『隠された記憶』(原題:Caché)
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:ダニエル・オートゥイユ,ジュリエット・ビノシュ,
モーリス・ベニシュー,レスター・マクドンスキ他
2005年のフランス/オーストリア/ドイツ/イタリア作品。
気になりつつも今まで観なかったのは、監督のせいです。
『ファニーゲーム』(1997)といい、『ピアニスト』(2001)といい、
この監督は人を不愉快にさせる天才ではないかと思うほど。
鑑賞中、なんとも言えない不快感と不安感に襲われ続けます。
だけど、おもしろい。
不愉快にさせられておもしろいというのも変ですけど、
人間の心に潜む嫌な部分を見せつけられているかのようで、
ラース・フォン・トリアー監督の作品を観たときと同じ感覚を抱かされます。
ジョルジュはTV局の人気キャスター。
妻のアン、息子のピエロとともに
何ひとつ不自由のない暮らしを送っている。
ある日、自宅へ差出人不明のビデオテープが届く。
再生してみると、彼の家が隠し撮りされた映像。
しかし、これといって何が映っているわけでもない。
ただ、ジョルジュの家を正面から延々撮りつづけているだけ。
その日以来、同様のビデオテープが何度か届く。
テープの包み紙に描かれた不気味な絵を見て、
ジョルジュは幼少時代のことを思い出し、
犯人として唯一心当たりのある人物のもとを訪れるのだが……。
いや~、おもしろい。
冒頭、映し出される、あまりにも動きのない画面に、
うちのDVDプレーヤーが壊れているのかと思ったほどです。
それが、送り届けられたビデオテープの再生画像だったわけですが、
脅迫に使われそうな何かが映っているテープよりも、
家を正面から見据えただけのテープのほうがよっぽど怖いですね。
送り主の意図がまったくわかりませんから。
ジョルジュが犯人だとにらんだ人物は、
彼の生家で使用人として働いていた、アラブ人の息子マジッド。
幼い頃、ちょっとした意地悪からついた嘘のせいで、
40年後の今、マジッドが復讐しに来たと思い込みます。
謎解き映画だと思って観ると、すかを食らわされるハメに。
監督自身、「犯人はどうでもいい」と話しています。
それよりも、「疚しさ(やましさ)」ってこんなものだと、めちゃ納得。
「疚しさ」があると、人ってこうなる。
犯人はどうでもいいとは言え、
本作を観た人とは自分なりの解釈を話してみたいものです。
んー、こんな不条理系、大好き。
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