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今年観た映画50音順〈か行〉

《か》
『カウントダウン』(原題:焚城)
2024年の香港作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
1996年、財政長官のファンは他国で排出された金属ゴミを積極的に輸入し、経済大国となる道を選ぶ。しかしそのせいで金儲けを目論む悪徳業者が横行し、危険物が持ち込まれたコンテナターミナルで火災が起きる。この事故でファンの妻を含む消防士たちが死亡。義弟は姉の死の責任をファンに問い、決して許そうとしない。これをきっかけにファンは政界を離れると学位を取得して環境汚染の専門家となる。2007年、リサイクルヤードで火災が発生。すぐに鎮火可能と思われたが、火災発生場所から高濃度セシウムが検出される。折しも香港には台風が接近中。セシウムが水に触れれば香港全域が放射能汚染に見舞われるだろう。国民がパニックに陥ることを恐れる政府高官は事態を隠そうとするが、ファンは反対。万が一のときのことを考えて国民に逃げる時間を与えるべきだと主張し……。
ファン役がアンディ・ラウ。この人はいくつになっても男前だけど、やっぱり「正しい人」なんですよね。まぁ、正しくないとアンディ・ラウじゃないか。政府高官役にカレン・モク。この人の最近の役って、香港のアンジェラ・バセットみたい(笑)。火災現場の迫力が凄いので、ストーリーはともかく、大画面で観たかった作品です。

《き》
『キラー・ザ・ハイヒール』(原題:This Game’s Called Murder)
2021年のカナダ作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
ファッション界の大物ウォーレンドルフ(ロン・パールマン)は、深紅のハイヒールの斬新なCMで有名になるが、実はそのCMはいわゆるスナッフフィルムで、撮影では本当に殺人がおこなわれていた。深紅のハイヒールを履きたい女性軍団がウォーレンドルフ社の輸送車を狙って襲撃をかけると、積み荷はハイヒールではなくインスタントラーメンでがっかり。とっとと運転手を殺すと、輸送車ごと森の奥の池の端に放置する。ラーメンの中に金塊を隠していたウォーレンドルフ夫人(ナターシャ・ヘンストリッジ)は、輸送車が消えたと知って怒り狂う。こんな夫婦の娘ジェニファー(ヴァネッサ・マラーノ)はインフルエンサー。父親がハイヒールではなく個人情報を売って儲けていることを知っているし、スナッフフィルムを撮影していることも知っている。また、母親が金塊を持って浮気相手と逃げようとしていることや、輸送車の行方を突き止めるために使用人を殺していることも承知のうえで……。
邦題からハイヒールが殺人鬼になると思っていたら違った(笑)。ちょっとジャン=ピエール・ジュネを思わせるアーティスティックな作品でした。

《く》
『クマ男 シークレット大捜査』(英題:Bear Man)
2023年の韓国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。日本では劇場未公開。
1997年、種の保存研究所ではクマを野に放ち、成長を見守るプロジェクトを実施していた。生息地に馴染んで出産まで果たしたクマもいるが、ウンナムとウンブクという2匹のクマは行方をくらましたまま100日が経過。ウンナムの追跡装置に反応があったのを見て研究所長のナ・ボクチョン(オ・ダルス)とその妻(ヨム・ヘラン)が森へ入ると、そこには人間の少年と化したウンナムがいた。夫妻はウンナムの秘密を隠して自分たちの子どもとして育てる。時が経ち、人間より成長の早いウンナム(パク・ソンウン)は見た目はオッサンながら25歳の青年としてYouTuberの親友チョ・マルボン(イ・イギョン)と穏やかに毎日を過ごしている。耳と鼻の利くエース警察官として仕事していた時期もあったのに、自分の寿命が25歳だと知って意気消沈、職務怠慢で解雇されてしまったことを親には言えないまま。一方、ウンナム同様に人間と化したウンブクはマフィアのボスであるイ・ジョンシク(チェ・ミンス)に拾われ、ジョンシクの悪事の片棒を担がされかけていた。麻薬捜査班はウンナムにウンブクのふりをさせてジョンシクのもとへ送り込もうとするのだが……。
クマがニンニクとヨモギを食べつづけると人間に変身するという建国神話があるのですね。若干スベり気味ではありますが、それなりの人気俳優が出演してこんなアホな作品を撮ったというのは憎めません。最後にチョン・ウソンまでカメオ出演していて笑った。監督のパク・ソングァンはお笑い芸人でもあるそうな。さらにお笑いの質を上げてもらえると嬉しいです。

