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『来し方 行く末』

『来し方 行く末』(原題:不虚此行)
監督:リウ・ジアイン
出演:フー・ゴー,ウー・レイ,チー・シー,ナーレンホア,ガン・ユンチェン,
   ホアン・レイ,フー・ヤオジー,ホワイト・K,スン・チュン,コン・ベイビー他
 
京都シネマにて2本ハシゴの2本目。
数カ月前に京都シネマに行ったときに予告編が流れていて、観たいと思った中国作品です。
 
一昨年の秋に開催された第36回東京国際映画祭での上映時は『耳をかたむけて』という邦題だった模様。
『来し方 行く末』という邦題のほうが私は断然好きです。
主演は『鵞鳥湖の夜』(2019)でも主演を務め、岩井俊二の監督作『チィファの手紙』(2018)にも出演していたフー・ゴー。
 
脚本家を目指すも叶わず、弔辞の代筆業で生計を立てている男性ウェン・シャン。
葬儀場に勤める友人の取次により仕事を受けているが、
丁寧な取材を重ねたうえでしたためるウェン・シャンの弔辞は依頼主の評判がとても良い。
 
依頼人はいろいろ。
例えば、亡くなった父親とは交流の少なかった男性。
そのまだ幼い息子は祖父のことが大好きで、父親と共に祖父と最期の時を過ごせると思ったのにそうならなかった。
 
一緒に会社を立ち上げた同僚でありCEOでもあった友人を突然亡くした男性。
窓のない地下の部屋から大きな窓のある上階の明るい部屋へ会社を移す直前だったのに。
 
癌で余命宣告を受けた自身の弔辞を依頼してきた老婦人。
ネットで親しくなったものの面識はない男性の死を知り、弔辞に文句を付けてきた女性。
 
ウェン・シャンはさまざまな人の話に耳を傾け、故人や依頼者のことを知ろうとします。
 
彼は非常に穏やかな人柄に見える半面、感情の起伏もなくて、人生が楽しんでいるようには見えません。
だけど、そんな彼のことを葬儀場の友人が表す言葉がとても的を射ています。
 
特に好きだったのは、CEOを亡くした会社員の話。
故人の身内からの依頼を受けるのは普通でも、会社のCEOが故人となると葬儀の大きさも意味も変わる。
この話は受けられないと一旦は断ったウェン・シャンと会社員の会話にはしんみり。
 
緩やかに話が進むから、ちょっと睡魔に襲われた瞬間もあるけれど、(^^;
知らない誰かのことをきちんと知って弔辞を書こうとする姿には胸を打たれました。
人の見え方はひとつではなくて、相手によって捉え方も違うのですね。
 
弔辞って、親しい人が自分で書くものだと思っていましたが、こんなビジネスもあるんだなぁ。
これはこれでありかなと思います。ウェン・シャンみたいな人が書いてくれるならば。

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『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』

『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』(原題:Joika)
監督:ジェームズ・ネイピア・ロバートソン
出演:タリア・ライダー,ダイアン・クルーガー,オレグ・イヴェンコ,ナターシャ・オルダースレイド,
   ナタリア・オシポワ,シャーロッテ・ウベン,ボリス・シィツ,トマシュ・コット,カロリーナ・グルシュカ他
 
祇園花月へ“辻本茂雄GW還暦特別公演 笑って感動して元気になったらど~や!”を観に行く前に、
京都シネマで3本ハシゴするはずが疲れ果てて早起きできず。2本にとどめたうちの1本目。
 
実在のバレエダンサー、ジョイ・ウーマックを取り上げた伝記で、イギリス/ニュージーランド作品。
彼女自身がダンスシーンのボディダブルやアドバイザーを務めているほか、
共演者のオレグ・イヴェンコはウクライナ出身、本物の世界的ダンサー。
ロシア・タタルスタン共和国のタタル国立歌劇場のプリンシパルなのだそうです。
 
バレエの才能に恵まれたアメリカ人、15歳の少女ジョイはスカウトされ、
名門ボリショイバレエ団のプリマになるという夢を叶えるべく、単身ロシアへと渡る。
アカデミーの練習生となり、不安を抱えながらもそれに勝る自信を持っていたはずが、
自身元プリマで伝説的存在の教師ヴォルコワのレッスンは想像以上に過酷。
 
