『リライト』
監督:松居大悟
出演:池田エライザ,阿達慶,久保田紗友,倉悠貴,山谷花純,大関れいか,森田想,福永朱梨,前田旺志郎,長田庄平,マキタスポーツ,尾美としのり,石田ひかり,橋本愛他
109シネマズ箕面にてポイント鑑賞しました。
法条遥の同名小説を基に、劇団ヨーロッパ企画主宰者の上田誠が脚本を手がけたそうです。それを松居大悟監督が映画化したとなると、面白そうな匂いしかしません。原作では中学校が舞台となっていますが、映画版では年齢を少し上げて高校の設定。
高校3年生の夏を迎えた美雪(池田エライザ)。同級生の茂(倉悠貴)から本の返却を頼まれて図書室へ行くと、目の前に転校生の保彦(阿達慶)が現れる。空から降ってきたか飛んできたかとしか思えない出現の仕方に驚いていると、保彦は自分が300年後の未来からやってきたことを明かし、今は昨日からここへ飛んできたのだと言う。信じられずに唖然とする美雪だったが、保彦から「今」の案内を頼まれて、学校のみならずあちこちへ一緒に出かけては楽しく過ごす。保彦によれば、彼は未来である小説に出会って魅入られたらしい。そこに書かれていたのはここ尾道のこの時代で、タイムリープできる薬をつくってやってきたと。
ある日、保彦から分けてもらった薬で10年後に一瞬だけタイムリープした美雪は、彼女を待っていたとおぼしき10年後の自分から、小説に書くように言われる。保彦が未来に帰ることになったとき、必ず小説を書き上げて時間のループを完成させることを約束。書き上げた小説を出版社に持ち込むも、保彦との思い出を綴った小説は編集者(長田庄平)からダメ出しを食らう。しかしそのセンスは認められ、ほかの小説を書くとこれが出版されて思いのほかヒット。美雪は堂々の作家となり、いよいよあの夏の日をテーマにした小説の出版話にこぎつけるのだが……。
完全ネタバレです。
保彦の秘密を知るのは美雪だけかと思ったら、同級生だった鈴子(久保田紗友)が同じ体験をしていたことを知ります。同様に小説を書いていた鈴子から敵意をむき出しにされて美雪は戸惑う。そして、もしかすると自分たちは二股をかけられていたのではないかと考えるように。
この時点では、保彦って、なんて酷い男なんだと思いましたね(笑)。ところがそうではありませんでした。
タイムリープしたのはいいけれど、どうにも抜け出せなくなった保彦は人のよさそうな茂に相談。将来小説を書き上げてループを完成させてくれそうな同級生は誰かを探していたのでした。結果、茂以外の同級生全員が保彦と夏を共に過ごし、男子も女子も心をときめかせていたというわけで(笑)。
いや~、茂の頑張りが凄い。もとの時代に帰れなくなった保彦は増え続けて実に33人。33人の保彦それぞれと行動している同級生たちがバッティングしないように注意を払う。保彦に何の義理もないのに、普通はできませんよね、こんなこと。自分を含めて33人が保彦にときめいていることに当時気づいたのはただひとり、友恵(橋本愛)だけ。保彦に恋しつつ憎み、自分を33人目として紹介した茂のことを恨み、自分以外の32人に先に小説を完成させてたまるものかと誓う。とても面白い話でしたが、不幸な家庭に育った友恵の執念と演じる橋本愛の表情が少し怖かった。
なんにせよ、上田誠の脚本は面白い。
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