『Rip/リップ』(原題:Rip)
監督:ジョー・カーナハン
出演:マット・デイモン,ベン・アフレック,スティーヴン・ユァン,テヤナ・テイラー,カタリーナ・サンディノ・モレノ,サッシャ・カジェ,カイル・チャンドラー,ホセ・パブロ・カンティージョ,スコット・アドキンス,ネスター・カーボネル,リナ・エスコ他
先月半ばよりNetflixにて独占配信中。毎年12月にUPする「今年観た映画50音順」用に観たのに、あまりに面白くて年末まで寝かせておくのがもったいなくなりました。「り」で始まる作品を新たに探さなくてはなりません(笑)。
フロリダ州マイアミ・デイド郡の保安官クリス・カシアーノの体験談に着想を得た作品で、監督を務めるのは『炎のデス・ポリス』(2021)のジョー・カーナハン。彼は『バッドボーイズ フォー・ライフ』(2020)の脚本家でもあります。マット・デイモンとベン・アフレックが揃って出演する作品は侮れません。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)の頃を懐かしみながら、すっかりオッサンとなったふたりを見るのは楽しい。ちなみにタイトルの“リップ”は「押収金」のことです。
ある晩、デイド郡警察署の女性刑事ジャッキーが何者かに殺害される。内部に犯人がいるのではないかとの疑いがかかり、警察署もFBIも刑事たちに事情を聴取する。警部補のデインは、死ぬ間際のジャッキーが情報を書き込んだのちに海の中に放り投げたスマホを密かに入手し、金が隠されているとおぼしきハイアリアの住宅街へと出向く。同行したのはデインのチームの部下マイク、ヌマ、ロロと、デインとは公私ともに親しいJD。ジャッキーが記した住所には若い女性デシが居住し、介護していた祖母が亡くなってからひとりで暮らしているのだと言う。デインたちが屋根裏部屋の壁をぶち抜いてみると、そこには麻薬カルテルの所持金らしい2000万ドルの現金が。
この金をどうするか。通常の流れとしては、現金が発見されたことを本部の上司に即報告し、現場にいる複数の人間で金額をきちんと確認して持ち帰るという決まりになっている。しかしかつてない額の金を目の前にして、よからぬことが頭を過る者が現れても不思議はない。デインはまず全員からスマホを回収すると、上司に連絡を入れようとしない。一同は戸惑いの表情を浮かべつつも、金を数えるように指示されたヌマとロロが着手。表の見張りを命じられたマイクはその通りにするが、デインとJDが言い争いを始めて……。
どうやらハイアリアという場所では麻薬カルテルと警官が癒着していて、汚職が当たり前のようです。知らんけど。(^^;
デインとJDは昔なじみだけど、JDはデインに出世の面で先を越されています。ジャッキーと恋仲だったJDはなんとしてでも犯人を挙げたい。なのにデインの態度はまるで金の隠匿を狙っているかのよう。デインは小児癌を患っていた10歳の息子を亡くし、その治療費などでいまや文無し。金がほしいことは確かです。2000万ドル全部じゃなくてもいいからそのうちの少しだけでも自分たちのものにできたら生活が一変するのにと思っているのはヌマとロロも同じこと。このふたりの女性刑事は金を数えながらそんな話もします。
途中、中だるみした部分も若干ありますが、このオチの鮮やかなこと。最後は興奮しましたね。マット・デイモンとベン・アフレックはやっぱりこうでなきゃと思う。痛快。
“Are We The Good Guys?”。はい、いつだって善人です。
『ただ、やるべきことを』
『ただ、やるべきことを』(英題:Work To Do)
監督:パク・ホンジュン
出演:チャン・ソンボム,ソ・ソッキュ,キム・ドヨン,キム・ヨンウン,チャン・リウ,イ・ノア,カン・ジュサン,キム・ナムヒ他
武庫之荘でひとりランチ後、TOHOシネマズ西宮で『HELP/復讐島』を観て電車に飛び乗り、十三に到着。どうしても観たかった本作を観るためにシアターセブンへ。
パク・ホンジュン監督は造船会社の人事係に勤務していたことがあるそうです。その経験を基に撮ったのが、長編デビューとなる本作。
