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『シャドウ・イン・クラウド』

『シャドウ・イン・クラウド』(原題:Shadow in the Cloud)
監督:ロザンヌ・リャン
出演:クロエ・グレース・モレッツ,ビューラ・コアレ,テイラー・ジョン・スミス,カラン・マルヴェイ,
   ニック・ロビンソン,ベネディクト・ウォール,ジョー・ウィロコフスキー,バイロン・コール
 
なんばパークスシネマにて、『女子高生に殺されたい』の次に。
時間がかぶっている超効率のいいハシゴだったので、最前列端っこを予約しました。
本編が始まる寸前に入場したら、最後列中央にお客さんあとひとりだけ。(^^;
 
鑑賞者のレビューを読むと、真っ二つに分かれています。
B級というのもあつかましいほどの駄作だという意見もあれば、絶賛する声も。
駄作だという人の気持ちもわかりますが、私は好きですねぇ、これ。
ほんと、あり得ない。バカバカしすぎて絶対憎めない。
 
なんと日本語のアナウンスで始まるニュージーランド/アメリカ作品。
 
第二次世界大戦下、1943年のニュージーランド。
女性兵士モード・ギャレット空軍大尉は、B-17大型爆撃機フールズ・エランド号に乗り込む。
彼女のことを何も聞かされていなかった男性乗員たちは怒るが、
四角い鞄を手にしたモードは、中身は最高機密であることを証明する書類を見せ、
かつ、決して開けてはならないことを乗員たちに言いつのる。
 
狭い機内に彼女が座るようなスペースはないと、下部砲台の銃座に押し込められ、離陸。
通信機越しに彼女を揶揄する男たちの下品な会話を聞かされて辟易。
 
ところが航行中、モードの目に日本軍の戦闘機が映ったばかりか、
見たことのない生き物が翼に張り付いていて……。
 
登場人物はモード役のクロエ・グレース・モレッツと乗員たちのみ。
最初の飛行場と最後の不時着場所以外はすべて機内の映像だから、すごく安上がり。
その割にエンドロールが長かったのはなんででしょ!?
同じ名前が何度も出ていたような気がしなくもない。ひとりでいっぱい仕事したとか?
 
もう絶対あり得ない(笑)。
誰もがおとぎ話だと思っていたグレムリンが現れて大変なことに(笑)。
すっげぇ恐ろしいツラ構えなんですよ、そのグレムリンが。
戦うクロエ・グレース・モレッツの姿の頼もしいことといったらありません。
グレムリンに持ち去られそうになった鞄を奪還するため、
高度2500メートルの空へ出て平気とかもあり得ん。あり得ないから笑ってしまう。
 
鞄の中身が何だったのかだけは書かずにおきます。
クロエ・グレース・モレッツのたくましい腕を見られて満足です。
大人になったねぇ。

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『女子高生に殺されたい』

『女子高生に殺されたい』
監督:城定秀夫
出演:田中圭,南沙良,河合優実,莉子,茅島みずき,細田佳央太,
   加藤菜津,久保乃々花,キンタカオ,大島優子他
 
仕事帰りに映画を観に行くか、まっすぐ帰って野球を観るか。
迷っていたら、対戦相手にコロナ感染者続出でまさかの試合中止。
ならば迷うことなくなんばパークスシネマへ。
 
古屋兎丸の同名漫画を城定秀夫監督が実写映画化。
このあいだ観たばかりの『愛なのに』がめっちゃよかったから期待が膨らむ。
『愛なのに』で瀬戸康史に想いを寄せる女子高生役だった河合優実は、
同じ女子高生でもエスパーばりの能力を持つ地味な子で、全然違う役。面白い。
 
二鷹高校という進学校日本史の教師として着任した東山春人(田中圭)。
実は彼にはオートアサシノフィリア(自己暗殺性愛)の傾向があり、
女子高生に殺されたいという強い願望をかねてから持っている。
 
もとは臨床心理士を目指して医大に通っていた春人だったが、
ある患者に接したことをきっかけに自らのその願望に気づき、
理想の殺され方を実現すべく教師の道へと歩み出す。
 
