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『月』

『月』
監督:石井裕也
出演:宮沢りえ,磯村勇斗,大塚ヒロタ,笠原秀幸,板谷由夏,モロ師岡,
   鶴見辰吾,原日出子,高畑淳子,二階堂ふみ,オダギリジョー他
 
見逃していた本作がシアターセブンで上映されているのを知って駆けつけました。
ヘヴィーすぎて、配信やDVDでは観る気になれないと思ったから。
 
石井裕也監督のことは『川の底からこんにちは』(2009)で大好きになりましたが、
たまに観るのを躊躇するほど重い題材で撮るんですよね。
本作は2016(平成28)年に起きた相模原障害者施設殺傷事件をモチーフにしています。
 
東日本大震災に絡めた処女作が大当たりした作家・堂島洋子(宮沢りえ)。
しかし以降は何も書けず、近隣の森の中に佇む知的障害者施設で働きはじめる。
 
夫の昌平(オダギリジョー)は映像作家を目指しているが、なかなか芽が出ず。
このままではいけないと、マンションの管理人の職に就く。
 
洋子の勤務初日に施設内を案内してくれたのは坪内陽子(二階堂ふみ)。
彼女は、自分も洋子のような作家になりたくてネタ探しのためにここに勤めていると言う。
 
重度の知的障害者が入所するこの施設では、虐待が常態化しているなか、
職員の自称さとくん(磯村勇斗)は絵が得意らしく、紙芝居を制作して入所者に見せていたが、
ほかの職員たちから手間が増えるだけだと文句を言われる。
 
ある日、陽子とさとくんを堂島家に招いたところ、
陽子は酔っぱらって洋子の小説を非難するわ、洋子が昌平に内緒にしていたことを暴露するわ。
さとくんが別の話を始めてくれたはいいが、それはさとくんの闇を匂わせる不穏な話で……。
 
モチーフとなっている事件の犯人は津久井やまゆり園の職員・植松聖(さとし)でした。
磯村勇斗演じるさとくんがその役ということになります。
さとくんは、口をきくことのできない障害者を「心のない者」とし、
この世で生きている価値はないとの考えから犯行におよびます。
 
事件前にさとくんと話す機会のあった洋子は、彼の犯行を予測し、
人を傷つけてはいけない、あなたの考えを認めないと憤る一方、
生まれてくる子どもに障害があるとわかれば中絶しようかという思いがよぎって自己嫌悪に陥ります。
洋子と昌平の間には息子がいましたが、先天的な心疾患を持っていたその子は3歳で他界。
夫婦の心の傷は何年経っても癒えることなく、洋子は次の子どもを持つのが不安だから。
出生前診断で胎児の異常がわかれば95%以上の人が中絶を選ぶという事実。
 
さとくんの犯行を許すことはできないけれど、耳元でわけのわからぬ言葉をずっと囁かれ、
唾や糞尿にまみれて患者の世話をしても、月給は手取り17万円。
陽子が言うように、まともな思考を持てなくなっても仕方ないと思わなくもない。
酷い施設だとわかっていても、よそはどこも受け入れてくれないから致し方ないと考える家族。
寝たきりの入所者の母親役、高畑淳子の叫びが胸に突き刺さります。
 
フィクションとは思えない状態に、なんとかならないものかと考える。
考えても何にもしない。私も同罪です。
 
余談ですが、「出生」は「しゅっしょう」と読むのが正しかったはずですが、これはもう過去のことなのか。
最近映画やテレビで「しゅっせい」と読まれることのほうが多い。
また、「他人事」も「ひとごと」ではなくて「たにんごと」と読むのが普通になっているようで、
そんな台詞を耳にするたびに、こうして読み方は変わって行ってしまうのかなぁと思うのでした。

—–

母のこと。

1930(昭和5)年生まれ、93歳の母がその生涯にもうじき幕を下ろそうとしています。
 
母にとっての息子、私にとってのが亡くなったのが一昨年のこと。
あのときは悲しくて悲しくて、だけど息子に先立たれた両親のほうがより悲しかろうと思うから、
私の家とめちゃ遠くもないけれど至近距離にあるとは言えない実家へ仕事帰りに毎日通いました。
後から考えると、よくもあんなに毎日寄れたものだと思います。
母とあの頃のことを振り返り、「みんなアタマおかしくなってたもんね」と話しました(笑)。
 
その年の11月、母の貧血の値がよくないということで総合病院で診察を受けたら、大腸がんだと判明。
手術で切除し、高齢とは思えないほどの回復力を発揮して1週間で退院。
術後の経過も良くて安心していたところ、昨年5月に肝転移していることがわかりました。
 
