『でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男』
監督:三池崇史
出演:綾野剛,柴咲コウ,亀梨和也,大倉孝二,小澤征悦,高嶋政宏,迫田孝也,安藤玉恵,美村里江,峯村リエ,東野絢香,飯田基祐,三浦綺羅,木村文乃,光石研,北村一輝,小林薫他
109シネマズ大阪エキスポシティにて、前述の『罪人たち』とハシゴ。
2003(平成15)年に教師による児童へのいじめが日本で初めて認定された事件。それを取材した福田ますみのルポルタージュ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』が原作です。結末を知らないまま映画版を観る勇気がなくて、先に読みました。そのときの感想はこちら。三池崇史監督による映画化ゆえ、さらなる覚悟が必要だと思いました。
小学校の教師・薮下誠一(綾野剛)は、担任する児童・氷室拓翔(三浦綺羅)の家庭を訪問する。その数週間後、拓翔の父親・拓馬(迫田孝也)と母親・律子(柴崎コウ)が来校し、校長(光石研)と教頭(大倉孝二)に担任の交替を要求。わが子が薮下から酷い体罰を受けていると言うのだ。身に覚えのない言われように薮下は驚き否定するが、校長と教頭は場をおさめるために謝れと言う。理不尽に思いつつも、どちらかといえばいじめっ子ですらある拓翔を叱るために軽く頬をピタピタしたことはある。憤る拓翔の両親をなだめるには、体罰を認めて謝罪するしかないとそのときは考える。
ところがこうして一度認めてしまったせいで、律子がさらに騒ぎ立てる。薮下は誰からも見られないところで拓翔をいじめている、自殺を強要したとまで言われ、新聞に取り上げられてしまう。さらには週刊誌の記者・鳴海三千彦(亀梨和也)が薮下のことを実名報道。薮下の家にマスコミが押し寄せる。やがて氷室夫妻は市と薮下を相手に民事訴訟を起こし、550人もの大弁護団を結成。
これ以上は家族に迷惑をかけられないと妻の希美(木村文乃)に離婚を申し出ると、希美から「やっていないことはやっていないと言うべき」と叱責され、戦うと決める。しかし、弁護団を仕切る弁護士・大和紀夫(北村一輝)から厳しく詰め寄られ、どうしてよいのかわからない。弁護士を探すも、殺人教師と言われる薮下の弁護を引き受けてくれる人はなかなかいない。そんなとき、本件にはリアリティを感じないという弁護士・湯上谷年雄(小林薫)が引き受けてくれて……。
自分の子どもが教師からいじめを受けたとして訴えた母親と訴えられた教師による双方の供述として描かれています。まず最初の「氷室律子の供述」の章では心が折れそうになり、退出したくなりました。それでも結末を知っていたおかげでなんとか最後まで。
原作では、律子が薮下を貶めようとしたきっかけがまるでわからず。映画版ではわずかながらそれが提示され、親から叱られた子どもが咄嗟についた嘘だったことになっています。真実もそうであればまだわかる。けれど、実際はどうだったかわからないから余計に怖い。律子の話は明らかに怪しいのに、マスコミも医者も弁護士も氷室親子の味方をして教師を悪人にする。柴崎コウの演技が怖すぎてゾッとしました。
こんな冤罪は決してあってはならない。たとえ冤罪だと証明されても、一度ズタズタにされた人生。偏見を持って接する人だっているはずで。特ダネだと飛びついた後に冤罪が濃厚になっても知らん顔のマスコミ、どうなんですか。
三池監督、今回はふざけたところひとつもなし。
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