『KIDS/キッズ』(原題:Kids)
監督:ラリー・クラーク
出演:レオ・フィッツパトリック,クロエ・セヴィニー,ジャスティン・ピアース,ロザリオ・ドーソン,ハロルド・ハンター,ユキラ・ペグエロ,アタベイ・ロドリゲス,サジャン・バガット,ジョン・エイブラハムズ他
テアトル梅田にて4本ハシゴの3本目。
1995年のアメリカ作品。どうして今頃再上映しているのだか知りませんが、なんとなく苦手そうでずっと避けてきた作品です。ラリー・クラーク監督はもともと写真家。親交のあった30歳下のスケボー小僧ハーモニー・コリンが書いた脚本を映画化して評判になったのが本作です。また、クラークに心酔するガス・ヴァン・サント監督が製作総指揮を買って出たことも話題に。その後、コリンも映画監督となりましたが、私は彼の作品も避けてきました。これだけブログを続けているというのに、ラリー・クラークとハーモニー・コリンの名前は一度も挙げていないようで、自分でブログ内を検索してみて1件もヒットしないことに驚く。まぁ、時間も合うことだし、嫌々でも観てみよう。
10代のテリー(♂)は、ローティーンの少女の処女を奪うことにしか興味がない。話を聴きたがる親友キャスパーに自慢しながらニューヨークの街をぶらつく毎日。親の金を盗み、その金は使わずに雑貨店で万引き。男子がたむろするポールの家でドラッグをきめてセックスの話で盛り上がる。一方、ルビー(♀)の家に集まる女子もセックスの話ばかり。ジェニーはテリーに処女を奪われたが、その後テリーからは一度も連絡なし。何人もの相手とコンドームなしでセックスしているルビーは、HIV感染を心配して検査を受けることに。ついでにジェニーも検査を受けたところ、ルビーは陰性だったのに、テリーとしかセックスの経験がないジェニーが陽性という結果に。ジェニーはテリーにそのことを伝えようとするが、今日も狙った処女を落とそうと必死のテリーがどこにいるのかなかなかわからず……。
とても不愉快。なぜ私がクラークとコリン両監督の作品を避けてきたのかわかる気がします。基本的に「昔ヤンチャしてました、セックス&ドラッグ&バイオレンスやり放題」を自慢しているかのような印象を受けるからでしょう。そんなの、ちぃとも羨ましくないし。だいたいこいつらひとりじゃ何もできないくせに、群れて行動する。気に入らない相手をよってたかって殴ったり蹴ったりするのは相手も相手だから勝手にやってりゃいいと思うけど、こういう日々を自慢げに描いているのを観たって楽しくない。深く考えさせられることもなく、こいつらクズだとしか思いません。
役者のほとんどが当時は素人で、本作そのまんまの毎日を送っていた少年少女も多い。本作出演後にキャスパー役のジャスティン・ピアースは自殺。オーバードーズ(薬物の過剰摂取)で死んだ人もいます。それでもこのころのことを思い返してよかったなぁと自慢に思うのでしょうね。クズばっかりで役者にも興味が湧かないけれど、当時コリンの恋人だったというジェニー役のクロエ・セヴィニーと、ルビー役のロザリオ・ドーソンだけは存在感のある役者になりましたね。
クラーク監督の作品はもう観たくない。といっても彼はもう全然映画を撮っていないけれど。コリン監督の近年の作品には気になるものがいくつかあるから、それは観ようと思う。
2025年10月に読んだ本
2025年10月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1264ページ
ナイス数:674ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2025/10
■『ババヤガの夜』日本人初受賞 世界最高峰のミステリー文学賞 英国推理作家協会賞(ダガー賞) (河出文庫 お 46-1)
海外のダガー賞受賞作は何冊か積読の山の中にあるものの、いずれも分厚くてなかなか手が出ず。この薄さなら読めるんじゃなかろうかと開いたら、なんだこのぶっ飛びのオープニングは。この高揚感は平山夢明の『ダイナー』を読みはじめたとき以来かもしれません。『ダイナー』ではジェイソン・ステイサムをイメージしたけれど、これはシャーリーズ・セロンが頭をよぎる。それは綺麗すぎるか。ケイティ・オブライアン辺りでどうでしょう。何にせよとにかくカッコいい。最初から最後までハードボイルド。その中に切なさもあります。この生き様に惚れる。
読了日:10月02日 著者:王谷 晶
https://bookmeter.com/books/21006708
■四ツ谷一族の家系図
書店で平積みされているのを見かけ、『変な家』や『変な絵』、『近畿地方のある場所について』と似た雰囲気に、何匹目かのどじょうを狙ったのかなぁと思いつつ買ってみました。そうしたらそれらの本よりもずっと私の好み。『犬神家の一族』や『八つ墓村』にドキドキわくわくさせられた者としては、この呪われた村の雰囲気がたまりません。興味本位で調べているうちに知ってしまう先祖のこと。何代もさかのぼれば、悪事を働いた人がいても不思議はないけれど、それがどうにも理解の及ばない事件だったとしたら。自分の先祖は絶対に調べずにおきます。
