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『ブラックバッグ』

『ブラックバッグ』(原題:Black Bag)
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:ケイト・ブランシェット,マイケル・ファスベンダー,マリサ・アベラ,トム・バーク,ナオミ・ハリス,レゲ=ジャン・ペイジ,グスタフ・スカルスガルド,カエ・アレキサンダー,ピアース・ブロスナン他

イオンシネマ茨木にて、前述の『THE MONKEY/ザ・モンキー』とハシゴ。この前日に観たのが『ブラックドッグ』だからややこしい(笑)。あちらは中国作品でしたが、こちらはイギリスが舞台のアメリカ作品。監督は“オーシャンズ11”シリーズのスティーヴン・ソダーバーグで、今春公開された『プレゼンス 存在』にはこんな作品も撮るのかと驚かされました。本作ではケイト・ブランシェットマイケル・ファスベンダー起用しているとなると、巷の評判がどうであれ観たくなります。タイトルの“Black Bag”とは「極秘任務」の意味だそうな。

イギリスの諜報機関NCSC(National Cyber Security Centreの略、日本語では「国家サイバーセキュリティセンター」)に所属する優秀なエージェントのジョージは、上司ミッチャムから極秘ソフトウェアプログラム“セヴェルス”が盗み出されたことを聞かされ、組織内にいるモグラ(=二重スパイ)探しを命じられる。容疑者は5名で、その中にはジョージの妻で同じくエージェントのキャスリンも含まれている。

容疑者たちを探ることにしたジョージだが、キャスリンもその対象だということはもちろん彼女に伏せたまま。キャスリンには容疑者は4人だと偽って自宅に招き、ジョージとキャスリンはディナーを振る舞う。あとの4人は、衛星画像専門家のクラリッサ、彼女の恋人でケースオフィサー(海外の機密情報提供者を見つけて協力関係を築くことを任務とする)のフレディと、防諜担当のジミー、彼の恋人でエージェントたちのカウンセリングを担当する精神科医のゾーイ。

ディナーの前にまず集まった4人は、なぜいま自分たちが呼ばれるのだろうと訝りつつ、ジョージとキャスリンの友人カップル2組がディナーに招待されるのは何もおかしなことではないと納得する。料理に仕込んだ薬と酒のせいであぶり出される4人の関係性。

同日、ミッチャムが自宅で心臓発作を起こして急逝。これは本当に病死なのか、それとも殺人なのか。慎重になるジョージに4人それぞれからもたらされるさまざまな情報。いずれもキャスリンがモグラなのではないかと思わせられる内容で……。

ネタバレです。欺き合うエージェント夫婦の話なのかと思ったら、夫婦の絆の話でした。どう見てもキャスリンが怪しくて、ジョージも彼女のことを疑っているようなのに、実はキャスリンのことは信用しています。そして万が一彼女がスパイだったとしても、全身全霊をかけて守ると決めています。それはキャスリンも同じことで、ジョージのためなら何だってやれる。

会話が多いため、少々眠くなる部分はありましたが、思い合う夫婦だということを利用して罠にかけられたと知ったとき、ふたりは絶対その罠に落ちるもんかと意をひとつにして反撃します。こんな賢い夫婦を敵に回したらエライことになるんですね(笑)。悪事に手を染める奴は自分のほうが賢いと思っている。それ、間違ってるから。キャスリンの上司を演じるピアース・ブロスナンには元ジェームズ・ボンドの影なし。情けないツラを見てこっちが情けなくなりました。(^^;

『THE MONKEY/ザ・モンキー』

『THE MONKEY/ザ・モンキー』(原題:The Monkey)
監督:オズ・パーキンス
出演:テオ・ジェームズ,タチアナ・マズラニー,クリスチャン・コンヴェリー,コリン・オブライエン,ローハン・キャンベル,サラ・レヴィ,アダム・スコット,イライジャ・ウッド他

上映終了間近だった日、イオンシネマ茨木へ滑り込み。客は私と若い女性2人組のみだったけど、こんなにガラ空きなのになんで私の隣ひとつだけ空けて2人が座るのよ。私がど真ん中に陣取っているわけでもないのに、もう少し離れて席を取ってくれてもよくないですか。予告編が始まってから入場した瞬間にこの状況を見て「げっ」と思い、どっちみち客はほかにいないんだからと離れたところへ座っちゃいました。

