『ベートーヴェン捏造』
監督:関和亮
出演:山田裕貴,古田新太,染谷将太,神尾楓珠,前田旺志郎,小澤征悦,生瀬勝久,小手伸也,野間口徹,遠藤憲一他
109シネマズ箕面にて前述の『ブラック・ショーマン』を観終わったのが20:30。本作の上映は21:30からで、えーっ、1時間も空くのに、私、予約したんかいなと、昼間なにも考えずに自分の取った行動に呆れつつ、取っちまったものは仕方がない。車を一旦出庫してローソンで買い物をして再び箕面キューズモールに入庫。ロビーで本を読みながら開場を待つ。
かげはら史帆の『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』を関和亮監督が映画化。原作のノンフィクションはもとは修士論文なのだそうです。ベートーヴェンを崇拝する秘書がご主人様の人物像を偉大な作曲家にふさわしい姿に捏造していたという事実があるなんて知らなんだ。
映画データベースなどのあらすじを読んでも、予告編を観ても示されていないことですが、本作の最初の舞台は中学校なんです。 教師の面々として登場するのは、後の昔話に登場する作曲家その他の人々と同じ面々。音楽室に筆箱を忘れた男子生徒・野村(柊木陽太)が取りに行ってみると、そこにはピアノを弾く音楽教師・黒田(山田裕貴)が。忘れ物だけ取って帰ろうとする生徒にほとんど無理やりピアノを聴かせてベートーヴェンについて語り始める教師。そして繰り広げられる昔々の話。
ドイツに生まれた天才作曲家ベートーヴェン(古田新太)。耳が聴こえないという困難をも乗り越えて世界にその名を轟かせた彼は、人間的にも素晴らしいように言われているが、実はとんでもなく下品で自己チューな人物。彼の忠実な秘書シンドラー(山田裕貴)は、偉大な歴史的作曲家という主人のイメージを守るべく、その人物像を捏造することに躍起になるのだが……。
バカリズムの脚本はいつもとても面白いから期待して観に行きました。途中までは面白かったのですが、うーむ、かなり退屈。寝るってば(笑)。視点が面白いことは間違いないのに、シンドラーの必死さばかりが目に映る。ご主人様について悪いことが書かれそうになるとそれを阻止しようと懸命で、それが世に出てしまうと後からその部分を削除して自分で改訂版を出版する。シンドラーの所業に気づいたジャーナリスト・セイヤー(染谷将太)のことを殺しかねない勢いです。偏愛って怖い。
偉大な音楽を作る人はそのままに偉大であってほしい気もするけれど、普通の人にあんな音楽は作れない。普通の人間の想像の及ばない人物だからこそ、あんな音楽が作れるのでは。バカリズムの脚本にしては退屈ではあるものの、ベートーヴェンの作曲に関する逸話もいろいろ聞けた点は面白かったです。
『ブラック・ショーマン』
『ブラック・ショーマン』
監督:田中亮
出演:福山雅治,有村架純,成田凌,生田絵梨花,木村昴,森永悠希,秋山寛貴,犬飼貴丈,岡崎紗絵,森崎ウィン,丸山智己,濱田マリ,伊藤淳史,生瀬勝久,仲村トオル他
公開初日の晩、109シネマズ箕面にて鑑賞。
原作は東野圭吾の『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』で既読。そのときの感想はこちら。事件の内容も犯人もほぼ全部忘れていました。覚えているのは、東野圭吾作品の中では好きではなかったということだけ。起きている事件はわりと重いのに、謎を解明するオッサンがやたら軽くて、しかもスベる人。そのせいでイケメンはイメージできなかったから、福山雅治が演じると聞いたときは意外でした。そうだなぁ、原作からは私は生瀬勝久のほうをイメージするかも。
2カ月後に結婚を控える神尾真世(有村架純)が婚約者の中條健太(伊藤淳史)と共に式場で打ち合わせに臨んでいたさい、父親の英一(仲村トオル)の訃報を受ける。急いで帰郷するが、英一が何者かに殺されたらしいと知って呆然。定年を迎えるまで中学校教諭だった英一は教え子たちから慕われ、周囲からの人望は厚かった。誰の恨みも買うはずなどないのに、いったいなぜ殺されたのか。
殺害現場となった実家で、真世が刑事の木暮大介(生瀬勝久)と柿谷誠一(丸山智己)に英一の話をしていると、突如として現れたのは英一の弟である武史(福山雅治)。形の上では英一と武史は同居の家族だったことになっているが、武史がここへ帰ってきたのは何年かぶり。武史はかつてラスベガスで名を馳せたマジシャンで、今は恵比寿のバーのオーナー。虫の知らせで久方ぶりに戻ったと言う武史を木暮は怪しむ。
