『SPIRIT WORLD スピリットワールド』(原題:Spirit World)
監督:エリック・クー
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ,竹野内豊,堺正章,風吹ジュン,でんでん,鈴木慶一,五島舞耶,吉田晴登,細野晴臣,久保田麻琴,斎藤工他
NGKで“コントグランド花月”を観た後、TOHOシネマズなんば別館へ駆け込み。NGKが19:00から2時間のはずだったから、ちょうど予告編が終わる頃に入場できるだろうと思っていたけれど、少し時間が押したせいで本編の上映に間に合わず。10分ぐらい遅れて入場。
シンガポール出身のエリック・クー監督が撮り上げた日本/シンガポール/フランス作品。竹野内豊とカトリーヌ・ドヌーヴと堺正章って、どんなキャストやねん。凄い面々やなぁと思うものの、ドヌーヴ×日本では『真実』(2019)がまったく面白くなかった過去があるので、素直に良さそうだとは思えません。
著名な映像作家ハヤト(竹野内豊)は父親ユウゾウ(堺正章)の訃報を受けて群馬県高崎市の実家へ。遺品の中にユウゾウが大ファンだったフランス人シャンソン歌手クレア(カトリーヌ・ドヌーヴ)のコンサートチケットを見つけ、会場へと向かう。講演終了後、クレアにサインをもらってその場を後にすると、ユウゾウの遺言に従って母親メイコ(風吹ジュン)のもとへサーフボードを届けることに。一方、高崎に宿泊したクレアはひとり飲みに出かけた店でなんと急死してしまう。クレアは死後の世界でユウゾウと出会い、旅するハヤトを一緒に見守ることになって……。
うーむ、乗れない。文句の付け所が間違っているかもしれないけれど、そもそも世界的に人気のある歌手がこんなもんですかと思わずにいられません。歳を取ってからシャンソンを歌いはじめた大竹しのぶとかぶってしまうのです。大竹しのぶのことは好きでも嫌いでもありませんでしたが、彼女が歌うシャンソンは全然上手いと思えなくて、歌いはじめてからの彼女のことが苦手になりました。彼女と比較すると、カトリーヌ・ドヌーヴの声は太くて圧が凄いのは確か。でもやっぱり上手いとは思わないし、胸も打たれない。そこが気になって没入できず。
つまりはスランプに陥って酒浸りだったハヤトの旅の話なので、別に幽霊となったクレアとユウゾウは要らなかったのではとすら思うのでした。幽霊の話なら、やっぱり『僕と幽霊が家族になった件』(2022)がいちばん。それと比べるのが間違っている!?
『プレデター:バッドランド』
『プレデター:バッドランド』(原題:Predator: Badlands)
監督:ディミトリアス・シュスター=コローマタンギ
出演:エル・ファニング,ディミトリアス・シュスター=コローマタンギ,ルーベン・デ・ヨング,マイク・ホーミック,ロヒナル・ナヤラン,キャメロン・ブラウン他
声の出演:アリソン・ライト,マット・ダファー,ロス・ダファー
前述の『トリツカレ男』の次に、109シネマズ大阪エキスポシティにてIMAXレーザーGT版を鑑賞しました。気持ち悪いに決まっているからこんな大画面で観たいわけじゃなかったけれど、時間的に都合がよかったため。やっぱりグロかった(笑)。
監督は『10 クローバーフィールド・レーン』(2016)のダン・トラクテンバーグ。“プレデター”シリーズの第5弾『プレデター:ザ・プレイ』(2022)の監督もこの人だったようですが、なぜか私は観ていないのですよね。またプレデターかい、もうええわと思ってスルーしたのかもしれません。このシリーズではいつもプレデターは敵でした。本作ではシリーズ史上はじめてプレデターを主人公にしています。面白そうやん。
ヤウージャ族のプレデター・デクの父親ニョールは一族のリーダー。デクはニョールから一族でいちばんの弱者として貶められ、生きている価値はないとまで言われる。デクの兄クウェイが弟をかばうも、ついにニョールはデクを殺すようクウェイに命じる。クウェイはその命令に従うと見せかけてデクを輸送船へと放り込み、デクの代わりにニョールに殺されてしまう。目の前で兄の死を見たデクは、失意のうちに輸送船を出発させ、惑星ゲンナへと向かう。
ゲンナには最強の怪物カリスクがいる。カリスクに勝てばデクも強者として認められるだろうが、これまでにカリスクを狩ろうと出かけて生還した者はいない。なんとしてでもカリスクを殺し、ニョールのもとへ戻ってクウェイの復讐を果たしたいデクだったが、ゲンナにはほかにもさまざまな生物がいて、そこらじゅうから攻撃の手が飛んでくる。どうしたものかと思っていたデクに声をかけてきたのは、ウェイランドユタニ社製のアンドロイド・ティア。