原作はスティーヴン・キングの短編小説『猿とシンバル』で、短編集『神々のワードプロセッサ』に収録されています。この短編集は読んだはずだけど、たぶん25年くらい前のことなので全然おぼえていません。血が飛び交う描写ゆえのR15+指定

ある男が骨董品店でオモチャの猿人形を返品しようとするが、店主に断られる。どうしても返品したいという男はこの猿人形を心底恐れている様子。店主が訝しむうちに猿人形のバチを持つ腕が振り上げられ、太鼓を叩きはじめる。鳴り止んだそのとき、ありえないことが店内で起きて店主は死亡。男はその後どうなったかわからない。

失踪した男の妻ロイスはシングルマザーとなり、双子の兄弟ビルとハルを育てる。顔は似ていても性格はまるで別のふたり。陽気なビルと陰気なハル。ある日、ロイスから父親の私物が遺されていることを聞いて兄弟で物色中、猿人形を発見。「ネジを回せ。あとはお楽しみ」と書かれている。背中のゼンマイを回すと猿が太鼓を叩きだし、それが止んだ頃、ふたりのベビーシッターの首が見事に切れて死亡。

もしかするとこの猿に願えば人を殺せるのではないか。意地悪なビルのせいで学校でもいじめられているハルは、ビルの死を願って猿のゼンマイを回す。ところが太鼓が鳴り止んだとき、ビルではなくてロイスが死んでしまう。自分の死が願われていたことは知らないが、この猿は不吉だと感じたビルは、ハルと共に猿を処分する。両親を失って、伯父チップと伯母アイダに引き取られるふたり。しかし猿が再び現れ、チップも変死する。

25年後。ハルは一児の父親となっていたが、こんな過去を持つがゆえに、自分の存在が身近な人を傷つけるのではないかと気が気ではない。心を開けないまま離婚し、年に一度だけ息子ピーティーと過ごす。元妻が再婚相手と相談してピーティーを正式に養子にすると聞き、ハルは傷心。これがピーティーと過ごす最後の日になるかもしれないと遊園地を目指す途中、疎遠になっていたビルから電話が入る。アイダが不審死を遂げたから遺品整理に行けとビルは言うのだが……。

猿人形の由来とか目的とかがさっぱりわからなくて、その辺りはもうちょっと納得できる理由を与えてほしいと思ったりもします。だけど、こういうホラーにそんなもっともらしい理由は要らないのかもしれません。単に、謎の猿人形がいて、こいつが演奏を始めたら恐ろしいことが起きる。誰が死ぬかもわからなくて、とりあえずゼンマイを回した人は死ななくて済む。回して回してみんな死んじまえって、それでいいんでしょうね。

テオ・ジェームズが一人二役。彼を見るのは『ダイバージェントNEO』(2015)以来ですが、『デスパレート・ラン』(2021)では製作総指揮を務めたようで、ほかはTVドラマに主に出演している様子。まるで性格の異なる兄弟を上手く演じ分けていたと思います。驚くのは少年時代の兄弟を演じた子役のクリスチャン・コンヴェリー。これはてっきり別の子役が演じているのだと思っていました。上手いですねぇ。クソガキのビルを演じるところなんか。あと、怖かったのはハルの元妻の再婚相手役イライジャ・ウッド“ロード・オブ・ザ・リング”シリーズの主人公フロドを彼が演じていたなんて、今となっては信じられず。変人ぶりが板につきすぎていて不気味なことこのうえなし。

スティーヴン・キング原作の作品を観ると、メイン州ってめちゃくちゃ陰鬱な土地。実際はどうですか。

『ブラックドッグ』

『ブラックドッグ』(原題:狗阵)
監督:グァン・フー
出演:エディ・ポン,トン・リーヤー,ジャ・ジャンクー,チョウ・ヨウ,チャン・イー他

前述の『サッパルー!街を騒がす幽霊が元カノだった件』にがっかりした後、これは絶対私が好きそうだと狙っていた中国作品を観ました。同じくテアトル梅田にて。予想どおり、これは大好きでした。たぶん今年が終わるときに振り返って、好きだった映画の上位にランクすると思います。

