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『マザーズ』

『マザーズ』(原題:Shelley)
監督:アリ・アッバシ
出演:エレン・ドリト・ピーターセン,コスミナ・ストラタン,ピーター・クリストファーセン,
   ビョルン・アンドレセン,パトリシア・シューマン,マリアンヌ・モーテンセン他
 
大阪市内に車で出かけた土曜日、18時ぐらいに新御に乗ればきっとババ混み。
わりとよくあるパターン、シネ・リーブル梅田で映画を観てから帰ることにしました。
 
2本ハシゴの1本目は2016年のデンマーク/スウェーデン作品。
 
本当は、これを観るつもりじゃなかったんです。
『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)同様に、妊婦さんは絶対観ちゃダメなやつ。
もちろん私は妊婦じゃありませんが(笑)、怖いに決まっているじゃあないですか。
世の中に「マタニティホラー」というジャンルがあるなんて知りませんでしたが。(^^;
 
観る気ゼロだったのになぜ観ることにしたのかといえば、
私の前に並んでいたひと2名が、ふたりともこれを観る様子だったから。
えっえっ、そんなに面白いん? ほなら私も観てみよかなって。
 
監督はイラン系デンマーク人のアリ・アッバシ。
衝撃的だった『ボーダー 二つの世界』(2018)の監督です。そう知った時点でもう気味が悪い。
 
ルーマニア人のシングルマザー、エレナは、ブカレストの実家に幼い息子を預け、
デンマーク人夫婦、カスパーとルイスに住み込みの家政婦として雇われる。
 
夫婦は資産家でありながら、静かすぎる湖畔の一軒家に住み、
電気も水道も引かずに自給自足の生活を送っていた。
携帯が使えないが、かろうじてある固定電話は自由に使ってよいと言われる。
 
うら寂しい暮らしが始まるが、カスパーもルイスも善人のようだ。
貯金して家族にアパートメントを買うという目標があるエレナは、
夫妻のためにかいがいしく働き、信頼を得て毎日を楽しむようになる。
 
ある日、ルイスから予期していなかった相談が。
ルイスは妊娠しても流産してしまう体質で、それを何度か繰り返した後、
死産したときに子宮を摘出したと言う。
ゆえに自分はもう子どもを望むことができないが、冷凍した卵子がひとつあるのだと。
エレナに代理母になってほしい。もしも引き受けてくれるなら、
アパートメントの購入費用を出すし、今後家政婦の仕事をしなくてもよいと。
悩んだ末、エレナは引き受けることに。
 
お腹の赤ちゃんは順調に育っていると思われたが、
あるときからエレナはこの赤ん坊が自分を殺そうとしていると感じ始める。
げっそりとやつれ、悪夢にうなされるようになって……。
 
何が起こるわけでもないんです。だから余計に怖い。
これをひと言で片付けるならマタニティブルーということになりましょうか。
エレナの正気がどんどん失われてゆき、赤ん坊を胎内から掻き出そうとする。
狂気以外の何ものでもありません。
 
これで終わりかなと思いきや、その後が結構長い。
ネタバレになりますが、エレナは亡くなり、赤ちゃんは無事生まれる。
嬉々とするルイスに対し、カスパーのほうは赤ん坊が怖くて仕方ない。
夜中に赤ん坊が妙な音を発していると感じ、赤ん坊から攻撃されることすら考えています。
エレナと同じように正気を失っていくんですねぇ。
 
もうひとつ、特筆すべきは、ビョルン・アンドレセンが出演しているということ。
『ミッドサマー』(2019)で彼の姿に驚いた人も多いでしょう。
本作はそれより前の作品ということになります。
ルイスが信頼する呪術師なのかな、レオという役名で登場しているのですが、
彼すらこの赤ん坊を見て何かを察して怯える表情が怖い。
だから何なん!? いったいこの赤ちゃんが何だっちゅうの!?←最後まで観ても明かされず。
 
赤ん坊の目玉が真っ黒だったりキラリン♪と光ったりとか一切ないのに、
そうなりそうな予感を常に持たされるものだから、ホラー苦手な私はビビりまくり。
観終わってどんよりしましたが、でも面白かったからいいや。
これが一日の締めくくりの映画ならツライけど、この後もう1本観たから大丈夫(笑)。

