MENU
ChatGPT-Image01
ChatGPT-Image02
ChatGPT-Image03
ChatGPT-Image04
ChatGPT-Image05
previous arrow
next arrow

『異人たち』

『異人たち』(原題:All of Us Strangers)
監督:アンドリュー・ヘイ
出演:アンドリュー・スコット,ポール・メスカル,ジェイミー・ベル,クレア・フォイ他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
1987年に出版された山田太一の小説『異人たちとの夏』を読んだのはいつのことだったでしょうか。
おそらく30年以上前でしょう。
内容はよく覚えていないのですが、当時まだ若かった私はラストシーンにビビり、
少し怖い思いをしたように思います。
 
1988年には大林宣彦監督によって映画化されましたが、これは観たかどうかさえ記憶なし。
だって私は大林監督がちょっと(だいぶ)苦手なんです。(^^;
ただ、本作はなんとなく大林監督にピッタリな気がしますから、良い映画化だったのかな。
 
さて、本作はイギリス出身のアンドリュー・ヘイ監督によるリメイクで、イギリス/アメリカ作品。
原作の「ちょっと怖いラスト」だけを覚えている状態で鑑賞しました。
 
映画の脚本家である彼は、12歳のときに交通事故で両親を亡くした。
今は両親との思い出を基に脚本を執筆中。
 
ある日、両親と過ごした郊外の家を訪ねたアダムは、実家が残っているばかりではなく、
30年前に他界したはずの両親が歳を取ることなくそのままの姿で暮らしていることに驚愕。
成長したアダムを見た両親は感激し、家の中にアダムを招き、さまざまな話をする。
以降、実家に足繁くかよっては、満たされる心を感じるアダム。
 
一方、タワマンの住人で話したこともなかったハリー(ポール・メスカル)が突然訪ねてくる。
酒を飲もうと言うハリーを一度は拒絶したアダムだったが、
ハリーのことがなんとなく気になり、語り合うように。
クィアかと問われて即座に返答できずにいたが、それを認め、肉体関係を結ぶ。
たちまち情熱的な恋に落ちたふたりは、それからずっと一緒にいるようになり……。
 
暗いです。でも、繊細で美しい。すごく良かった。
なにしろこのタワマン、相当な戸数があると思われるのに、入居者はたったふたり。
都会のタワマンを外から見たときの、たった2軒に明かりが灯る様子がすでに怪奇的なのに、
幻想的でもあって魅入られます。
 
幼い頃から自分はゲイだと認識していて、学校ではいじめられていたのに、親には言えなかったアダム。
母親(クレア・フォイ)はそのことに気づいていなかったけれど、
父親(ジェイミー・ベル)は気づいていたし、アダムが自室でひとり泣いていることも知っていた。
なのに決してアダムの部屋に入ろうとしなかった理由をいま父親に尋ねると、
父親もなぜ話さなかったのかとアダムに問い返します。このやりとりに興味を引かれる。
 
大人になった自分と、あの頃のままの両親と話せる幸せ。
だけどいつまでもこんなことは続かない。
アダムが実家にハリーを連れて行き、両親に紹介しようとしたときに状況が変化します。
 
原作も大林監督の映画版もこんなゲイの作品ではなかったかと思いますが、
主人公をゲイとすることで新しい作品になったと思います。
アダムとハリーにはかなりの年齢差があって(ハリーのほうがずいぶん若い)、
“クィア”と“ゲイ”という言葉選びも違えば、ゲイに対する認識も環境も違う。
それを実に上手く物語の要素として取り入れています。
 