《け》
『啓示』(原題:Revelations)
2025年の韓国作品。Netflixにて配信。
ソン・ミンチャン(リュ・ジュンヨル)が牧師を務める教会へ、信者の少女シン・アヨン(キム・ボミン)の後から中年男性クォン・ヤンレ(シン・ミンジェ)が入ってくる。女刑事イ・ヨニ(シン・ヒョンビン)の妹は、かつてヤンレに拉致監禁された。なんとか逃げ出してヤンレは逮捕されたものの、ヤンレの不幸な生い立ちに世間が同情。思いのほか刑が軽くなったせいでヨニの妹は自殺したから、ヨニはヤンレを許せない。そんな折、ミンチャンの息子がいなくなり、ミンチャンはヤンレの性犯罪歴を知って疑う。結局それは勘違いで、息子はすぐに見つかるが、ミンチャンに尾行されていることに気づいたヤンレと山中で揉み合いに。滑落したヤンレは血まみれになり、息を引き取ったようだ。後日、身元不明の怪我人が教会のボランティア先の病院にいると聞く。ヤンレに違いない。ミンチャンは彼をひそかに連れ出し、アヨンの居場所を吐かないヤンレを殺すと決めて……。
監督は“新感染”シリーズやアニメ『ソウル・ステーション/パンデミック』(2016)を撮ったヨン・サンホ。教会に真面目に仕えているのに、妻は浮気しているし、性犯罪者を受け入れてしまうし、散々なミンチャン。なぜ自分がこんな目に遭うのかと思っているときに空を見て、神の啓示だと思い込みます。キム・ドヨン演じる犯罪心理学者が、どれも偶然の出来事なのに、ミンチャンはすべて啓示のせい、クォンはすべて怪物のせい、ヨニはすべて自分のせいと、都合よく誰かのせいにしているする共通点があると言っているのが面白い。「見えるものだけ、見ましょう」、確かにその通り。

《こ》
『コンパニオン』(原題:Companion)
2025年のアメリカ作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
アイリスはスーパーで買い物中にジョシュと運命的な出会いを果たす。しばしの交際期間を経てジョシュの友人で富豪のセルゲイが暮らす人里離れた豪邸を訪問。セルゲイの彼女キャットやゲイカップルのイーライとパトリックにアイリスをお披露目される。翌朝、二日酔いだというジョシュを残してアイリスがひとりで湖畔へ散歩に行くと、追いかけてきたセルゲイに襲われそうになり、アイリスはなぜかポケットに入っていたナイフでセルゲイを殺害してしまう。血まみれで邸に戻ると、ジョシュから衝撃の事実を聞かされて……。
アイリスは実はジョシュが購入したロボット。ジョシュにぞっこんになるように設定されています。セルゲイとキャットはセルゲイの金目当てに、本来は人間や動物を攻撃しないように製造されたアイリスを違法改造してセルゲイを殺すように仕向けたのでした。知能や身体能力も購入者の思いのままに設定可能なロボット。すべてジョシュに従うように造られているアイリスがどのように応戦するかが見物(みもの)。やがてパトリックもロボットであることがわかって、話はどんどん面白くなります。ロボットは嘘はつけないというのがいいですね。できればここでネタバレなんか読まずにご覧いただきたい1本。『Mr.ノボカイン』であんなに善い人だったがクズ男のジョシュを演じています。セルゲイ役は『ジュラシック・ワールド/復活の大地』でこれまたクズ男が似合っていたルパート・フレンドで、殺されても気の毒でも何でもない(笑)。