造船会社・韓洋重工業に入社して4年目になるカン・ジュニ(チャン・ソンボム)。資材チームに所属していた彼は、人事チームへの異動を命じられる。資材チームから離れる前日、「娘の婿になってほしかった」というぐらいジュニのことを気に入っていた部長チャン・イルソプ(カン・ジュサン)や課長イ・サンテ(キム・ナムヒ)と飲み明かしたジュニは、翌朝出勤した人事チームで温かく迎えられてひと安心。しかし次長イ・ドンウ(ソ・ソッキュ)は冴えない顔色で「あまり良い職場とは言えない」とジュニに告げる。
仕事を効率良く片付けるジュニは、資材チームにいたときと同様に、人事チームでも「出来る奴」と認められる。さっそくドンウと共に進めることになったのは、リストラの名簿作り。不況の波に勝てず、何度もリストラを繰り返してきた会社は、今回は150人もの社員をリストラすると言うのだ。社員たちを納得させるための基準を設けてジュニが即座に作成したリストラ対象者の名簿にドンウは舌を巻く。その名簿を携えて人事チームの部長チョン・ギュフン(キム・ドヨン)は社員側との交渉に臨むのだが……。
精神的にめげそうな不正だとか虐めみたいなものが描かれた作品だったらしんどいなぁと思っていたのですが、そうではありませんでした。ジュニは出来る社員でありながら、おかしいことはおかしいときちんと言う若者。基準を設けてリストラ名簿を作成したのに、会社の忖度で「切るはずの社員」と「残すはずの社員」を入れ替えようと上司が言い出したときに、それはおかしいと言い切ります。もしも入れ替えたことがバレたらどう言い逃れをするつもりかと。すると、上司がちゃんとそれを正しいことだと認めて、入れ替えの話を無しにするのです。
150人を解雇することにして面談を重ねたうえで希望退職者を募ると、120人近くは署名する。残りの30人ほどはどうするのかとなったとき、言い方が悪いですが「ゴネ得」になる。30人がどれほど真面目に仕事をする社員だったのかはわかりません。でも、辞めたくないと言い張った結果、会社に残ることができたなら、希望退職者として署名してしまった人はどうなるのか。資材チームのチャン部長が去るシーンは寂しくて悲しくて見ていられませんでした。
別にイケメンでも何でもないジュニには可愛い婚約者ホン・ジェイ(イ・ノア)がいます。先輩から「ジュニのいったいどこがよかったんだ」と聞かれたジェイは、「確かにジュニにはもどかしいところもある。だけど、彼は悪いことをしたときにそれを恥じることができる人なの。そこが好きだ」と答えます。悪いことをしたときに恥じることができるか。大事なことだと思いました。でもジュニは悪いことなんかしていないよ。
リストラする側が何の痛みも感じない人ならば楽かもしれない。でもそうじゃないなら、こんなにもきつくて心が折れる。
『HELP/復讐島』
『HELP/復讐島』(原題:Send Help)
監督:サム・ライミ
出演:レイチェル・マクアダムス,ディラン・オブライエン,エディル・イスメイル,デニス・ヘイスバート,ゼイヴィア・サミュエル,クリス・パン,タネート・ワラークンヌクロ,エマ・ライミ他
休日、武庫之荘でひとりランチのあと、TOHOシネマズ西宮へ。グラスのスプマンテとカラフェで白ワインを空けています。またまた「観るなら飲むな、飲むなら観るな」の掟を破っているわけで、これで寝ないはずがない。なのに一瞬たりとも寝ませんでした。『死霊のはらわた』(1981)のサム・ライミ監督の成せる技というべきか、目が離せないサバイバルホラー。予告編を観る限りでは、クソ上司からパワハラに遭っている女性部下を応援一択だったのに、えーっ。
金融管理会社の企画戦略部に所属する社員リンダ(レイチェル・マクアダムス)。その能力の高さは誰もが認めるところで、社長は彼女を副社長に据える約束をしていた。ところが社長が急逝し、その息子ブラッドリー(ディラン・オブライエン)が新社長に就任。 ブラッドリーはリンダの昇進を反故にするばかりか、自分の側近ドノヴァン(ゼイヴィア・サミュエル)にリンダの功績を横取りさせて副社長にしようとしている。このたびのバンコクへの出張に側近たちと共にリンダも同行させ、頃合いを見計らってクビにするつもり。ところが、嵐に見舞われた航空機は海に墜落。シートベルトを着用していたリンダとブラッドリーのみが命拾いし、ほかの連中は全員、空に投げ出されて死んでしまう。