オーディションを受けるのは毎回5千人にのぼり、その中で合格する者はいるかいないかぐらいの数。
ライバルをひとりでも減らすためにほかの練習生たちは妨害工作も厭わない。
熾烈な生き残り競争をかけるうち、心身ともに追い詰められていくジョイだったが……。
 
オープニングの美しさに魅入られます。
2本ハシゴもきつくて1本だけにしようかと思ったところ、這うように観に行ってよかった。
 
バレエの世界って、凄絶、壮絶。
スクールへの入学を認めておきながらきっちり差別するのは『ネネ エトワールに憧れて』(2023)も同じ。
あっちは黒人だから踊らせないってことでしたが、こっちはロシア人じゃなきゃ踊らせたくない。
オーディションで最高評価を得てもアメリカ人だからと不合格にする。じゃあなぜスカウトなんてするの。
 
心をずたぼろにされたジョイは、ロシア人ダンサーと結婚してロシア国籍となる道を選びます。
そうしたらいとも簡単にボリショイに入団が認められるも、ずっと群舞どまり。
そこから上に行くためにはスポンサーを見つけて体を売らなきゃいけないって、どんな世界なのか。
それを暴露したら今度は裏切り者扱いで、ロシア中から非難を浴びるのです。
両親がアメリカに帰って来いと言ってくれても帰らずに、結局トイレの掃除人として暮らす。凄い人生です。
 
ジョイ役のタリア・ライダーも良いけれど、なんといってもヴォルコワ役のダイアン・クルーガーが素晴らしい。
散々持ち上げられておきながら用済みにされるのも容易いというところも
『ネネ エトワールに憧れて』のお飾り校長と似ています。彼女たちの意地が見えるのが良いなぁ。
 
これは最終的に「FUCK!! ボリショイ」ってことで良いですかね。(^^;

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『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』

『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』
監督:大九明子
出演:萩原利久,河合優実,伊東蒼,黒崎煌代,安齋肇,浅香航大,松本穂香,古田新太他
 
封切り日、なんばへライブを聴きに行く前にTOHOシネマズなんばにて。
 
原作は、ジャルジャル福徳秀介が小説家デビューを飾った同名小説。
平日の昼過ぎなのに、若者から高年層までの客でほぼ満席。
テレビで頻繁に予告編が流れていたのかどうかは知りません。ジャルジャル人気のせいなのか。
それとも関西ロケだということが知れ渡っているのでしょうか。
 
『私をくいとめて』(2020)などなど、女優起用の上手い印象がある大九明子
 
関西大学に通う男子学生・小西徹(萩原利久)は雨の日も晴れの日も傘を差して歩く。
その理由を知っているのは唯一の友人・山根(黒崎煌代)のみ。
 
ある日、小西はキャンパスで見かけた女子学生・桜田花(河合優実)に心を奪われる。
なんとか彼女と話すきっかけを作ると、その後セレンディピティ(=幸せな偶然)に見舞われて何度もばったり。
わずかな期間でふたりの距離は縮まり、小西の日々に陽が差し込む。
 
そんな小西にずいぶん前から想いを寄せているのに打ち明けられずにいるのは、
小西と同じ銭湯でバイトする京都の女子学生・さっちゃん(伊東蒼)。
最近親しくなった女子学生(=花)のことを楽しそうに話す小西の表情を見て、彼は恋しているのだとさっちゃんは確信。
バイトの帰り道に思わず小西に告白しつつ、その気持ちをこの場で終わらせると宣言。
 
呆然とする小西だったが、それ以降なぜか花には会えず、さっちゃんもバイトに姿を見せなくなり……。
 
ジャルジャルのコントや漫才を舞台で何度か観ているから、本作はいかにもそんな感じがします。
「幸せ」を「さちせ」、「好き」を「このき」と読ませるというくだりは、正直言って苦手です。
小説で読むとそれほど抵抗がないかもしれませんが、映画でこの台詞を聞くと私はちょっとゲッ(笑)。
こういう表現を使う人とは感覚が違いすぎて親しくなれない気がします。
 