あれから9年。
自分が殺される日を文化祭がおこなわれる11月8日に決め、
着々と計画を進めてきた春人は……。
 
面白いですよね。
田中圭主演の作品は白と黒の笑いに分けられますが、これは完全に黒の笑い。
『哀愁しんでれら』(2021)ほどではないけれど、気味が悪い。
 
自分が殺されるように9年かけて計画するなんて、できますか。
殺してくれる女子高生として春人が白羽の矢を立てたのは誰なのか、
それっぽい女子生徒が何人かいて、本命がなかなかわかりません。
 
1人目は文化祭の出し物である戯曲の台本を書く君島京子(莉子)。
男子生徒にも人気のある可愛い子ですが、意地悪っぽい(笑)。
2人目は柔道部部員でクールな美人、沢木愛佳(茅島みずき)。
人とつるむことはなく、誰になんと言われようと気にしないふう。
春人はこの2人に対して思わせぶりな態度を取り、
2人とも春人が自分に好意を持っていると思っています。
 
3人目は上記の2人とはちょっと違う佐々木真帆(南沙良)。
とても美人なのに控えめで、春人のことが好きなのに、
自分には春人から愛される資格などないと思っているように見える。
その真帆の親友で「負」を察知する能力を持つ小杉あおい(河合優実)は、
春人に得体の知れない恐ろしさを感じ取り、真帆を守ろうとしています。
 
春人はいったい誰に、どうやって殺させようとしているのか。
途中、春人の企みにより犬が殺されるという残忍な事件が起き、
生徒たちの心のケアのために同校へ赴任するのが大島優子演じる臨床心理士。
春人の元カノで、交際中にはわからなかった彼の性癖に気づきますが、なんとかできるのか。
 
「変態!」と言いたくなるような歪な話の中で、
真帆に片想い中の男子生徒を細田佳央太が能天気に演じていい感じ。
河合優実もすごくよかったです。
 
まっすぐさが友だちを救うと思いたい。

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『やがて海へと届く』

『やがて海へと届く』
監督:中川龍太郎
出演:岸井ゆきの,浜辺美波,杉野遥亮,中崎敏,鶴田真由,中嶋朋子,新谷ゆづみ,光石研他
 
TOHOシネマズ西宮にて3本ハシゴの3本目。
前の2本はサイコー。これだけちょっと寝ました。ごめんなさい。
 
私はお初の中川龍太郎監督。
これまでの監督作では松本穂香仲野太賀、元乃木坂46の衛藤美彩を起用。
大好きな宮下奈都の『静かな雨』も映画化しているのに、なぜか観る機会を逸して。
まだ32歳とのこと。期待の新鋭というところでしょうか。
 
湖谷真奈(岸井ゆきの)はホテルのダイニングバーでフロア責任者を務めている。
ある日、真奈の知り合いだという客が訪ねてくる。
会いに行ってみるとそれは遠野敦(杉野遥亮)だった。
 
敦は真奈の親友だった卯木すみれ(浜辺美波)のかつての同棲相手。
すみれの荷物を整理することにしたから真奈にも見てほしいと言う。
ふたりはすみれの実家へそれらを届けに行くのだが……。
 
だいぶ端折りました(笑)。
途中で睡魔に襲われたせいもあり、真奈とすみれの出会いのシーンが
どこに挟み込まれていたかあやふや。
そのシーンはちゃんと記憶しているのですが、
時系列をどのように入れ替えて描かれていたか覚えていないのです。(^^;
 
引っ込み思案な真奈と正反対の性格のすみれ。
大学へ入学してすぐにキャンパスで出会い、親友になります。
なかなか人と打ち明けられない真奈にとっては、すみれとの時間がすべて。
一緒に暮らしていたのに、すみれは突然敦と同棲を始めてしまう。
 
予備知識なしに観たため、最初はどういうことかわからない。
真奈と敦がすみれの荷物を見るシーンは形見分けのようだけど、
真奈はすみれが亡くなったことすら受け入れていない様子で。
 
すみれの実家を訪ねれば、母親(鶴田真由)はいかに母子の仲が断絶していたかを話す。
これって、すみれは行方不明になったか自殺したのかと思っていたら、
一人旅に出た彼女がそこで津波に遭っていたのですね。
 
