『脱走』(英題:Escape)
監督:イ・ジョンピル
出演:イ・ジェフン,ク・ギョファン,ホン・サビン,ソン・ガン,イ・ソム,イ・ホジョン他
109シネマズ大阪エキスポシティにて『メガロポリス』を観て呆然としたのち、109シネマズ箕面へ向かって本作を鑑賞。金持ちのオッサンが私財を投じて撮った『メガロポリス』とはスケールが違うとはいえ、絶対にこっちのほうが面白い。監督は『サムジンカンパニー1995』(2020)のイ・ジョンピル。タイトルそのままに、命懸けで脱北に挑む北朝鮮兵士を描くサスペンスアクションです。
軍事境界線で警備に当たる軍曹イム・ギュナム(イ・ジェフン)は10年間に渡る兵役をまもなく終えるが、兵役後に北朝鮮に残ったところで何も未来はない。今が韓国へ脱走するとき。長い時間をかけて脱走の計画を立ててきたのに、下級兵士のドンヒョク(ホン・サビン)がそれに気づいてギュナムに詰め寄る。
自分も連れて行ってほしいというドンヒョクにギュナムがシラを切り通したところ、その夜、ドンヒョクが単身で脱走を図る。ドンヒョクの逃走経路に心当たりがあるギュナムは、ほかの下級兵士たちによそを回らせ、ドンヒョクを探しに。案の定、ギュナムが考える場所にドンヒョクはいた。見つかれば銃殺刑は免れない。なんとかドンヒョクを救おうと画策するも、ふたりでいるところを見つかってしまう。ドンヒョクはギュナムが作成して隠していた地図等を盗み出していたため、ギュナムが共犯とされて拷問を受ける。
ふたりとも銃殺まちがいなしと思われたが、保衛省から様子を見にやってきたリ・ヒョンサン(ク・ギョファン)は、ギュナムは脱走兵を捕らえた英雄としてむしろ賞賛すべきだと言う。脱走兵が2人も出ればその管理体制が疑われるからと。ヒョンサンのおかげで殺されずに済んだわけだが、兵役終了後も軍にとどまるように言われたギュンナムは……。
『メガロポリス』で襲われた睡魔から覚醒するのにもってこいの作品でした。
実はギュナムとヒョンサンは幼なじみの間柄。幼なじみと言っても、ふたりの会話からわかるのは、ギュナムの父親がヒョンサンの父親の運転手を務めていたということ。そこには歴然とした上下関係があり、だけど、ギュナムはヒョンサンのことを兄のように慕っていたことがわかります。ヒョンサンも今は冷酷な少佐として皆から恐れられていますが、ギュナムを本当の弟のごとく可愛がっていた模様。しかし、どうにかして北朝鮮から逃げ出そうとしているギュナムを殺すしかないヒョンサン。そこに躊躇はなくてとても恐ろしい。
「どうせ失敗するだけなのに、どうしてそこまでして南に行きたいのか」と問うたときのギュナムの答えが心に響きます。「この国では失敗が許されない。人は失敗して、挑戦して、また失敗して、夢を見ながら挑戦するもの。ひとつミスを犯しただけで殺される国で生きていたくはない」。
ヒョンサン役のク・ギョファンの怪演がとてもよかったです。最後の彼の表情に救われる。