー・ベネット,マイケル・パトリック他
 
前述の『燈火は消えず』とハシゴ。同じくなんばパークスシネマにて。
 
第95回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたアイルランド作品。
コルム・バレード監督はこれが長編デビュー作なのだそうです。
 
アイルランドの田舎に暮らすコットは9歳の少女。
両親は牧場を営んではいるものの、父親のダンは酒浸りでギャンブル好きのろくでなし。
金もないのに母親のメアリーは子どもを産み続け、コットの上には姉3人、下には赤ん坊、さらに今も妊娠中。
誰もコットに注意を向ける者などおらず、学校でも変わり者扱いされている。
 
両親はそんなコットを持て余し、夏休み中、家から追い出すことにした様子。
親戚夫婦のもとに預けることで話がまとまったらしい。
預けた先にいつまで預かってもらうか期限など切らずに、
好きなだけどうぞと言えばいいさという両親の会話を聞いてしまう。自分は要らない子なのか。
 
父親の車に乗せられてたどり着いたのは、メアリーのいとこアイリンとショーン夫婦の家。
手入れの行き届いた家、豊かな自然、愛情深い夫婦。
優しさ溢れるアイリンと、ぶっきらぼうで目すら合わそうとしないが善人だとわかるショーン。
生まれて初めて自分の居場所を見つけたコット。
 
「珠玉の」と言いたくなる作品に巡り会うことは年間にそう何度もありません。
これはそう言いたくなる。
 
ろくでなしどころか人でなしであろう父親。
コットを愛してはいるけれど、父親の言いなりになっているのであろう母親。
姉3人は意地悪なことこのうえなく、赤ん坊は一日中泣きわめいている。
こんな環境でまともに暮らせるはずもなく、コットはいまだにおねしょをしています。
アイリン宅でも預けられた初日におねしょをしてしまって、叱られると思いきや、
「まぁ大変。このマットレスはずっと湿っているのを忘れていた」なんてアイリンが言ってくれる。
 
ほとんど口をきかないショーンとふたりで過ごさざるを得なかった日、
その場を離れたせいでショーンから怒られます。
言い過ぎたと思ってもそれを口に出せないショーンの謝り方もいい。
テーブルの上にそっと置いて行くひとかけらのお菓子。
 
人に怯えながら生きていたコットが、アイリンとショーンのもとで笑顔を見せる。
彼らが自分たちの息子を亡くしていたことをいけずなババァから知らされてショックを受けるも、
コットが単なる身代わりとして大切にされていたわけではないことがわかるから、
その後も亡くなった息子の服を着続ける描写にジーンと来ました。
 
元の家族のもとへは返さないで。心底そう願いました。
血のつながりだけがすべてではない。

—–

『燈火は消えず』

『燈火は消えず』(原題:燈火闌珊)
監督:アナスタシア・ツァン
出演:シルヴィア・チャン,サイモン・ヤム,セシリア・チョイ,ヘニック・チャウ,ベン・ユエン,
   シン・マク,アルマ・クォク,ジャッキー・トン,ミミ・クン,レイチェル・リョン他
 
2日連続で仕事の後なんばパークスシネマに向かいました。
去年の暮れはそんな時刻になると新御大渋滞で、上映開始に間に合わなかったことも。
しかし年明けはたまたまなのか、がら空きとは言わないまでも空き空きで、
前日は18:05からの『レザボア・ドックス』、この日は18:00からの本作の上映開始に間に合いました。
 
タイトルの「燈火」は「とうか」ではなくて「ネオン」と読ませています。
香港夜景を彩っていたネオンサインが2010年の建築法改正によって撤去されるように。
2020年には元の約9割が姿を消してしまったそうです。
本作はネオンサインの職人だった夫を亡くした女性が主人公。
台湾出身の有名女優シルヴィア・チャンが監督。主演も彼女自身が務めています。
 
大好きだった夫のビルが亡くなり、妻のメイヒョンは悲しみの淵で立ち上がれずにいる。
ボーッとしたまま暮らしていたある日、夫の衣類の中から鍵を見つける。
それは昔気質のネオン職人だったビルの工房の鍵。
訪れてみると、そこでは今も誰かが作業している痕跡があった。
 
