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『ANORA アノーラ』

『ANORA アノーラ』(原題:Anora)
監督:ショーン・ベイカー
出演:マイキー・マディソン,マーク・エイデルシュテイン,ユーリー・ボリソフ,カレン・カラグリアン,ヴァチェ・トヴマシアン他
 
109シネマズ箕面にて、封切り日翌日の土曜日、レイトショーの回を観ました。
 
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017)が強烈な印象を残したショーン・ベイカー監督。
『レッド・ロケット』(2021)も大いに期待して観に行ったらなんだかイマイチで。
本作ではまた『フロリダ・プロジェクト』の監督再来という感じ。
 
アニーことアノーラは、ニューヨークでストリッパーとして働くロシア系アメリカ人。
ある日、マネージャーから太客についてほしいと頼まれる。
その客とはロシアの富豪の御曹司イヴァンで、アメリカ観光に来ているらしい。
イヴァンはロシア語を話せるストリッパーを希望しているとのこと。
 
接客を務めたアニーのことをいたく気に入ったイヴァンは、店外でも会えるかと聞いてくる。
イヴァンのもとを訪れたアニーは、贅沢三昧の暮らしを送る彼にビックリ。本物の富豪だ。
 
出勤時間だから戻らねばならないというアニーをイヴァンは引き留め、
自分がロシアに帰るまでの1週間、専属契約をしたいと多額の報酬を提示する。
その契約に応じて店を休み、ずっとイヴァンと過ごすことにしたアニー。
 
1週間、アニーとイヴァンの友人たちは派手に遊び呆け、ラスベガスに行ったさいにノリで結婚。
玉の輿に乗ったアニーを妬む同僚にマウントを取り、颯爽と店を辞める。
 
ところが、イヴァンの結婚を知った彼の両親が激怒。
婚姻を無効にさせようと送り込んだ両親の手下から、明日には両親もアメリカへ来ると聞くや否や、
イヴァンは着の身着のままに逃げ出してしまう。
後に残されたのはアニーとアルメニア人の屈強な手下たちで……。
 
イヴァンはちょっと可愛いだけの21歳。馬鹿な小僧で、金を持っている以外に魅力はありません。
アニーの目的ももちろん金だから、ふたりの間に愛などない。
けれど、この金づるを逃がしてなるものかとアニーは怒り、すんなり引き下がる気は1ミリもなし。
 
アニーに好感は持てませんが、イヴァンの母親から好き放題言われて引き下がらないところは応援したくなる。
また、手下のひとり、イゴールがめちゃくちゃイイ。アニーの気持ちに寄り添うたったひとりの人物です。
けれどもアニーはイゴールに頼ったりしないし、罵詈雑言を投げかける。
それだけに、ラストではイゴールの優しさが伝わってきて、ちょっとジワッと来ました。
 
この監督、女性を主人公にする作品のほうが上手いのではないでしょうか。
 
追記:本作を観たのは第97回アカデミー賞の発表前でした。
   本作は作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞を受賞。ノミネート作品中、最多部門での受賞となりました。

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『プロジェクト・サイレンス』

『プロジェクト・サイレンス』(英題:Project Silence)
監督:キム・テゴン
出演:イ・ソンギュン,チュ・ジフン,キム・ヒウォン,ムン・ソングン,イェ・スジョン,
   キム・テウ,パク・ヒボン,パク・ジュヒョン,キム・スアン,ハ・ドグォン他
 
一刻も早く観たかったところ、封切り日だった金曜日はグッと我慢して、
翌日のファーストデーに109シネマズ箕面にて。
 
しばらく前からかかっていた予告編を観て、あれ?イ・ソンギュン?亡くなっちゃったよね?と思っていました。
『スリープ』(2023)が遺作だと勝手に思い込んでいたので、スクリーンでまた彼に会えるとは嬉しい驚き。
 
