『嵐が丘』
監督:エメラルド・フェネル
出演:マーゴット・ロビー,ジェイコブ・エロルディ,ホン・チャウ,シャザド・ラティフ,アリソン・オリヴァー,マーティン・クルーンズ,ユアン・ミッチェル他
109シネマズ大阪エキスポシティにて、IMAXレーザーGT版を鑑賞しました。大画面で観たかったわけではなく、時間的にいちばん都合がよかったからというだけです。
原作は言うまでもなく、18世紀のイギリスを舞台としたエミリー・ブロンテの古典小説。今更ながらブロンテについて調べてみたところ、1818年にイギリス・ヨークシャーで牧師の子として生まれた彼女は、結核を患って30歳の若さで死亡。女性が小説など書くものではないと言われていた時代だったこともあり、亡くなる前年の1847年に出版した唯一の長編小説『嵐が丘』は当時は酷評されましたが、没後に評価されるように。「没後に高く評価される」と聞くと、アストル・ピアソラなんかを思い出す。ご本人たちは空の上でどうお思いになっているのでしょう。
そんなブロンテの作品を『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)のエメラルド・フェネル監督が映画化したアメリカ作品。フェネル監督はイギリス出身、主演のマーゴット・ロビーと『フランケンシュタイン』(2025)で怪物役を演じたジェイコブ・エロルディはオーストラリア出身。家政婦役はタイ出身のホン・チャウ。主人公の結婚相手を演じるシャザド・ラティフこそはイギリス出身ではありますが、父親はパキスタン人なのだそうで、実に国際色豊かなキャストです。
荒涼とした高台に建つ屋敷、通称“嵐が丘”に暮らすアーンショウ家。主人のアーンショウは酒と博打に目がないろくでなしで、アーンショウ家は落ちぶれていく一方だというのに、毎日酔っぱらって帰ってきては粗相し放題。そんな主人でも、一人娘のキャサリンは世界一の父親だとかまってほしがる。主人にも娘にもあきれ果てている家政婦のネリー。
ある日、いつものように酔っぱらった主人が孤児の少年を連れ帰る。酔うと博愛主義を見せたがるのが主人の悪い癖。しかし、キャサリンは遊び相手が現れたと喜び、名前すら言おうとしない少年をヒースクリフと名づけてペットのように可愛がる。こうして幼い頃から片時も離れずに育ったふたりは、身分の違いを超えて惹かれ合うようになるのだが……。
ヒースクリフに惹かれつつも、キャサリンが玉の輿にでも乗らなければ潰れることは確実なアーンショウ家。隣の豪邸に越してきた裕福なリントン家に狙いを定めたキャサリンは、目論見通り息子のエドガーのハートを射止め、求婚されます。ヒースクリフのことを愛しているが、彼と一緒になっても未来はない。キャサリンがネリーにそう話しているのを立ち聞きしてしまったヒースクリフは嵐が丘を去るのでした。
多少は期待して観に行ったのですが、なんだかなぁというのが率直な感想。マーゴット・ロビー演じるキャサリンは美しいし、衣装やリントン家の調度品を見るのも楽しい。しかしエロさを醸し出そうとしているオープニングがまず好きじゃない。画面にはまだ何も映し出されていない状態で聞こえてくるのはまるであえぎ声そのもの。映ったと思ったら、絞首刑にされている囚人の首がなかなか折れなくて死にきれないときの声でした(笑)。
そのほかにもエロを感じさせるシーンが結構あります。観る人の想像力によるのかもしれませんが、嵐が丘を去ったヒースクリフが戻ってきてキャサリンと再会したあとは、脱がないポルノ映画ばり。キャサリンはエドガーの子を身ごもっていることをヒースクリフに隠したまま、ふたりはやってやってやりまくる(笑)。いちばん残念なのは、最初に嵐が丘にいた頃のヒースクリフはロン毛の似合う色っぽい男性だったけど、富を得て戻ってきたヒースクリフがちっとも色っぽくないこと。
キャサリンが亡くなるシーンは部屋に蛭がいっぱいで気持ち悪いし、楽しめないまま終わった作品。うーむ。どないよこれ。
『#拡散』
『#拡散』
監督:白金
出演:成田凌,沢尻エリカ,淵上泰史,山谷花純,赤間麻里子,船ヶ山哲,鈴木志音,DAIKI,MIOKO,高山孟久他
イオンシネマ茨木にて。
監督は「日中の文化交流を軸に配給や映画製作を手掛ける“チームジョイ”の代表取締役兼CEO白金」とのことですが、全然知らなくてすみません。と思ったのですけれど、そのチームジョイが配給した作品を調べてみれば、なぁんだ、知っているものばかりじゃあないか。『THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女』(2018)、『白蛇:縁起』(2019)、『劇場版 Re:STARS 未来へ繋ぐ2つのきらぼし』(2023)、『ゴールド・ボーイ』(2023)、“羅小黒戦記”シリーズなどなど、面白かった作品ばかり。
