『ロマンスドール』
監督:タナダユキ
出演:高橋一生,蒼井優,浜野謙太,三浦透子,ピエール瀧,渡辺えり,きたろう他
109シネマズ箕面にて。
私が蒼井優をなんか面白い女優だなぁと思いはじめたのは、
彼女の出世作『フラガール』(2006)よりもがむしろ『苦虫女』だった気がします。
原作はタナダ監督自身が2008年に発表した小説『ロマンスドール』。
ダッチワイフがこんなふうに作られるとは知らず、いろいろと目からウロコでした。
ダッチワイフを彼女にする青年の話、『ラースと、その彼女』(2007)とか、
ダッチワイフと生活する男の話、『空気人形』(2009)とか、
かつてはいろいろありましたけれど、ダッチワイフ職人が主人公の話は初めて。
あ、今はダッチワイフだなんて言わないんですね。ラブドール♪
東京の美大を卒業後、フリーターをして食いつないでいた哲雄(高橋一生)は、
先輩から紹介されて面接に訪れた久保田商会に着いてびっくり。
そこはラブドールを制作する会社だったのだ。
あまり大きな声では言えない仕事と思いきや、社員は皆あっけらかん。
造形職人の相川(きたろう)は真面目にラブドール制作への情熱を語る。
それにほだされたわけではないが、とにかく金がほしかった哲雄は就職を決める。
始めてみれば仕事が楽しい。
たくましく明るい面々に囲まれ、やり甲斐を感じる日々。
しかし、哲雄が初めて完成させたラブドールを見て、久保田は駄目出し。
オッパイはデカけりゃいいってもんじゃない、
巨乳より美乳だと久保田は哲雄にやり直しを命じる。
相川は、生身の女性の胸の型を取らせてもらうことを思いつき、
さすがにラブドール用だとは言えないから、
医療用の人工乳房のための型を取ると偽り、バイトを募る。
やってきたのは日ごろ美術モデルを務める園子(蒼井優)。
彼女は人工乳房のためだと信じて哲雄に胸の型を取らせ、触らせる。
一瞬にして恋に落ちた哲雄は、帰途に就いた園子を追いかけて告白、
交際を経てふたりは結婚するが、
本当の仕事内容を哲雄はいつまでも経っても園子に打ち明けられず……。
いい奴にしか思えなかった哲雄が途中からクズになり、
それと同時に夫婦の仲も冷めてゆく。
園子のことがいかに大事か気づいたときには彼女に病魔の手が。
彼女と懸命に向き合おうとする様子、
また、彼女を亡くしてから気持ちの整理をつけて
ラブドールを完成させるまでの姿がよかった。
ピエール瀧はやっぱりいいですね。
さして演技が上手いとは思えないのに、豪快で人の善い社長役がピッタリで、
彼がこうして役者を続けてくれるのは嬉しい。
くれぐれもまたドラッグに手を染めることはないようにしてください。
内容そのものよりも、ラブドールの制作過程に注目してしまった作品でした。
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