それを一人娘のチョイホンに話すと呆れ顔。
ビルがネオン職人を辞めてからもう長いのに、工房がまだ使われているはずがなかろうと。
しかし納得できないメイヒョンが再び工房に行くと、若者がいるではないか。
 
彼の名前はレオ。ビルの唯一の弟子なのだと言う。
ビルが死んだことを知らなかったレオは、家賃などの支払いに困り果てていた。
一方のメイヒョンは、夫に弟子がいたことも、まだ工房を開けていたことも初耳。
ビルは最後に作りたいネオンサインがあったらしく、
メイヒョンはレオに教えてもらいながら夫の願いを叶えたいと思うのだが……。
 
冒頭のビルとメイヒョンが一緒にいるシーンがとても好きだったのですが、
途中からなんだかメイヒョンに腹が立ってきます。
夫婦仲バッチリだと思わせられた冒頭だったのに、いつも不機嫌なチョイホンの話によれば、
おおらかで優しくて面白かった父親に対して、母親はまったく理解がなかった。
あれほどビルが情熱を注いでいたネオンサインの仕事も、メイヒョンは収入にならないと言って辞めさせた。
チョイホンが進学を望み、そのために金を工面しようとしたビルに対しても、
娘のために借金するつもりかと言い放ったメイヒョン。
 
つまり、ここでメイヒョンがしようとしていることは、ビルのためというよりも、
ビルのことをないがしろにしてきたメイヒョンの自己満足のためのように感じられます。
 
母親に冷たくしきれないチョイホンが、メイヒョンの老後を思って年金の契約などをしても、
そんなのは要らないから断れと言い、じゃあ生活費はどうするつもりかと聞かれると、
チョイホンに養ってもらうからいいとのたまう。そりゃ娘は呆れてしまうでしょう。
 
そんなこんなでイライラさせられはしたのですが、とても温かなエンディングに唸りました。
終わりよければすべて良し。なんかええ映画を観たなぁという気持ちに。
 
エンドロールでは何人もの本物のネオン職人の略歴と共にその作品が映し出されます。
ネオンサインぎらぎらの街なのに、下品ではない。どこか惹かれます。

—–

『サン・セバスチャンへ、ようこそ』

『サン・セバスチャンへ、ようこそ』(原題:Rifkin’s Festival)
監督:ウディ・アレン
出演:ウォーレス・ショーン,ジーナ・ガーション,エレナ・アナヤ,ルイ・ガレル,セルジ・ロペス,クリストフ・ヴァルツ他
 
なんばパークスシネマにて、前述の『レザボア・ドックス』の次に。
 
あっちもこっちも性加害のニュースばかりで本当に嫌になっちゃいます。
アレン監督も前作公開時にいろいろと取り沙汰されて、アメリカでは未公開の憂き目に遭いました。
『ミッドナイト・イン・パリ』(2011)が大好きだった私は、やっぱりそんな人だとは思いたくない。
 
……と思っていたのですけれど、これは全然駄目だったなぁ。(T_T)
 
かつて大学で映画について講義していたこともある作家モートは、
映画の広報担当者として活躍する妻スーに同行し、スペイン北部バスク地方の街サン・セバスチャンへ。
この街では映画祭が開催されているのだ。
 
スーが現在広報を担当しているのは、フランス人の若くてイケメンの監督フィリップ。
どうやらスーはフィリップにぞっこんらしいのが見た目にも明らか。
 
スーの浮気を疑うモートは不安のあまり体調不良に陥り、地元の女性医師ジョーの診察を受ける。
ジョーの夫は自由奔放な芸術家パコで浮気もし放題だから、夫婦間の喧嘩が絶えない。
そんなジョーのことも気になりはじめるモートだったが……。
 