タイランド湾に浮かぶ孤島で目を覚ましたリンダは、近くで失神しているブラッドリーを見つけると足の怪我の手当てをする。献身的な介抱によってブラッドリーは回復するが、孤島に二人きりになっても自分が上司だと思っているから、リンダに横柄でありつづける。業を煮やしたリンダは、このままならばブラッドリーに食糧も水も与えないと決める。リンダがいないと何もできないブラッドリーは態度を改めたかに見えたが……。
冒頭、まず予告編では気の毒にしか思えなかったリンダに違う印象を受けて驚きました。彼女は確かに仕事ができるけど、雰囲気を読めないイタい女。髪はボサボサでほぼスッピン、イケてないファッション。ブラッドリーが初出勤したとき、勤務時間中は自席での食事を禁じられているにもかかわらずサンドイッチをほおばっていたリンダは、咄嗟に引き出しの中にサンドイッチを隠します。この時点で私はオエーッ。ハダカのサンドイッチを引き出しの書類の上に置くって、どういう神経なんだ。目の前を素通りしようとするブラッドリーにリンダは笑顔を作って声をかけるけれど、口元にはマヨネーズで和えたツナが付いたまま。気持ち悪いったらありゃしない。握手を求められたブラッドリーは渋々応じたものの、彼の手にツナが付く。そういうことにリンダは何も気づいていないし、同僚たちが遊びに行く話に誘われてもいないのに加わろうとします。
こんなだからリンダを応援する気は失せていたところ、孤島でブラッドリーと二人きりに。そうするとやっぱりブラッドリーはクソなんですよね。サバイバル番組好きで何でもできるリンダに対し、ブラッドリーは何にもできないくせしてデカい口ばかり叩く。水の貯め方、魚の捕り方、食べられる植物など有り余るほどの知識を持つリンダ。イノシシまで仕留めるのですからたいしたものです。ブラッドリーもリンダに教えを請い、徐々にいろいろとできるようになるものの、リンダに敵うわけはありません。
救助船が来なくてもかまわないと思っているリンダは、むしろ救助船が来れば見つからないようにしたい。捜索は打ち切りになったというのにあきらめずにブラッドリーを探す婚約者がやってきたとき、どうするか。ここまでやっちゃうんですねぇ。それを知ったブラッドリーとの一騎打ち。って、二人しかいないんだから、常に一騎打ちなんですけど(笑)。とてもブラックで笑っちゃうオチです。そして、輝くばかりの微笑みを浮かべるレイチェル・マクアダムスはやはり美しい。ブスになろうと思えばなれるんだという驚きも。
自分の身は自分で守れ。
『クスノキの番人』
『クスノキの番人』
監督:伊藤智彦
声の出演:高橋文哉,天海祐希,齋藤飛鳥,宮世琉弥,子安武人,田中美央,神谷明,津田健次郎,杉田智和,八代拓,上田麗奈,飛田展男,大沢たかお他
前述の『ランニング・マン』の次に、同じく109シネマズ大阪エキスポシティにて。
東野圭吾の同名ベストセラー小説をアニメ映画化。原作を読んだときの感想はこちら。伊藤智彦監督はこれまでアニメの絵コンテを担当することが主だったようで、私が観た監督作は『HELLO WORLD』(2019)のみ。そちらはあまり印象に残っていないのですが、これはどうか。
直井玲斗は母親を早くに亡くし、父親は誰だか知らない。老舗の和菓子メーカー“たくみや本舗”の工場にようやく就職してまだ1週間だというのに、金箔紛失の責任を押しつけられて解雇される。濡れ衣を着せられて悶々としていたときにキャバクラに勤めていた頃の悪友からたくみやの売上金を盗む話を持ちかけられ、うっかりそれに乗ってしまったところ、逃げ遅れた玲斗だけが捕まってブタ箱行き。
自分に身寄りなどひとりもいないと思っていたのに、玲斗の母親の異母姉、つまり伯母の柳澤千舟が現れる。千舟は大企業“ヤナッツ・コーポレーション”の顧問。玲斗の弁護士費用等をすべて払って釈放させる代わりに“クスノキの番人”となるように命じられる。クスノキの番人とは、柳澤家が所有する月郷神社の管理人となり、不思議な言い伝えのあるクスノキを守るのが役目で……。
昔ほど心に突き刺さる東野圭吾の著作に当たらなくなってから何年にもなります。本作を読んだときも、それなりには良かったけれど以前の切なさはないなぁと思っていました。その映画版だから、たいして期待していなかったおかげなのでしょうか、意外と切なかった。こんなアニメ映画化もありですね。
