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『水平線』

『水平線』
監督:小林且弥
出演:ピエール瀧,栗林藍希,足立智充,内田慈,押田岳,円井わん,
   高橋良輔,清水優,遊屋慎太郎,大方斐紗子,大堀こういち,渡辺哲他
 
が倒れる前日は十三で映画を観ました。
「十三へ映画を観に行っても大丈夫かな」と母にLINEしたら、「行っておいで」と言ってくれたから。
まさか翌朝母が倒れて入院、1カ月と少し後に亡くなるなんて思いもしなかったなぁ。
 
その日、シアターセブン『月』を観たとき、お手洗いに傘を忘れたと帰宅後に気づく。
すぐに電話して「近日中に取りに伺います」と言ったのに、母が倒れてしまいました。
で、シアターセブンにメールで事情をお知らせし、しばらく傘を預かっていただきました。
とても温かいお返事をいただいて、安心したのを思い出します。
 
さて、母が亡くなってちょっと2週間経った日、シアターセブンで本作を鑑賞。
傘の話をしてお礼を申し上げ、また忘れても困るからと帰るときに受け取ることに。
 
モデルに俳優にプロデューサーに演出家、なんでもこなす小林且弥の長編監督デビュー作。
 
東日本大震災で妻を失った井口真吾(ピエール瀧)は、一人娘の奈生(栗林藍希)と共に福島の港町で暮らしている。
個人で散骨業を営む彼のもとに、ある日、松山(遊屋慎太郎)という男性がやってくる。
松山は亡くなった兄の骨を海に撒いてほしいと言うが、火葬許可証を家に忘れてきたらしく、
それがなくては散骨できないからと、許可証が届くまで井口が遺骨を預かることに。
しかし、松山はその後なかなか現れない。
 
そうこうしているうちに、ジャーナリストを名乗る江田(足立智充)が姿を見せ、
松山の兄は通り魔事件で無差別に何人も殺した犯人であることを告げる。
殺人犯の遺骨を犠牲者も眠る海に撒くつもりか、それについてどう考えるのかと江田は井口に詰め寄り……。
 
ジャーナリストって何様なのかと嫌悪感が募ります。
もちろん素晴らしいジャーナリストもいるのはわかるけど、この江田という男は最悪。
偉そうに正義感をふりかざすけど、被災者じゃないし、福島在住でもない。
なのに自分は震災の記憶の風化を止める、被災者の代弁者なのだとのたまう。
 
通り魔事件の被害者遺族を井口の前に連れてきて、頼むから殺人犯の遺骨を海に撒かないでくれと言わせる江田。
じゃあ手元にある遺骨をどうすればいいのかと問い返すと、
そんなことはこちらの考えることじゃない、鳶にでも鷹にでも食われりゃいいなどと言う。
トイレに流したところで、結局たどりつく先は海なのに。
 
江田の無神経な取材に乗っかるように都会から押し寄せるマスコミの人々。
江田のことをゲス野郎と言いながら彼同様に井口を責める姿勢がとても嫌。
震災後の風評被害に悩まされてきた漁師たちも、井口の気持ちを理解する清一(渡辺哲)以外は井口を厄介者扱い。
娘さえも井口のことをなじるから、居たたまれない気持ちになりました。
 
風化とは何なのかを考えさせられます。
嫌なことなんて思い出したくないのに、関係ない人に思い出さされる。嫌な記憶を掘り返される。
思い出さないのが風化なのであれば、風化しちまえばいいと叫ぶ井口。
紙一重ですね。
 
ちなみに円井わんの役どころは奈生の親友。
彼女がいちばん人の気持ちに寄り添える人物のように感じました。
 
監督デビューの小林且弥、面白いじゃあないか。今後にも期待します。

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『劇場版 ブルーロック EPISODE 凪』

『劇場版 ブルーロック EPISODE 凪』
監督:石川俊介
声の出演:島﨑信長,内田雄馬,興津和幸,浦和希,海渡翼,小野友樹,斉藤壮馬,諏訪部順一,内山昂輝,木村昴,神谷浩史他
 