チャ・ジョンウォンは、大統領選挙で優勢とみられるチョン・ヒョンベクの補佐官を務めている。
妻を亡くして今は娘ギョンミンと2人暮らしだが、悲しみに暮れるギョンミンはすっかり反抗的になり、
高校卒業後はラッパーになる夢を叶えるべく留学すると言う。
 
旅立つギョンミンを空港まで送る夜、濃霧が立ち込める。
途中立ち寄ったガソリンスタンドで、店主になりすましたレッカー車の運転手(以降、レッカー)が売上金をくすねようとしていることに気づき、
ジョンウォンは空港からの帰りに金を払うとレッカーに言い残して発車。
戻ってきた店主にこっぴどく叱られたレッカーは、金を取り返してくると言って自分のレッカー車でジョンウォンを追う。
 
空港へ通じる大橋では、濃霧のなか爆走する様子をライブ配信する無茶なYouTuberが事故を起こす。
そこに次々と車が突っ込み爆発するなどして、もはや身動きの取れない状態に。
ジョンウォンがヒョンベクに連絡を取ろうとするも、携帯電話が繋がらなくなる。
 
どこかから妨害電波が発せられていると気づいたジョンウォンが辺りを見回し、軍人と研究者のヤン博士を発見。
どうやら軍の極秘プロジェクトでつくられた実験体“エコー”が移送中の車両から逃げ出したらしい。
 
救助隊はエコーに襲われて全滅、ヘリコプターも墜落、大橋は崩壊寸前。
ジョンウォンは生存者たちを集め、なんとかここから脱出しようとするのだが……。
 
エコーは獰猛な犬の集団なのですが、これがちょっとCGくさいのは難点。
それを差し引いても面白い。
 
当面の生存者はジョンウォンとギョンミン父娘なのはもちろんのこと。
ジョンウォンを追ってきたレッカー(チュ・ジフン)は見るからに軽くて、倒れている人の財布を盗もうとするような奴。
それでも根は優しいから、悪態つきながらもほかの人を見捨てたりしない。
プロゴルファーのユラ(パク・ジュヒョン)はその付き人である姉のミラン(パク・ヒボン)がパスポートの更新を忘れたせいで、
試合に臨むことなく帰宅する途中にこれに巻き込まれました。
でも実は……という話があって、ユラがゴルフの腕を駆使するシーンが痛快。
 
ネタバレですが、もともとエコーはヤン博士が「人の声を聞き分ける救助犬」として開発したクローン犬。
それを軍が戦闘に使う狩猟犬にするように強いたんですね。
俺は悪くないと主張するヤン博士がどうしようもなく駄目駄目で、笑っちゃうほどでした。
 
クローン犬の母親である“エコー9”には泣かされます。
クローンであろうとどうであろうと自分の子ども。それを守るために人間に襲いかかっていたのですから。
 
緊迫感に溢れ、笑えるやりとりも多数。ちょっと切なかったりもして最高。
48歳で自ら命を絶ってしまったイ・ソンギュン。まだまだ彼の演技を見たかった。本当に残念です。

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『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』

『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』
監督:木村真人
出演:八木勇征,井上祐貴,櫻井海音,椿泰我,カンニング竹山,阿部亮平,
   高橋洋,馬渕英里何,平野宏周,工藤美桜,笹野高史,田辺誠一他
 
私の友だちの中でいちばん年上だった人が亡くなりました。
ステージ4の膵臓がんで闘病中だったけど一度も寝込むことなく、まだまだ大丈夫と思っていたら、旅先で。
悲しみに暮れつつも彼女の笑顔しか思い出せず、楽しかったことばかり頭の中をめぐる。
 
そんな彼女は、私のと同じく、私の予定を変えなくていい日程で亡くなったとしか思えない。
お通夜も告別式も私の予定を避けるかのような日程で、「行っておいで〜」と言ってくれているかのよう。
告別式の後、私は喪服から普段着に着替えてなんばへ。NGKの前にTOHOシネマズなんばにて映画を1本。
 