そんな刑事の疑いを逆に利用して、武史は英一を殺した犯人を調べることに。いくらマジシャンとはいえ、嘘も盗みも厭わない武史のやり方を非難しつつも一緒に真相を突き止めたいと思う真世。すると、英一の教え子だった真世の同級生たちがいずれも最近英一と連絡を取っていたことがわかり……。
原作に面白い印象がなかったこともあって期待度は低めでした。そのおかげでこの映画版は冒頭から華やかなマジックショーを見た気にさせてもらえるのが楽しい。こんな気障な役は福山雅治以外にできそうにもありません(笑)。
コロナの煽りを受けた町でそれぞれに困った事情を抱える元生徒たち。彼らの頼みの綱は、中学時代は最も冴えなかった釘宮克樹(成田凌)。オタクだった彼は漫画家として成功し、漫画『幻脳ラビリンス』が大ヒット連載中。みんな彼のことをバカにしていたくせに、こうしてスターとなるや群がる。広告代理店勤務の九重梨々香(岡崎紗絵)はまるでマネージャーのごとく彼に張りつき、幻ラビで町おこしを狙う建設会社の跡取り息子である柏木広大(木村昴)に銀行勤務の牧原悟(秋山寛貴)は逆らえない。英一の遺体の第一発見者は酒店を営む原口浩平(森永悠希)で、酒瓶のエチケットに幻ラビの登場人物を使用できたらと密かに思っています。また、幻ラビで町に観光客が押し寄せることを祈るのは旅館の女将の池永桃子(生田絵梨花)で、その夫の良輔(森崎ウィン)は同級生ではないけれど英一の教え子。
善人だから恨まれないということはなくて、善人であるがゆえに図らずも誰かの秘密に触れてしまうことがある。しかも善人は無邪気にそれを解決しようとして、「触れる」どころか「障ってしまう」のですね。人って、むずかしい。
『アオショー!』
『アオショー!』
監督:山口喬司
出演:RAN,山川ひろみ,小山慶一郎,飯島寛騎,小泉光咲,三浦獠太,福崎那由他,大川泰雅,堤下敦,田畑智子,徳重聡,渡辺いっけい,川上麻衣子,佐野史郎他
TOHOシネマズ伊丹にて、前述の『ヒックとドラゴン』の次に。そんなに客は入らない作品であろうことは予想していましたが、私以外に客はいなかった(涙)。なんと今年10回目の“おひとりさま”。
原作は、合唱が題材の舞台“SING!”シリーズの“絶対青春合唱コメディ『SING!!!』空の青と海の青と僕らの学校”。と言われても何なのかちぃともわからなくて調べました。演出家の山口喬司(本作の監督)が執筆した音楽劇で、もとはタレント養成所の卒業公演のために書かれた演目だったそうです。2009年頃に舞台で初演。2012年の再演時から“絶対青春合唱コメディ”を名乗り、好評を博して公演が重ねられているらしい。2020年に新作として発表されたのが本作で、コロナの煽りを受けて上演中止になったりしたものの上演・再演となり、このたび映画化されたとのこと。
亡くなった父親が残した金で住みよい土地に移ることにした悉平(RAN)と母親(田畑智子)。高校2年時に東京から離島へと引っ越す。ふたりを出迎えてくれたのは悉平が転入する折後島高等学校の校長(佐野史郎)。新居に向かう途中、自転車を漕ぐ沫乃(山川ひろみ)を見かけて一目惚れするが、挨拶しようとする悉平に対して、沫乃は来春閉校する高校に転入してくるなんて何を考えいるんだかと呆れ顔。
閉校の話が初耳だった悉平親子は驚いたものの、とにかくここはいいところであることは間違いない。転入初日に道に迷いかけていた悉平は同学年だという雷音丸(小泉光咲)から声をかけられ、さっそく仲良くなる。登校すると、全校生徒はわずか6人で、ゲームオタクの新(飯島寛騎)、軽度の知的障害のある育(福崎那由他)、野球好きの大介(大川泰雅)らに歓迎される。今日は休んでいるのか、空いている1席には沫乃が座るのだと思い込む悉平。ところがそこは2年留年している不良気取りの銀太(三浦獠太)の席だった。
実は沫乃は折後島高の生徒ではなく、船で都会の高校に通っていた。しかも全国屈指の実力を持つ合唱部に所属し、ピアノ伴奏を担当しているらしい。悉平が折後島高の生徒たちともっと親しくなるにはどうしたらよいかを沫乃に尋ねると、「みんなで歌えばいいんじゃない?」と言われて……。