これもイオンシネマ茨木にて。
 
2018年に『週刊少年マガジン』にて連載が開始され、今なお継続中の同名人気コミックの劇場版映画。
例のごとく私は原作未読でTVアニメも未見であるばかりか、
本作を観るまでは何の競技を扱う作品なのかも知りませんでした。
えっ、サッカーだったの!?とたまげる(笑)。
 
あんまりやる気のない男子がやる気満々の男子に引きずられて行くところが。
 
スマホでゲームばかりしている男子高校生・凪誠士郎は「めんどくせぇ」が口癖。
人との関わり合いを避け、部活にもまったく興味がないのに、
同級生の御曹司・御影玲王にぶち当たられてスマホが吹っ飛んださいに、
絶対にスマホを壊したくない凪が見せた身体能力の高さに玲王がビックリ。
玲王は凪に「一緒にサッカーをして世界一になろう」と誘う。
 
というふうに話はスタートするのですけれど、
凪が玲王に声をかけられるなり、「あ、お金持ちの人。お金ちょうだい」と言うところは嫌い。
なんでアンタに金やらなあかんねんと、かなり嫌な気分に(笑)。
 
その後もこれでいいんですかの連続で。
玲王も凪もサッカーを一度もしたことがなく、凪に至ってはルールさえあやふやにしか知らない。
なのに強豪校をなぎ倒し、サッカーを始めてたった半年で日本代表の強化選手に。
最強のストライカーを決める“ブルーロック”プロジェクトに参加するんですよね。
 
面白いか面白くないかと聞かれたら、面白かったです。
でも幼い頃から一生懸命練習しているサッカー少年たちにとって、これは憧れの対象になるんですか。
いわばポッと出の天才肌の男子たちが活躍する姿はどう映るのか。
サッカーをしている人たちに聞きたいなぁ。本作のサッカーはどうなのかって。

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『異人たち』

『異人たち』(原題:All of Us Strangers)
監督:アンドリュー・ヘイ
出演:アンドリュー・スコット,ポール・メスカル,ジェイミー・ベル,クレア・フォイ他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
1987年に出版された山田太一の小説『異人たちとの夏』を読んだのはいつのことだったでしょうか。
おそらく30年以上前でしょう。
内容はよく覚えていないのですが、当時まだ若かった私はラストシーンにビビり、
少し怖い思いをしたように思います。
 
1988年には大林宣彦監督によって映画化されましたが、これは観たかどうかさえ記憶なし。
だって私は大林監督がちょっと(だいぶ)苦手なんです。(^^;
ただ、本作はなんとなく大林監督にピッタリな気がしますから、良い映画化だったのかな。
 
さて、本作はイギリス出身のアンドリュー・ヘイ監督によるリメイクで、イギリス/アメリカ作品。
原作の「ちょっと怖いラスト」だけを覚えている状態で鑑賞しました。
 
映画の脚本家である彼は、12歳のときに交通事故で両親を亡くした。
今は両親との思い出を基に脚本を執筆中。
 
ある日、両親と過ごした郊外の家を訪ねたアダムは、実家が残っているばかりではなく、
30年前に他界したはずの両親が歳を取ることなくそのままの姿で暮らしていることに驚愕。
成長したアダムを見た両親は感激し、家の中にアダムを招き、さまざまな話をする。
以降、実家に足繁くかよっては、満たされる心を感じるアダム。
 
一方、タワマンの住人で話したこともなかったハリー(ポール・メスカル)が突然訪ねてくる。
酒を飲もうと言うハリーを一度は拒絶したアダムだったが、
ハリーのことがなんとなく気になり、語り合うように。
クィアかと問われて即座に返答できずにいたが、それを認め、肉体関係を結ぶ。
たちまち情熱的な恋に落ちたふたりは、それからずっと一緒にいるようになり……。
 
暗いです。でも、繊細で美しい。すごく良かった。
なにしろこのタワマン、相当な戸数があると思われるのに、入居者はたったふたり。
都会のタワマンを外から見たときの、たった2軒に明かりが灯る様子がすでに怪奇的なのに、
幻想的でもあって魅入られます。
 
