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『少年は残酷な弓を射る』

『少年は残酷な弓を射る』(原題:We Need To Talk About Kevin)
監督:リン・ラムジー
出演:ティルダ・スウィントン,ジョン・C・ライリー,エズラ・ミラー他

梅田ガーデンシネマにて。

『モーヴァン』(2002)の監督によるイギリス作品。
原題は“We Need to Talk about Kevin”です。
悪趣味と紙一重、不快度がものすごく高いのに、ずずっと引き寄せられます。

自由奔放に世界中を飛びまわる旅行作家のエヴァは、
旅先まで追いかけてきた恋人のフランクリンと結婚する。
予期していなかった妊娠で、以降の旅は断念することに。

ところが、誕生した息子ケヴィンは、愛らしい顔をしていながら、
生まれついてすぐに悪魔のような一面を見せる。
エヴァの言うことを無視したり、ニヤリと意味ありげに笑ったり。
嫌がらせとしか思えない行動を取ってばかり。
しかも、その態度はエヴァとふたりきりでいるときだけ。

恐怖すら感じるようになったエヴァは、夫にそれを訴えるが、
フランクリンの前ではケヴィンは素直でひたすら可愛い子ども。
君がカウンセリングを受けたほうがいいと、夫は冷ややか。

やがて、美形の高校生に成長したケヴィンは、
幼いころから興味を示していたアーチェリーにさらに夢中になり……。

エヴァの視点で時系列が入り乱れて描かれていますが、
『101日』のように不親切ではありません。
エヴァの髪型だけ見ていてもわかるようにつくられています。

冒頭は、トマトの鮮烈な赤に幸せそうに身をゆだねるエヴァ。
それが一転、赤いペンキを塗りたくられた家へと切り替わります。
近い過去にケヴィンが何らかの事件を起こしたであろうことや、
いまはエヴァがたった一人で耐え忍んでいることが推測されます。
観客が先に見て疑問を持った点を徐々に明らかにしてゆく手法がおもしろい。
いらちの人ならば「はよ全部説明せんかい」と思うかも。(^^;

子どもの悪魔的な一面が後天的なものであったとしたら、
母親が責め苦を追うのは仕方がないかもしれません。
しかし、このケヴィンについては、生来その性質があったとしか思えません。
いや、もしかしたら、この子が生まれればキャリアは捨てなければならないと、
そう感じたことがお腹のなかに伝わったのか、

心がかようことはない息子。
彼の行動に恐れおののきながらも、母であることからは逃げようとしない。
狭い町では、エヴァがあのケヴィンの母親であることを知らない人はいません。
どこを歩いても罵倒を浴びせられ、ときには平手打ちもされるのに、
エヴァは絶対に町を出て行こうとしない。そこに居続けます。

ラストでエヴァの問いかけに対するケヴィンの答えと
それを聞いたエヴァの表情はとてもよかった。
けれども、更生があるとは思えないのです。
わずかな希望を感じさせる場面でありながらそうは思えない、
とても厳しくて辛い作品でした。
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