真奈が信頼を置いていた上司・楢原(光石研)も命を絶ってしまって、
気持ちの整理をいかにつけるかという話だとは思うのですが、
すみれの笑顔があまりに作り物っぽいと感じました。
カメラのファインダーを通してしか人としゃべれない、
ずっと作り笑いをしていたすみれのことなのだから、その作り物っぽさこそ正解か。
 
彩瀬まるの原作は未読です。読んでみようと思う。
でも震災の話に絡めなくてもよかったのではと思ってしまいます。

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『ガンパウダー・ミルクシェイク』

『ガンパウダー・ミルクシェイク』(原題:Gunpowder Milkshake)
監督:ナヴォット・パプシャド
出演:カレン・ギラン,レナ・ヘディ,カーラ・グギーノ,クロエ・コールマン,アダム・ナガイティス,
   ミシェル・ヨー,アンジェラ・バセット,ポール・ジアマッティ,ラルフ・アイネソン他
 
前述の『ベルファスト』と同じく、これもTOHOシネマズ西宮にて1日1回きりの上映。
西宮まで行くの面倒くさいなぁと思っていましたが、行ってよかった。
 
ナヴォット・パプシャド監督はイスラエル出身。
クエンティン・タランティーノに絶賛された『オオカミは嘘をつく』(2013)は自国作品でしたが、
これはフランス/ドイツ/アメリカ作品。
カネの出どころが変わるとここまで作品の雰囲気も変わるんでしょうかね。
『オオカミは嘘をつく』のほうが玄人ウケしそうだけど、私は断然こっちが好き。
 
犯罪組織“ファーム”に所属していた凄腕の殺し屋スカーレットが
一人娘のサムをダイナーに残して姿を消してから15年が経過。
母親の生死すら知らないが、サムは母親に勝るとも劣らない殺し屋に成長していた。
 
ある日、ファームから指示を受けたサムが仕事に向かうと、
相手はたいした武器なしの少数と聞いていたのに、武装しまくりの大人数。
サムは相手を皆殺しにしてその場を去る。
 
ファームの人材係ネイサンは、サムの派手すぎる仕事ぶりに苦言を呈したものの、
新たな仕事として、組織の金を持ち逃げした会計士を追いかけるように命じる。
サムはすぐに会計士の居場所を突き止めて金を回収しようとするが、
実は会計士が自分の娘エミリーを誘拐されて致し方なく犯行に及んだことを知る。
 
極悪になれないサムは、とっとと金を回収して帰って来いというネイサンに抗い、
自分が撃った会計士を病院へ運び込むと、エミリーを助けに向かう。
サムを止めにやってきたネイサンの手下どもをいなした後、
誘拐犯たちをも一掃してエミリーを救出したサムだったが、
最初の現場で皆殺しにしたうちのひとりが犯罪組織の親分ジムの息子だったとわかり……。
 
“チャーリーズ・エンジェル”風ですが、これなんかよりよっぽどイケてます。
 
まずサム役のカレン・ギランがカッコイイ。
『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(2019)のマーサ役が記憶に新しいところ。
でもそのときはそんなに強烈な印象はありませんでした。
ちょっと子どもっぽさも感じるような美人でスタイル抜群。30代半ばには見えない。
母親への想いとどう向き合えばよいのかわからないまま仕事を続ける彼女がよかったなぁ。
 
そして突如として彼女を救うために現れる母親スカーレット(レナ・ヘディ)。
スカーレットの仲間だった殺し屋三銃士のアナ・メイ(アンジェラ・バセット)、
フローレンス(ミシェル・ヨー)、マデリン(カーラ・グギーノ)がサイコー。
アジトは図書館で、そこらじゅうの本の中に武器が隠されています。
でもみんなちゃんと司書で、本にも詳しいんですよね。素敵。
 
そして、最初は味方だと思ったのに、あっさりサムを売るネイサンにポール・ジアマッティ
彼を主役で見ることはもうないのか。でもこういう役が似合っている。
 
痛快爽快。めっちゃ楽しかった。

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『ベルファスト』

『ベルファスト』(原題:Belfast)
監督:ケネス・ブラナー
出演:カトリーナ・バルフ,ジュディ・デンチ,ジェイミー・ドーナン,キアラン・ハインズ,
   コリン・モーガン,ジュード・ヒル,ララ・マクドネル,ルイス・マカスキー他
 