今年観た映画50音順〈あ行〉

ブログを引っ越してからは初めてですが、24回目となりました。恒例におつきあいください。

20日までに劇場で観た作品についてはすべてUP済みなので、ここに挙げるのはそれ以外のDVDあるいは配信で観たものばかり。好きだったとか嫌いだったとかは関係なし。どれも今年レンタルや配信が開始されて視聴可能となった作品です。ネタバレ御免。それぞれの記述の中に登場する作品について、製作年の記入のないものは今年劇場公開時に観た作品です。

《あ》
『アースクエイク2025』(原題:Earthquake Underground)
2024年のアメリカ作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
アメリカの大都市にある35階建て高層ビル巨大地震に見舞われ、ビルのオーナーであるリースと秘書のサーシャ、改装工事のための打ち合わせに来ていたデビーとその助手ジョーがエレベーター内に閉じ込められる。下層階にいた社員マイケルとアルバイトのブライアンたちがリースらに気づいて助けるが、ブライアンの恋人で上層階に向かっていたエイミーが15階に取り残されているはず。激しい余震が続いてビル全体が地中に沈み、とにもかくにも地上に出ようと一行は上に向かうが、階段が分断されて二手に分かれることを余儀なくされて……。
好きなんですよねぇ、ディザスタームービー。きっとB級と思いつつ観はじめたら、B級どころかC級以下(笑)。何も見所なしと言えるけど、死ぬ順番になかなか意表を突かれました。偉そうなことこのうえない社長リースなんて最初に死ねばいいのに、最後までおるがな。サーシャがビビりすぎでやかましいけど、途中で人が変わったように落ち着き、だけどネズミが出てきてまたやかましくなるところは笑った。ブライアンとエイミーはもちろん生き残ります。エイミーは妊娠中でしかも糖尿病患者インスリンが切れると大変なことになるし、途中で栄養バーを補給しながら。最後の最後に社長が飛んで行ったときはいい気味でした。(^o^;

《い》
『生きなおしの季節(とき)に』(原題:Metruk Adam)
2025年のトルコ作品。Netflixにて配信。
何でも修理するのが得意だった14歳の少年バラン。兄アティフが轢き逃げ事件を起こしたとき、未成年のバランなら罪が軽いからと身代わりになることを親から強いられ、罪をかぶって15年服役する。出所時に親はすでに他界、バランを迎えに来たのはアティフ。罪を償いたいと言うアティフを許せずに拒絶するが、一緒にやってきたアティフの娘リディアはバランに懐いて離れない。一旦アティフの家に身を寄せるも、アティフの妻アルズはバランを毛嫌いし、経済的に余裕があると思われていたアティフが実は破産していることも知らされる。それから数日後、アティフが運転する車が交通事故に遭い、アルズは死亡、アティフも意識不明の重体で、リディアだけが軽症。自分がリディアを育てることなど無理だと思うバランだったが、親友エサトの協力を得てリディアと暮らしはじめ……。
トルコには修理街というエリアがあるのですね。エサトは自身が勤める店の経営者ムサにバランを雇ってやるように頼みますが、犯罪者を嫌うムサは最初は断固拒否。しかしムサこそ、かつて自分の過失から家族を死に追いやっていて、やがてバランとリディアを温かく見守る存在となります。エサトも自らが受けた恩を忘れない本当にイイ奴。スーパーマンじゃなくてリペアマンこそがスター。あ、バランからどんな歌手が好きなのかを聞かれたリディアが「BTS」と答えるのもよかったな~(笑)。

