『流浪の月』
監督:李相日
出演:広瀬すず,松坂桃李,横浜流星,多部未華子,趣里,
三浦貴大,白鳥玉季,増田光桜,内田也哉子,柄本明他
公開初日だった先週金曜日、イオンシネマ茨木にて
舞台挨拶中継付きの回を鑑賞しました。
同日アースシネマズ姫路に行った友人によれば、朝イチの時点で100人ほど並んでいたそうです。
と思ったけれど、よくよく考えてみればそれは『シン・ウルトラマン」目当ての客ですね。
原作は凪良ゆうの同名ベストセラー小説。2020年の
本屋大賞受賞作です。感想は
こちら。
だけど考えてみれば、
『フラガール』(2006)だって同監督なんですよ。嘘みたい。
10歳の少女・家内更紗(
白鳥玉季)は、引き取られた伯母の家で従兄から
性的虐待に遭っている。
帰りたくなくて時間を持て余していた公園で、大学生・佐伯文(
松坂桃李)から声をかけられる。
更紗は目の前の文に不思議と恐れを感じず、ついていくことにする。
初めて安心して過ごせる場所。
それから2カ月間、更紗は文と一緒に暮らすが、
湖畔に出かけた日、文は
誘拐犯として逮捕される。
文は悪くない、何もされていない。自分に悪いことをしたのは従兄なのに。
けれど何をどう説明しようとしても、更紗は傷ついた被害者としてしか扱われない。
ある日、同僚・安西佳菜子(
趣里)と共に入った
深夜営業カフェのオーナーがあの文だと知る。
15年前、自分が「文は何も悪くない」と言えなかったせいで大変な日々を送ってきただろう。
今は幸せなのか、穏やかに暮らせているのかが気になってカフェを訪れる更紗だったが……。
「
ロリコンってつらいの?」と幼い更紗から尋ねられた文が、
「ロリコンでなくてもつらいことは世の中にたくさんあるよ」と答えるのが印象的。
公園にいつもひとりで佇み、少女たちを眺めていた文はロリコンと噂されていました。
しかし実は文はそうではないのですよね。
文の身体がどういう状況にあるのか、原作では露骨には書かれていないので、
「いったい何の病気だったの」ともやもやしたままの人がいるかもしれません。
そういう方には是が非でも本作を観てほしい。ここまで見せちゃいますかと思って、私はしばし唖然。
ネタバレになりますが、文の身体は子どものまま成長が止まって大人になれません。
私は
低身長症ぐらいしか知らなかったので、見た目はちゃんと成長しているのに、
性器の成長のみ止まってしまう病が実際にあるのかなと思って調べました。
ネットでヒットしたのは類宦官症(るいかんがんしょう)という病。
男性特有の二次性徴が来ないそうで、陰毛が生えず、陰茎や精巣が大きくならないそうです。
この役を演じるために激痩せした松坂桃李が最後に全裸になって、
文の身体がどうなっているのかを泣きながら更紗に晒すシーンは原作にはないもので衝撃的。
モザイクが入るのかと思ったら、特殊メイク(ですよね!?)を施した小さなアソコをモロ写し。
あのシーンがあるほうがいいのかどうか、私にはわかりません。
でも、こういうことだったのか!とはっきりわかって鑑賞者はスッキリできますね。
出番は一瞬なのに存在感ありあり、カフェと同じビルに入る店の店主・阿片役に
柄本明。
この映画化が正解なのかどうかもわからないけれど、原作で感じた切なさは出ていると思います。
他人がどうしても「あったこと」にしたいのは何故なのでしょう。
先入観に囚われず、思い込みではない見方をすることが必要なのだと感じます。
さて、後回しになりましたが、舞台挨拶の感想も書きたい。
壇上には李監督と広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子、内田也哉子。
どの映画の舞台挨拶のときも私が注目したくなるのは自己紹介。
広瀬すずと松坂桃李、多部未華子は「何々役を演じさせていただきました」。
内田也哉子に至っては「やらせていただきました」。
「やらさせて」と言わなかっただけマシか。
横浜流星のみ、「中瀬亮を演じました横浜流星です」。私の中の彼の株さらにUP。
まったく、誰の許可を取って「させていただいている」のですか。
そう言っておけば、「私がこの役だなんておこがましいことですが、皆さん許してくださいね」という、
控えめで謙虚な感じが出るということなのでしょうが、私は大嫌い。
しかし最近ではこの言い方をしない人は偉そうだという印象すら持たれそうですね。
多部未華子は「松坂さんの体に触らせていただいて」なんて言い方もしていました。
さすがにこれについては司会者からツッコミがありましたけれど。
舞台挨拶の回というよりは、言葉遣いの感想になりましてすみません。(^^;
いちばん問題があるのは、幼い更紗を置き去りにした母親だと思うけれど、そこは原作でも映画でも言及なし。
自分が産んだ子なのに、好きな男ができたら置いて出て行く。
この母親はその後いったいどうしているのだろうと思ったりします。
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