モート役のウォーレス・ショーンは、言っちゃ悪いけどハゲちび小デブ。
大画面で見ていたい人ではありません。ごめんなさい。
この人の妻役がもうオバハンではあるというもののイケイケお色気たっぷりのジーナ・ガーション
彼女がモートと結婚したのは知性に惹かれたからであって、
作家だといってももう小説を書けそうにもないモートに興味はありません。
 
スーが若い監督に入れ上げるのもたいがい「オバハンの妄想」ですが、
まったくイケてない中年男が美人女医と良い仲になれるなんて考えるのは確実に「オッサンの妄想」
ワインを飲んで酔ったふうのジョーに向かって、「酔ったのはワインのせい?
それとも僕との魅力的な会話のせいかな」なんてほざくシーンはゾワーッとしました。(–;
 
だから、大嫌いなんだってば、オッサンとかオバハンの妄想。
ものすごくがっかり。
『サンクスギビング』の序盤で無残にも頭をちぎられたジーナ・ガーションが
最後まで美しいまま出演させてもらえていたことだけで良しとしましょかね。
 
あー嫌い。大嫌い。
年間ワースト3入りする気配すらある。まだ2月初旬だけど。(^^;

—–

『レザボア・ドッグス』【デジタルリマスター版】

『レザボア・ドッグス』(原題:Reservoir Dogs)
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:ハーヴェイ・カイテル,ティム・ロス,マイケル・マドセン,クリス・ペン,スティーヴ・ブシェミ,
   ローレンス・ティアニー,カーク・バルツ,エディ・バンカー,クエンティン・タランティーノ他
声の出演:スティーヴン・ライト
 
1991年のアメリカ作品のデジタルリマスター版がなんばパークスシネマで上映されていました。
クエンティン・タランティーノの名を一躍世に知らしめた作品として有名ですね。
2005年のイギリスの映画雑誌『エンパイア』が発表したインディペンデント映画ベスト50では1位に選ばれています。
当時の対抗馬は『ユージュアル・サスペクツ』 (1995)などなど。
 
それはきっと私が『パルプ・フィクション』(1994)を教えたからだと思います。
本作のDVDも弟の部屋にあったのを思い出し、観に行ったというわけです。
 
ロサンゼルスの裏社会を牛耳る大物ジョーは宝石店に押し入ることを計画。
息子エディを司令塔に指名し、確かな腕を持つと見込んだ6名を実行メンバーとして集める。
もしもお互いの本名や出身地などを知れば、何かの拍子にポロリとそれを口走ってしまうかもしれないと、
素性を隠すためにコードネームで呼び合うことに。
 
ジョーが決めたコードネームは、ミスター・ホワイト(ハーヴェイ・カイテル)、ミスター・オレンジ(ティム・ロス)、
ミスター・ブロンド(マイケル・マドセン)、ミスター・ピンク(スティーヴ・ブシェミ)、
ミスター・ブルー(エディ・バンカー)、ミスター・ブラウン(クエンティン・タランティーノ)。
 
計画は簡単に実行できるものと思われたが、警報が鳴るが早いか警官が駆けつける。
ホワイトは、銃で撃たれて重篤なオレンジを抱えて車に乗り、なんとか集合場所の倉庫にたどり着く。
しばらくして現れたピンクは、メンバーの中に警察のイヌがいるに違いないと主張。
次にやってきたブロンドは、現場から人質として連れてきた若い警官を拷問し、誰がイヌかを吐かせようとするのだが……。
 
それぞれのキャラクターがよく書き込まれていて面白いですよねぇ。
自分で脚本を書いて、出演もして、明らかな低予算でこんな1本を撮り上げたタランティーノ。
そりゃみんな大騒ぎしたことでしょう。
 
私も30年以上ぶりに観ましたが、やっぱり楽しい。グロいシーンも多いけど。
弟のお気に入りだった作品であることも含めて、いろいろと懐かしくなります。
エディを演じたクリス・ペンはその後40歳のときに亡くなり、もうとっくにこの世にいません。
一方で、ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、スティーヴ・ブシェミといった俳優たちは、
相当なオッサン、いえ、ジジイになってはいるものの、まだ現役。
 
