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『MINAMATA ミナマタ』

『MINAMATA ミナマタ』(原題:Minamata)
監督:アンドリュー・レヴィタス
出演:ジョニー・デップ,真田広之,國村隼,美波,加瀬亮,浅野忠信,岩瀬晶子,ビル・ナイ他
 
109シネマズ箕面にて。
 
人気者のジョニー・デップですが、実は私はあまり思い入れがありません。
『シザーハンズ』(1990)や『ギルバート・グレイプ』(1993)の彼はそりゃもうよかったけれど、
ちょっとキワモノ的なイメージが付いてしまって、
普通の男を演じる彼の姿がなかなか見られなくなりました。
で、あんまり食指が動かなかったけど、ほかに観るものがなかったので。
結果、これは観に行ってよかったです。
 
1918年生まれのアメリカ人、ユージン・スミス。
第二次世界大戦中、戦争写真家として沖縄へ派遣された彼は、
歩兵と共に戦場にいたさいに爆風を浴び、全身を負傷しています。
本作にはそれに関する具体的な描写はありませんが、
戦争の様子が何度もフラッシュバックするシーンがあり、
また、胸の傷跡が一瞬見えるシーンも終盤にあります。
 
ジョニー・デップ演じるユージンは、伝説の写真家ではありますが、
戦争が終わって数十年経った1970年代、
かつてのような写真を撮ることもなく、酒に溺れる日々。
仕事がないから、離れて暮らす子どもに残す金もありません。
 
それをぼやいていたところへアイリーンという女性がやってきます。
彼女が言うには、熊本県水俣市でチッソという会社が有害物質を含む廃水を垂れ流している、
苦しんでいる人々がいるから、あなたが写真を撮って世界に伝えてほしいと。
 
沖縄で散々な目に遭っているユージンは、二度と日本には行きたくないとアイリーンを追い返しますが、
彼女が置いていった資料を見て愕然とします。これは日本に行かなければと思う。
 
旧知のライフ誌の編集長ロバート・“ボブ”・ヘイズに金を出してくれと半ば脅し、
ユージンはアイリーンと共に水俣へと向かいます。
そこで彼が目にしたものは、想像を遙かに超えていました。
 
ユージンとアイリーンを家に泊めてしばらく世話をするのが、
浅野忠信と岩瀬晶子が演じるマツムラ夫妻。
夫妻の娘は脳性麻痺と診断されていますが、そんなはずはない。水俣病です。
加瀬亮演じる住民のひとりも息子が水俣病に冒され、自身にも症状が出ている。
シャッターを切るユージンを國村隼演じるチッソの社長は大金で買収しようとし、
応じないと知るや、ネガフィルムを焼き尽くそうとします。
 
ボブ役のビル・ナイが素晴らしい。
ユージンに振り回されてきた彼が、最後に今一度ユージンを信じたおかげで、
彼にしか撮れない写真がこうして後世まで残っているのですね。
って、ボブの存在はどこまで本当なのかわかりませんけど。
 
水俣病といえば、教科書で知るぐらいの知識しかありませんでした。
エンドロールでは公害病に苦しむ世界各地の人々の写真も見ることができます。
今なお、苦しんでいる人たちがいることを覚えておきたい。

—–

『護られなかった者たちへ』

『護られなかった者たちへ』
監督:瀬々敬久
出演:佐藤健,阿部寛,清原果耶,林遣都,永山瑛太,緒形直人,吉岡秀隆,倍賞美津子,
   奥貫薫,宇野祥平,黒田大輔,西田尚美,原日出子,鶴見辰吾,三宅裕司他
 
甲子園に行くために午後休を取った日がちょうどファーストデーでした。
 
原作である中山七里の同名小説を読んだときの感想はこちら
監督はなぜか私がいつもイマイチ乗れない瀬々敬久
イマイチ乗れないんだけれども、毎年こうしてコンスタントに撮られるのは凄いこと。
 
先にいちばん納得できなかった台詞に関して文句を言わせてくださいね。
どうでもいいことですが(個人的にはどうでもよくはない(笑))、
序盤に「汚名を挽回」という台詞が出てきたとき、
「汚名は返上だよ、挽回は名誉」とツッコミを入れたくなりました。
「言い切られる」という台詞もありました。
これは敬語の「られ」に取れなくもないのですが、そうではない可能性のほうが高い。
だったらこれは「ら入れ」になっている。「言い切れる」でお願いします。(^^;
 
さて。
 
東日本大震災から10年が経とうとしている宮城県仙台市
無人のアパートの一室で遺体が発見される。
被害者は全身を縛られたうえで放置されて餓死した模様。
宮城県警捜査一課の刑事・笘篠誠一郎(阿部寛)は、
まだ若い刑事・蓮田智彦(林遣都)とコンビを組んで捜査に当たる。
 