しかしまったく自覚症状がなく、あまりになさすぎてホスピスでの面談も叶わず。
もうちょっと自覚症状が現れてから予約を取ってくださいと言われてずっとそのまま。
6週間毎に受けている診察では、主治医曰く「もう数値が良くはなることはないが、最悪ってこともない」。
昨年12月に93歳の誕生日を迎えた頃、手足に浮腫が出てきたものの、眠い以外は元気で。
なにせ主治医からは昨年肝転移した時点で「年を越すのは難しい」と言われていたのに、
余裕で年を越して3カ月以上過ぎたのです。
 
今月7日の朝、電話してきた折に「起きて着替えたんやけどね、なんか夢見てるみたい。これは現実かな」と言う。
「大丈夫やで、お母さん、ちゃんと現実で私と話してるで」と言うと安心したようで、
午後からは訪問リハビリの人が来られるし、夕方には私も寄るからということで電話を切りました。
 
ところが午後になって訪問リハビリの人から「部屋のインターホンを押しても応答がない」と連絡が。
慌てて駆けつけたらリビングで倒れていました。
命はあってひと安心しましたが、救急車が到着したときには意識混濁。
がんのせいで肝不全を起こしており、食事はちゃんと摂れていたにも関わらず低血糖に陥り、
体温も計測不可能なほど下がっていました。
 
病院に搬送されたのち、ブドウ糖の点滴を受けるも効いている様子はないとのことで、
相当危ない状況ですと言われましたが、なんとか復活。でももう元通りにはなれません。
 
今日明日いつ亡くなっても不思議はない状態で、あと数日か1週間か。
でも1カ月はもたないと主治医から断言されています。
こんな状態ではあるものの意識不明というわけではなく、面会時にちゃんと話ができています。
幸い痛みはないようで、母はおそらく自分が死ぬなんてことは考えていないと思います。
 
思えば、弟の闘病生活が始まるまではスマホはおろかケータイも持ったことがなかった私。
弟が亡くなった後に母の電話代に驚き、92歳だった母にスマホデビューさせました。
電話はできるようになってもLINEは絶対無理だと周囲から言われていて、実際教えてみると本当に大変。
皆さん簡単に「ここを押せば」みたいなことをおっしゃいますが、
年寄りがスマホを持つとこちらの想定外のことが起こります。タップもスワイプも難しいようで。
 
「あー無理、もう絶対無理!」とキレつつ教え続けました。
「あまりスパルタで教えたげんといて、お母さん可哀想」という友だちの横で母が言う、
「うん、でもねぇ、スパルタじゃないと響かないから」。
そして見事、LINEも使えるようになった母。
 
すごく楽しかったです。
まず、スタンプの使い方にセンスがある。適当に押しているわけではなく、正しいスタンプで笑わせてくれる。
「おはよう 大丈夫」に始まり、「おやすみなさい 感謝」までが日常になりました。
私以外の知人友人ともできるかぎりLINEを繋いで、母は「世の中にこんな便利なものがあるなんて」と嬉しそう。
句読点を上手く打てないおかげで、いま話題になっている「マルハラ」なし(笑)。
 
弟の生前は、弟のほうが私よりずっと実家の近くに住んでいたから、何かと弟に任せることが多く、
それほど頻繁には実家に寄らなかったけれど、弟が亡くなったせいかおかげか母と過ごす時間がグッと増えました。
回転寿司未体験だった母と病院帰りに“にぎり長次郎”へ寄って、季節のおすすめランチを食べるのが恒例。
コメダ珈琲店へは私も行ったことがなくて、母と初入店しました。
京都へのお墓参りや、母の友人を誘ってのランチなど、この2年弱でどれだけ思い出が増えたことか。
 
母は他人への不満を口にすることがなく、いつも「感謝感謝の毎日です」と言っていました。
入院中の病院でも私はたまに「ん?」と思うようなことがあるのに、
母自身はそんなことを思ってもみないようで、看護師さんたちのことを「みんなよくしてくれてね」と言ってます。
自分を囲んでくれている人は当たり前に存在しているわけじゃないのだから、感謝しなくちゃ。
私も見習わなければと思う。

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『パレード』

『パレード』
監督:藤井道人
出演:長澤まさみ,坂口健太郎,横浜流星,森七菜,黒島結菜,中島歩,若林拓也,深川麻衣,でんでん,
   髙石あかり,北村有起哉,舘ひろし,木野花,奥平大兼,田中哲司,寺島しのぶ,リリー・フランキー他
 
