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『1980 僕たちの光州事件』

『1980 僕たちの光州事件』(英題:1980: The Unforgettable Day)
監督:カン・スンヨン
出演:カン・シニル,キム・ギュリ,ペク・ソンヒョン,ハン・スヨン,ソン・ミンジェ他
 
アップリンク京都にて、『エミリア・ペレス』の次に。
 
『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017)を観るまで、光州事件のことはまったく知りませんでした。
なんとお気楽な人生を私は送っているんだろうと思うと共に、1980年代にこんな事件が起きる国って何よと思ったりもしました。
軍事政権下民主化を求める学生が弾圧され、大勢の死者を出すに至った歴史的悲劇。
本作は『タクシー運転手 約束は海を越えて』および『ソウルの春』(2023)と是が非でも併せて観たい1本です。
 
それら2本のように光州事件そのものを描いているというよりは、
そんなことが起きているとも知らずに平和に暮らしていた人々を襲った現実がここには描かれています。
 
1980年5月17日、三代で暮らす家族のうち、祖父が念願の中国料理店をオープン。
祖父の自慢はソウルの大学を出た長男。
それに比べて出来の悪い次男こそ店を継ぐ気持ちがあるのに、祖父が相手にしてくれない。
しかし長男は出かけてばかりで、どうやら軍事政権に反発してデモを主導している様子。
長男の嫁は働き者で、彼女が店に立って祖父の仕事を大忙しで手伝う。
 
長男夫婦の息子で小学生のチョルスは、隣家の美容院の娘ヨンヘが好き。
「中国めし」の店を継いだらヨンヘに嫌われそうだから絶対に嫌だ。
だけど家族は笑うばかりでまともに話を聞いてくれない。
 
なかなか祖父の信頼を得られない次男だったが、知的で美人で性格も良いアモーレと結婚が決まる。
店のオープンと次男の結婚話でお祝いムードのなか、来店した軍人たちと学生客の間に不穏な空気が流れる。
軍人たちは学生と見るやアカだと決めつけ、学生の味方につけばそれもアカ扱いされる。
 
ある日、軍人に追いかけられた長男が逃げ込み、そのまま行方をくらます。
すると、兄の居場所を教えろと次男が捕まって拷問にかけられ……。
 
シリアス一辺倒ではなくてユーモアもふんだんに盛り込まれています。
それがむしろ悲惨さを倍増させる役目を果たしているから、虐殺のシーンでは愕然とするしかありません。
アジトが爆撃された瞬間は呆気にとられて言葉を失いました。
 
最初はデモがなんたるや知らない者まで連行される。
デモが周知のこととなると、家族が連れて行かれたり殺されたりして、みんな事実を知る。
なんだかよくわからずにデモに参加していた人もいるでしょうが、
軍事政権下で民主化を唱えるには命を懸けなければならないのですね。
 
この悲劇を乗り越えて、国は良くなりましたか。
少なくとも韓国映画はもの凄く面白い。でも面白いと言っているだけで良いのかどうか。
私には命を懸ける勇気はありません。

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