これを抜きにしても、全体的に台詞の言い回しが私には寒く感じられてのめり込めません。
銭湯のオーナー役の古田新太だけは、演技がオーバーであろうが何であろうがさすがと思わせるところがあるけれど。
 
萩原利久よりも河合優実よりも、本作でいちばんよかったのは伊東蒼じゃないかなぁ。
『世界の終わりから』(2023)で堂々の主役を張った彼女は、最近は脇役に回ることが多いけど、
「このき」の部分を除けば(そういう台詞なんだから仕方なし)、彼女の告白は心に訴えるものがありました。
 
松本穂香推しなので、彼女の出番が少ないのは残念至極。
と、いろいろ文句を並べてみたものの、関大、関大前、出町柳河原町など馴染みのある場所が映ったり、
南千里という地名が出てきたりしただけでも嬉しいのでした。

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『サイレントナイト』

『サイレントナイト』(原題:Silent Night)
監督:ジョン・ウー
出演:ジョエル・キナマン,スコット・メスカディ,ハロルド・トレス,カタリーナ・サンディノ・モレノ,
   ヴァレリア・サンタエラ,ヴィニー・オブライエン,他
 
『名探偵コナン 隻眼の残像(せきがんのフラッシュバック)』が公開されてからというもの、どの劇場もコナンだらけ。
あり得ないほどの上映回数だと思うのに、そのほとんどが満席に近いのですから驚きます。
新しく公開したってコナンのせいで上映できるスクリーンがないから、封切り作品もめっきり減る。
未見の作品はもうこれしかないよねということで、109シネマズ大阪エキスポシティへ。
 
ジョン・ウー監督を世界的に有名にしたのは、なんといっても“男たちの挽歌”シリーズでしょう。
香港からハリウッドへと活動拠点を移し、“ミッション:インポッシブル”シリーズの第2作を監督。
最近では福山雅治を主演に起用した『マンハント』(2017)なんてのもありました。
そろそろ80歳だから、昔の勢いはないにせよ、まだこんなアクションものを撮る元気はおありなのですね。
 
電気技師のブライアンは、妻サヤと幼い息子テイラーと3人、幸せに暮らしていたある日、
自宅前を爆走するギャングの車2台が撃ち合い、流れ弾を受けたテイラーが死んでしまう。
車を追いかけてギャングらを一網打尽にしようとするも失敗。喉を撃たれる。
 
奇跡的に一命は取り留めたが、声を発することができなくなったブライアン。
ただただ暗い表情で酒を煽る日々を送る彼にどう接すればよいのかサヤは困惑する。
ところが、ブライアンは自身の入院中に名刺を置いていったギャング取締班の刑事に会いに行ったかと思うと、
そこに掲示されていたギャングたちの写真を見て俄然復讐心に燃える。
 
ブライアンの喉を撃ったギャングがリーダー・プラヤであると知り、徹底的に周囲を調べはじめると同時に、
攻撃やカードライビングのテクニックを学び、復讐に備えるのだが……。
 
悲劇が起こったのはクリスマスイブの日だから『サイレントナイト』なのかと思ったら、
ひと言も発しないから『サイレント』なのですね。(^^;
ジョエル・キナマン演じるブライアンはいっさいセリフなし。ほかの登場人物もしゃべらない。
全編セリフなしというのが売りらしいです。
 
冒頭、真っ赤なお鼻のトナカイさんが付いたセーターを着たブライアンが走る。
ってことは、息子を殺された後すぐに走り出したってことですよね。
そんなんでギャングに立ち向かえるわけがないじゃあないですか。
 
さらには、鍛えまくったブライアンはさぞかし強くなったろうと思うのに、
ギャングのうちスーツを着たいちばんショボそうな奴に結構な反撃を喰らいます。
えーっ、もうちょっと強くないと。
 
単身でギャングの巣窟に乗り込んだブライアンを追いかけて刑事デニスが臨場するけど、彼もイマイチ強くない。
ヤク中の女ヴィーナスに撃たれまくりますからね。
それに、ふたりしてそんなにヨレヨレでプラヤに勝負を臨んでも無理やろという気すらする。
そこは負けないけど、ふたりとも死ぬし。あ、ネタバレだ。(^^;
ちなみにデニス役はラッパーのキッド・カディで、俳優として仕事するときにスコット・メスカディを名乗っているんだそうな。
 
