『ぼくたちのムッシュ・ラザール』(原題:Monsieur Lazhar)
監督:フィリップ・ファラルドー
出演:フェラグ,ソフィー・ネリッセ,エミリアン・ネロン,ブリジット・プパール,
ダニエル・プルール,ルイ・シャンパーニュ,ジュール・フィリップ
今週初めにテアトル梅田にて。
ハシゴの効率重視で、タイトルだけでこれを選択して観ることに。
生徒たちに慕われる先生の、ほっこりした話かと思っていたら、がびちょーん。(T_T)
カナダ・ケベック州の作品のため、フランス語です。
配給はザジフィルムズとアルバトロス・フィルム。
相変わらずアルバトロスが引いてくる作品はいろいろとおもしろい。
モントリオールの小学校。
その朝の牛乳当番に当たっていたシモンは、ほかの生徒たちより一足先に校内へ。
人数分の牛乳をかかえて教室に入ろうとすると、鍵がかかっている。
ガラス戸の向こうに目を凝らすと、窓の辺りにぶらさがった人影が。
それは担任教師マルティーヌの首を吊る姿だった。
教師たちは、ただちに生徒の校内への立ち入りを禁ずるが、
シモンの同級生アリスだけは、同じ光景を見てしまう。
忌まわしい教室の壁を明るい色に塗り替えたものの、
シモンやアリスをはじめとする生徒たちの心の傷は癒えそうにない。
自殺した教師の後任を快く引き受ける者が現れるわけもなく、
保護者たちからも不安の声が上がっている。
そんな折り、約束もなしにやってきたのがバシール・ラザール。
彼はアルジェリア系移民で、新聞で事件のことを知ったらしい。
おそらく後任に困っているだろう、自分ならばすぐに教えることができる、
どんな雇用形態でもかまわないから採用してくれと言う。
こうして生徒たちの担任となったバシールだったが、
まるで時代遅れとも言える授業内容や指導方法で……。
生徒たちに自己紹介をするバシールによれば、
“バシール”とは「良い知らせ」、“ラザール”とは「幸運」の意だそうです。
素敵な名前を持つ彼ですが、とってもワケありです。
本当に教師の経験があるのか、経歴を偽っているのではないか、
実は国を追われてきたのではないかなど、不審な点が次々と。
けれども、愚直なまでに誠実な人柄であることは容易に想像でき、
教師としてやっていこうという彼を見守りたくなります。
生徒たちのほうもワケありっぽくて、それぞれ事情があるよう。
自分だけが首吊りの現場を見たと思っているシモンに、
「私も見ちゃった」とぽつり打ち明けるアリス。
そのときのシモンの表情は、かすかに安堵が見えて絶妙。
生徒を叱るさいに軽く叩くのはもちろん、
苦しむ生徒を抱き寄せたり、頭を撫でたりというような身体的接触は、
教師たちは絶対にしてはいけないこととなっています。
また、死について話し合うことも禁止。
歯がゆくて仕方ないバシールは、生徒の思いを受け止めようとします。
「教室は、友情と、勉強と、思いやりの場ではなくてはならない」。
このバシールの言葉は、きっと生徒たちの心に残るでしょう。
社会の不条理を感じる結末にも、ささやかな温もり。
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