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『少年H』

『少年H』
監督:降旗康男
出演:水谷豊,伊藤蘭,吉岡竜輝,花田優里音,小栗旬,早乙女太一,
   原田泰造,佐々木蔵之介,國村隼,岸部一徳他

TOHOシネマズ伊丹にて。

降旗康男監督は、『あなたへ』(2012)と言い、本作と言い、
誰も嫌な気持ちにはさせない作品を撮る人だと思います。
無難な良さとも言えますが、これって、凄いこと。

昭和初期の異国情緒あふれる神戸。
“H”のイニシャルが大きく刺繍されたセーターを着ていることから
友だちから「H」と呼ばれる少年、妹尾肇。
洋服の仕立て屋を営む父親の盛夫と母親の敏子、2歳下の妹、好子と、
4人のクリスチャン家庭で、楽しく元気に暮らしている。

盛夫の仕事柄、居留地の外国人とのつきあいも多く、
妹尾家には外国人に対する偏見が皆無。
肇は「自分の目で見て、自分で考えること」の大切さを盛夫から教えられる。

しかし、軍国化が進み、外国人とつきあうことが問題視されるように。
盛夫はスパイではないかと噂され、警察の取り調べを受ける。
肇のことも学校で陰口をたたく者が現れて……。

原作は大ベストセラーですが、非難もあったようで。
体験談だなんて嘘っぱち、結論ありきの作品だとの説に、
そうなんだとびっくりしました。

だけど、『終戦のエンペラー』同様、映画に関してはこれでいいと思います。
映画なんて所詮つくりごとの世界ですから、
実話だから感動できるというのはそもそもおかしいし、
事実かどうかが大事なのではないよなぁって。

いろいろと心に留めておきたいシーンがあります。

学校でスパイ扱いされた肇が、言いふらしたのはアイツに違いないと憤るシーン。
アメリカから届いた絵葉書を見せたのはイッちゃんだけ。
イッちゃんが言いふらしたからこんなことになったんだと、
殴りに行く勢いだった肇に盛夫は言います。
「絵葉書を見せたのはアンタや。アメリカから届いたって。
イッちゃんも同じちゃうか。他の子らにそう言うただけとちゃうか。
こんなことになっていちばん困ってるのはイッちゃんとちゃうか」。

殴られることも覚悟していたであろうイッちゃんに肇が会いに行き、
「ずっと友だちやで」と交わす約束はやはりいいもの。

「戦争が終わったときに、恥ずかしい人間になっとったらいかん」。
それはいつの時代にも言えることで、でもむずかしい。
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