富山県の小さな田舎町。老人介護施設の職員・浅岡信治(成田凌)はインフルエンサーである妻の明希(山谷花純)とふたり暮らし。ある日、かかりつけの高野クリニックでコロナワクチンを接種した明希が翌日急死する。原因はワクチンにあると考えた浅岡は、明希の遺影を胸に掲げてクリニックの前に立ち、来る日も来る日も無言の抗議活動を始める。その姿を目にしたのが新聞記者の福島美波(沢尻エリカ)。東京からこの町へ左遷されてくすぶっていた美波は、これは感動を呼ぶネタになると考える。やがてその通り、ネットを中心に大きな反響があり、信治は同僚の薦めもに従ってSNSのアカウントを開設。コラボを望むYouTuberも現れ、信治は“反ワクチンの象徴”としてもてはやされるようになるのだが……。
反ワクチンを扱っているからなのか、上映劇場もそう多くはありません。どういう立ち位置で白金監督は撮ったのだろうと気になっていました。私自身はワクチンを一度も接種していませんが、別に反ワクチンという立場でもない。わりとニュートラルな気持ちで鑑賞に臨んだつもりです。
なんか嫌な感じなんですよね。信治とYouTuberたちが。本当に反ワクチンなの? それを利用して注目されようとしているだけなんじゃあという気がして。そうしたら、結局のところ、ホンマもんの反ワクは医師の高野(淵上泰史)病院だけ。高野が明希の元カレだったのを知って嫉妬していた信治が、この機会を利用して高野を貶めようとしていたという展開で。なんだよ、痴情のもつれの結果がこれかよと、ちょっと拍子抜けしました。問題の提起としては良いのではないかと思いますけれど。思いっきりネタバレですみません。m(_ _)m
『幻愛 夢の向こうに』
『幻愛 夢の向こうに』(原題:幻愛)
監督:キウィ・チョウ
出演:テレンス・ラウ,セシリア・チョイ,パウ・ヘイチン,ケネス・チェン,プン・チャンリョン他
前述の『正義廻廊』の後、同じくテアトル梅田にて。
新作かと思ったら、テレンス・ラウ人気に乗じた2019年の香港作品。そらまぁ、彼の出演作を公開すれば、確実に客が入りますからね。私も『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(2024)で「誰なんこのイケメンは」と思った口です。
ある夜、錯乱状態にある女性が路上で服を脱ぎはじめる。野次馬たちがニヤニヤしながらスマホで撮影する間を縫って女性を助けに向かった若い男女。男のほうは路上の半狂乱の女性と知り合いらしく、救急車を呼ぶ。女のほうは服を脱いでうずくまっていた女性に優しく声をかけ、自分のカーディガンを彼女に掛ける。
男は小学校教師のロックことレイ・ジーロック(テレンス・ラウ)、女は同じマンションの上階に住むヤンヤン(セシリア・チョイ)。恋に落ちたふたりは交際を開始する。しかし、ロックは自分が統合失調症を患っていることをヤンヤンに打ち明けられずにいた。2カ月間の幸せな日々を過ごした後、突如として訪れた別れのとき。
ヤンヤンへの想いを断ち切れずにいたロックは、同じ病の患者たちが集うグループセラピーの場で、ヤンヤンにそっくりな大学院生イップ・ラム(セリシア・チョイの一人二役)が現れたのを見てびっくり。臨床心理士を目指すラムは、論文を書き上げるための研究に当てはまる症例の患者を探していると言う。ロックこそまさにその人物で、ラムから協力を頼まれたロックは……。
ネタバレになりますが、ヤンヤンは幻。幻覚を起こしてヤンヤンを実在の人だと思い込み、恋をしていたロック。そのような症例を探し求めていたラムは最初こそロックを利用すべく近寄りますが、やがて本当の恋に落ちるのは決まりきった流れ。ラムが誰とでも寝るヤリマンだから、そんな女に騙されるなよロック、というのかテレンス・ラウ、と思ってしまうのでした(笑)。だけどセシリア・チョイはめちゃめちゃ可愛い美人ですよねぇ。テレンス・ラウとお似合い。実際、昨秋ふたりは結婚しました。このふたりなら仕方がない。
幻覚や幻聴ではないことを明らかにするために、統合失調症の患者たちが会話を録音して再生してみるというのは周知の方法なのでしょうね。目の前の幸せが幻聴ではありませんようにと祈りながら再生したのに何も入っていないときの切なさを思うと悲しくなります。
『正義廻廊』と本作、両方に同様の台詞があったのにはウケました。性体験ゼロもしくは乏しい主人公が「でも、日本のAV(アダルトビデオ)を見て勉強したから大丈夫」って。日本のAVって、そんなに優れているのですか。確かにオモロイけど(笑)。
『正義廻廊』【トークイベント付き】
『正義廻廊』(原題:正義廻廊)
監督:ホー・チョクティン
出演:ヨン・ワイロン,マク・プイトン,ルイーザ・ソウ,マイケル・チョウ,ジャン・ラム,グロリア・イップ他