《う》
『器の子』(原題:器子)
2025年の台湾作品。Netflixにて配信。
2004年の台北児童養護施設野球コーチを務めるジャン・チーマオは、妻ジンジーとの間に娘ユンロンを授かる。教え子の少年たちもユンロンを我が妹のように可愛がっていたが、ある日、出先でジンジーがわずかに目を離した隙に、ベビーカーの中からユンロンがさらわれる。ジンジーは自殺。チーマオは何かを知っているとおぼしき看護師長リンに詰め寄るが、リンは知らん顔。情報があると接触してきた別の看護師と会う約束をして出向いたところ、その看護師が待ち合わせ場所のビルから転落して死亡。チーマオは殺人容疑で逮捕され、終身刑を宣告される。17年後に仮釈放された彼は、ユンロンの誘拐が臓器の売買を目的としたものであることを知り、これに絡んだリンをまず拉致。リンから聞き出した窓口役のチャン・ズーリエ、買い主のシュー・ユエンジョーを次々と捕まえて監禁、拷問して吐かせる。すると、心臓を取り出されてすでに死んでいると思っていたユンロンが、ユエンジョーの娘ズーチャオとして生きていることがわかり……。
ユエンジョーがズーチャオの心臓目当てで娘として育て、実の娘ジュエルに移植するときを待っていたという驚愕の真実。しかもジュエルもそのことを知っていてズーチャオとは親友のふり。幼い頃から自分は心臓に疾患があると信じ込まされ、大事に育てられてきたのはジュエルに心臓を渡すためだったと知ったときのズーチャオの気持ちを思うとやるせません。骨太で見応えじゅうぶんの1本。

《え》
『炎上ドライブ』(英題:Drive)
2025年の韓国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。日本では劇場未公開、DVDスルー。
野心あふれる女性ハン・ユナ(パク・ジュヒョン)はYouTuberとしてのし上がる。ライバルを蹴落として、今やチャンネル登録者数1位のインフルエンサー。ある夜、飲酒後に代行を呼んで待つ間、自分の愛車キャデラックの中で居眠り。目が覚めるとキャデラックのトランクに閉じ込められていた。横に落ちていた電話を取ると、車は走行中で、犯人らしき運転手(チョン・ソクホ)から身代金を要求される。要求額全額を用意するためにトランク内で生配信を開始するはめになるのだが……。
過去の配信で人を傷つける発言をしていたことに思いが至らなかったユナ。彼女のファンだった男性は、彼女に「死ね」と言われた挙げ句、電話番号を晒されました。そのせいで嫌がらせの電話が鳴り止まず、自殺。犯人はその男性の母親だった女刑事(キム・ヨジン)で、彼女が雇った元犯罪者が運転手というオチ。視聴者数を稼ぐためなら何でもやってきたユナだから、気の毒には思えず。かといってほかの誰にも共感できなくて、DVDスルーになったのもわかります。ヤラセ疑惑まで出て、殺されるかもしれないという恐怖と闘いながらの配信。本当に怖かっただろうけど、終わってみればこれが前代未聞の視聴者数を稼ぐわけで。視聴者数にこだわり続ける人はこんな目に遭ってもYouTuberをやめようとは思えなくなるでしょうね。反省も何もあったものじゃない。拉致監禁された本人が身代金を用意するなんて、みんながスマホを持つようになったからこそ起こることだなぁ。

《お》
『オントラック つまずき人生を変える方法』(英題:The Wrong Track)
2025年のノルウェー作品。Netflixにて配信。
アラサーのエミリーは夫ヨアキムと離婚。愛娘のリリーを夫婦交代で預かる形で過ごしていたが、エミリーが担当の日にトイレの配管トラブル発生。浸水した部屋を出るはめになり、リリーをヨアキムのもとへ返すと、自分は兄イェルムンドとその妻セリアが暮らす家でしばらく世話になることに。何をやっても長続きしないエミリーにイェルムンドはビルケビナーレンネットを勧める。ビルケビナーレンネットとは毎年3月に開催されるクロスカントリーのスキーマラソン。参加者は3.5kgのリュックを背負ってレナからリレハンメルまで54kmの高地コースを走るというレース。そのトレーニングをすることが居候させる条件だと言われ、仕方なく始めたエミリーだったが……。
最初のうちはエミリーのことがどうにも好きになれなくて。リリーを大事に思っているのはわかるけれど、仕事もオトコも日々の暮らしもとにかくいい加減。トレーニングだって、配管工事が完了して自分の家に戻ることになるとすぐにやめます。彼女のことを好きになるのは、リリーに見限られないようにと一念発起してトレーニングを再開してから。最後はちょっと泣けちゃいます。それにしても性に関しておおらかなのはお国柄なのかしら。それに、元妻と夫の再婚相手の関係が良いのにもビックリ。なんだかみんないい人だった。