読了日:10月03日 著者:沼堂 幼太郎
https://bookmeter.com/books/22840753
■侠飯11 激辛ガチ推し篇
“おとこめし”ファンの皆さん、11巻が出ていますよん。この薄さといい、字のデカさといい、本が読みたいのに最近なかなか読めずにいる者の救世主(笑)。序盤なかなかあのふたりが出てこないから、いつもこんな調子だったっけと訝っていましたが、こんなもんでしたかね。今回は純喫茶に登場。柳刃の料理に魅せられるのは毎度のこと。書き留めておきたくなる金言があるのも毎度のこと。説教臭くならないのが凄いなぁといつもながら感心します。昼間のメニューはトーストだけらしいけど、そっちも食べてみたいです。永遠に柳刃と火野推しで居たい。
読了日:10月08日 著者:福澤 徹三
https://bookmeter.com/books/22850183
■夜に星を放つ (文春文庫 く 39-2)
昨日『秒速5センチメートル』を観たところで、なんだか星に縁があります。コロナに寄せた話は映画も本もあまり得手ではないのですが、これはその寄せ加減が絶妙。尤も、いちばん好きだったのはコロナの「コ」の字も出てこない3つめの『真珠星スピカ』だったのですけれど。いずれの話も主人公は大切に思っていた人をさまざまな形で失っています。なかなか歩き出せないのが伝わってきて切ない。本作を読んだら『秒速5センチメートル』を観ることを薦めたくなりました。乗り越えなくてもいいし、忘れる必要もない。揚げたてコロッケにビールで乾杯。
読了日:10月13日 著者:窪 美澄
https://bookmeter.com/books/22380851
■夏の終わりに君が死ねば完璧だったから (メディアワークス文庫)
寂れた町で話題を呼ぶのは、奇病患者を受け入れるサナトリウムのみ。体が硬化して金塊になる病に罹る女性患者と知り合った少年エト。去年私がいちばん心を揺り動かされた曲は、藤井風の『満ちてゆく』です。本作の終盤、エトが「捨てること」で証明しようとするシーンでは「手を放す、軽くなる、満ちてゆく」という歌詞が頭を過ってしんみりしました。だけど中盤の北上さんの「お母さんには内緒でね」という台詞には、テンダラーの「母さんには内緒だぞ」というネタを思い出して笑ってしまった私を許してください。エト、きっとこれは正解。生きろ。
読了日:10月26日 著者:斜線堂 有紀
https://bookmeter.com/books/14026976
『さよならはスローボールで』
『さよならはスローボールで』(原題:Eephus)
監督:カーソン・ランド
出演:キース・ウィリアム・リチャーズ,ビル・“スペースマン”・リー,クリフ・ブレイク,ウェイン・ダイアモンド,ジョー・カスティリョーネ他
声の出演:フレデリック・ワイズマン
クライマックスシリーズの第4戦がなくなった日にテアトル梅田で4本ハシゴの2本目。
野球好きだもの、絶対に観たくなりますよね。すごく楽しみにしていたこの日の本命、アメリカ/フランス作品。監督は本作が長編デビューとなるカーソン・ランド。
田舎町の野球場を取り壊して、跡地に中学校を新設することが決まる。草野球だけが楽しみだった男たちは、長年親しんだこの野球場で最後の試合をするために集まる。
これだけの話なんです。オッサンたちが草野球をするだけ。予告編を観たとき、ただそれだけでも楽しそうだと思いました。が、こんなに退屈な作品だとは。(T_T)
別に野球が上手いわけじゃない。むしろ下手くそなオッサンたちは、一生懸命野球するわけでもありません。ビール缶を持ち続けるピッチャーは、途中でベロベロに酔っぱらってもう投げられないと言う。まだ明るいうちになくなるシャトルバスに乗りたいからと帰る審判たち。審判がおらなんだら試合でけん、車に積んである上等の肉をやるから帰らんといてくれと頼んでも駄目。
代わりに審判を務めてくれることになったのは、この草野球をいつも観に来ている別のオッサン。毎回丹念にスコアを付けているらしく、たぶんこのオッサンがいちばん野球に詳しいでしょうね。しかしいつもフェンス越しに観戦しているこのオッサンは、決してグラウンドの中には入ろうとしません。
たいしてやる気もないくせに最後まで試合をすることに固執。だけど照明費用もケチったせいで、薄暮から夜になるとほぼ誰も見えない状態に。それぞれの車のライトを点けてフィールドを照らす。遠く離れた記者席からストライクかボールかの判定をする審判のオッサン。結局押し出しフォアボールで勝敗が決着。