満月の夜と新月の夜、血縁関係にある者がそれぞれに預念と受念をおこなう「祈念」。クスノキに想いを預け、その想いを受け取るのです。念じたことだけが届くのではなく、その人の人生すべてを見せられることになるから、受け取り手は時に抱えきれない場合もある。今さらですが、こんなことを思いついた東野圭吾はやっぱり凄いのかなと思う。
音楽がデカすぎたり(私の耳の問題か!?)、ここでラップはちょっと違うと思ったり、いろいろと腑に落ちないことはあります。でも東野圭吾を久々に良いと思ったのは確か。
『ランニング・マン』
『ランニング・マン』(原題:The Running Man)
監督:エドガー・ライト
出演:グレン・パウエル,ウィリアム・H・メイシー,リー・ペイス,エミリア・ジョーンズ,マイケル・セラ,ダニエル・エズラ,ジェイミー・ローソン,ケイティ・オブライアン,コールマン・ドミンゴ,ジョシュ・ブローリン他
封切りの日、仕事帰りに109シネマズ大阪エキスポシティにて。
1982年にスティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で発表した『バトルランナー』は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演で1987年に映画化されました。原作とはずいぶん異なる内容でしたが、舞台は2025年。約40年後にはこうなっているのかもしれないと、もし少しでも思われていたなら可笑しいですよね。1987年版の『バトルランナー』に比べると原作に忠実なのが本作。このたびの監督は『ベイビー・ドライバー』(2017)や『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)のエドガー・ライト。お気に入りの監督です。主演は『トップガン マーヴェリック』(2022)のハングマン役、グレン・パウエル。こうなると絶対に見逃せない。
貧富の差が広がるばかりの近未来。ベン・リチャーズはちょっぴり強い正義感が災いして、同僚を助けようとするたびに解雇の憂き目に遭って職を転々。人格に問題ありとされてついに転職先もなくなってしまう。重病の娘キャシーの治療費を稼ぐために妻シーラが危険な仕事に出かけようとするのを止め、巨額の賞金が懸かるリアリティショー“ランニング・マン”への参加を決意する。
全世界が熱狂するこのショーのルールは、プロのハンターの追跡をかわして30日間逃げ続ければ勝利というもの。ハンターに捕まれば直ちに殺され、これまでに成功者はいないというデスゲーム。オーディションに出向いたベンはトップの成績を叩き出し、ほかの2人と共にランニング・マンに選出される。1日生き延びればボーナス、ハンターを殺せばまたボーナスを受け取れるが、ランニング・マンの目撃情報を送った視聴者もボーナスが貰えるから、全世界を敵に回したも同然。味方がいないなか、ベンは命懸けの戦いに挑むのだが……。
冒頭、ドル札に印刷されているのがシュワちゃんの肖像画で笑う。『バトルランナー』へのオマージュですね。こういうお遊びは楽しい。
意外と何でもできる役者グレン・パウエルはベン役も大当たり。この悪辣な番組を仕切るダン・キリアン役のジョシュ・ブローリンがまたたまらんほど嫌な奴で、憎しみしか湧いてきません。予想外のことは起こらないステレオタイプの作品とも言えるけど、ベンしか勝たんと思って観ていられるから楽チン。
ほかのランニング・マン、特に紅一点(だけどイカつすぎる)ジェニー・ラフリン役のケイティ・オブライアンがもう少し活躍するかと思ったのに、見せ場が少なく。全世界が敵かと思いきや、やがてベンを応援する人々で溢れるようになるのも普通の流れ。しかしベンの頼れる知人モリー役のウィリアム・H・メイシーが速攻で殺されてしまうのは気の毒すぎて笑った。フェイク画像に騙されることなく最初からベンを助けようとするブラッドリー役のダニエル・エズラやその弟を演じる子役のアンジェロ・グレイが頼もしいし、ブラッドリーの紹介でベンが頼るエルトン役のマイケル・セラも面白い配役。
娯楽作品以外の何物でもない。頭のなか空っぽにして観ましょう。貧富の差がどうとか考えるのは無しで。