『ナイトコール』

『ナイトコール』(原題:La Nuit se Traîne)
監督:ミヒウ・ブランシャール
出演:ジョナタン・フェルトル,ナターシャ・クリエフ,ジョナ・ブロケ,トマ・ミュスタン,ロマン・デュリス,サム・ルーウィック,ナビル・マラット,クレール・ボドソン,グレアム・ギット,マルコ・マース他

前述の『ザ・フー:ライヴ・アット・キルバーン 1977』の次に。本作目当てに塚口サンサン劇場まで行きました。ベルギーの新鋭ミヒウ・ブランシャール監督によるフランス/ベルギー作品。長編デビュー作ながら、ベルギーのアカデミー賞に当たるマルグリット賞で作品賞ほか最多の10冠に輝いたそうです。受賞にふさわしい面白さ。

鍵屋として働く青年マディは、鍵のトラブルで困っている人からの連絡を24時間受け付けて車を走らせる毎日。学生だから、本分の学業も怠らないように、時間を見つけては教科書を広げて勉強している

ある晩、ひとつ仕事を片付けた後、クレールと名乗る女性から「鍵を紛失したので開錠してほしい」との電話が入り、指示されたアパートへと向かう。この仕事は開錠前の料金先払いがルール。また、部屋の持ち主以外からの開錠依頼があったときのために身分証の提示も求めるのが基本。マディが支払いと身分証を求めると、クレールはどちらも部屋の中にあると言う。致し方なく開錠して玄関で待っていると、大きなゴミ袋を抱えて出てきたクレールが、財布に金がないからATMで下ろしてくるのを待っていてほしいと。テーブルの上に置いてあるという身分証をマディが探すが、そんなものはどこにも見当たらない。するとクレールから電話があり、すぐに部屋を出るように言われる。しかし時すでに遅し。ドアを開ける音がして、部屋の本当の住人らしき、クレールではない男が帰ってきて、マディは危うく殺されそうになる。咄嗟に鍵屋の道具からドライバーを抜き出したマディがそれを男の首に突き立てると、男は死んでしまう。

殺害の現場から証拠を消そうとしていたところ、今度は別の男たちがやってくる。隠れたものの見つかって、車に押し込まれるマディ。どうやらマディが殺した男の部屋にあった大金がなくなっているらしく、マディが盗んだと思われているようだ。マフィアのボス・ヤニックのところへ連れて行かれたマディは、身分証を取り上げられ、凶器のドライバーも没収される。金を盗んだのがマディでないならば、犯人を見つけて金を取り返すように言われ……。

テンポが良くて画面に釘付け。とても面白い。どういう事情で鍵屋をしているのかわかりませんが、おそらくマディは苦学生。誠実そのものに見えます。だけどかつては強盗の前科もあるようで、警察にコネのあるヤニックは、黒人のデモが繰り広げられている街で逃げたマディを見かけたら連絡するようにと警察官にも指示しています。冷酷極まりないヤニックをロマン・デュリスが演じているのが個人的には可笑しい。ほんと、どうしてあんなイケメンがこんなむさ苦しいオッサンになっちゃったんだろう(笑)。

心に染み入るような切なさはありません。でもマディの最期の安心した顔を見るとちょっとだけ切ない。自分をこんなことに巻き込んだ女のことを可哀想だなんて思わずにとっとと売り渡してもいいのにと私は思いますけどね。(^^;

『ザ・フー:ライヴ・アット・キルバーン 1977』

『ザ・フー:ライヴ・アット・キルバーン1977』(原題:The Who: At Kilburn 1977)
監督:ジェフ・スタイン

上映開始に絶対に間に合わないのがわかっていながらオンライン予約して塚口サンサン劇場へ。この日の本命だった後述の作品まで時間があったのと、ほとんど聴いたおぼえのないザ・フーの曲を聴いてみたいと思ったからです。