幼い頃から自分はゲイだと認識していて、学校ではいじめられていたのに、親には言えなかったアダム。
母親(クレア・フォイ)はそのことに気づいていなかったけれど、
父親(ジェイミー・ベル)は気づいていたし、アダムが自室でひとり泣いていることも知っていた。
なのに決してアダムの部屋に入ろうとしなかった理由をいま父親に尋ねると、
父親もなぜ話さなかったのかとアダムに問い返します。このやりとりに興味を引かれる。
 
大人になった自分と、あの頃のままの両親と話せる幸せ。
だけどいつまでもこんなことは続かない。
アダムが実家にハリーを連れて行き、両親に紹介しようとしたときに状況が変化します。
 
原作も大林監督の映画版もこんなゲイの作品ではなかったかと思いますが、
主人公をゲイとすることで新しい作品になったと思います。
アダムとハリーにはかなりの年齢差があって(ハリーのほうがずいぶん若い)、
“クィア”と“ゲイ”という言葉選びも違えば、ゲイに対する認識も環境も違う。
それを実に上手く物語の要素として取り入れています。
 
昔は少し怖く感じたラストは、切なさでいっぱい。
悲しすぎて、胸がキューッと絞られるよう。
 
あんなにもよく聴いたペット・ショップ・ボーイズの曲の歌詞がこんな意味だったなんて知らなかった。
たぶん、ずっと心に残る作品。

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2024年4月に読んだ本まとめ

2024年4月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1523ページ
ナイス数:652ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2024/4
■夏の終わりの時間割 (講談社文庫)
200頁ちょいの薄さに反して内容は厚い。誰しも行動の裏には理由があるのですね。さらっとうわべを見ているだけではわからないことがある。そこに考えを及ばせたとき、本作で「何かを起こした人」それぞれの気持ちに想いを馳せると切なくなります。生活の節約術だったり蜂避けのおまじないだったりは初耳で目からウロコ。それがまた切ない要因。余談ですが、先月から母が危篤状態にあります。死ぬ間際の人は嘘をつかない。もともと嘘はつかない人だけど、病床でいま言うことは本心でしょうね。最期の時間を大事にしたい。
読了日:04月05日 著者:長岡 弘樹
https://bookmeter.com/books/18098406
■晴れときどき涙雨 髙田 郁のできるまで (幻冬舎文庫)
不思議なもので、何気なく読み始めた本に、いま自分が置かれているのと同じ状況の描写が出てくることがあります。同じ状況ならば気づくというだけで、不思議でも何でもないことなのでしょうけれど。先月からずっと母が危篤状態にあります。本作のひとつめの話『抱擁』で高田さんの心配ばかりしているPさんが母と重なりました。93歳の母が残る私の心配をするのはおかしいと思うのに(笑)。心配をする相手がいるのはきっと幸せなことなのですね。タイトルだけで心に刺さる。高田さんがこんな人生を送られてきたとは知らず。明日はきっと味方だ。
読了日:04月06日 著者:髙田 郁
https://bookmeter.com/books/9020770
■ぎょらん (新潮文庫 ま 60-22)
先月から危篤状態が続いていた母。今朝病院から「意識が低下して呼吸が浅くなっている」と連絡があり、駆けつけました。それからおよそ1時間半、眠るように母逝く。母の手を握りながらいろんな話をして、あと50頁ほどだった本作を開き、「お母さん、これな、人が死ぬときに遺す珠の話やねん」とぽつぽつ声に出して読みながら過ごしていたら、ちょうど全部読み終わりそうになったときに、母の心拍数がゼロに近づきました。「お母さん、ありがとう」と言ったら、スーッと涙ひと筋。聞こえていたならいいなぁ。明後日のお葬式ではぎょらんを探すよ。
読了日:04月11日 著者:町田 そのこ
https://bookmeter.com/books/21308313
■20歳のソウル (幻冬舎文庫)
死にゆくの枕元で町田その子の『ぎょらん』を読み終えてから1週間と少しが経過しました。母は癌だったというものの、90歳を超える高齢でしたし、こちらの覚悟もできていたから、今の私は寂しいけれど悲しくはない。だけど本作を読むと、2年前に亡くなった弟のことを思い出し、弟の半分よりも短い生涯を閉じた大義くんを想って悲しさでいっぱいになります。ロードショーの折に劇場にて鑑賞しましたが、本作を読むと、市船に丹念に取材をしなければ書けない話だなぁという思いはひとしお強くなりました。空の上も音楽が溢れていればいいと思う。
読了日:04月22日 著者:中井 由梨子
https://bookmeter.com/books/18041920
■そこに無い家に呼ばれる (中公文庫 み 50-3)
母が亡くなってから2週間と少し。こんな話を読む心境ではないはずが、三津田さんにはスルスルと吸い寄せられ、母の遺影に見守られながら読みました。巷で大ヒットを飛ばしているいくつかのモキュメンタリーも読みましたが、やっぱり私は断然こっちが好き。なんとも言えない余韻があって、深い。何かが一つずつ減っていたり増えていたりしたら気をつけよって、わざわざそういうのを見つけて数えてしまうじゃあないですか(泣)。ラスト3頁は『逆転美人』並みの労力を感じました。というのは『逆転美人』の藤崎さんに失礼ですかね(笑)。怖かった。
読了日:04月30日 著者:三津田 信三
https://bookmeter.com/books/21364304