ティアはカリスクとやりあった結果、下半身を奪われ上半身のみ。カリスクのところへ連れて行ってあげると言われ、デクはカリスクを背負って歩きはじめるのだが……。
戦いに勝つ者だけがリーダーにふさわしいと考えていたデクが、ティアと旅をするうちにそうではないのかもと感じる。ティアはアンドロイドではありますが、家族という概念があり、それを大事にしたいと思っています。途中で出会ったまだ子どもの謎の生物バドもついてきて、桃太郎状態。でも桃太郎以上に3人は「家族」になってゆきます。このバドこそが鍵で、この子が何者かわかるときには「おおっ」とニヤリとしてしまいました。
プレデターってホントに醜いですよねぇ(笑)。こんな顔、大画面で見せられると気持ち悪さしかないはずなのに、慣れって凄いもので、だんだん直視できるようになってきます。同監督のアニメ版『プレデター:最凶頂上決戦』(2025)がディズニープラスで配信中らしく、それも観てみたい。
どついたら直る輸送船の電気系統には笑いました。そんな昭和な直し方(笑)。
『トリツカレ男』
『トリツカレ男』
監督:高橋渉
声の出演:佐野晶哉,上白石萌歌,柿澤勇人,山本高広,川田紳司,水樹奈々,森川智之他
休日出勤だった日、好天の万博公園はロハスフェスタ開催中で激混みだった様子。それがはける頃まで職場にいて、109シネマズ大阪エキスポシティへ。
内容をまったく忘れるぐらい前に読んだいしいしんじの同名小説が原作。しかし、これを読んだのをきっかけに、私はいしいしんじの著作を大人買いしたようです。それをアニメ映画化したのは、劇場版の“クレヨンしんちゃん”シリーズを多く手がける高橋渉監督。主人公の青年の声を“Aぇ! group”の佐野晶哉、ヒロインの声を上白石萌歌が担当。
スイッチが入って何かに夢中になると、四六時中そのことばかり考えてしまう青年ジュゼッペ。その様子はまるで取り憑かれているかのようで、周囲からは“トリツカレ男”と呼ばれる有名人。ひとたび取り憑かれるとそれを極めるまでやめられず、三段跳びの記録を更新したほか、探偵としての能力も発揮。いくつもの語学を習得したかと思えばネズミとも会話ができるようになる。そんなジュゼッペが今度は歌に夢中になり、勤め先のレストランでもかまわず歌うものだから仕事にならず。またトリツカレが始まったと苦笑いする雇い主は、歌への熱が冷めるまで仕事を休むようにジュゼッペに命じる。
仕事を休んでネズミのシエロと過ごしていたジュゼッペは、公園で風船を売る少女ペチカに一目惚れ。レストランに戻った後も彼女のことが頭から離れず、またしても仕事にならない。見かねたシエロがこっそりペチカの情報を集め、ジュゼッペが彼女に話しかけるきっかけを作ろうとする。図らずもその機会が訪れ、ペチカと友だちになったジュゼッペは……。
素敵な素敵なミュージカル風アニメに仕上がっています。上白石萌歌の歌に定評があるのは周知のことですが、佐野晶哉もこんなに歌が上手いとは知らなんだ。歌を盛り込んではいるものの、歌ばっかりじゃないのがいいところ。
せっかくペチカと親しくなれたけど、ペチカの笑顔にどこか寂しさがあることに気づいたジュゼッペは、どうにかして彼女の心の闇を取り去りたいと考えます。彼女に借金があると知ってギャングの親分に直談判しに行ったり、彼女の母親が謎の病で入院中だと知れば医師のふりをしてその病院に駆けつけたり。しかも問題を解決するときに役立つのがかつて彼が取り憑かれていたものだというのがとても面白い。
今までいろんなものに取り憑かれてきたジュゼッペに取り憑いていたものがあったとは。そしてそれこそがジュゼッペとペチカをつなぐもの。胸がキューッと絞られる純愛です。
ツイスト親分、サイコー。そしてここでも森川智之が活躍。トム・クルーズの声もキアヌ・リーヴスの声も野原ひろしの声も何でも彼にまかせちゃえ(笑)。
『旅と日々』
『旅と日々』
監督:三宅唱
出演:シム・ウンギョン,河合優実,高田万作,斉藤陽一郎,松浦慎一郎,足立智充,梅舟惟永,佐野史郎,堤真一他
109シネマズ箕面にて、前述の『恋に至る病』の後に。
きっとそんなに客はいないだろうと思っていたのに、入場したらまぁまぁ席が埋まっていて驚きました。しかも全員中年以上、若い子はまったくいない(笑)。そりゃ原作がつげ義春の短編漫画ならそうなるでしょうか。『海辺の叙景』と『ほんやら洞のべんさん』をひとつのストーリーとして実写映画化したのは、『きみの鳥はうたえる』(2018)、『ケイコ 目を澄ませて』(2022)、『夜明けのすべて』(2023)の三宅唱監督。『新聞記者』(2019)で名を揚げたシム・ウンギョン起用というのが面白い。