2013年に香港で実際に起きた事件をモチーフにした法廷ミステリー。香港では2022年に公開され、日本でいうところの『国宝』(2025)並のロングランとなり、大ヒットを記録した作品なのだそうです。テアトル梅田で配給会社の方によるトークイベント付きの回があったので、それを観に行きました。ほぼ満席。
ある日、ヘンリー・チョンという男が「行方不明になった両親を探している」としてテレビ出演、情報を求める。ところがその後、ヘンリーは自分が両親を殺害したとSNSで告白し、駆けつけた警察官はヘンリーの友人アンガス・トンの自宅の冷蔵庫からバラバラに解体された男女の遺体を発見する。その遺体はヘンリーの両親のものと思われ、ヘンリーと共にアンガスも逮捕される。ヘンリーは犯行を認め、最初は共犯を否定していたアンガスも自供。それぞれに弁護士がつき、9名の陪審員が選出されて裁判が始まるのだが……。
映し出される遺体は相当えぐい。スプラッタムービー顔負けで、直視するのは厳しいほど。そこはホラー映画を観るときと同様に目を逸らすとして、面白い作品です。
香港の人ならみんな知っているという事件に今なお多くの謎が残るというとおり、真相はいったいどうだったのかがわかりません。ヘンリーに利用されただけだと主張するアンガスは本当に知能指数が低かったのか。彼が実は物凄く賢かったことを匂わせる描写があり、真相に興味が湧きます。有罪無罪を議論する陪審員たちの様子も面白く、もしもこの場に自分がいたらどう考えるだろうと思わずにはいられません。
しかし映画そのものよりも興味を惹かれたのは、上映終了後におこなわれたトークイベントで知った香港映画の現状。大陸中国の資本に頼る監督も増えているなか、今の香港を描くべく若手監督を支援する流れがあるとのこと。本作もそうした作品のうちの1本であり、まだまだこれから香港映画が面白くなりそうです。
『ロビー! 4000億円を懸けた仁義なき18ホール』
『ロビー! 4000億円を懸けた仁義なき18ホール』(英題:Lobby)
監督:ハ・ジョンウ
出演:ハ・ジョンウ,キム・ウィソン,カン・ヘリム,イ・ドンフィ,パク・ビョンウン,カン・マルグム,チェ・シウォン,チャ・ジュヨン,パク・ヘス,クァク・ソニョン他
休日、父に面会するために山田駅近くの老健へ向かい、そのまま車を駐めて阪急電車に乗車。夙川でひとりランチの後、ふたたび電車に乗って梅田へ。テアトル梅田で本作を鑑賞しました。ちなみにその後は地下鉄に乗ってなんばグランド花月へ。
ハ・ジョンウが3度目の監督を務め、自ら主演するコメディ作品。封切り翌日だったこの日、ジョンウ人気なのか韓国映画人気なのか、まぁまぁの客入り。
新進テック企業の社長チャンウク(ハ・ジョンウ)はエンジニアとしての自負があり、金で仕事を取るなんて卑怯だと思ってこれまで仕事をしてきた。しかしその結果、なんとか手を打たなければ会社は潰れそうな状態。このたび発表された国家事業を自社が受注するには、これまで避けてきたロビー活動をおこなわないわけにもいかなくなる。
社員たちによる調査に基づき、国家事業の受注先決定の権限を持つチェ室長(キム・ウィソン)を接待することに。チェ室長がゴルフ好きで、しかも美人女性プロゴルファーのジン(カン・ヘリム)の大ファンであると知り、まずはジンにスポンサー契約を持ちかける。一方、ライバル会社のグァンウ(パク・ビョンウン)も、チェ室長の妻でかつ室長の上司でもあるチョ長官(カン・マルグム)をゴルフ接待。その場にはチョ長官が好きな俳優テス(チェ・シウォン)を同席させる。こうして同日に同じゴルフ場で双方の接待が進められるのだが……。
さぞかし面白かろうと期待していたのですが、なんとも中途半端。そもそもチャンウクとグァンウが受注しようと争っているものが何なのかが(酔っぱらっていたこともあって(笑))よくわからない。埋込型と据置型って、何の話をしているのですか。もともとエンジニアのチャンウクはそのどちらも造る技術を持っているけれど、グァンウにその技術はありません。だから、グァンウはチャンウクの会社を買収しようとしています。技術を金で買えばどうとでもなると思っているグァンウの態度は気に入らんけど、何の話かよくわからないからどうでもよくなってきて。
さらに、私はゴルフにほぼ興味がないから、肝心のゴルフのシーンについていけず。ジンのドライバースランプもよくわかりません。ただ、ジン役のカン・ヘリムは見ているだけで楽しくなるほど綺麗。それだけに、彼女に言い寄るチェ室長がキモくて嫌でした。あ、チャンウクの部下を演じるクァク・ソニョンも綺麗で好きだなぁ。チャンウクの会社の若手社員たちが一致団結する様子はとてもいいのですけれど。
ハ・ジョンウは監督はせずに俳優としてのみ映画に関わるほうがいいのではないかと思います。良くも悪くもなさすぎてつまらない。