原作は鈴木おさむの同名朗読劇なのだそうです。
アイドル起用の若い子向け映画だと思ってナメていたのに、不覚にも泣いてしまいました。(^o^;
 
山間の小さな村に生まれ育った高校3年生の男子4人、アキト(八木勇征)、ハルヒ(井上祐貴)、ナツキ(櫻井海音)、ユキオ(椿泰我)。
今年18歳を迎える彼らは、村の長老・テツ爺(笹野高史)に呼び出され、村の秘密を打ち明けられる。
 
その秘密とは、村に生まれた男子は全員、18歳になると1回だけ魔法が使えるというもの。
ただし使えるのは20歳までの間の2年間で、命に関わることに使うのは禁止という条件付き。
命に関わることに魔法を使うと、村に不幸が訪れるというのだ。
 
魔法が使えるだなんてあり得ないと最初は笑って聞いていた4人だが、真面目な顔のテツ爺を見て押し黙る。
自分たちより上の世代の者は皆それを知っているし、男性は全員通ってきた道らしい。
 
帰宅後に「秘密を聞いてきた」と親に話すと、反応はさまざま。
しかし一様にして、後悔のない使い方をするように言われているように思う。
4人は魔法の使い道について話し合う機会を設けるのだが……。
 
親友同士の4人ですが、将来の夢はそりゃマチマチ。
楽器店の息子アキトは東京の芸大に進学してピアニストになりたい。
ハルヒは生まれつき心臓に疾患があります。
造園業を営む父親のもとに生まれたナツキはサッカー選手になりたかった。
村のダム開発に携わった父親を持つユキオは工作が大好き。
 
魔法を何に使いたいかを明かすのは気恥ずかしい彼らは、最初は他愛のない願いについて話します。
イクラの食感が嫌いだからそれがなくなってほしいとか、グリーンピースの苦みが消えてほしいとか。
この辺りは無邪気で可愛いのですが、それを聞いていたナツキが突然ブチ切れ、
みんなもっと自分の欲に素直になれよと出て行ってしまいます。彼が無邪気ではいられない理由がそこにはあって。
 
命に関わることに使うのは禁止だと聞いて、私は「誰某に死んでほしい」とかいうのが駄目なんだと思ったら、
誰かの命を救いたいというのが駄目なんですね。私のなんと邪悪な気持ち(笑)。
かつて誰かが誰かを救おうとしたことで村が不幸に見舞われたというのは、
決まっている運命を人がいじることには代償がつきものなのでしょうか。天命ってあるのかなって。
 
泣いてしまったのは、「人が死ぬということにはちゃんと意味がある」という台詞を聞いたときです。
短命の人、長寿の人、命にはさまざまな長さがあるけれど、どの死にも意味がある。
 
魔法を使ったら、何に魔法を使ったかを歴代の人々が記してきたノート。
そこに溢れていたのは誰かの幸せを願うものばかり。
 
小さな幸せに気づくということ。

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『オーガスト・マイ・ヘヴン』

『オーガスト・マイ・ヘヴン』
監督:工藤梨穂
出演:村上由規乃,諏訪珠理,藤江琢磨,長谷川七虹,山﨑龍吾,西出明,鈴木卓爾他
 
第七藝術劇場にて、前述の『ザ・エクソシズム』の次に。
十三まで出かけてコインパーキングに駐めて、映画1本だけで帰るのはもったいないなぁ、
でもたまには早く帰りたいなぁと思っていたところ、この40分の短編が。
これを観たって終わるのは21時過ぎだから、早めでありがたい。
 
奇しくも京都が舞台の作品は数日前に観たばかり。『事実無根』がそれでした。
あっちが京都全開の作品だったのに対し、こっちは標準語だということもあり、京都っぽくはありません。
 
城野譲(村上由規乃)の仕事は代理出席屋。
依頼人の親族のふりをして冠婚葬祭に出席したり、友人のふりをして依頼人が必要とする場に顔を出したり。
いろんな人のふりをしているものだから、出かけた先で誰某さんと声をかけられることもしばしば。
いつも上手く受け答えして流している。
 