李(シム・ウンギョン)が脚本を執筆した映画が『海辺の叙景』で、その映画の中に登場する女優が渚(河合優実)。スクリーンの中の渚は海辺で夏男(高田万作)と出会います。この映画がある大学の授業で教材として使用され、監督や教師、学生たちと一緒に李も観ることに。鑑賞後、褒められているにもかかわらず、質疑応答の際につい李は「自分には才能がないと思った」と答えてしまいます。
スランプを感じた李は、東北へひとり旅に出ます。しかし、あてもないまま宿の予約もせずに出向いたものだから、どこも満室で泊まれません。山を越えたところに1軒だけある宿屋ならば空いているかもしれないと教えられ、積雪の中を歩き続けてたどり着いたのは、客なんてほかに誰もいない古びた宿“べんぞうや”。まったくやる気のなさそうな主人のべん造(堤真一)はそれでも李を泊まらせてくれます。
好きな話だとは思ったのですが、あまりにゆるゆると話が進むため、途中で寝落ちしそうになりました。この雪の中に埋もれていつまでも眠っていたい、そんな感じ。基本的にこの監督の作品は好きです。不思議なものですよね。前述の『恋に至る病』の廣木隆一監督の作品はあまり好きではないのに眠くはならない。こちらの三宅監督の作品は好きなのに睡魔に襲われてしまうという。うーむ、どうすれば。(–;
『恋に至る病』
『恋に至る病』
監督:廣木隆一
出演:長尾謙杜,山田杏奈,醍醐虎汰朗,中井友望,中川翼,上原あまね,小林桃子,井本彩花,真弓孟之,忍成修吾,河井青葉,前田敦子他
優先度が低くて後回しにしていた作品ですが、上映回数が日に1回になった頃、時間が合うなら一応観ておこうかと109シネマズ箕面へ。
原作者が誰なのかを知らずに観に行きました。こうして書く段になって斜線堂有紀だということを知る。おおっ、この人は先月読んだ『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』の著者ではないですか。結構面白かったのですよね。鑑賞前に気づいていたら、見方もちょっと変わっていたかもしれません。後の祭り。(^^;
高校生の宮嶺望(みやみねのぞむ)(長尾謙杜)が両親(忍成修吾&河井青葉)と共に引っ越したのは、寄河景(よすがけい)(山田杏奈)の向かいの家。転入先のクラスにはその景がいて、望と同級生になる。景は学校中の人気者で、誰もが景の言うことならば聞くし、景に気に入られようと努めている。いつも笑顔で、困っている人に手を差し伸べることを厭わない景。望もすぐに彼女に恋をする。
一方の景も望に興味を示し、何かと声をかけてくる。景のことが好きなクラスのムードメーカー・根津原あきら(醍醐虎汰朗)は嫉妬し、取り巻きと共に望を酷くいじめるように。それに気づいてあきらに注意した景も跳び箱の中に閉じ込められてしまう。景を救出した望に、景はあきらのことは自分に任せるようにと言う。
それから数日後、あきらが死ぬ。飛び降り自殺だと断定されるが、担当刑事の入見遠子(前田敦子)は腑に落ちない。その後も望や景の同級生たちが不審死を遂げる事件が続き、プレイすれば必ず死に至ると言われているゲーム“ブルーモルフォ”について調べてみると……。
望は景のことが好きだけれど、ブルーモルフォのゲームマスターが実は景なのではないかと思いはじめます。しかも景はあきらを殺したのは自分だと軽々と言ってのけるし、次々に生徒たちが死ぬのもすべて景が関わっているように見える。好きだけど彼女のことが怖い。でも好きだから、何があっても彼女のことを守りたい。相当いびつな青春恋愛ものに思えます。
些細といえば些細だけれど、引っかかることはたくさん。主人公の望は冴えない内気な男子という設定なのに、同級生女子のことみんな呼び捨て。転校早々、内気な男子がみんな呼び捨てにしますか。どういう男子やねんとツッコミ入れそうになります。景役の山田杏奈もカリスマ性のある美少女という感じではないから、ここまで学校中の注目を集める女子役ということには違和感をおぼえます。彼女にはアシリパ役がいちばん合っているような気がする。
つまり私には廣木隆一監督作品がイマイチなんだろうと思いますが、「利用されていただけかと思っていたけれど、そうじゃなかったんだよ」という最後のシーンはちょっと良かった。