2月29日よりNetflixで独占配信されている藤井道人監督作品です。
藤井監督といえば公安から目をつけられそうな(じゃなくて、つけられたでしょう)『新聞記者』(2019)で
時の人になった感がありますが、その後も硬軟織り交ぜてコンスタントに映画を撮り続けていらっしゃいます。
 
本作はキャストを見ただけで良作が期待できる。
今回はどんな作品を撮られたのか楽しみにして鑑賞に臨みました。
 
大きな地震に見舞われた町。
瓦礫が打ち上げられた海辺で目を覚ましたシングルマザーの美奈子(長澤まさみ)は、
6歳の一人息子・良(岩川晴)と離ればなれになってしまったことに気づく。
慌てて良を探すが、行き交う救助隊の人も避難所ですれ違った人も、誰にも美奈子の姿は見えていないらしい。
 
呆然としている美奈子に声をかけてきたのは、青年・アキラ(坂口健太郎)。
自分のことが見えている彼は何者なのか。
藁にもすがる思いで誘われるがままについていくと、草っ原の陰に現れたのは地震とは無縁の場所。
バーがしつらえられ、テーブルを囲んで和む男女の姿があった。
 
アキラによれば、ここにいるのはみんな亡くなった人。
死んだにもかかわらず、この世に未練を残しているせいで“その先”に行けないのだと言う。
アキラ以外の住人は、元ヤクザ・勝利(横浜流星)、元銀行員・田中(田中哲司)、
元スナックのママ・かおり(寺島しのぶ)、元映画プロデューサー・マイケル(リリー・フランキー)。
 
未練があるというわりには、ただ集まってダラダラしているだけの彼らを見て美奈子は苛立つ。
出て行こうとするとアキラに止められ、あと1日だけつきあってほしいと言われる。
 
ちょうどその日は新月。
出かけるマイケルたちについて行くと、誰かを探している大勢の人が歩いているではないか。
美奈子と同じように、会いたい人を探し続けてその先に行けない人がこんなにもいる。
それはまさに“パレード”。パレードに参加したことをきっかけに、アキラたちに心を開きはじめる美奈子。
 
そんな折、手首を切って自殺を図った女子高生・ナナ(森七菜)がやってくる。
終始ふてくされた態度で、死ねてせいせいしているとナナは言うのだが……。
 
生活の心配なく、毎日飲んで食べて歌って好きなことをして。
死後にこんな世界があるならば、死ぬのも怖くないかもしれないと思いました。
だけどそれぞれに未練がある。
残してきた家族や恋人や友人のことが気がかりだったり、やり残したことがあったり。
その未練をなくすために、会いたい人を探しに行く。
 
死んでいるのだから空間移動もできそうなもんですが(笑)、車やバイクで移動。
どうやら死の瀬戸際にいる人にだけはこちらの姿が見えるようで、
そのおかげで美奈子は良と言葉を交わすことができたのだと思います。
 
心残りがひとつもなく死にゆくことはたぶんできない。それでも人は死んでゆく。
やっぱり、明日死んでもいいように生きたいなぁ。

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『映画 ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)』

『映画 ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)』
監督:今井一暁
声の出演:水田わさび,大原めぐみ,かかずゆみ,木村昴,関智一,平野莉亜菜,菊池こころ,
     チョー,田村睦心,賀屋壮也,加賀翔,芳根京子,石丸幹二,吉川晃司他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
“映画 ドラえもん”は声優の交代前と交代後で第1期と第2期に分けるそうで、
本作は第2期の第18弾、劇場版の通算では43作目に当たるようです。
 
私は“ドラえもん”よりも“クレヨンしんちゃん”派。
特に近年はのび太の性格が目に余り(笑)、呆れているうちに寝てしまうのがお決まりコース。
今回も絶対寝るよねと思いながら観に行ったら、前夜に睡眠たっぷりだったおかげか、
それとも本作が面白かったせいか、まったく睡魔に襲われませんでした。珍しい。
 
まもなく学校の音楽会
同級生はみんな楽しげにリコーダーを吹いているが、リコーダーはもちろん、
音楽そのものに苦手意識のあるのび太にとっては苦痛でしかない。
そこでこっそりドラえもんのひみつ道具“あらかじめ日記”に音楽がなくなるように書き込んだところ、
音楽の授業がなくなるどころか、町からすべての音楽が消えてしまう。
母親が赤ん坊に聞かせる子守唄縁側で爺ちゃんが聴く演歌、鳥のさえずり、何もかも。
大慌てで音楽のある世界に戻す。
 
観念したのび太がひとりでリコーダーを練習していたところ、不思議な少女ミッカが現れる。
同級生からけなされてばかりののび太のリコーダーの音を彼女は気に入ったらしく、
のび太とドラえもん、ジャイアン、スネ夫、しずかを自らの惑星“ファーレの殿堂”に招待したいと言う。
 