譲の行きつけの中華料理店で働く三枝南平(諏訪珠理)は彼女への想いを打ち明けるもかわされてしまう。
8月が終わればこの町から出て行くかもしれない譲。落ち着かない南平。
 
ある日、代理の仕事で葬儀に参列した譲は、夢の中に現れた見知らぬ男・長谷薫(藤江琢磨)に遭遇。
どうやら譲は薫の旧友・いづみにそっくりらしく、薫は譲のことをいづみだと思い込む。
しかも薫は南平といづみの共通の友人で、薫はいづみになりすました譲を連れて南平の勤め先に現れて……。
 
「自らの肉体を持ちながら自分ではない何者かになる“演じる”という行為へ、
そして関係性を演じる中で積み重ねられる“時間”という事実へアプローチをかけながら、
人と人が共に在ることへのかけがえのなさを映し出した意欲作」とあります。
正直言って、そんな難しいことを言われても私にはさっぱりわからない。(^^;
 
けれど、深い意味があることを考えなければ、話の流れはいたってシンプル。
知らない人に夢の中で出会うこと。誰かになってみること。誰かと誰かが繋がっていること。
ひと夏の思い出として観ることができました。澄んだ空気に触れられたような気がします。

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『ザ・エクソシズム』

『ザ・エクソシズム』(原題:The Exorcism)
監督:ジョシュア・ジョン・ミラー
出演:ラッセル・クロウ,ライアン・シンプキンス,サム・ワーシントン,クロエ・ベイリー,
   アダム・ゴールドバーグ,エイドリアン・パスダー,デヴィッド・ハイド・ピアース他
 
十三・第七藝術劇場にて。あんまりこの劇場で上映するタイプの作品ではないような気がします。
実際、いつもはもっと客が入っている劇場なのに、この日はかなり少ない。
ここでラッセル・クロウを観るのはなんかちょっと違うんだなぁ。でもここでしか上映していないし。
 
ジョシュア・ジョン・ミラー監督は、あの『エクソシスト』(1973)でカラス神父役を演じたジェイソン・ミラーの息子。
ラッセル・クロウ演じる主人公の名前をミラーとしたのは、別に実体験に基づいているわけではないですよね!?
 
俳優のアンソニー・ミラーは、妻がいまわの際にいるときに娘のリーを置いて逃げ出し、酒に走った。
以降、数年の間、アルコール依存症に苦しんでいたが、このたび悪魔祓いを題材にしたホラー作品への出演が決定。
しかしこの作品は、もともと神父を演じるはずだった俳優が撮影現場で謎の死を遂げた曰く付き。
 
撮影に入ろうかという頃、リーが高校を退学処分になってアンソニーのもとへ帰ってくる。
リーはアンソニーの付き人として現場に出入りすることに。
 
久しぶりの仕事に意気込むアンソニーだったが、監督のピーターはアンソニーの演技に納得してくれない。
駄目出しばかり喰らう日々に、心身ともに追い詰められていき……。
 
冒頭、こういった悪魔憑きの作品を撮るときには、きちんとお祓いをする必要があるという女優の話があります。
たかがフィクションだとナメてかかると、あり得ない出来事が起こるのか。
ここで起きることはやっぱり芝居じみているから、途中からは茶番に見えてしまったけれど、
こんなふうに笑っていては呪われるかもしれないよとちょっとビビる。
 
『ヴァチカンのエクソシスト』(2023)でも神父役を演じていたラッセル・クロウ。
こういう役が気に入ったのだとしか思えないぐらいののめり込みよう(笑)。
自身を犠牲にしてアンソニーを救おうとするコナー神父役のデヴィッド・ハイド・ピアースがよかったです。
アンソニーの不調により代役を務めることになった俳優役のサム・ワーシントンがぶった切られるシーンは、
えっ、彼、そんな扱い!?とまたしても笑ってしまったのでした。
 
ずいぶん私もホラーに慣れたもんだわ~。

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