やがて被害者が福祉保健事務所職員・三雲忠勝(永山瑛太)だと判明。
誰もが三雲は善人で人に恨まれることなどないと断言するが、
その数日後、また同様の方法で餓死させられる事件が起きる。
今度の被害者は城之内猛(緒形直人)で、かつて三雲と同じ職場にいたとわかる。
 
笘篠と蓮田は、生活保護をめぐって保健事務所で揉めた人物を探す。
すると、出所したばかりの利根泰久(佐藤健)が捜査線上に浮上して……。
 
この作品を観に行くと話すと、複数の人から「あ、震災の話ですね」と言われました。
原作を読んだかぎりでは、震災の話だというイメージはなく、
それよりも生活保護にまつわる話だと思いました。
映画を観て納得、震災がすべての原因だという印象を受けてしまいます。
 
原作では犯人が終盤まで割れませんが、映画版はバレバレ(笑)。
それ――名札なのですけれど――を最初に見せちゃうのと苦笑い。
カンちゃんがいったい誰なのかということがすぐにわかります。
 
とはいうものの、原作未読の人にはわからないのかもしれない。
いえ、わかりますよね!?
 
震災当時、行き場を失った利根がたどり着いた避難所
そこにいたのがやはりひとりぼっちの「カンちゃん」(石井心咲)で、
利根とカンちゃんを実の子どものように可愛がってくれたのが遠島けい(倍賞美津子)でした。
このけいが生活保護を受けられず餓死したという過去があったから、
今回の殺人事件と結びつくわけです。
 
正確には、けいは生活保護を受けられなかったのではありません。
受給できることになっていたのに諸般の事情から辞退した。
他人様の世話になってはいけない、迷惑をかけてはいけないと、真面目な人ほど思う。
一方で、不正受給が横行しているという事実があります。
 
忖度という言葉が適切かどうかはわかりませんが、
原作よりも映画版のほうが福祉保健事務所の職員たちの気持ちに寄せているように思います。
永山瑛太、緒形直人、吉岡秀隆という、ふだんは善人役のほうが多い俳優を悪役に当て、
しかし特に吉岡秀隆に関しては、当時の自分の対応を悔やみ、
なんとか人に優しい社会に変えていこうと政治家になっている。
本当にこんなふうに考える政治家ばかりならいいのですけど、
ちょっと偽善っぽいにおいがするのも、私が瀬々監督に乗り切れない所以。
 
ちなみに清原果耶の役どころは原作では男性です。
女性に変更するにはちょっと無理がありませんか。あんなことでけんと思うねん(笑)。
 
映画版に満足はできなかったけれど、笘篠の台詞どおりになることは切に願う。
明るい未来をつくる優しい子どもが育てられる世の中になりますように。

—–

『空白』

『空白』
監督:吉田恵輔
出演:古田新太,松坂桃李,田畑智子,藤原季節,趣里,伊東蒼,片岡礼子,寺島しのぶ他
 
109シネマズ箕面にて。
 
『机のなかみ』(2006)以来、吉田恵輔監督のファンです。
最近の作品では『BLUE/ブルー』(2020)が大好きでした。
そんなしみじみとする作品とヒリヒリする作品があり、これは後者。
もう勘弁してよというぐらい絶望的で堪えました。
 
漁師の添田充(古田新太)は離婚して娘の花音(伊東蒼)と二人暮らし。
引っ込み思案でマイペースすぎる花音には友だちもいない。
中学の担任教師の今井若菜(趣里)もしばしば苛立ちを隠せず、
ついつい花音にきつい口調になってしまう。それでも反応の薄い花音。
花音が一緒にいて安らげるのは母親の翔子(田畑智子)のみ。
再婚した翔子は現在臨月だが、花音のことをいつも気にかけている。
 
ある夜の食事中、花音は学校のことで相談したいと充に言う。
しかし、常に怒り口調の充に恐れをなし、先を継げない。
 
翌日、近所のスーパーに立ち寄った花音は、化粧品を万引き
気づいた店長の青柳直人(松坂桃李)に追いかけられて逃げる途中、
車に撥ねられて路上に倒れたところ、
後続のダンプカーにひきずられて無惨に死亡してしまう。
 
前夜に何か話があると言った花音。
あれは学校でいじめに遭っていると言いたかったのではないか。
それに花音が化粧しているところなど見たことがない。
万引きしたなどというのは濡れ衣で、
スーパーの店長がいたずら目的で追いかけたに違いない。
そう思い込む充は、学校に厳しく真相を追求する一方で、
直人のことを待ち伏せし、罵るのだが……。
 