昔は少し怖く感じたラストは、切なさでいっぱい。
悲しすぎて、胸がキューッと絞られるよう。
 
あんなにもよく聴いたペット・ショップ・ボーイズの曲の歌詞がこんな意味だったなんて知らなかった。
たぶん、ずっと心に残る作品。

—–

2024年4月に読んだ本まとめ

2024年4月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1523ページ
ナイス数:652ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2024/4
■夏の終わりの時間割 (講談社文庫)
200頁ちょいの薄さに反して内容は厚い。誰しも行動の裏には理由があるのですね。さらっとうわべを見ているだけではわからないことがある。そこに考えを及ばせたとき、本作で「何かを起こした人」それぞれの気持ちに想いを馳せると切なくなります。生活の節約術だったり蜂避けのおまじないだったりは初耳で目からウロコ。それがまた切ない要因。余談ですが、先月から母が危篤状態にあります。死ぬ間際の人は嘘をつかない。もともと嘘はつかない人だけど、病床でいま言うことは本心でしょうね。最期の時間を大事にしたい。
読了日:04月05日 著者:長岡 弘樹
https://bookmeter.com/books/18098406
■晴れときどき涙雨 髙田 郁のできるまで (幻冬舎文庫)
不思議なもので、何気なく読み始めた本に、いま自分が置かれているのと同じ状況の描写が出てくることがあります。同じ状況ならば気づくというだけで、不思議でも何でもないことなのでしょうけれど。先月からずっと母が危篤状態にあります。本作のひとつめの話『抱擁』で高田さんの心配ばかりしているPさんが母と重なりました。93歳の母が残る私の心配をするのはおかしいと思うのに(笑)。心配をする相手がいるのはきっと幸せなことなのですね。タイトルだけで心に刺さる。高田さんがこんな人生を送られてきたとは知らず。明日はきっと味方だ。
読了日:04月06日 著者:髙田 郁
https://bookmeter.com/books/9020770
■ぎょらん (新潮文庫 ま 60-22)
先月から危篤状態が続いていた母。今朝病院から「意識が低下して呼吸が浅くなっている」と連絡があり、駆けつけました。それからおよそ1時間半、眠るように母逝く。母の手を握りながらいろんな話をして、あと50頁ほどだった本作を開き、「お母さん、これな、人が死ぬときに遺す珠の話やねん」とぽつぽつ声に出して読みながら過ごしていたら、ちょうど全部読み終わりそうになったときに、母の心拍数がゼロに近づきました。「お母さん、ありがとう」と言ったら、スーッと涙ひと筋。聞こえていたならいいなぁ。明後日のお葬式ではぎょらんを探すよ。
読了日:04月11日 著者:町田 そのこ
https://bookmeter.com/books/21308313
■20歳のソウル (幻冬舎文庫)
死にゆくの枕元で町田その子の『ぎょらん』を読み終えてから1週間と少しが経過しました。母は癌だったというものの、90歳を超える高齢でしたし、こちらの覚悟もできていたから、今の私は寂しいけれど悲しくはない。だけど本作を読むと、2年前に亡くなった弟のことを思い出し、弟の半分よりも短い生涯を閉じた大義くんを想って悲しさでいっぱいになります。ロードショーの折に劇場にて鑑賞しましたが、本作を読むと、市船に丹念に取材をしなければ書けない話だなぁという思いはひとしお強くなりました。空の上も音楽が溢れていればいいと思う。
読了日:04月22日 著者:中井 由梨子
https://bookmeter.com/books/18041920
■そこに無い家に呼ばれる (中公文庫 み 50-3)
母が亡くなってから2週間と少し。こんな話を読む心境ではないはずが、三津田さんにはスルスルと吸い寄せられ、母の遺影に見守られながら読みました。巷で大ヒットを飛ばしているいくつかのモキュメンタリーも読みましたが、やっぱり私は断然こっちが好き。なんとも言えない余韻があって、深い。何かが一つずつ減っていたり増えていたりしたら気をつけよって、わざわざそういうのを見つけて数えてしまうじゃあないですか(泣)。ラスト3頁は『逆転美人』並みの労力を感じました。というのは『逆転美人』の藤崎さんに失礼ですかね(笑)。怖かった。
読了日:04月30日 著者:三津田 信三
https://bookmeter.com/books/21364304

—–

『ソウルフル・ワールド』

『ソウルフル・ワールド』(原題:Soul)
監督:ピート・ドクター
声の出演:浜野謙太,川栄李奈,福田転球,梅田貴公美,北西純子,定岡小百合,丸山壮史,RICO,横溝菜帆他
 