単に沫乃と話すきっかけを作りたくて尋ねたことでしたが、閉校後に悉平たちが通学予定の高校を見学する際に交流会が開かれる話が浮上します。向こうの高校の生徒たちと一緒に何かすれば折後島高最後の思い出にもなると、悉平は合唱を提案。学校をさぼってばかりの銀太も、交流会で歌えば卒業させてやると校長から言われてホイホイ出てきます。
とにかく生徒たちがみんなあるまじき素直さ(笑)。いまどきこれほどまでにすれてない男子おる!?と思って笑っちゃいました。銀太だって煙草スパスパ吸っているけれど、出てこい言われてすぐ出てきて、一緒に楽しく歌うのですから。あ、銀太役の三浦獠太って、三浦知良と設楽りさ子の息子なんですね。ほかに教頭役として川上麻衣子、その夫を渡辺いっけいが演じていて、このふたりが沫乃の親。教師には堤下敦、雷音丸の父親には徳重聡が扮しています。
ちょっとスベリ気味かなぁと思うところもまぁまぁありましたが、もとが演劇ですもんね。そりゃこんな感じでないと舞台映えしないでしょう。後味も良いし、青春しています。私ひとりで観るなんて、なんとももったいない。
『ヒックとドラゴン』〈字幕版〉
『ヒックとドラゴン』(原題:How to Train Your Dragon)
監督:ディーン・デュボア
声の出演:メイソン・テムズ,ニコ・パーカー,ジェラルド・バトラー,ニック・フロスト,ジュリアン・デニソン,ガブリエル・ハウエル,ブロンウィン・ジェームズ,ハリー・トレヴァルドウィン,ルース・コッド,ピーター・セラフィノウィッツ,マーレイ・マッカーサー他
TOHOシネマズ伊丹にて。『シャッフル・フライデー』は吹替版の上映劇場が多くて字幕版を観ることができず、本作も内容的にそうなるのかなと思っていましたが、仕事帰りにちょうど観られる時間に字幕版の上映がありました。ラッキー♪
『ヒックとドラゴン』はもとはイギリス人作家クレシッダ・コーウェルの同名児童文学。スティーヴン・スピルバーグが創業したアニメーションスタジオ“ドリームワークス・アニメーション”によって2010年にアニメ化され、大ヒットを飛ばしました。続編に当たる『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』(2019)のディーン・デュボア監督がこの実写リメイク版のメガホンを取ることに。彼は“リロとスティッチ”シリーズの脚本の執筆者でもあります。
バイキングが暮らすバーク島。食糧を狙って飛来するドラゴンたちとの間で何世代にも渡って激しい戦いが繰り広げられてきた。少年ヒックはバイキングの首領ストイックの息子。早く自分もドラゴンを倒したくて仕方ないのに、腕力に秀でているわけでもなく、妙な発明でドラゴンに挑もうとしては騒ぎを起こすヒックはみんなの嘲笑の的。ストイックもそんな息子に呆れてまったく期待していない。
ある日のドラゴン襲来時、またもや自ら発明した器械で石を放ったヒック。どうやらそれがドラゴンに命中したようなのに、誰も信じてくれない。ドラゴンが落下したとおぼしき場所を探しに行くと、そこには傷を負った伝説のドラゴン・ナイトフューリーが倒れていた。こいつを殺せば自分は英雄視されるだろうと思いつつ、ナイトフューリーの顔を見るとどうしてもとどめを刺すことができない。殺すどころか絡まった投石器の縄を切ってナイトフューリーを逃がす。
その後どうなったのかが気がかりでふたたび出かけたヒックは、あのナイトフューリーと再会。負傷して体の一部を損壊したせいで上手く飛べずにいるナイトフューリーのために得意の発明を思いつく。飛べるようになったナイトフューリーにトゥースと名づけ、毎日一緒に時間を過ごしはじめるのだが……。
ドラゴンを殺すことしか考えていなかったのに、トゥースとの絆が深まるなかで、人間とドラゴンが共生できないものかとヒックは考えます。人間は皆、力でドラゴンをねじ伏せようとするけれど、トゥースと過ごすうちにドラゴンの習性を学び、武器なんか用いなくてもドラゴンと戦えるどころか仲良くなれることを察知するんですね。今の時代、ドラゴンのペット化が問題視されそうな気がしなくもないですが(笑)、原題は“How to Train Your Dragon”ですから。ドラゴンを手なずけられたらそりゃ楽しいでしょう。