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『安魂』

『安魂』
監督:日向寺太郎
出演:ウェイ・ツー,チアン・ユー,ルアン・レイイン,北原里英,チェン・ジン,
   シャン・カンチョウ,サイ・ショウイ,ホウ・トウカイ他
 
京都シネマにて、『国境の夜想曲』の次に。
 
日中国交正常化50周年を記念して制作された日本/中国作品です。
原作者はチョウ・ターシン。監督は『こどもしょくどう』(2018)の日向寺太郎。
AKB48の元メンバー・北原里英が全編中国語で出演しているのも話題。
涙涙の物語を期待して観に行ったのですけれど。
 
唐大道は高名な作家。
妻の瑞英との間に授かった一人息子の英健に学歴こそすべてと説き、
英健がサッカーを楽しんでいた少年時代に都会へと引っ越し。
サッカーなど無意味だと勉学に勤しむことを強いて、
英健もその期待に報いて一流大学から一流企業へと就職を果たした。
 
29歳になった英健は、恋人の張爽を両親に紹介、結婚したいと告げる。
しかし大道は張爽が農村出身であることを理由に反対。
自分のせいで親子断絶してほしくはないと、張爽は身を引く。
 
張爽との別れに傷心していたそのとき、
英健は、目の前にいた日本人留学生の星崎沙紀が置き引きに遭うのを目撃。
咄嗟に犯人を追って捕まえた後、倒れてしまう。
 
病院に運び込まれた英健は悪性の脳腫瘍であることが判明。
手術の甲斐なく、「父さんが好きなのは、自分の心の中の僕なんだ」と言い残して亡くなる。
 
何も手につかなくなった大道は、ある日、路上で英健に生き写しの青年を見かける。
彼の名前は劉力宏と言い、父親と共に心霊治療所を開いていた。
英健に再会したい一心で、大道は降霊を頼むのだが……。
 
巷の評判はいたって良いようです。でも私は好きになれなかったなぁ。
実にイライラしました(笑)。
 
中国の父親像としてはこれが一般的なのでしょうか。
とにかく独善的で、子どもの気持ちなんてまったくわかっちゃいない。
自分の言うとおりにしてさえいればいいんだと決めつけている。
 
何ひとつ父親に背くことはしなかった英健が、
結婚相手だけは自分で見つけた素晴らしい女性を連れてきたのに、
育ちのレベルが違いすぎると父親は即却下。アンタ何様やねん。
 
息子が亡くなってから後悔したって遅い。
息子に瓜二つの力宏に出会い、贖罪の気持ちを見せたところで、ただの自己満足に思えます。
しかも心霊治療所は堂々の詐欺で、カモを探していただけなのですから。
 
詐欺とわかっているのに、力宏と会えなくなると贖罪の機会を逸するから認めたくない。
いい加減に目を覚ませという妻の言葉に耳を貸さず、詐欺師にカネなんぼでも払う。
 
もしかすると本当に力宏は英健だったのかもと感じさせるラストも、
父親にとって都合のいい解釈であって、私はシラけてしまいました。
 
まぁ、素直に「良い作品だった」と言える人のほうが善人でしょうね(笑)。
息子のいるお父さんの中には号泣する人もいるかもしれませんが、
これを観て感動する男性のことは私は信用できない。言い過ぎかしら。(^^;

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『国境の夜想曲』

『国境の夜想曲』(原題:Notturno)
監督:ジャンフランコ・ロージ
晩ごはんを京都で食べることになり、その前に映画を2本。
京都シネマに行きました。
イタリア/フランス/ドイツ作品。
監督は『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』(2013)のジャンフランコ・ロージ。
第77回ヴェネチア国際映画祭で3冠を受賞するなど、評価が高い。
でも、テロップやナレーションが一切ないから、
何を見せられているのか終始わからないまま。
圧巻の映像の前には説明など余計ということなのかもしれないけれど、
こういうのは素人にツライのです。
3年以上の間、イラクシリアレバノンクルディスタンの国境地帯で撮影されたそうです。
戦争で失った息子を想い歌う母親たち。
ISIS(イスラム国)の侵略を目の当たりにした子どもたち。
政治風刺劇を上演する精神病院患者たち。
上記のような人たちを撮影しているのだとわかったのは鑑賞後。
そりゃなんとなくはわかります。
拷問されて亡くなったとおぼしき息子を哀悼する母親の歌声は胸に迫るし、
殺戮を目にした子どもたちが心のケアを受けて、訥々と話したり、
当時の状況を絵に描いたりするのを見たときは、
こんなことがあってよいものだろかと呆然としました。
文句を言うことは許されない作品でしょう。
でも、説明はやっぱりほしい。
予備知識がいっさいないと、そこここで睡魔に襲われる。
説明がないからこそ、この切実さがわかるとか言われたら、
いや、説明がなければわからんからと言いたくなってしまう。
寝たらあかんと思うのですけどね。寝てまうやん。
それぞれの国境地帯の様子をある程度は頭に入れてから鑑賞すべき。