懐かしさでいっぱい。
観に行ってよかったと思います。

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『哀れなるものたち』

『哀れなるものたち』(原題:Poor Things)
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:エマ・ストーン,マーク・ラファロ,ウィレム・デフォー,ラミー・ユセフ,ジェロッド・カーマイケル,
   クリストファー・アボット,キャスリン・ハンター,ハンナ・シグラ,ヴィッキー・ペッパーダイン他
 
109シネマズ箕面にて。
 
スコットランドの作家アラスター・グレイの同名ゴシック小説をギリシャ出身のヨルゴス・ランティモス監督が映画化。
この監督の日本で初めて公開された作品『籠の中の乙女』(2009)を観たときの衝撃はいまだに忘れられません。
鬼才か奇才かと言うけれど、やっぱり変態だと思います。好きですけどね(笑)。
 
ある日、医学生のマックス・マッキャンドルズは、心酔する天才外科医ゴドウィン・バクスターに呼ばれる。
ゴドウィンの邸宅について行くと、そこには世にも美しき痴人がいた。
 
その痴人の名はベラ。
ゴドウィンはベラの行動の一部始終を書きとめて記録するようにマックスに言う。
大人の女性の容姿でありながら、まるで幼児のごとき振る舞いのベラに驚きつつ、
彼女の魅力に取り憑かれたマックスは、ベラの事情を知りたいと思い、ゴドウィンに詰め寄る。
 
するとゴドウィンが語ったのは信じがたい話。
橋の上から女性が身投げする瞬間を目撃したゴドウィンが駆け寄ると、
女性はすでに息絶えていたが、彼女は妊婦だった。
ゴドウィンは腹の中の胎児を取り出すと、胎児の脳を遺体の脳に移植し、女性を生き返らせる。
肉体は女性、脳は赤ん坊のベラを育てる実験をしているゴドウィン。
マックスはその成長過程を記録する役目を与えられたのだ。
 
目覚ましい成長を見せるベラは、自我の芽生えと共に、外の世界に興味を持ちはじめる。
彼女を外に出したくないゴドウィンは、ベラとマックスを結婚させて邸宅に閉じ込めようとするが、
婚姻の書類を作成しに訪れた放蕩弁護士ダンカン・ウェダーバーンは、ベラを連れて行こうとする。
 
ダンカンとの駆け落ち計画をもゴドウィンに素直に報告するベラは、
いずれ戻ってマックスと結婚するから、しばらく冒険の旅に出たいと告げる。
ゴドウィンとマックスはそれを了承してベラを送り出すのだが……。
 
グロさの点では『サンクスギビング』の上を行く。しかしとても面白い。
この監督のことですから、ひょえ~というオチか、なんじゃいこれというオチを予想していたのに、
なんだかんだでこれはハッピーエンドじゃあないですか。
 
見た目は女性だけれど頭の中は赤ん坊だったベラが成長して行くと、
食べるものへの興味と性への興味がいちばんに出てきます。
性行為を「熱烈ジャンプ」と評する彼女が可笑しい。字幕翻訳松浦美奈さん。最高です。
 
プレイボーイを自認し、ベラとちょっと遊ぶつもりだったのに骨抜きにされるダンカン。
豪華客船に乗ってベラと外界との関わりを断とうとするも失敗し、困り果てます。
船上で知り合った老女に知識欲を刺激され、どんどん賢くなっていくベラ。
ダンカンはベラを思い通りにできずに荒れて泣き崩れるだけですが、
ベラのほうはパリの娼館にたどり着くとそこでたくましく生きるすべを覚えます。
 
凄い脱ぎっぷりを見せてくれたエマ・ストーンの演技が素晴らしい。
ダンカン役はマーク・ラファロ“アベンジャーズ”“ハルク”のイメージが強いですが、
こんなダメダメ男もよく似合っていて上手い。
つぎはぎだらけの顔のゴドウィン役、ウィレム・デフォーは言うまでもなくさすがです。
マックス役のラミー・ユセフにも温かみがあってよかった。
 
万人には鑑賞を勧められませんが、面白くて良い映画を観たなぁと思えます。

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