『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』(原題:The Death & Life of John F. Donovan)
監督:グザヴィエ・ドラン
出演:キット・ハリントン,ナタリー・ポートマン,ジェイコブ・トレンブレイ,スーザン・サランドン,
キャシー・ベイツ,タンディ・ニュートン,ベン・シュネッツァー,マイケル・ガンボン他
TOHOシネマズ西宮にて、『架空OL日記』の次に。
まだ30歳のグザヴィエ・ドラン監督、初の全編英語作品だそうで。
彼はケベック州出身ですから、これまでの作品はフランス語作品。
監督としても俳優としても頭抜けた才能を持ち、
最初からゲイであることをカミングアウトしていた人。
こういったことを知ってから観るほうが心が動かされると思います。
2006年のニューヨーク。
スター俳優ジョン・F・ドノヴァンが29歳の若さでこの世を去る。
TVニュースでそれを知り、呆然とする少年ルパート・ターナー。
それから10年経過。ルパートは俳優となっていた。
彼は少年時代、あのジョン・F・ドノヴァンの秘密の文通相手だったが、
ひょんなことからそれが世間に知れてしまい、
ジョンはルパートとの文通を否定したまま死んでしまった。
ルパートはジョンとの100通以上におよぶ手紙の公開を決意し、
著名な女性ジャーナリスト、オードリー・ニューハウスの取材を受けることに。
しかし主に政治にしか興味のないオードリーにとって、
こんなゴシップまがいのネタに関わっている時間が惜しくてたまらない。
ルパートとの面会もそこそこに引き上げようとするが、
ジョンの話を聴くうちに次第に引き込まれて……。
本作のポスターは彼を演じるキット・ハリントンが大写しになっていて、
いちばん格好良かった頃のアントニオ・バンデラスを思わせます。
けれども実際に映像を観ると、なんかアホっぽい兄ちゃん。
この人がみんなを狂わせるほどの人気スターとは納得がいかんと思っていました。
ところが私もオードリーと同じく、次第に彼を見る目が変わる。
人気スターでありながら常に孤独で、ゲイであることを誰にも言えず、
決して言ってはいけないことだと感じていた。
彼が心を開くことができたのはルパートだけ。
ルパートはまだ子どもだから、子ども相手に難しい話はしない。
性的な話も、面倒くさい話もしない。ただ毎日のことを綴るだけ。
それでも手紙を書いているときは落ち着けたのでしょう。
一方のルパートも大変な毎日を送っている。
ナタリー・ポートマン演じるシングルマザーに育てられ、
母親の叶わなかった夢を押しつけられて、子役の仕事をしている。
その仕事のためにニューヨークからわざわざロンドンに引っ越し、
転校生で子役だからと学校ではいじめられている。
ジョンと繋がっているという思いだけが心の支えだったのに。
これまでのグザヴィエ・ドラン作品と比べると、
かなり大衆的な印象は否めません。
音楽もここまで大音量にして煽らなくてもと思います。
でも、世界に才能を認められるような人であっても、
セクシャルマイノリティは生きづらい。
さまざまな想いがじわじわと心に広がります。
ジョンの母親役のスーザン・サランドン、マネージャー役のキャシー・ベイツ、
オードリー役のタンディ・ニュートン、みんなよかった。
大衆的なぶん、今までグザヴィエ・ドラン監督作品を観たことがない人には良いかも。
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