『ルノワール』
監督:早川千絵
出演:鈴木唯,石田ひかり,中島歩,河合優実,坂東龍汰,リリー・フランキー,ハナ・ホープ,高梨琴乃,西原亜希,谷川昭一朗,宮下今日子,中村恩恵他
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
スルーしそうになっていたところ、後述の『F1/エフワン』の封切り日にハシゴ可能な時間帯の上映。んじゃ観ようかということで。
『PLAN 75』(2022)がたいそう話題になった早川千絵監督ですが、テーマが重くて観る気になれないまま今まで来ました。本作はそれとはまた違うテーマだけれど、なんとなくカンヌっぽい(芥川賞っぽい)イメージ。日本/フランス/シンガポール/フィリピン/インドネシア作品で、多様な人が関わっているようです。
小学5年生の沖田フキ(鈴木唯)は溢れ出す好奇心を抑えきれない少女。たくましすぎる想像力で作文を書けば、教師も傑出した文才を認めつつ、その内容が大人を戸惑わせる。
フキの父親・圭司(リリー・フランキー)は癌に冒されて余命わずか。母親・詩子(石田ひかり)は勤務先で管理職に昇進したばかりだが、そのきつい物の言い方のせいでパワハラ認定される。圭司の最期を自宅で迎えられるようにすべきだと思うものの、公私ともにイライラを募らせる詩子。
こんな家庭で親の目を向けられることが少ないフキは、あちこちに興味を向けます。英会話教室で見かけるいかにもお嬢な同年代の少女(高梨琴乃)のお下げ髪に触る。最近夫を亡くしたらしい近所の物憂い女性(河合優実)に話しかけて家に上がり込む。郵便受けに入っていたチラシを見て伝言ダイヤルにかけ、話し相手の大学生(坂東龍汰)から呼び出されて会いに行く。
もうなんというのか、フキの行動は危なっかしいばかりか、見ていて不愉快にすらさせられます。フキの心情をあらわにするシーンはないから、観て感じ取るしかありません。いちいち言葉で説明されるよりもそのほうが余韻があって良いには違いないけれど、とにかく心地が悪い。
ただ、登場人物の誰にも共感できないにもかかわらず、作品自体には惹かれます。いつ頃の話なのか作品中では具体的に明かされないせいで、最初はいろんな描写がひっかかる。本人への癌の告知は珍しいという台詞やパワハラなど、え、いつのこと!?と思っていたのが、キャンプファイヤーでYMOの“ライディーン”がかかると確実に1980年代だわかります。これは楽しいシーン。
今から何十年も前が舞台でありつつも、癌に効くあれこれだとか自由診療だとかいうものは、今も昔も存在する。藁にもすがりたい人たちの思いにつけ込む商売に私もすがりかけたから、そんなシーンは複雑な思いで観ました。
好きじゃない。でも気になる作品であり監督でもあります。
『秘顔 ひがん』
『秘顔 ひがん』(英題:Hidden Face)
監督:キム・デウ
出演:ソン・スンホン,チョ・ヨジョン,パク・ジヒョン,パク・ジヨン,パク・ソングン他
キノシネマ心斎橋にて、前述の6回目の『ファーストキス 1ST KISS』の次に。
上映時刻になっても入場のアナウンスがなく、何事かと思ったら、機材トラブルがあった模様。15分遅れての入場となり、予告編なしの本編からの上映でした。客は私を含めてたったの3人だったけど、予告編を楽しみにしている人も多いんじゃないかなぁ。私の場合、シネコンでの予告編は暗唱できるほど観ていますが、ミニシアターでの予告編は観たい。とはいうものの、本作はもともとの上映終了時刻が23時近かったから、それより遅くなるよりはいいか。
スペイン作品『ヒドゥン・フェイス』(2011)の韓国版リメイクなのだそうです。予告編を観たときに面白そうだと思い、かなり期待して心斎橋まで出向いたのですけれど。
しがない食堂の息子に産まれたソンジン(ソン・スンホン)は、今はある交響楽団の指揮者。楽団のオーナーであるヘヨン(パク・ジヨン)の娘でチェリストのスヨン(チョ・ヨジョン)から逆プロポーズを受けて婚約したゆえのポジション。豪奢な中古物件をリフォームし、ソンジンとスヨンは新生活を始める。
スヨンと結婚すれば金の心配は不要だし、名声も手に入れて今後は安泰。しかし、ヘヨンはイケメンのソンジンをお飾りの指揮者としか見ていない様子なのが腹立たしい。不満を見せるソンジンを慌てさせようと、スヨンはソンジンに宛てたメッセージ動画を残して家出する。
