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原作とちがいすぎる。

今春、劇場で観た『桜、ふたたびの加奈子』
不協和音を奏でる弦楽器に居心地の悪さを感じながらも、想定外の展開に泣かされました。
原作である新津きよみの『ふたたびの加奈子』が気になり、すぐに読んでこれを書き、
ネタ切れしたときUPしようと思っていたら、なんだかんだで半年経過。
先週DVDが発売されたので、このタイミングでUPしておきます。

私より年上の作家ですが、これまで知らず。
ご主人は同じく作家の折原一で、こちらは何冊か読んだことがあります。
強烈に印象に残っているのは『冤罪者』。
ただし、これは話の内容が印象に残っているわけではなく、
生まれて初めて「二度買ってしまった本」だからです。
600頁超えの分厚めで読み応えもある本だったのに、なぜか。
一度目を忘れて読みはじめた二度目、えらいデジャヴやなと思ったら、
読みましたがなコレ、としばし呆然。
以前観たことを忘れて二度レンタルした『いぬのえいが』(2004)以来の衝撃。

という話はさておき。
そうか、この人は折原一の奥様なのかと読みはじめた『ふたたびの加奈子』。
これを映画化したら『桜、ふたたびの加奈子』になるとは到底思えず、
原作というよりは下敷き程度というほうが妥当かと思います。

桐原夫婦の娘、加奈子は、ひき逃げに遭って亡くなる。
妻の容子はやがてこの部屋に加奈子がいると言うように。
そんなものは見えないという夫の信樹に一応気を遣い、
「加奈子」とは呼ばずに「まるこ」と呼びつづける。

ある日、外出した容子とまるこ。
亡くなった子どもの魂は、いつか自分の新しい居場所を見つけることがある。
読んだ本にそう書いてあったことから、容子はそのときが来るのではと予感。
その日、まるこはふわふわと正美という妊婦のもとへ。
以来、正美に関するありとあらゆる情報を集めはじめる容子。

心ここにあらずの容子と共にいることに疲れた信樹は、
その頃たまたま知り合った女性と浮気。
信樹と別れたいと思っていた容子はこれ幸いと離婚し、
正美を監視できる場所へとすぐさま引っ越す。
信樹は浮気相手の女性のもとへ転がり込むが、
なぜか相手の女性はやたら物わかりがよく、容子の心配までするほど。

公園デビューしてもママ友ができない正美に近づく容子。
親身になって相談に乗り、正美の信頼を得ると、
加奈子の生まれ変わりを手に入れるべく、着々と計画を進めて行くのだが……。

原作も「感涙必死の長編小説」となっていますが、まったく泣けません。
容子の常軌を逸した行動はただひたすら怖い。
正美の子どもをこっそりつねって、正美の夫に「彼女は虐待している」と連絡したり、
夫ごと正美から奪うことを考えたり。

そもそも登場人物の誰も彼もが映画とは異なる設定。
正美は高校生でもなければ、シングルマザーでもない。
古書店を営む容子の母親も出てこなければ、
空っぽのベビーカーを押して歩く女性も出てきません。

原作のオチをバラしてしまいますと。↓

信樹の浮気相手の妹がひき逃げ犯。
生まれ変わりだとかどうだとか言う容子の話が万一本当だとしたら、
妹が捕まってしまうのではないかと懸念し、信樹に近づいたのでした。

オチも含めて嫌な感じで、この原作からあんな映画をつくるのかと、
あらためて栗村実監督に脱帽。
やはりこれからも注目したい監督です。
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