『ビームマシンで連れ戻せ テレポーテーション大作戦』(原題:Sputnik)
監督:マルクス・ディートリッヒ
出演:フローラ・リ・ティーマン,マキシム・メーメット,デーヴィト・シュトリーゾフ,
イボンヌ・カッターフェルト,アンドレアス・シュミット他
2013年のドイツ/ベルギー/チェコ作品。
日本では劇場未公開で、今月初めにDVD化されたところ。
TSUTAYA DISCASにてレンタルしました。
ジャンルがSF/ファンタジーとなっていることもあり、
『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』(2010)のような作品を想像していたら、
全然タイムスリップものとちゃうやんか。
もともとはマルクス・ディートリッヒ監督の短編作品で、
新たなキャストとスタッフを迎えて長編作品にリニューアルさせたのだとか。
想像とはまったくちがいましたが、とっても素敵な作品。
『飛ぶ教室』(2003)の一文をまたしても思い出させてくれます。
どうして大人は自分が子どもだった頃のことを忘れてしまうのか。
1989年、東西が分断されたままのドイツ。
ベルリンの壁付近には世にも恐ろしい国境警備隊がいて、
壁を越えようとする者はただちに射殺されるらしい。
東側のドイツ民主共和国、ベルリン近郊の小さな村。
食堂を経営する両親と暮らす10歳の少女フリーデリケ(愛称リケ)。
母の弟であるマイク叔父さんのことが大好き。
リケおよび同級生の男子ファビアンとヨナタンは、宇宙飛行士になりたくて、
マイクからいろんなことを教わっては気球船を飛ばそうと奮闘している。
そんなリケたちは学校では問題児。
いい子ぶりっこの同級生オリバーは、リケたちを貶めようと、
あることないこと大人に告げ口。いけすかないことこのうえない。
リケは思う、私はただ空を飛んでみたいだけなのに。
ある日、マイクが西側へ行くと言う。叔父さんにもう会えなくなるなんて。
空を飛ぶ夢は君に託した、君が船長だなんて、勝手すぎる。
ふてくされて涙に暮れるリケに別れを告げ、マイクは夜の闇に消えてしまう。
このままではマイクが西に囚われの身に。
なんとかマイクを救出しようと、リケはファビアンとヨナタンに救援を要請。
お気に入りのTV番組で知識を得ると、特殊装置ビームマシンの開発を計画。
このマシンでリケが西へテレポートし、マイクを連れて帰ってこようではないか。
マシンを完成させるためにはさまざまば部品が必要。
リケたちは部品の調達に奔走するのだが……。
思いっきりネタバレです。
なんとかマシンが完成。テレポートを試みた瞬間、大停電が起きます。
テレポートは当然失敗。予備電源を使って復旧させると、
なんと食堂に集まっていた大人が消えている。
テレビにはベルリンの壁の前でせめぎ合う大人たちの姿が。
リケたちは、誤って大人たちをテレポートさせてしまったと思い込みます。
大人たちをもう一度テレポートさせて村に戻さなければ。
マシンを再び稼働させたときにベルリンの壁が崩れ去る。
1989年11月10日のことでした。
自分たちの力で大人たちをテレポートさせ、ベルリンの壁も崩壊させた。
世界一恐ろしいはずの国境警備隊も、マシンの前では力を発揮できず。
そう信じる子どもたちの素晴らしい笑顔。
何が可笑しいって、この年齢にしてオトコを手玉に取るリケ。
可愛い顔をして超気が強く、したたか。
ファビアンとヨナタン、そしてオリバーまでもがリケに入れあげてしまい、
この四角関係を上手く利用するリケが凄い。
でもちっとも憎たらしくなくて、めちゃめちゃカワイイです。
本作とか『遠い空の向こうに』(1999)とか、宇宙飛行士になりたい子どもたちの話ってイイ。
こんな子が将来『オデッセイ』のマーク・ワトニーみたいになるのかも。
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