今までに観た野球映画の中でいちばんつまらなかった。イケメンでもないオッサンたちがダラダラと野球するのを眺めているのはムリっ。
『後朝の花雪(きぬぎぬのはなゆき)』
『後朝の花雪(きぬぎぬのはなゆき)』
監督:栗栖直也
声の出演:木島隆一,石黒千尋,武虎,福島おりね
クライマックスシリーズのファーストステージを観ているときはDeNAが強すぎて絶対に勝てんと思っていました。それがまさかの阪神3連勝でファイナルステージ突破。土曜日のデーゲームのはずだった第4戦がなくなったため、北浜で晩ごはんを食べる前にテアトル梅田で4本ハシゴすることに。その1本目。
栗栖直也監督のことを存じ上げませんでした。3DCGアニメーション『ねむれ思い子 空のしとねに』(2016)をたったひとりで作り上げ、世界的にも高い評価を受けた方なのだそうです。本作はその栗栖監督が9年ぶりに撮った怪談アニメ。
平安時代の京都。自身の保身のために捨てた女・小浜のもとを訪ねた時正は、小浜がすでに亡くなっていたことを知る。彼女が暮らしていた館には骸(むくろ)と化した小浜の姿。自分のことを恨んで息絶えたにちがいないと祟りを恐れる時正が陰陽師・賀茂忠行に相談に行くと……。
『今昔物語』の1編をモチーフにしたという本作はとても美しい。こんな情けない男に惚れ込んでいたなんてと思わなくもないけれど(笑)、恨んでなどいなかったことがわかるシーンはホロリと来ます。
今回の上映用にリマスターした『ねむれ思い子 空のしとねに』も同時上映。これは今回平安時代を舞台にした監督がかつて撮ったとは思えないSFサスペンス。
生まれたばかりの赤ん坊のときに事故にあった織音。両親は死亡、ひとり残された彼女は19歳になり、ある事件を起こして追われる身。そんな彼女を助けてやるという人物が現れるが、助ける条件として実験用の宇宙ステーションへと連れて行かれる。そこで会ったのは亡くなったはずの母親・里美で……。
これも面白かった。ただ、織音が起こした事件というのが強盗殺人だというのは重すぎやしませんか。(^^;
時間的に都合がよかったから観ただけの作品でしたが、2本とも非常によかったです。またひとり、観るのが楽しみな監督が増えました。
『ホウセンカ』
『ホウセンカ』
監督:木下麦
声の出演:小林薫,戸塚純貴,満島ひかり,宮崎美子,安元洋貴,斉藤壮馬,村田秀亮,中山功太,ピエール瀧,花江夏樹他
前述の『劇場先行版 ゴールデンカムイ 札幌ビール工場編 前編』の後、同じく109シネマズ大阪エキスポシティにて。
2021年に人気を博したTVアニメ『オッドタクシー』の監督・木下麦と脚本家・此元和津也がふたたびタッグを組んだオリジナルアニメ。アニメーションの制作を手がけたのはCLAP。老年を迎えた主人公の声を小林薫、若かりし頃の声を戸塚純貴が担当しています。彼の内縁の妻だった女性の今の声は宮崎美子、昔の声を担当するのは満島ひかり。喋るホウセンカの声はピエール瀧。
殺人罪で無期懲役の刑を受けて服役中の老人・阿久津実。これまでに何度か申請した仮釈放は認められず、このまま独房で生涯を終えるだろう。しかし彼は大逆転があると鉢植えのホウセンカに話しかける。このホウセンカは実が暮らしていた家の庭に咲いていたもので、今は実と共に独房にいる。ホウセンカの声は生まれたての赤ん坊か死にかけの人間にしか聞こえない。
かつて、ヤクザの実は飲み屋で知り合った妊娠中の女性・永田那奈と暮らしていた。誰の子かもわからない赤ん坊が腹の中にいるというのに那奈と一緒になると決め、生まれたばかりの男児・健介にパパと呼ばせることなく過ごす。籍を入れることを望んでいた那奈にも、ヤクザの家族として生きるのは大変なことだからと断って面倒を見続ける。
あるとき、健介の心臓に疾患があることがわかる。アメリカで心臓移植を受けるには数億円の金が必要。アニキ分の堤に金を貸してくれるように頼むが、さすがに堤にもそんな金はない。そこで堤が実に持ちかけたのは、組長から目をかけられている若松を殺して金庫の金を盗むことで……。
ホウセンカからなぜ那奈と健介を引き取ったのかと聞かれた実はポツリ、「好きだったから」と答えます。ほかに理由なんてない。3人で築いた家庭で過ごした時間はこのうえなく幸せだったはずなのに、いつしか金を持つようになって家には帰らなくなります。那奈に愛想を尽かされても不思議はなかった頃に健介の心臓疾患がわかり、なんとかしたいと思う。ただ、好きだから。大切だから。
堤の罪をかぶって刑務所に入ると、堤の性格を考えて那奈と健介を守ろうとします。何年もかけて考えた大逆転は、実がどうにかなるということではありません。那奈と健介の人生大逆転を実が実現することこそが夢。何十年離れていようが、実の手紙から意図を読み取り、大逆転を果たす那奈。
喋るホウセンカだなんて変な設定だなぁと思いましたが、佳作。人生っていいものだ。