コロナ禍のせいでしょう、劇場公開はされずにディズニープラスにて独占配信されていた作品のうち、
ディズニー&ピクサーの“泣ける名作”として3作品が劇場公開に至りました。
しかし上映期間が短すぎて、『私ときどきレッサーパンダ』(2022)は見逃し、
『あの夏のルカ』にはなんとか間に合い、そして最後の本作も滑り込みで鑑賞することができました。
2020年の作品です。イオンシネマ茨木にて。
 
ジョー・ガードナーはジャズピアニストになることを夢に見続けている臨時の音楽教師
ある日、校長から正式に雇うとの書面を受け取り、喜ぶべきだろうが喜べない。
もしも正式に教師として勤めることになれば、夢は叶わないのだ。
 
迷っていた彼のもとへ、かつての教え子であるドラマーのカーリーから電話が入る。
カーリーは超有名な女性サックス奏者ドロシア・ウィリアムズのバンドで演奏することになったらしい。
さらにカーリーが言う、今晩ドロシアのバンドで一緒に演奏しようと。
ドロシアのお眼鏡に叶えばジョーも夢のジャズミュージシャンになれるのだ。
 
一張羅に着替えるといそいそと街を歩くジョーだったが、マンホールに落ちて意識を失う。
目覚めるとどうやら自分は死の淵にいて、もう死ぬことが決まっている様子。
なんとか元の世界へ戻ろうとする彼は、人間として生まれる前のソウル(=魂)たちのうちのひとり、22番と出会う。
22番を連れて元の世界へとりあえず戻ったものの、ジョーの体は22番のものだから、
今宵のライブが始まる前になんとか自分の体を22番から取り返さねばならず……。
 
かなり哲学的で、『あの夏のルカ』ほどわかりやすくはありません。
人はなぜ生まれるのかとか生きる意味なども問われ、母を亡くしたばかりの私にタイムリーな話題ではあるけれど、
巷の高評価ほどは面白いとは思えなくて、時折睡魔に襲われる。またかい!(笑)
 
結局、生きる意味など考える必要なんてない。
なぜ生まれるのかなんて考えたところで、生まれるものは生まれ、死ぬものは死んでゆく。
意味を見出さなければ生きていられないなんてことはないのですよね。
 
「それはきらめきなんかじゃない。普通のことさ」。
そう、普通のことこそがきらめきで、些細なことで喜んだり、美しいと思えたり、
それが生きているということなのだろうと思いました。
 
これはジェイミー・フォックスティナ・フェイの声で観たかったな〜。

—–

『陰陽師0』

『陰陽師0』
監督:佐藤嗣麻子
出演:山﨑賢人,染谷将太,奈緒,安藤政信,村上虹郎,板垣李光人,國村隼,北村一輝,小林薫他
 
母の告別式翌日は大阪市内へ出た勢いで映画を4本ハシゴしましたが、
それ以降、実家の片付けに精を出すと疲労困憊。
どうにも劇場へ行く気が起きず、帰宅して酒飲んでダラダラ、就寝という毎日。
このままでは私は映画に戻れなくなりそうだと(んな大袈裟な(^^;)、
実家からの帰り、1週間ぶりに劇場鑑賞するため、109シネマズ箕面へ。
 
原作は夢枕獏の人気小説シリーズなのだそうですが、未読です。
監督は『アンフェア the end』(2015)の佐藤嗣麻子。
夢枕獏と佐藤監督は何十年も前に知り合い、夢枕獏のほうから佐藤監督に映像化を望んだとのこと。
ま、原作が何であろうと、監督が誰であろうと、山﨑賢人主演なら観る。
 
平安時代、陰陽師を教育する学校“陰陽寮”の学生・安倍晴明(山﨑賢人)は、
幼い頃に両親を失い、陰陽博士の賀茂忠行(國村隼)に育てられた。
呪術の天才である晴明は賀茂の弟子となって入寮したものの、陰陽師にまったく興味がない。
他の学生が少しでも出世しようと必死な姿の中で晴明だけは冷めている。
 