ストイックが登場したとき、バイキングの扮装をしていると誰だかわからなくて、声を聞いてジェラルド・バトラーだと気づきました。ヒックの教育係ゲップを演じるニック・フロストもいいですね。主演のメイソン・テムズは知らない子だと思っていましたけど、『ブラック・フォン』(2021)の子じゃあないか。数年でずいぶん大きくなったもんだ。
ドラゴン討伐隊の子どもたちは、ヒックが恋するアスティ(ニコ・パーカー)以外は結構ウザい。これは吹替版で観たらもっとイライラしたはず(笑)。字幕版でよかった。すごく楽しい作品です。
『シャッフル・フライデー』〈吹替版〉
『シャッフル・フライデー』(原題:Freakier Friday)
監督:ニーシャ・ガナトラ
出演:ジェイミー・リー・カーティス,リンジー・ローハン,ジュリア・バターズ,ソフィア・ハモンズ,マニー・ハシント,マーク・ハーモン,チャド・マイケル・マーレイ,マイトレイ・ラマクリシュナン,X・マヨ他
声の出演:唐沢潤,小笠原亜里沙,本渡楓,伊藤彩沙,竹内栄治,原康義,浪川大輔,島田愛野他
MOVIXあまがさきにて前述の『侵蝕』とハシゴ。字幕版の上映劇場が少なく、上映回数も1日1回とかだったので、吹替版で妥協するしかありませんでした。
『フォーチュン・クッキー』(2003)の続編。20年以上経って何をいまさら続編なんて作っとるねんと思わなくもないですが、致し方がないですよね。当時17歳だったリンジー・ローハンはまだ3歳のときに子役としてデビュー。『E.T.』(1982)のドリュー・バリモア然り、『ホーム・アローン』(1990)のマコーレー・カルキン然り、売れに売れた子役が通る道なのか、ドラッグとアルコールに溺れる。その他いろいろとやらかしているから、続編なんて怖くて作れない。こうして無事作れたことを喜びましょう。
22年前、母娘で体が入れ替わるという世にも奇妙な体験をした母娘、テスとアンナ。ロックミュージシャンになりたかったアンナは、今は音楽プロデューサーとして活躍。シングルマザーとなる道を選び、テスの協力を得て高校生の娘ハーパーを育てている。そのハーパーはロンドンから来た転入生リリーとウマが合わず、ついに大喧嘩をしたせいで、双方の親であるアンナとシングルファーザーのリックが学校から呼び出される。恋に落ちたアンナとリックはすぐに交際を始め、婚約に至る。犬猿の仲のハーパーとリリーは、自分たちが義理の姉妹になることなど到底受け入れられず、またしても罵り合いに。また、結婚したらロンドンに移り住むという話をアンナから聞いていなかったテスは、雑に扱われると感じて憤慨する。
ある朝起きたら4人の体がシャッフルされ、アンナとハーパー、テスとリリーがそれぞれ入れ替わってしまう。この異常事態を経験済みのアンナとテスの提案で、全員が元の体に戻るまで、誰にもバレないように互いのフリをして危機を乗り切ることに。ところがハーパーとリリーは、この機会を利用して、アンナとリックの結婚を阻止しようと密かに画策して…。
前作ではテス(ジェイミー・リー・カーティス)とアンナ(リンジー・ローハン)の体が入れ替わりましたが、本作ではアンナとその娘のハーパー(ジュリア・バターズ)が入れ替わり、テスとその娘でも何でもない他人のリリー(ソフィア・ハモンズ)が入れ替わります。これがなかなかややこしい(笑)。2人が入れ替わるという話はどこの国の作品でももはや珍しくないわけで、じゃあ4人にしてしまおうとなったんじゃないかと思いますが、あれ?誰と誰が入れ替わっているんだっけと混乱し通しだった私は、やっぱり4人入れ替わるのは多すぎやな、2人のほうがわかりやすくてよかったなどと思いながら観ていました。あと、これはやっぱり字幕版を観たかった。吹替版で観ると、声にあまり差がないように聞こえて、余計にややこしくなるという。これは作品自体よりも、アタマの回転が衰えている私のせいですね(涙)。
リンジー・ローハンがイケイケの格好をするとやっぱり年齢を感じてしまいます。彼女より2歳上のスカーレット・ヨハンソンの体型とついつい比べてしまう。お尻の形とか全然ちがいますもんね(笑)。前作のほうが断然好きだったこともあり、ついつい話とは関係のないところに目が行ってしまってすみません。
ハーパー役のジュリア・バターズに目を惹かれました。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)に出演していた子役だとは知らなんだ。16歳になった今も可愛い、演技も歌も上手い。注目。