わがまま娘のことだから、数日でケロっとした顔で帰ってくるだろうとヘヨンは言う。スヨンの帰りを待つべきだとソンジンは考えていたが、チェロの席を空けたままはよろしくないと言うマネージャー。ヘヨンの手配でチェリストに応募してきたミジュ(パク・ジヒョン)を面接したソンジンは、シューベルトが好きだというミジュとその理由に驚き、すぐに彼女に惹かれるのだが……。
現在から3カ月前、7カ月前へと時を遡り、また現在に戻って描かれます。オリジナルのスペイン作品を観ていないので、このリメイクとどう異なるのかわかりませんが、ちらっと読んだところでは、恋人だか夫だかの浮気を疑う女性が秘密の小部屋に隠れたら閉じ込められて出られなくなった、みたいなことだったかと。鍵がなくなったとか壊れたとかの事情による事故なのか、誰かにハメられたのか。オリジナルと同じなのかしら。
ネタバレですが、とにかくこのリメイク版では、スヨンとミジュがレズビアンで恋人同士の関係。本当はふたりが一緒に住むはずだった家に、スヨンは自分が同性愛者であることを隠してソンジンと住むと言うのです。傷ついたミジュは、スヨンからしばらく身を隠してみるつもりだという計画を聞いたときに、ふと仕返しすることを思いつきます。
かつてスヨンとミジュが共にチェロを練習していたこの家にはマジックミラー付きの隠し部屋があります。そこにしばらく潜むことにしたスヨンをミジュが閉じ込めて、スヨンの目の前でソンジンと激しい絡みを見せつける。ミジュ役のパク・ジヒョンがとても綺麗なので、彼女目的で観に行くならオススメしますが、話としてはイマイチ。なんというのか、とても嫌な話なんです。
最終的には部屋から出てきたスヨンがソンジンと合意のもとミジュを閉じ込めますが、ミジュもそのことを楽しむかのように、スヨンを部屋に招き入れて今から絡みますよ、的な。このラストで一気にチープな作品になってしまった気がします。結構な濡れ場なので、私以外の客は男性2人だったからなんとなく気まずいし。私がいちばん後ろに座っていたのが救いです(笑)。
6回目の『ファーストキス 1ST KISS』
ほとんどの劇場で上映が終了していたので、もう観ることはないかなと思っていたのに、6月にキノシネマ心斎橋にて4本ハシゴした折に、こちらではあらたに上映が始まることを知る。後述の作品を観に行くついでに、6回目の『ファーストキス 1ST KISS』を観ることに。
5回目を観てから1カ月半から2カ月経っていたのではないでしょうか。今さら何を言うてるねん、どこを観ててんと言われそうなことがあります。駈(松村北斗)が玄関を出た後にカンナ(松たか子)のスマホに着信があって、あのときふっと自嘲気味に笑ったカンナの顔を見て、いったい誰からどんなメッセージが来たのか気になったのに、深く考えたことがありませんでした。あれって、おそらく駈からの「離婚しよう」というメッセージだったのでしょうね。
6回目でもドキドキわくわくキュンキュンできました。「現状、結婚していないのに離婚したなんて」と絶望的な台詞を吐く駈にはいつも笑ってしまう。そして、15年後の君に会いたいと言う彼にもキュンキュンします。ま、松村北斗があの表情で言ってくれるからなんでしょうけれども。(^^;
もうこれがホントにラストかな~。
『君がトクベツ』
『君がトクベツ』
監督:松田礼人
出演:畑芽育,大橋和也,木村慧人,山中柔太朗,大久保波留,NAOYA,矢吹奈子,星乃夢奈,遠藤憲一,佐藤大樹他
109シネマズ大阪エキスポシティにて、前述の『28年後…』の次に。
原作は幸田もも子の同名少女漫画で、2019年より『別冊マーガレット』にて連載中。松田礼人監督の作品を私は初めて拝見します。
陰キャの若梅さほ子(畑芽育)は、高校時代、意を決して学校一のイケメンにコクったところ、散々な目に遭う。相手から笑われたのみならず、学校中にさほ子の告白が知れ渡って身の程知らずとまで言われ、以来、徹底したイケメン嫌いで、二度と恋はするまいと決めている。
さほ子の母親(しゅはまはるみ)は定食屋を営んでおり、さほ子もほとんど毎日店を手伝っている。そこへある日、国民的アイドル・グループ“LiKE LEGEND(ライクレ)”のリーダー・桐ヶ谷皇太(大橋和也)がやってくる。皇太の大ファンである親友のためにサインをもらおうとしたところ、皇太はさほ子にキラキラの笑顔を向けてファンサ。ドキッとしつつもイラッとしたさほ子は、誰でもアナタのファンだと思うなよと毒を吐いてしまう。