そんなある日、晴明は雅楽家として知られる貴族・源博雅(染谷将太)から面会を求められる。
醍醐天皇の皇孫・徽子女王(奈緒)が怪奇現象に悩まされているらしく、
彼女にひそかに想いを寄せる博雅は晴明の力を借りて徽子を助けたい様子。
つれない素振りを見せつつも、博雅と共に徽子のもとを訪ねた晴明は見事解決してみせる。
 
一方、陰陽寮では、得業生だった橘泰家(村上虹郎)が不可解な死を遂げる。
表向きは事故とされているが、他殺であることは間違いない。
次の得業生を誰にするかという話になり、天文博士の惟宗是邦(北村一輝)が学生に試験を課すと言う。
その試験とは、泰家を殺した犯人を挙げるというもので……。
 
キャストが豪華なだけに、やっていることが大掛かりだと茶番にも見えて、
時折失笑してしまうようなシーンもあるのですが、これはこれで面白い。
 
それにしても、陰陽師ってこんなにも器が小さい人ばかりなのかしらと残念至極。
晴明以外の学生たちは出世しか頭にありません。
上を狙うには歳を取りすぎている平郡貞文(安藤政信)が応援したくなる人物なのかと思ったら、
ちっちぇえちっちぇえ。だからいつまでもそんなんやねん。性格ひねくれすぎ。
陰陽頭の藤原義輔(小林薫)だって、アンタなんかにラストチャンスをやるものか。
 
とにかく晴明と博雅のコンビが楽しくて、続編にも期待が膨らみます。
ツンデレの晴明が初めて「ありがとう」を口にしたときの嬉しそうな博雅の顔。
「『ありがとう』は何度言われても嬉しいものだ」という台詞に、
毎日「ありがとう」と言ってくれた母のことを思い出してまた泣いちゃいました。

—–

『フォロウィング』

『フォロウィング』(原題:Following)
監督:クリストファー・ノーラン
出演:ジェレミー・セオボルド,アレックス・ハウ,ルーシー・ラッセル,ジョン・ノーラン,ディック・ブラッドセル他
 
前述の『No.10』を観たら帰るつもりでしたが、気が変わりました。
どうせこの時間帯に帰っても道が混んでいるだろうと、同じくシネ・リーブル梅田にてもう1本。
 
公開中の『オッペンハイマー』が話題となっているクリストファー・ノーラン監督。
彼を一躍有名にしたのは『メメント』(2000)ですが、1998年のデビュー作がこれ。
製作・監督・脚本・編集・撮影の5役をすべてひとりでこなした作品なのだそうです。
25周年を記念して、HDレストア版が公開中です。
 
作家志望の男性ビルは、暇つぶしと創作のヒントを得るために、通りで目についた人物を尾行
その人物の名前と職業がわかれば尾行を取りやめて、ターゲットを変えるルールを自分に課していた。
 
その日もいつものようにある男を尾行し、彼が入ったカフェに続いて入店するが、
彼は着席したビルのところにやってきて、なぜ自分をつけているのかと問いただす。
尾行がバレていたらしく、しらを切ろうとしてもその男コッブは許してくれない。
 
コッブにどうされるのだろうと思っていると、一緒に空き巣に入ろうと誘われる。
コッブの空き巣は少し変わっていて、金目のものを盗むというよりも、
侵入した部屋の様子を探り、居住者の人となりを想像することを楽しんでいる。
時には女物の下着や宝飾品を侵入先に残して、居住者の揉めるもとを作ることも。
次第にコッブに感化されてゆくビル。
 
ある日、侵入先で見た女性の写真に興味を惹かれたビルは、彼女を見つけて尾行を始め……。
 
やっぱり面白いなぁ、ノーラン監督って。
今までのもろSF作品は私の頭では理解が難しかったものも多いのですが、本作ならわかる。
時系列がいじられているので少し混乱するけれど、起きた出来事を順に考えながら観ると、ほぉ~と思わず唸る。
 
しかし本作の出演俳優で今も映画に出ている人がほとんどいないのはなぜですか。
みんな良い俳優に思えるのになぁ。
 
私も見事に騙されました。ノーラン監督作品を全部観直したくなる。

—–