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『はい、泳げません』

『はい、泳げません』
監督:渡辺謙作
出演:長谷川博己,綾瀬はるか,伊佐山ひろ子,広岡由里子,
   占部房子,上原奈美,小林薫,阿部純子,麻生久美子他
 
『劇場版 ブルーバースデー』を観て以降、1本も映画を観ていません。
の病室で本を読む時間はあるだろうと、文庫本を何冊も携えて行ったのに、
字なんてまったく目に入って来ないから、1冊も読めず。
 
まだまだ映画を観る気にも本を読む気にもなれないし、
物理的にもそういう時間を取ることは難しいけれど、
もう緊急の電話がかかって来ることはないから、劇場に行けないこともない。
 
徐々に日常を取り戻したいなぁと思い、
弟の部屋と3軒隣の実家に寄った後、レイトショーを観に行くことにしました。
6月に入って初めて観る映画がこれ。109シネマズ大阪エキスポシティにて。
 
原作はノンフィクション作家である高橋秀実の同名エッセイなのだそうです。
監督は『舟を編む』(2013)の脚本を担当した渡辺謙作
 
大学で哲学の教鞭を執る小鳥遊(たかなし)雄司(長谷川博己)は正真正銘のカナヅチ。
顔に水を付けることはできても、水に顔を浸けることはできず、
水面に顔を近づけるだけでバタバタ暴れ出すほどほど水が苦手。
 
そんな雄司がふと目にした水泳教室のポスター。
泳げるようになりたいとなんとなく思って申し込みに行ったものの、受付で怯む。
そんな彼にコーチの薄原静香(綾瀬はるか)は「必ず泳げるようにする」と断言。
初心者コースに入会した雄司は、賑やかな主婦たちに囲まれて静香の指導を受けるのだが……。
 
雄司はバツイチで、離婚の原因になったと言えるのは、
妻の美弥子(麻生久美子)との間の一人息子を溺死させてしまったから。
それがトラウマで泳げないのかと思ったら、もともとカナヅチだったせいで、
息子を助けようとして自分が溺れて頭を打ってしまったんですね。
 
こういう話にこういうツッコミは駄目だろうと思いますが、
美弥子が関西弁である必要はなかったように思えて仕方ありません。
麻生久美子は比較的がんばってしゃべっていたとは思うけど、
それでも妙なイントネーションのときがいくつかあって、そっちに気を取られてしまうのです。
映画化に当たっては標準語でしゃべってもよかったような気が。
 
泳げない雄司を叱咤する静香ですが、彼女は彼女で道路を歩くことに恐怖を感じています。
お互いのトラウマを克服する展開かと思いきや、静香のそれはそのままで、
この設定も別に要らないのではと思いましたが、
パッタリ音信の途絶えた雄司に決死の覚悟で静香が会いに行くシーンがあったから、有効ですね。
 
哲学の教授らしく、人はなぜ生きるのかなんて話もあり、今は特に考え込む。
日々のちょっとした楽しさを感じたいという学生の話を聞けば、
弟にももっと長生きしてほしかったなぁと思わずにはいられません。
 
初心者コースにかようおばちゃんたちが強烈。
伊佐山ひろ子日活ロマンポルノの人気女優だったとか、みんな知ってる〜?と言いたくなる。
今年70歳なんですね。いつまでも活躍してほしい。
 
子どもを死なせてしまった雄司が、子持ちの女性(阿部純子)との新しい恋を見つけ、
果たして自分はこの親子を守れるだろうかと葛藤する。長谷川博己演じる雄司がとてもよかったです。
 
水の中なら「無」の気持ちでいられるかも。そんなことも思います。
優しい作品でした。

—–

弟のこと。その4。

弟が大きくひとつ息を吐く前、もういつ息がなくなっても不思議ではない頃、
私のダンナがタイから日本に向かう途中でした。
今までならコロナで容易には帰国できないところ、
ちょうど6月1日から規制緩和されたおかげで、ダンナは弟にお別れを言えそうだと搭乗。
 
弟はダンナが駆けつけるのを待っているのかなと思いました。
 
30年ぐらい前、あるTV番組で「王将で全品食べるといくらになるか」を検証していて、8千円と言っていた。
そんなに安いってホンマか!?と、ダンナと私と弟で王将にチャレンジしに行ったことがあります。
3人で3千円分頼んだだけなのに、もう動けんというぐらいの量で、
ゲンナリしつつ、王将はやっぱり安いと納得。
 
私が作った激辛カレーをダンナは滝のような汗を流しながら、
弟は「めっちゃ辛いやん」と言いながら鉢巻して食べていたこととか。
だから辛いでって言うたやん!
 