しかしその日から皇太は頻繁に来店。ハンバーグが大のお気に入りの皇太から出前の注文も入るようになり、さほ子はライクレの他のメンバーたちとも顔見知りに。ファンのために努力を惜しまない皇太の姿を見て、彼への印象が変わってゆき……。
この手の作品を観ていつも思うのは、地味とかブスとかいう設定のヒロイン、じゅうぶん以上に可愛いから!ということ。眼鏡をかけさせておけば可愛くないように見えるだろうという感じ。いやいやいや、可愛いから。って、前にもこんなことを書きましたよね。ここで本当に可愛くない子が出てきたら、見たくないからと思うけど(笑)。
時折こっちが照れましたが、普通に面白いです。芸能プロダクションに出前に行ったさほ子が見かけるのが、藤田ニコルとか浜辺美波。本人役のカメオ出演。アンミカもテレビの中のタレントとして本人役で出演しています。
ライクレの残りのメンバーを演じるのは、木村慧人、山中柔太朗、大久保波留、NAOYA。誰かお気に入りの人がいるのならどうぞ。私がわかるのは、ほかの映画で見たことのある大橋くんと山中くんだけでしたけど。(^^;
『28年後…』
『28年後…』(原題:28 Years Later)
監督:ダニー・ボイル
出演:ジョディ・カマー,アーロン・テイラー=ジョンソン,ジャック・オコンネル,アルフィー・ウィリアムズ,レイフ・ファインズ他
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
ダニー・ボイル監督のことは結構好きですが、前作の『28日後…』(2002)と『28週後…』(2007)は観ていません。だってその頃の私はまだホラーが苦手でしたから。今はホラーも躊躇なく観に行くようになって、話についていけるかなぁと思いつつ、予習もせずに鑑賞しました。
冒頭、大勢の少年と少女がひとつの部屋で肩を寄せ合って“テレタビーズ”を観ています。部屋の外では何かが起きているらしく、子どもたちは不安でいっぱいの顔をしているけれど、出てきてはいけないと親から言われているのか、懸命にテレビ画面に集中しています。しかし、そんな努力も空しく、ドアが破られてゾンビのごとき大人が殺到。逃げ惑う子どもたちが次々と捕まって無残に噛みつかれるなか、ジミーという少年だけが生き延びます。
場面変わって28年後。てっきり上記のジミーが大人になってゾンビと戦うのかと思っていたら、違うじゃあないか。
冒頭のジミーとちょうど同じ年頃の少年スパイクは両親との3人暮らし。ゾンビ(ってか、これってゾンビと呼んでいいんですかね?)の巣窟となっている本土から逃れ、人々は島で暮らしています。島の少年たちは、15歳前後になると大人と共に本土に出向くのが慣習。本土でゾンビを狩りつつ、島では手に入らない生活必需品等を本土で探して持ち帰る。そうして無事に戻れば、大人の仲間入りをしたことを島をあげて祝うのです。
スパイクはまだ12歳ながら、島でも屈指の強さを見せている父親ジェイミーに従って本土へ。動きの遅いゾンビを仕留めることに成功しますが、ゾンビの親玉アルファに遭遇してしまう。ジェイミーの的確な指示のもと、スパイクもなんとか島に帰り着いて皆に褒められます。
しかしそのお祭り騒ぎのなか、スパイクはジェイミーの浮気現場を目撃。スパイクの母親アイラは病に冒されて精神が不安定。そんなアイラを支え続けるジェイミーではあるけれど、スパイクは父親の浮気が許せません。本土に変わり者の医者がいることを知ったスパイクは、アイラを連れて島を抜け出します。母親を医者に診せる気があるとは思えない父親に代わって、自分が母親に治療を受けさせるため。
という物語。ダニー・ボイル監督、アレックス・ガーランド脚本というのがウリの本作は、巷の評判はあまりよくないようですが、私は結構楽しく観ることができました。かつてはゾンビといえば走らないと決まっていたものですが、いつしか走るゾンビが登場し、本作では動きの遅いゾンビと速いゾンビ、両方出てきます。そこも可笑しい。
ジェイミー役にはアーロン・テイラー=ジョンソン、アイラ役にはジョディ・カマー。変わり者の医師ケルソンを演じるのはレイフ・ファインズ。スパイク役のアルフィー・ウィリアムズも知的で勇敢な少年を好演。最後の最後にあのジミーが大人になったのがこのジミーですかという彼が登場します。
で、まだ終わらないのですよ。続くんかい!と思わずツッコミ。はいはい、次も観ますってば。次は早めにお願いしますね。私も体力がもたなくなってしまうから。(^^;