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『春を背負って』

『春を背負って』
監督:木村大作
出演:松山ケンイチ,蒼井優,檀ふみ,小林薫,豊川悦司,新井浩文,
   吉田栄作,安藤サクラ,池松壮亮,仲村トオル,石橋蓮司他

晩ごはんの支度をしなくていい日に、TOHOシネマズ伊丹にて。

黒澤明監督を師と仰ぐ御年74歳の名カメラマン、監督第2作。
第1作の『劔岳 点の記』(2008)と同じく、立山連峰が舞台です。

東京で外資系の大手投資銀行に勤める享(松山ケンイチ)は有能なトレーダー。
ひとりで何十億もの金を動かす日々に疑問を感じはじめたとき、
立山連邦で山小屋“菫小屋”を営む父・勇夫(小林薫)が急死したとの報らせが入る。

仕事を片付けて駆けつけると、山岳救助隊の工藤(吉田栄作)から頭を下げられる。
勇夫は救助隊の依頼を受けて遭難者を助けに行き、遭難者をかばって死亡、
当の遭難者は軽傷で、とっとと東京へ帰ったという。
顔をこわばらせる享を母・菫(檀ふみ)がなだめる。「お父さんは山で死ねて本望よ」と。

山の麓で民宿を切り盛りする菫は、小屋にまで手が回りそうにない。
小屋は誰かに任せるつもりで、今は勇夫を偲んで小屋へ。
長らく小屋へ上がっていない享も久々につきあうことに。
1年ほど前から勇夫のもとで働いてきた女性・愛(蒼井優)も同行する。

その折り、享が突如として自分が小屋を引き継ぐと言い出す。
上司の朝倉(仲村トオル)に惜しまれながら会社を退職。
食糧その他、必要な物品を担いで小屋へ向かうが、何十キロもある荷物にヨタヨタ。
その横をすいすいと上がっていく中年男性がひとり。
彼は悟郎(豊川悦司)といい、毎年、風のように現れては小屋を手伝い、
風のように去ってゆくらしい。

勇夫とも親しかった悟郎は、夢枕に立つ勇夫から享のことを頼まれたと言う。
こうして菫小屋での暮らしが始まるのだが……。

登場人物はほかにも魅力的な人いろいろ。
享の幼なじみ夫婦に新井浩文安藤サクラ。その父親に螢雪次朗
町医者に石橋蓮司、小屋を訪れる登山客に市毛良枝池松壮亮
ついでに、工藤の部下に鶴瓶の息子・駿河太郎。

お年を召した監督によくあることですが、良くも悪くも映画的。
会話ひとつ取ってみても、「お茶が入りました」に対して「素晴らしいわ」はないわ~。(^^;
こっぱずかしい台詞に苦笑いしてしまうシーンもありますが、
古き良き日本の風情も漂っていて、心が洗われます。

むさ苦しいだけになりかけていたトヨエツが本作ではいい味。
半人前の享を見守る彼の言葉が温かい。
人生は徒労の連続。一歩一歩積み重ねて行こうと思わされます。

山を舞台にした作品といえば、目の前に広がる風景や空が美しく、
自然そのものが主役のようなイメージがありますが、
本作はそれよりももっと近い地点で、人間に焦点を当てたドラマかなと。
とはいえども名カメラマンのこと、やはり山は美しい。
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