私が車の免許を取ったとき、ダンナと弟が同乗して震え上がっていたこととか、
私は翌日の仕事に備えて早く寝たいのに、まだ学生のダンナと弟が延々しゃべってダンナが帰らない。
「もうええ加減帰って!私ははよ寝たい」とイライラしたのも懐かしい。
 
結局ダンナの帰国寸前に弟は息を引き取ってしまったけれど、
弟にお別れを言ったらタイへとんぼ返りしてお葬式に再帰国するつもりだったダンナだから、
きっと弟が「そないに何遍も帰ってきてくれんでええよ」と言ってくれたのだと思います。
 
亡くなる前日の6月2日、弟がスマホを取ってほしいと言いました。
まずロックを解除するパターンを教えてくれて、
その後、指紋認証に私の指紋を追加登録すると言いました。
しかし弟の指はすでに上手く動かず、自分の指紋認証を解除してくれていいとのこと。
どんだけ私に全部さらすつもりやねんと思う。
 
お通夜にはたくさんの人が参列してくださいました。
高校時代にラグビー部で一緒だった人たちは、前回の私のブログを読んでくださっていて、
「一緒にチョコパ食べた者です」とか声をかけてくれたりして。
夜中に同窓会の写真を持ってかけつけてくれた同級生もいました。
泣きじゃくりながら缶ビールとおつまみが入ったコンビニ袋を差し出してくれた会社の女性も。嬉しい。
「お姉さん、阪神ファンですよね」って、すごい浸透率です、私の虎バカ。
  
今は何を見ても弟のことが思い出されて泣いてしまいます。
この7カ月の間に弟と何度も車で往復した道を走れば涙が出る。
スーパーに行けば、病状が進んだ弟が食べたがったもの、飲みたがったものを目にして涙が出る。
駐車場の解約に行ったときは、本人ではない事由に「本人死亡のため」と書いていて嗚咽してしまう。
はたから見るとかなり怪しい。大丈夫かこいつと思われていそうです。(^^;
 
弟と過ごしてくださった方々、ひとりひとりに感謝したい。
今までどうもありがとうございました。
 
生まれ変わっても、この弟と姉弟で居たいです。

—–

弟のこと。その3。

今年に入ってから先週の木曜日までは毎日このブログを更新してきたので、
ずいぶん長く空いた気がします。
 
先週金曜日の朝、が永眠しました。
5月5日の「子どもの日」生まれ。ひとつ歳をとってからひと月も経っていません。
 
5月18日、通常の診察の予定日、弟宅に迎えに行ったら、すごく調子が悪そう。
前々日には行きつけの美容院へ散髪に行ったのに。
帰り際、「あと1回来ます」と弟自ら宣言していたのに。
なんとか弟を病院へ連れて行ったら、緩和ケア病棟へ緊急入院になりました。
 
弟との連絡手段はもっぱらChatwork。
緊急入院の翌日、看護師さんが忙しなすぎるから転院したいと伝えてきました。
弟の言葉ありのままを病院に伝えると角が立ちそうやなぁとも弟と相談し、
「いずれホスピスでお世話になることが決まっている病院へ、できれば早く、
緩和ケアの段階から移りたい」と希望したところ、5月31日に転院できることになりました。
 
弟にとって、18日から31日までの時間が長かったか短かったかはわかりません。
ただ、その間にも病状はとどまることなく進行して、傾眠がちになり、
Chatworkで連絡が来る回数も激減しました。
大谷翔平打ったねとか、阪神勝ったねとかいう話もできなくなってしまった。
 
そんな状態だったのに、何を思ったのか、
24日頃から私がFacebookで繋がっている友達に片っ端から弟は友達申請を始めた模様。
自分が生きた証を残したいのか、自分の亡き後も姉をよろしくと言おうとしてくれているのか。
文字を入力するのも大変なのに、時折メッセージに返信すらしていたようです。
「弟さんから返信もらったよ」という話を複数の友達から教えてもらって驚きました。
どこにそんな力が残っていたのか。
 