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『355』

『355』(原題:The 355)
監督:サイモン・キンバーグ
出演:ジェシカ・チャステイン,ペネロペ・クルス,ファン・ビンビン,ダイアン・クルーガー,
   ルピタ・ニョンゴ,エドガー・ラミレス,セバスチャン・スタン,ジェイソン・フレミング他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて、前述の『前科者』とハシゴ。
 
めっちゃ面白そうだったんです、予告編。
違うタイプの美女がぞろぞろ出てきて、“チャーリーズ・エンジェル”みたい。
強くてカッコイイ美女だらけというのは同性から見ても嬉しいものです。
 
麻薬カルテルの大規模取引がおこなわれそうだということで、
コロンビア諜報機関DNIが現場を押さえようと張り込んでいたところ、
そこで取引されるのは麻薬ではなく、何もかもハッキング可能なデバイスであると判明。
取引が成立しかけたときに突入して撃ち合いとなる。
 
現場にいた麻薬カルテル側の人間は全滅。
突入した側の特殊部隊諜報員ルイスのみが生き残り、デバイスを持ち逃げする。
このデバイスがあれば、旅客機を思いのままに墜落させることも、
世界中を停電させることも、すべての携帯を監視することも可能。
 
悪用されれば第三次世界大戦が起こるやもしれぬ危機。
アメリカのCIAはデバイスを奪取すべく、諜報員メイスとその同僚ニックを抜擢。
ルイスが提示してきた300万ドルで買い取るためにパリへと乗り込むが、
受け渡し現場にはドイツのBNDの諜報員マリーも張り込んでいた。
 
メイスとマリーが追走劇を繰り広げる間にニックは襲撃に遭って死亡。
逃げおおせたルイスのもとへはDNIに所属するセラピストのグラシエラが向かい、
デバイスを引き渡すよう、ルイスの説得を試みていた。
 
一方のメイスは、旧友でイギリスの元MI6のサイバーエージェント、ハディージャに連絡。
もう危険な仕事には戻りたくないというハディージャに世界の危機を伝え、
今回だけはどうしても力を貸してほしいと力説する。
 
グラシエラに従うことにしたルイスは、DNIの護衛付きでその場を離れようとするが、
メイスとハディージャ、マリー、さらには謎の武装者たちから追われるはめになり……。
 
めっちゃ面白そうだと思ったけれど、残念ながらそれほどでもなく(笑)。
 
CIAの美女にはジェシカ・チャステイン、MI6の美女にはルピタ・ニョンゴ
BNDの美女にはダイアン・クルーガー、BNIの美女にはペネロペ・クルス
そして最後には中国国家安全部の美女としてファン・ビンビンが登場します。
 
男共が裏切る裏切る(笑)。
死んだと思われたニックは生きているし、信頼していた上司も裏切り者。
とにかく予想できる裏切りは全部あるので、驚きがない。
なのに、これは疑うところだろうというところで疑わなかったりするのがちょっと。
とにかく、最初は敵同士だった女たちは一致団結。男共はバッサリやられます。
 
カッコイイんですけどね。
この中ではいちばん若いルピタ・ニョンゴが38歳。
最年長はペネロペ・クルスの47歳。45歳のダイアン・クルーガーが超ステキ。
この年代でこれだけ綺麗でスタイルよかったら、そら憧れる。
 
ジェシカ・チャステインがプロデュースも担当していて、
最後の台詞なんかを聞くと続編も考えている感じですけど、ちょっとツライかも。
まぁ、美人は見ているだけで楽しいから、それでもまた観ると思います。

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『前科者』

『前科者』
監督:岸善幸
出演:有村架純,磯村勇斗,若葉竜也,マキタスポーツ,石橋静河,
   北村有起哉,宇野祥平,リリー・フランキー,木村多江,森田剛他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて、仕事帰りに2本ハシゴ。その1本目。
 