ザ・フーを調べてみれば、「ビートルズローリング・ストーンズと共にイギリスの3大ロックバンドと称される」とあります。私はそれらより世代が下ということもあり、世の中が沸きに沸いた頃は知らず、ビートルズも英語の教科書に『イエスタデイ』が載っていたから知った程度。ローリング・ストーンズについてはさらに知らなくて、きっと聴けばわかるけど、いま曲名を言えと言われても1曲も出てこないぐらいです。ザ・フーはさらにさらにもっと知らない。

そのザ・フーが1977年12月15日にロンドン北西部の町キルバーンにある“ゴーモント・ステート劇場”にて開催した一夜限りのコンサートの映像がこれ。伝説のコンサートなのだそうな。K-POP然り、Mrs. GREEN APPLE然り、知らないミュージシャンの曲を聴いてみるなら映画に限ります。

ザ・フーのドキュメンタリー作品『キッズ・アー・オールライト』(1979)の監督を務めたジェフ・スタインが「コンサート映像を撮りたい」と打診してザ・フー快諾(かどうかは知らんけど)。映画撮影のためだけのコンサートがこれだったらしい。彼らのコンサート自体が1976年に60,000人を動員した公演以来で、わずか800人収容の小規模会場でこんなコンサートがおこなわれることが当日の朝ラジオで告知されて騒然となったとか。招待を勝ち取ったファンの人、幸せですね。

やっぱり1曲もわかりませんでしたが、翌年オーバードーズ(薬物の過剰摂取)で亡くなったドラムキース・ムーンギターのピート・タウンゼントとの掛け合いなども見られて楽しかった。このあとキースは1度公演しただけで他界しているのですね。まだ32歳だったなんて、惜しいこと。

これを観て今からザ・フーにハマることはないけれど、観ることができてよかったです。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』【4Kニューマスター】

何度となく観た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)。前回観たのはいつだったか忘れていましたが、約5年半前の“午前十時の映画祭10+”で鑑賞したようです。このたび4Kニューマスター版が109シネマズ大阪エキスポシティのIMAXシアターにやってきました。こりゃ行くしかないでしょう。なんといってもこの劇場で観るIMAXレーザーGT版は最強ですから。客もよく知っているのか、本作も大入り。嬉しいですねぇ。

40年前の作品という古さはあります。髪型とかファッションとかは特に。でもいつの時代に観ても面白いものは面白い。オカン(リー・トンプソン)が今の自分と同じくらいの歳の時代にタイムスリップしてしまったマーティ(マイケル・J・フォックス)。オカンは目の前にいるイケメンが自分の息子だなんてわからないから、息子だというのに一目惚れ。オカンの若かりし頃にはまだなかったカルバン・クラインのボクサーパンツを穿くマーティを見て、てっきり「カルバン・クライン君」だと思う。すっかりカルバン君になってしまうマーティ。だけど、オカンがマーティの唇を奪ったときに違和感をおぼえます。おいっ、オカンにキスされてまうんかいっ!それはやめてくれっ!とこれも毎回思う。救いは、恋した相手にキスしたはずのオカンが妙な顔をして「なんだろう、弟とキスしているみたい」と言うこと(笑)。

マーティの時代に刑務所に収監されているというジョーイ叔父さんはタイムスリップした先ではまだ赤ん坊。ベビーゲージの中でおとなしくしているジョーイのことを「檻の中にいると落ち着くみたい」と言うのも可笑しすぎる。

ヒューイ・ルイスのカメオ出演やマーティのギター演奏シーン、オトン(クリスピン・グローヴァー)を起こすためにヴァン・ヘイレンをかけるところなども大好きです。凄く楽しかった。誰でも楽しめる不朽の名作だと思います。おそらく続編も近日中に同じ劇場で上映されるはず。行かなきゃ。

この数日後に『水曜日のダウンタウン』で「名探偵津田 第4話 電気じかけの罠と100年の祈り」前編が放映されました。あまりにタイムリーで嬉しくなった。デロリアン♪(^o^)