本作は第77回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリとパルムドッグ賞の2冠に輝いた作品。パルムドッグ賞は素晴らしい演技を見せた犬に贈られる賞で、『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』(2014)や『ドッグマン』(2018)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)、『落下の解剖学』(2023)に出演したワンちゃんたちも本賞を受賞しています。

北京オリンピックを目前に控えた2008年。10年前に過失致死罪で捕まった青年ランは模範囚として仮釈放され、故郷の田舎町に戻る。服役前はスタントマンでありミュージシャンだったランは町のスター。彼の帰郷は概ね歓迎されるが、彼に殺された男の身内は許してはくれまい。すぐさまランの家に嫌がらせを仕掛けにやってくる。

出所以来、誰とも口をきこうとしないランを気にかけるヤオは、仕事の世話をしようとする。野犬が問題になっていた北京では、オリンピックを前に商業地の開発を進めようと野犬の捕獲隊を結成。ヤオからそこに参加するように促されて承諾したものの、野良犬ばかりか今まで一般家庭で飼われていた犬までも金を払って登録申請しなければ野犬とみなされる状況に違和感をおぼえる。

あるとき、孤高の黒い犬と遭遇したラン。その犬が賞金首であることを知って追いかける。逃げ足がはやくて取り逃がすが、後日、捕獲隊の面々と共になんとか捕まえて、ケージに入れた犬を運ぶ役目をランが担う。ところが砂漠で暴風に遭って車が横転。さすがに心細そうな犬と一夜を過ごすも最後は噛みつかれ、狂犬病の危険があるとして10日間は外出せずに様子を見るように友人から命じられる。門扉の中に犬を入れ、自身は部屋にこもるようにしていたランは、いつしか犬と打ち解けて……。

オリンピックを控えて整備されてゆく街を見ていると、『東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート』(2020)を思い出す。長く暮らした街を追い出される人たちが良いところに移れるのかと言えばそうでもない。ランの父親は動物園で寝泊まりし、居場所を失いそうな動物たちのことを憂えている。街が整備されるのと引き換えに、今あるものが潰されてゆくのです。何でもかんでもなかったことにされてしまう。アル中の父親は倒れて入院。彼が最期に飲みたいのは酒で、それを静かに叶えようとするランの姿がよかった。

この流れだと救いようのないラストが待っている可能性もあったけど、そうじゃなかった。静けさの中に逞しさも見えて、生きるってこういうことかもしれないと思いました。

『サッパルー!街を騒がす幽霊が元カノだった件』

『サッパルー!街を騒がす幽霊が元カノだった件』(英題:The Undertaker)
監督:ティティ・シーヌアン
出演:チャーチャイ・チンナシリ,ナルポン・ヤイイム,アチャリヤー・シータ,スティダー・ブアティック,ナタウット・セーンヤブット他

タイにおける一般的な興行収入がなんぼほどのものだか知りませんが、異例の30億円の大ヒットを記録した作品だとの触れ込み。これは観に行かなきゃとテアトル梅田へ。昨年開催された第19回大阪アジアン映画祭にて『葬儀屋』のタイトルで上映された作品です。今回の公開に当たって付けられた邦題は、あきらかに『僕と幽霊が家族になった件』(2022)のヒットを受けてのものでしょう。

人々が霊の存在を信じるタイ東北部のイサーン地方。妊婦のバイカーオが首を吊って自殺した後、彼女の幽霊を目撃した人が続出する。しかし、元カレのシアンだけはバイカーオの幽霊に遭遇することができない。バイカーオに未練たっぷりのシアンは、幽体離脱の術をものにしたい。そうすれば霊体となってマルチバースでバイカーオと再会できるはずだからだ。

幽体離脱の術を操れるのは街でただひとりの葬儀屋サクだけ。ちょうどバンコクロースクールを卒業して帰郷したサクの息子ジュートを通じて、シアンはサクに幽体離脱の術を教えてほしいと頼む。なかなかうなずいてくれないサクだったが、癌に冒されて余命わずかであることを自覚しているサクは、怖がりの息子ジュートと共にシアンが葬儀屋を継ぐならば教えてやると言い……。