岸善幸監督はもとは演出家でありプロデューサー。
テレビ番組制作プロダクションのテレビマンユニオンでは是枝裕和監督の同期だとか。
スタッフとして関わった番組を挙げると、『アメリカ縦断ウルトラクイズ』だとか、
『世界ウルルン滞在記』の前身番組だとか、『情熱大陸』だとか、人気番組だらけ。
 
監督デビュー作となったのは門脇麦主演の『二重生活』(2015)。
2作目は菅田将暉主演の『あゝ、荒野』(2017)。
なぜだか2本とも私は劇場鑑賞を逃しているのですよねぇ。
その後、DVDや配信でも観ていないから、単に時間が合わなかった以外の何か、
気分が乗らなかったということがあるのでしょう。
でも本作は観る気になりました。森田剛が見たくて。
 
まだ子どもだった頃の出来事をきっかけに、保護司となった阿川佳代(有村架純)。
保護司とは、元受刑者の更生をサポートする国家公務員だが、報酬は無し。
佳代はコンビニのアルバイトで生計を立てながら、
更生を目指す前科者たちに寄り添おうと日々奔走している。
 
佳代が新たに担当するのは、殺人を犯して服役し、仮釈放された工藤誠(森田剛)。
身元引受人となった自動車修理工場の社長のもと、実に真面目に働き、
保護観察期間が満了すれば正社員に雇うつもりだと言う社長の言葉に喜ぶ佳代。
 
そんな折、交番勤務の警察官が拳銃を奪われたうえに撃たれて負傷、
その拳銃で福祉課の職員と児童養護施設の職員が立て続けに射殺される事件が起きる。
 
佳代との最後の面談に現れなかった誠のことを心配していると、
刑事の鈴木(マキタスポーツ)と滝本(磯村勇斗)が佳代を訪ね、
誠が連続殺人事件の容疑者として追われていることを知らされるのだが……。
 
予告編を観たとき、有村架純はちょっと違うかもと思いました。
本編を観た後もちょっと違ったかもと思っていますが、だからって合っていなかったわけではなく。
それに、他に適役が思い浮かぶわけじゃなし。
 
『ノイズ』では冒頭で元受刑者を島に連れてくる保護司があっちゅうまに殺されていました。
保護司っていったいどういう仕事なのだろうと思っていたら、こういうことですか。
報酬は発生していると思っていたら、ボランティアだなんて。偉すぎる。
 
佳代は28歳という若さで、担当する元受刑者には女性もいるけれど、
本当に信用していいのかどうかわからないオッサンとかもいます。
彼らに面会に行くのはいいとして、家に上げて食事も振る舞うなんて、まず危険を感じてしまう。
しかも、自宅の鍵の在処を隠しもせず、帰宅したら勝手に上がり込んでいることもあるのですから。
前科者に本心で寄り添い信じていなければ、こんなことできませんよね。
 
本作もキャストに魅力を感じます。
森田剛がとてもよかったのはもちろんのこと、佳代が勤めるコンビニの店長役の宇野祥平が◎。
たびたび急用で飛び出す佳代の立場を理解し、文句も言うけど優しい。
猫に「時給いくら?」なんて尋ねるシーンにはほっこりしました。
 
ほかに佳代の上司で保護観察官役の北村有起哉も毎度の良さ。
本物の夫婦で出演したAmazonプライムのCMは不評だったようで残念。
そりゃ、役者としての彼を知らない人が見たら、
格好良くもないのに何このオヤジ、と思うでしょうね(笑)。いい俳優なのに。
 
先輩刑事役のマキタスポーツのとぼけ具合も良いし、
佳代が担当する元受刑者役の石橋静河には泣かされました。
石橋凌原田美枝子の娘である彼女、現時点で私はかなり好きです。
 
私は死刑廃止論者ではないので、家庭内DVで家族を殺した人間など、
死刑になったって仕方ないでしょと思っています。
でも、木村多江演じる弁護士は「更生する機会を区別してはいけない」と言う。
そうかなと少しは思う。
 
一方、本作の誠や弟の実(若葉竜也)のような虐待を受けてきた側の人は、
相手を殺したくもなってしまうでしょうとより強く思う。
彼らが戻ってきたときにどうか居場所がありますように。

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