自宅の雨漏り修理のため、平日に休みを取りました。修理が完了したのが14時頃。
死に体の阪神タイガースの試合を観るのもツライので、
逃避すべくTOHOシネマズ西宮へ向かい、日付が変わるぐらいの時間まで3本ハシゴ。
 
封切り後まだ2週間経っていないのに、すでに1日1回の上映になっている本作。
この日観られたことに大感謝したくなりました。
ガッカリさせられた『ナイル殺人事件』より100倍イイ、ケネス・ブラナー監督。
100倍は言い過ぎかなぁ。でも個人的にはそれぐらい良さが違いました。
 
ベルファストと聞いて私がすぐに思い出すのは『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)。
アレン・リーチ演じるマネージャー、ポール・プレンターが自らのことを
「ベルファスト出身でカトリックでゲイ」とぼやくシーンがありました。
それがどれくらい生きづらいことなのか、本作を観れば歴然とします。
 
1969年、北アイルランドの首都ベルファスト。
この地区で生まれ育った9歳の少年バディは、家族4人暮らし。
大工の父親はロンドンへの出稼ぎで週の大半不在だが、
美しく優しい母親と頼もしい兄ウィルがずっと一緒。
すぐ近所には愛情とユーモアに溢れる祖父母も住んでいる。
 
しかしある日、暴徒化したプロテスタントの若者が、カトリック系住民への攻撃を開始。
それまではここで平穏に共存してきたというのに、対立は激しさを増すばかり。
争いなど微塵も望んでいないバディ一家だが、カトリック系住民の排除に手を貸せと言われて……。
 
どんだけ宗教に疎いんだ私、と思うのですが、
最初はバディ一家がプロテスタントなのかカトリックなのかがわからず。
そうですか、ベルファストというのはプロテスタントが多い地区で、
でももともとは宗教に囚われずみんなが家族、という子育てにとって理想的な場所でもあったのですね。
 
誰の子どもに限らず、子どもがそこを通れば大人はみんな声をかける。
子どもも大人もみんな仲が良くて、知らない人は誰もいない。
そんな場所に一瞬にして憎しみが充満する。どうしてこんなことになるのでしょう。
 
ケネス・ブラナー監督の故郷もこのベルファストで、これは自伝的ドラマ。
自身の幼少期を投影したらしいバディ役、ジュード・ヒルがめちゃめちゃカワイイ。
もっと暗い作品を想像していたら、そこここで笑ってしまう。
バディの目から見た世界は、暴力と恐怖に包まれつつも、人の優しさが感じられるから。
教会の牧師の説教を聴くバディの顔なんて最高。
 
クラスでいちばんの秀才キャサリンに恋するバディ。
成績で席順が決まるから、キャサリンの隣に座るには2番にならなきゃいけない。
キアラン・ハインズ演じる祖父は、「算数と恋は厄介」だと説きます。
その後に伝授する「良い成績を取る方法」が可笑しすぎる。
数字を曖昧に書くようにすれば、先生が良いほうに解釈してくれると言うのですから(笑)。
 
音楽もすごくいいし、映画へのオマージュもいっぱい。
特に『真昼の決闘』(1952)は効果的に使われていますが、
個人的に嬉しかったのは祖母役のジュディ・デンチの口から『失はれた地平線』(1937)の名前が出るところ。
ベルファストはシャングリラになり得るのか。
 
キャサリンの家はカトリック。
「大人になったら結婚できるのかな」とつぶやくバディに、父親は言います。
「カトリックであろうとプロテスタントであろうと、ヒンドゥー教であろうと、
お互いを尊敬しあう気持ちがあれば大丈夫」。この言葉が今とても心に染みます。
 
いちばん笑ったのは、洗剤をかっぱらってきたバディが、
暴動の中で「どうして洗剤!?」と怒り心頭の母親から訊ねられ、
「環境に優しいから」とキョドりながら答えるシーンでした。
ケネス・ブラナーのこういうセンス、大好きです。
アイルランド人はもともと旅人だから、旅の途中で立ち寄れるように世界中にパブがあるんだよというのも素敵な話。 
 
第94回アカデミー賞の脚本賞を受賞しています。大納得。

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