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『ソウルフル・ワールド』

『ソウルフル・ワールド』(原題:Soul)
監督:ピート・ドクター
声の出演:浜野謙太,川栄李奈,福田転球,梅田貴公美,北西純子,定岡小百合,丸山壮史,RICO,横溝菜帆他
 
コロナ禍のせいでしょう、劇場公開はされずにディズニープラスにて独占配信されていた作品のうち、
ディズニー&ピクサーの“泣ける名作”として3作品が劇場公開に至りました。
しかし上映期間が短すぎて、『私ときどきレッサーパンダ』(2022)は見逃し、
『あの夏のルカ』にはなんとか間に合い、そして最後の本作も滑り込みで鑑賞することができました。
2020年の作品です。イオンシネマ茨木にて。
 
ジョー・ガードナーはジャズピアニストになることを夢に見続けている臨時の音楽教師
ある日、校長から正式に雇うとの書面を受け取り、喜ぶべきだろうが喜べない。
もしも正式に教師として勤めることになれば、夢は叶わないのだ。
 
迷っていた彼のもとへ、かつての教え子であるドラマーのカーリーから電話が入る。
カーリーは超有名な女性サックス奏者ドロシア・ウィリアムズのバンドで演奏することになったらしい。
さらにカーリーが言う、今晩ドロシアのバンドで一緒に演奏しようと。
ドロシアのお眼鏡に叶えばジョーも夢のジャズミュージシャンになれるのだ。
 
一張羅に着替えるといそいそと街を歩くジョーだったが、マンホールに落ちて意識を失う。
目覚めるとどうやら自分は死の淵にいて、もう死ぬことが決まっている様子。
なんとか元の世界へ戻ろうとする彼は、人間として生まれる前のソウル(=魂)たちのうちのひとり、22番と出会う。
22番を連れて元の世界へとりあえず戻ったものの、ジョーの体は22番のものだから、
今宵のライブが始まる前になんとか自分の体を22番から取り返さねばならず……。
 
かなり哲学的で、『あの夏のルカ』ほどわかりやすくはありません。
人はなぜ生まれるのかとか生きる意味なども問われ、母を亡くしたばかりの私にタイムリーな話題ではあるけれど、
巷の高評価ほどは面白いとは思えなくて、時折睡魔に襲われる。またかい!(笑)
 
結局、生きる意味など考える必要なんてない。
なぜ生まれるのかなんて考えたところで、生まれるものは生まれ、死ぬものは死んでゆく。
意味を見出さなければ生きていられないなんてことはないのですよね。
 
「それはきらめきなんかじゃない。普通のことさ」。
そう、普通のことこそがきらめきで、些細なことで喜んだり、美しいと思えたり、
それが生きているということなのだろうと思いました。
 
これはジェイミー・フォックスティナ・フェイの声で観たかったな〜。

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