26日の朝、弟が「どうしても話したいことがあるから病院に寄って。
僕が寝ていたら叩き起こしてほしい」と連絡してきました。
夕方寄ると、よたよたと起き上がり、「ここにすべてのパスワードが入っている」と言って、
パスワードマネージャーのこれまたパスワードを教えてくれました。
 
その翌日からさらに体調が悪くなり、ほぼ連絡が途絶えました。
「転院先の病院は張り込んで特別室にしたよ」と私が連絡したのに対し、
「わーい」のリアクションマークが3つ並んで届いたのが最後。
 
31日、転院先の病院へ付き添い。
ほとんど何も食べられなくなっていると主治医から聞いていましたが、
元の病院を出発する前に売店に寄りたいと言った弟が選んだのは、ポテチと揚げおかき。
ぼんやりしながらもじっと商品を見つめて選ぶ弟の姿が忘れられません。
 
ホスピスに転院してからは本当につらそうでした。
泣き言ひとつ言わなかった弟が初めてイライラする態度を見せました。
それでも、私が「帰るね」と言うと、必ず「ありがとう」と答えてくれる。
凄い奴やな、私の弟って、と改めて思いました。
 
6月1日、両親を連れて行った後、会社の人が来てくれました。
弟は私の目の前では決して泣かなかったのに、会社の話をするときだけ泣くんです。
お見舞いに持ってきてくださったのは、写真いろいろが切り貼りされたパネル。
たくさんの同僚、上司、先輩後輩と共に映るその写真パネルを弟は大事そうに胸に抱きしめていました。
ベッドの上に起き上がって、「これが誰で、これは誰で」と私に教えてくれました。
 
いつもは病室に昼から晩までいて、家に寝に帰っていた私ですが、
2日の晩、なんとなく「今日は晩もいようか」と聞きました。
そうしたら、「そうしてくれると助かる」と弟が答えました。
私は一旦帰ってお風呂に入り、病院へとんぼ返り。戻ってきたときも「ありがとう」と言ってくれて。
 
溜まった腹水のせいで、足がパンパンにむくんでいるから、とても歩ける状態ではないのに、
弟は最後まで尿瓶を使うことに抵抗を示し、なんとしてでもトイレに行こうとしました。
若い美人看護師ふたりに見守られて用を足す姿に、
「美人女子に囲まれてトイレなんて、ちょっとないことやで」と私。
 
明け方、「おかしい。今日はなんかおかしい」とつぶやく弟。
目は見開かれているのに、次第に息が弱くなってゆく。
弟の手を握っても、わかってくれているのかどうかがわからなくて。
ひとつ大きく息を吐いたあと、亡くなりました。
 
すみません、もう1回続けます。

—–

『劇場版 ブルーバースデー』

『劇場版 ブルーバースデー』(原題:Blue Birthday: The Movie)
監督:パク・タンヒ
出演:キム・イェリム,ホンソク,イ・サンジュン,キム・ギョルユ,パク・ジュヒョン他
 
一昨日、がホスピスに転院しました。
残り少ない命を思うと悲しくて切なくてたまりません。
映画を観る気になろうはずもないところですが、家に帰って酔っぱらうわけにもいかない。
コロナのせいで面会はまだ規制があるものの、
「お姉さんはどれだけ居てくれてもいいです」と看護師さんから言われていますので、
転院後は極力病室に居るようにしています。
 
本作は転院前日、109シネマズ大阪エキスポシティにて鑑賞した作品。
“Red Velvet”のキム・イェリムと“PENTAGON”のホンソクの共演と言われても、どっちも知らん。
2021年にWebで配信されたドラマで、未公開シーンを追加し再編集した劇場版とのこと。
いつ観に行こうが割引なしの2,000円均一。
儲ける気満々やんと思ったのですが、137分の長尺というだけでもまぁ納得。
そして、甘アマの恋愛ものだと思っていたら、すげぇサスペンスフルで驚いた。
 
オ・ハリン(♀)とチ・ソジュン(♂)は幼なじみ。
彼女は彼のことが好きでたまらないのに、想いを打ち明けられないまま高校生に。
オ・ハリンの誕生日、チ・ソジュンが所属する写真部の部室で会う約束をし、
今日こそ告白すると決意して向かったのに、チ・ソジュンは手首を切って死んでいた。
 