何故にこれが大ヒットを飛ばすのか。首吊りのシーンから始まり、次に帰郷したジュートが映し出されるからてっきり彼が主役かと思ったら、主役はシアンのほうですか。登場人物が多くて話もぐだぐだ。途中から話が面白くなることを願いましたがそうはならず。

だいたい、イケメンがひとりもいないのがツライ。イケメンじゃなくても愛嬌があったりしてなんだか憎めない男性だって世の中には大勢いるけれど、このシアンはそうじゃない。今カノの目の前で元カノへの未練を見せまくり、幽体離脱幽体離脱ってやかましいのよ。しかも声がよろしくない。甲高いキャンキャラした声で吠えるもんだから、しょうもないから寝ようと思ってもうるさくて寝られませんでした。

タイ作品って最近面白いと思っていましたが、これは駄目。今年観た中で『親友かよ』はベスト級、これはワースト級。勘弁して。

『沈黙の艦隊 北極海大海戦』

『沈黙の艦隊 北極海大海戦』
監督:吉野耕平
出演:大沢たかお,上戸彩,津田健次郎,中村蒼,松岡広大,前原滉,渡邊圭祐,風吹ジュン,トーリアン・トーマス,ブライアン・ガルシア,ドミニク・パワー,リック・アムスバリー,岡本多緒,酒向芳,夏川結衣,笹野高史,江口洋介他

TOHOシネマズ伊丹にて、前述の『君の声を聴かせて』とハシゴ。

かわぐちかいじの大ヒットコミックを実写映画化した『沈黙の艦隊』(2023)の続編。中高年の男性陣に大人気の戦艦ものに私はさほど興味がありません。それゆえ知識もないから前作の理解は浅めのままで、本作の公開前に地上波で放映されていた前作を観返すこともせず、予習復習なし。

ぼんやりとしか覚えていませんが、とにかく原子力潜水艦“やまと”の艦長・海江田(大沢たかお)が戦争のない世界を目指して独立戦闘国家“やまと”を標榜しているという話でしたよね。「戦争のない世界」というわりには「独立戦闘国家」と名乗るところからして私は違和感を抱いてしまうのですけれども、それはちゃんと読んだり観たりすればわかるのか。まぁいいや。

日本では海江田に賛同する政治家とそうではない政治家に分かれ、やまと推しの首相・竹上(笹野高史)+官房長官・海原(江口洋介) vs 防衛大臣・曽根崎(夏川結衣) vs 民事党幹事長・海渡(風吹ジュン)+外務大臣・影山(酒向芳)という構図ができあがります。

やまとの海江田は米国大統領・ベネット(リック・アムスバリー)と顔をつきあわせて話をするため、ニューヨークへ向かいます。北の海を潜航するやまとの撃沈を米国の原子力潜水艦に託すベネットでしたが、海江田の賢いこと。どんな攻撃もかわして最新鋭の2隻を返り討ちにしちゃうんですよねぇ。そればかりか、その後ニューヨークに近づいたときは、総力を挙げて攻撃を仕掛けてこられても反撃しない。やまとのほうからは攻撃することなく、いわば丸腰で応戦するせいで、ベネットは罪悪感を抱いてしまうという。なんかこの対戦がまるでゲームのようで、話について行っていなくても面白い。

気になったのは米国最新鋭原子力潜水艦の艦長を務めるベイツ兄弟の名前。弟のほうでしたっけ、ノーマン・ベイツって、ヒッチコック『サイコ』(1960)の奴と同じ名前でしょ。どうしてそんな設定にするのか、これはパロディーなのかしらと思いました。日本と米国が対戦して前者が後者を負かす作品を観ると、アメリカ人俳優は何を考えながら演じているんだろうとついつい想像します。どんな感じなのでしょう。

今回は津田健次郎がひとりでオイシイところを持って行っている気がしませんか。はい、なんだかんだで面白かったので、早いうちに続編をお願いします。