はい、つまらなくはないです。でも話として月並み。わざわざジョン・ウーが撮る必要なし。

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『シンシン/SING SING』

『シンシン/SING SING』(原題:Sing Sing)
監督:グレッグ・クウェダー
出演:コールマン・ドミンゴ,クラレンス・マクリン,ショーン・サン・ホセ,ポール・レイシー他
 
前述の『鬼滅の刃 鼓屋敷編』をTOHOシネマズなんば本館で鑑賞後、別館に移動して。
 
ニューヨーク、ハドソン川に面して建つシンシン刑務所。
重罪を働いた囚人たちを収監する刑務所らしく、有名な囚人としては“サムの息子事件”を起こしたデヴィッド・バーコウィッツや、
“ブルックリンの吸血鬼”と呼ばれたアルバート・フィッシュ、電気椅子で処刑された最初の女性死刑囚マーサ・プレイス、
 
この刑務所では更生プログラムとして1930年代からさまざまなレクレーションがさかんにおこなわれているのだそうです。
そんなプログラムの中で、特に意識改善と再犯率の低下にめざましい効果を見せているのが、
舞台演劇を通じた更生プログラム“RTA(=Rehabilitation Through the Arts)”。
 
囚人たちが演劇に臨む様子を描いた作品としては『アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台』(2020)がありました。
そちらはフランス作品で、実話が基。
また、囚人たちに演技指導することになった舞台俳優の視点で撮られていましたが、
本作は演技指導を受ける側の囚人の視点で描かれています。
実話ではないけれど、本作では囚人役をRTAの卒業生である元囚人たちが演じているのも見どころ。
 
シンシン刑務所に収監されているたディヴァインGは無実を訴えるも認められないままだが、
刑務所内の更生プログラム“RTA”のグループに所属して演劇に取り組むことで前向きでいられる。
 
あるとき、RTAに欠員が出たため、1名補充することに。
参加志願者数名の中にはトラブルメーカーとして恐れられているディヴァイン・アイもいた。
ディヴァインGとマイク・マイクがディヴァイン・アイに会って志願の理由を聞くと、
意外にもディヴァイン・アイは知的。演劇の素養もありそうだから、彼をRTAに引き入れることに。
 
RTAの舞台演劇の脚本はこれまでずっとディヴァインGが執筆してきたが、
次回公演の案を発表したところ、ディヴァイン・アイが異議を唱える。
囚人たちはシェイクスピアのような悲劇ではなく喜劇を観たいはずだと。
 
それも一理あると、次回は演技指導をするブレントが脚本を書くことに。
囚人たちの希望はあまりに多様で、タイムトラベルもの、海賊もの、エジプトの王子が登場するやつ、
“エルム街の悪夢”シリーズのフレディも出てきてほしい、やっぱりハムレットなど、好き放題に言う。
それらを全部盛り込んだ脚本をブレントが書き上げたものだから、みんな大興奮。
 
それぞれが希望の役を演じるために一応オーディションを受け、ディヴァインGはハムレット役を希望。
ところが、悲劇より喜劇と言った張本人のディヴァイン・アイもハムレット役を希望して……。
 
ちょっと期待しすぎました。
それなりに良くはあるものの、めちゃめちゃ良かったとは思えません。
 
ディヴァインGがいったいどんな罪で投獄されたのか、どういう証拠を持って無実を証明しようとしたのか。
この辺りはほとんどわからないまま。
まぁ、あくまでも主役は演劇ですから、それぞれの細かい話まで盛り込んだら長くなっちゃうか。
 
ほかの囚人たちの相談に乗り、聴聞会を乗り切れるように助けているディヴァインG。
彼のアドバイスを聞き入れた囚人は無事釈放されることになるのに、
彼自身は審査での受け答えすら演技を疑われるという悲しい現実。これはつらいですね。
 
ラストシーンはまるで『ショーシャンクの空に』(1994)でした。

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