あれから10年経ってもオ・ハリンの気持ちはまだちっとも癒えていない。
ちゃんと就職し、表面的には明るく過ごしているが、
高校時代の友人が祝ってくれる自分の誕生日には特に凹む。
 
そろそろ気持ちの整理をつけなければと、あの頃写真を燃やしたとき、
耳鳴りがするとともに意識を失い、気づくと10年前にタイムスリップしていた。
チ・ソジュンが亡くなる前だから、運命を変えられるかもしれない。
 
手元にある写真を燃やすことでタイムスリップできることに気づいたオ・ハリンは、
当時へと戻ることを繰り返し、あの手この手を使って運命を変えようとするのだが……。
 
珍しい話とは言えないじゃないですか。この出だし。
タイムスリップして運命を変えようとする話の場合、起こることはほぼ2通り。
亡くなる運命だった人は、何をどう変えようが結局亡くなるか、
あるいは、その人が亡くならない代わりに誰かが亡くなるか。
ふん、これはどっちに転がる話なんだと思ったら、まさかの!
 
チ・ソジュンはなぜ自殺したのか、オ・ハリンはどうにも解せずに10年生きてきましたが、
過去にタイムスリップしているうちに、彼は自殺したのではなく、他殺だったことがわかります。
犯人は誰なのか。高校時代に同級生だった、なぜかチ・ソジュンを嫌っている変な奴。
あいつが彼を殺したに違いないと誰もが思うところ、まさかまさかの真犯人。
この辺りは下手なホラーより怖かった。やめて~(笑)。
 
怖すぎるから2度は観たくない。
でも2,000円分の楽しさはじゅうぶんにありました。
過去に戻っているのが自分だけだと思ったら、え、彼も!?ってね。あ、ネタバレだ。
しかも、自分を助けるために彼も戻っていたと知ったら、泣きますよね。(^^;

—–

2022年5月に読んだ本まとめ

2022年5月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2696ページ
ナイス数:810ナイス
 
■十代に共感する奴はみんな嘘つき (文春文庫)
あらら、ならば私も嘘つき。薄さだけに釣られて買い、最初の数頁で、しまった、これは川上未映子の『わたくし率 イン 歯ー、または世界』のように、薄いのにやたら時間がかかるやつかと後悔。でも違った。わかるよその気持ちと言いたくなるシーンがどれだけあったことか。ラップになりそうな文体とか、確かにオバハンにはついて行きづらいけど(笑)、教師の言動を「あなたパンでも作っているんですか」と言ってみたり、一度は告った相手に「それ言われて喜ぶと思ったの?」と毒づいてみたり。わかるよほんとに。傷ついても生きる。今日が好き。
読了日:05月03日 著者:最果 タヒ
 
■ジグソーパズル48 (双葉文庫)
頭を使わずに読めそうな本だと思って手に取ったのに、めちゃめちゃ難しいじゃあないか。そもそもどうして48なのかと思ったら、登場人物の名前がAKB48のメンバーのアナグラムになっているんですと。知らんがな。同じ女子高に通う生徒が登場する短編7つ。日常に起きた事件と言うけれど超非現実的。笑ったのは「サドルは痴漢」。当時「サドルになりたい」とつぶやいていた男子がいたと何十年も経った最近知ったから(笑)。トイレに行って手を洗わずに出てくる女子が多いということもこの本で教えてもらいました。隠された謎、ひとつも解けず。
読了日:05月05日 著者:乾 くるみ
 
■死にゆく者の祈り (新潮文庫)
中山七里初心者だった頃には犯人を推理しつつ読んでいましたが、今は推理なんて全くしません。推理したところでどうせ当てられないから、「無」の気持ちで臨む。教誨師といえども、目の前にいる死刑囚が自分の命の恩人だったら冷静ではいられない。残された時間が一日だけだったとしても、生きていることに価値を見出せない時間を過ごすよりは、経を読むことにはよっぽど価値があるという言葉は突き刺さる。最後にドンヨリした気持ちで終わることにはならないと信じて読めるのも中山作品の魅力。御子柴弁護士登場か!?と思ったけど、来んか(笑)。
読了日:05月08日 著者:中山 七里
 