ファーレの殿堂は音楽をエネルギーとする惑星だが、不気味な生命体“ノイズ”に侵されて危機に陥っていた。
もしもノイズをこのまま放置すれば、ファーレの殿堂どころか地球も危機にさらされることになる。
音楽を奏でることでファーレ、そして地球を救えると知ったのび太たちは、ミッカと一緒に演奏し、
音楽の力でファーレの殿堂と地球を守ろうとするのだが……。
 
本作も冒頭は「のび太め~」と言いたくなりました(笑)。
まったく、どうして彼は自分でなんとかしようとしないんでしょうねぇ。
とはいうものの、昔、ホンマもんの音痴だった友人の歌を聴いて衝撃を受けたことがある私は、
音楽のセンスが皆無の人の気持ちを察したくはなります。
 
でも、のび太が人知れずリコーダーの練習を始めた辺りからは応援したくなる。
ファーレの殿堂に音楽が響き渡り、音がノイズをつぶしていくさまも面白い。
楽器も心を持っているのかもしれません。
 
なんというのか、今回のドラえもんがよかったというよりは、
音楽というネタに惹かれたってことになりましょうか。

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『ポーカー・フェイス/裏切りのカード』

『ポーカー・フェイス/裏切りのカード』(原題:Poker Face)
監督:ラッセル・クロウ
出演:ラッセル・クロウ,リアム・ヘムズワース,RZA,ブルック・サッチウェル,エイデン・ヤング,スティーヴ・バストーニ,
   ダニエル・マクファーソン,ポール・タッソーネ,エルサ・パタキ,ジャック・トンプソン他
 
TOHOシネマズなんばにて、前述の『52ヘルツのクジラたち』の次に。
 
ラッセル・クロウが監督と主演を務めています。
冒頭映し出された彼の顔を見て、歳を取ったなぁと思いました。そう言うこっちもそうなんですけど。(^^;
 
少年時代からポーカーに親しみ、勝利の術を会得していたジェイクは、
幼なじみのアンドリューと共に世界初となるオンラインポーカーゲームのシステムを開発。
儲けに儲けまくって億万長者となる。
アンドリューとの絆には及ばないが、そのほかの幼なじみたちにも配当を分け与えていた。
 
そんなジェイクが末期の膵臓癌と診断され、自分の財産をどうするか考える。
仲間でありながらジェイクの金を当てにして要らぬことをしていた者がいることも知っている。
最後に彼らの本音を聴き出すことにしたジェイクは、
ある夜、自宅でポーカーナイトを開催すると4人を誘い出す。
 
アンドリュー以外は知らされた時間に集合。
政治家のポール、ベストセラー作家のアレックス、ぶらぶらしているマイケル。
そこにこの日の趣旨を知るジェイクの相続財産管理人で弁護士のサムも同席。
3人はそれぞれジェイクが所有する高級車の中から好きな車を選んでここへ来ていた。
 
ジェイクの提案は、2択。
いま乗ってきた車をそのまま自分たちのものにして持ち帰るか、
ひとり2500万ドルのチップを賭けて勝者の総取りでポーカーをするか。
全員一致の選択をしなければこの話は無し。
しばし迷ったものの、3人はポーカーを選択するのだが……。
 
ジェイクの自宅にはコレクターがよだれを垂れそうな美術品がたくさん。
それをポールから聞いた兄ヴィクターが仲間を連れて盗みにやってきます。
ジェイクはワイングラスの底に自白剤を仕込んでいて、
ポーカーの最中にその毒が少しずつ回りはじめ、3人は不安定な状態に。
また、強盗のヴィクターもワイングラスに手を触れたものだから、ヨレヨレしてきます(笑)。
 
ジェイクの家に美術品があることを不用意に兄に教えたポール。
ジェイクの妻と浮気しているアレックス。
ジェイクからもらった金を酒にばかりつぎ込んでいたマイケル。
弁護士のサムは立場は違いますが、ジェイクの金で儲けようとしています。
みんなジェイクと親しいふりをしながら陰で何をやっているかわかりません。
場合によっては鉄拳制裁を加えてやろうと思っていたところへ強盗。
ついでに、父親の余命を知った一人娘と妻もやってくるんですねぇ。
 
最初のラッセル・クロウの顔を見てハズレかもと思ったものの、意外と楽しめました。
最後はみんな心を入れ替えたのかなぁ。
ひとり5000万ドルもらえることになったら、どうします!?
残りの財産全部こんな若い娘にというのも、行く末が心配だ。この子、イケイケだし(笑)。

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