何もかもが恐ろしい。
 
充と直人のことを面白おかしく取り上げるマスコミ。
善意の取材だと見せかけて、視聴者に直人が悪人に映るように編集します。
これまで娘のことをちっとも気にかけてこなかった様子の充が、
本当は自分自身にいちばん腹を立てているはずなのに、矛先を相手に向ける。
 
担任教師が花音につらく当たったことを反省する言葉を口にしたとき、
ほかの教師(和田聰宏)が言うことにビクッとしました。「ずるいですよ」。
亡くなった生徒のことを後から思い遣るような言葉、反省の弁はずるいと言うのです。
確かに、今さらそんなことを言うかと思わなくもない。
校長はいじめがあったなどと判明したら大変だから、追求などしたくもないし。
 
寺島しのぶ演じるスーパーの店員がいちばん怖かったりもします。
自分こそが直人の理解者であり、彼を救ってあげられる人間。
日頃はボランティアに精を出し、正義感と責任感の強い人。
何もかも世のため人のためだと思っているけれど、腹の中はきっとどす黒い。
こんな人を敵に回したら、何をされるやらわかったものではありません。
 
濡れ衣ではなかった、自分の娘は本当に万引きしていたとわかっても、
それを言い出せない充の姿には嫌気が差します。でも言えないよなぁ。
 
人間の嫌な部分を見せつけられてばかりのなか、
藤原季節演じるお調子者に見える若者がよかった。
それから、花音を最初に轢いた女性の母親(片岡礼子)の態度には胸を打たれます。
誰が悪いのか。どうすればいいのか。赦しとは何か。
 
どシリアスな古田新太。
凄かったけど、いつかちょっと明るめのほうの吉田監督の作品でも見てみたい。
 
ところで、担任教師役の趣里は、水谷豊伊藤蘭の娘です。
ご存じでしたか!?

—–

『マイ・ダディ』

『マイ・ダディ』
監督:金井純一
出演:ムロツヨシ,奈緒,毎熊克哉,中田乃愛,臼田あさ美,
   徳井健太,永野宗典,光石研,小栗旬他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
これも“TSUTAYA CREATORS' PROGRAM”にちなむ作品だそうで。
2016年に準グランプリを受賞した企画とのこと。
あちこちで顔を見まくるムロツヨシですが、意外にも映画初主演。
笑いに走ることもなく、いたって真面目な彼を見られます。
 
小さな教会の牧師・御堂一男(ムロツヨシ)は、8年前に妻を亡くした。
教会を存続するためにガソリンスタンドでバイトしながら、
今は中学生になった娘・ひかり(中田乃愛)を男手ひとつで育てている。
ぶつぶつ文句を言いながらも教会での一男の仕事を手伝ってくれるひかりだったが、
ある日のミサ中に突然倒れ、急性骨髄性白血病と診断される。
 
動揺する一男にさらに衝撃的な事実が知らされる。
それは、一男とひかりは親子ではないということ。
妻と誰か他の男との間に生まれたのがひかりであるということを
ひかりはもとより一男にも知らせないまま妻は亡くなったのだ。
 
ひかりには決して知られてはいけない。知られないまま治療できるはず。
しかし、ひかりは抗がん剤による化学療法で快復したものの、しばらくして再発。
骨髄移植をしなければ命が危ういと医師(徳井健太)から宣告される。
 
ひかりの白血球の型は一男とは一致しない。
骨髄バンクに登録されている誰とも一致しない。
娘の命を救うため、一男はひかりの実の父親探しを探偵(小栗旬)に依頼するのだが……。
 
序盤、一男とひかりのシーン以外に、男女カップルのシーンがあります。
毎熊克哉演じるヒロは、路上でキーボードの弾き語りをする歌手志望の男。
ヒロのファンで、身も心も彼に捧げる女性・江津子を奈緒が演じ、
教会に集う人々の群像劇を想像させるものでした。
 
ここからはネタバレです。
 
同時期を描いていると思われた上記のシーンはミスリード。
ヒロの浮気現場に出くわした江津子が泣きながら辿り着いたのが教会で、
一男は亡き妻に瓜二つの彼女を見て驚く、かと思いきや違った。
ヒロと江津子のシーンは15年ほど前のシーンだったのですねぇ。
 
つまり、一男と江津子はそのように出会って結婚、ひかりが生まれます。
けれど、江津子は一男を騙していたわけではなく、
クズ男のヒロは自分はおたふく風邪のせいで不妊になったから
生涯子どもは持てないと江津子に嘘をついていました。
そのせいで江津子は、ひかりは一男との子どもだと信じていたのです。
なのにヒロが子どもを連れて歩いているところに遭遇して愕然とする。
そして一男にそのことを打ち明けようとしたまさにそのときに、
江津子は事故に遭って還らぬ人になってしまったという。
 