■流浪の月 (創元文芸文庫 LA な 1-1)
作中の台詞に出てきたように、ストックホルム症候群かと思って読み始めました。しかも『完全なる飼育』を思わせるような。小児性愛者と聞いただけで理解しがたくてゾッとしてしまうものですが、こういうケースもあるのですね。切なくて、苦しくて、堪らない。たった2カ月一緒に暮らした青年と少女。ふたりの間に何があったか、いや、何もなかったのだということはふたりしか知らない。どうして人は「あった」としか考えられないのか。理解されることはなくとも、ふたりが穏やかな時間を過ごしているラストシーンに救われる。こんな愛情の形もある。
読了日:05月11日 著者:凪良 ゆう
 
■死刑にいたる病 (ハヤカワ文庫JA)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】原作ではイケメンなんですよね、連続猟奇殺人犯。確かに阿部サダヲは上手いけど、どアップをそんなに見たい顔ではない。やっぱりイケメンのほうがよかったような。白石和彌監督らしく、直視に耐えないえげつないシーン多数。爪剥がす、腱切る、嬰児を焼くシーンまでモロ映しで、下手なホラー映画より怖いから、その手の作品が苦手な人はご注意くださいませ。岡田健史は良かった。岩田剛典にはちょい違和感。ラストシーンに至るまでゾーッとさせられるので、心身ともに元気な人にだけご覧になること推奨。
読了日:05月11日 著者:櫛木理宇
 
■流浪の月 (創元文芸文庫 LA な 1-1)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】公開初日の本日、舞台挨拶付きの回を鑑賞して帰ってきたところです。挨拶込みだと実に200分の長尺。もしも原作を読んで、文って結局どういう状態だったのかとモヤモヤしている方がいらっしゃるなら、あまりにも具体的な映画の描写にスッキリするはずです。松坂桃李がモザイクなしの全裸になってそこを晒す。更紗は原作よりも人づきあいを上手くこなす印象で、建物は原作のほうが瀟洒な印象。亮は「突き落とされた」とまでは言わない、最後はマシな人。原作の切ない感じは映画でも出ていると思います。
読了日:05月13日 著者:凪良 ゆう
 
■父と私の桜尾通り商店街 (角川文庫)
最も読みやすい芥川賞作家だと思っていますが、読み終わるといつも、苦しいような虚しいような、なんとも言いがたい感情に襲われます。どの著作にも出てくる、いわゆるちょっとイタイひと。空気を読めなかったり要領が悪かったりして、もしもそばにいたら苦笑いしてしまうかもしれません。そんなことを思う自分に嫌悪感を抱きます。これらの登場人物に私は優しく接することができるだろうか。そう考えること自体、自分を上に据えているのでしょう。彼女たちを幸せだとは思えない。でも幸せかどうかなんて本人にしかわからない。幸せであってほしい。
読了日:05月15日 著者:今村 夏子
 
■猫なんかよんでもこない。 (コンペイトウ書房)
漫画を登録するのは初めてです。なんとなく、漫画と本は別物で、読書の冊数に入れてもいいものかどうか迷っていたから。でもこれは読んだ本に入れておきたい。この猫の顔は猫なのか、全然好きな絵じゃないよと思うのに、読み終わる頃には可愛くて仕方ないように感じます。猫を飼ったことのある人なら誰でも「あるある」と笑い、「そうそう」と涙に暮れることでしょう。やっぱり、猫がなつかないなんて嘘ですよね。呼んでも来てくれないことは多いけど、呼ばなくても来てくれたりする。旅行帰りにミャーミャー鳴かれたときには悶絶したのを思い出す。
読了日:05月19日 著者:杉作
 
■院内カフェ (朝日文庫)
出版されて即購入し、一旦は読みはじめたものの頭に入って来ずに閉じてしまいました。あれから3年半。弟が癌になり、積読の山の中にあった本作に再び目が留まる。先月までが入院していた病院、そしておそらくもうじきホスピス棟に入ることになる病院のカフェを思い浮かべて読む。患者は、希望がない現実を見るよりもいいと、怪しげな道であってもミラクルを期待する。そんな時期がありました。現実を見るのはとても辛いことだけど、こんなカフェがあればいいなと思う。って、コーヒーはいたって普通のようですけれど(笑)。ここで待っていたい。
読了日:05月24日 著者:中島たい子

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