なんとも悲しい話です。
白血病はいまや不治の病という印象はありませんが、
適合するドナーがいなければ救えないこともある。
江津子が墓場まで持って行ったはずの秘密がこんな形で暴かれてしまう。
 
でも、ひかりは自分の母親が父親のことをどれだけ愛していたか知っていた。
父親が母親の愛を信じないのなら、騙されたと思っているのなら、
自分は実の父親の骨髄移植など受けたくないと言うのです。
 
一男の職業が牧師ということもあって、ちょっと宗教的
お涙頂戴に走っている感も若干あります。でも、ここは素直に泣きたい。
 
ヒロはクズだったけど、それでもそのときの浮気相手(臼田あさ美)と結婚して、
子どももいて、定食屋の主としてちゃんと働いている様子を見れば、
ヒロといるべきは江津子ではなかったのだという気がします。
 
いちばん驚いたのは、小栗くんの友情出演的な出方ですが(笑)。
こんなヌボーッとした探偵役でも絵になるのよねぇ。

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『クーリエ:最高機密の運び屋』

『クーリエ:最高機密の運び屋』(原題:The Courier)
監督:ドミニク・クック
出演:ベネディクト・カンバーバッチ,メラーブ・ニニッゼ,レイチェル・ブロズナハン,
   ジェシー・バックリー,アンガス・ライト,ジェリコ・イヴァネク,キリル・ピロゴフ他
 
TOHOシネマズ伊丹にて。
 
ベネディクト・カンバーバッチを見るのは久しぶりだと思ったけれど、
『エジソンズ・ゲーム』(2019)って去年観たばかりだったのですね。
やっぱり演技も上手いし、声がとにかく良い
 
実話を基にした作品で、監督はドミニク・クック。シビれました。
 
米英それぞれの諜報機関CIAMI6は協力してソ連の動きを探るべく、スパイを送り込むことに。
ソ連に怪しまれぬよう、送り込むのは一般人が良い。
適任者として白羽の矢が立ったのは、英国人セールスマンのグレヴィル・ウィン。
 
グレヴィルは、東欧諸国に工業製品を卸すごく平凡なセールスマン。
商談を申し込まれていそいそと出かけてみると、
そこにいたのは実はCIAの職員エミリーとMI6の職員ディッキーで、
ふたりからスパイになってほしいと言われて驚く。
 
彼に託されたミッションは、取引先の開拓という名目で、モスクワの科学委員会を訪ねること。
そこでソ連側の情報提供であるオレグ・ペンコフスキーと接触し、機密情報を受け取って持ち帰るのだ。
一介のセールスマンに過ぎない自分がスパイだなんて。
あり得ないと思いつつも成り行きで情報の運び屋となってしまったグレヴィルだったが……。
 
これって実際にあることなんですね。一瞬「え、私が?」と心が躍るかもしれません。
だって、そんなことって普段の生活では絶対にないことですから。
でも危険な目には遭わせないなんていうのは嘘でしょう。バレたらきっと殺される。
 
グレヴィルは一瞬も心躍ったようには見えません。
身の程をちゃんと知っているというのか、無理だと速攻で断る。
しかし、核戦争を回避するためだと聞いて躊躇う。
もしも自分の行動が世界を救う、いや、そんな大きなことではなくて、
妻と子どもを救えるならば、やってみるべきではと思う。
 
オレグは反逆者などではなく、ソ連という国を心から愛しています。
それゆえに、核戦争など起こしてはならぬと考え、
フルシチョフの手を止めるためには機密情報を流すしかないと決心します。
 
キューバ危機を描いた作品としては、『13デイズ』(2000)が印象に残っていますが、
あの影でこんな動きがあり、核戦争を回避に至らせた人がいたとは。
しかもそのときには投獄されていて、回避の事実を知らずにいる。
自分は国家も家族も救えなかったのだという無念を胸に、
しかし巻き込まれたグレヴィルのことだけは必ず救おうとしたオレグ。
 
グレヴィル役のベネディクト・カンバーバッチとオレグ役のメラーブ・ニニッゼ、
どちらも素晴らしかったし、エミリー役のレイチェル・ブロズナハンもよかった。
グレヴィルの妻役のジェシー・バックリーもよかったですね。
「シーラは勘が働くから気づく。しかも自分には疑われる前科がある」という、
グレヴィルの台詞には笑ってしまいました。そしてきっちり浮気を疑われる(笑)。
すべての事実を知ったシーラが「夫に謝らなくては」と涙目になるシーンも良いです。
 
ひとりの力では世界は何も変わらないかもしれない。
でも何かを変える力があるかもしれない。

—–