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『ランニング・マン』

『ランニング・マン』(原題:The Running Man)
監督:エドガー・ライト
出演:グレン・パウエル,ウィリアム・H・メイシー,リー・ペイス,エミリア・ジョーンズ,マイケル・セラ,ダニエル・エズラ,ジェイミー・ローソン,ケイティ・オブライアン,コールマン・ドミンゴ,ジョシュ・ブローリン他

封切りの日、仕事帰りに109シネマズ大阪エキスポシティにて。

1982年にスティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で発表した『バトルランナー』は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演で1987年に映画化されました。原作とはずいぶん異なる内容でしたが、舞台は2025年。約40年後にはこうなっているのかもしれないと、もし少しでも思われていたなら可笑しいですよね。1987年版の『バトルランナー』に比べると原作に忠実なのが本作。このたびの監督は『ベイビー・ドライバー』(2017)や『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)のエドガー・ライト。お気に入りの監督です。主演は『トップガン マーヴェリック』(2022)のハングマン役、グレン・パウエル。こうなると絶対に見逃せない。

貧富の差が広がるばかりの近未来。ベン・リチャーズはちょっぴり強い正義感が災いして、同僚を助けようとするたびに解雇の憂き目に遭って職を転々。人格に問題ありとされてついに転職先もなくなってしまう。重病の娘キャシーの治療費を稼ぐために妻シーラが危険な仕事に出かけようとするのを止め、巨額の賞金が懸かるリアリティショー“ランニング・マン”への参加を決意する。

全世界が熱狂するこのショーのルールは、プロのハンターの追跡をかわして30日間逃げ続ければ勝利というもの。ハンターに捕まれば直ちに殺され、これまでに成功者はいないというデスゲーム。オーディションに出向いたベンはトップの成績を叩き出し、ほかの2人と共にランニング・マンに選出される。1日生き延びればボーナス、ハンターを殺せばまたボーナスを受け取れるが、ランニング・マンの目撃情報を送った視聴者もボーナスが貰えるから、全世界を敵に回したも同然。味方がいないなか、ベンは命懸けの戦いに挑むのだが……。

冒頭、ドル札に印刷されているのがシュワちゃんの肖像画で笑う。『バトルランナー』へのオマージュですね。こういうお遊びは楽しい。

意外と何でもできる役者グレン・パウエルはベン役も大当たり。この悪辣な番組を仕切るダン・キリアン役のジョシュ・ブローリンがまたたまらんほど嫌な奴で、憎しみしか湧いてきません。予想外のことは起こらないステレオタイプの作品とも言えるけど、ベンしか勝たんと思って観ていられるから楽チン。

ほかのランニング・マン、特に紅一点(だけどイカつすぎる)ジェニー・ラフリン役のケイティ・オブライアンがもう少し活躍するかと思ったのに、見せ場が少なく。全世界が敵かと思いきや、やがてベンを応援する人々で溢れるようになるのも普通の流れ。しかしベンの頼れる知人モリー役のウィリアム・H・メイシーが速攻で殺されてしまうのは気の毒すぎて笑った。フェイク画像に騙されることなく最初からベンを助けようとするブラッドリー役のダニエル・エズラやその弟を演じる子役のアンジェロ・グレイが頼もしいし、ブラッドリーの紹介でベンが頼るエルトン役のマイケル・セラも面白い配役。

娯楽作品以外の何物でもない。頭のなか空っぽにして観ましょう。貧富の差がどうとか考えるのは無しで。

『安楽死特区』

『安楽死特区』
監督:高橋伴明
出演:毎熊克哉,大西礼芳,加藤雅也,筒井真理子,板谷由夏,下元史朗,鳥居功太郎,山崎翠佳,海空,影山祐子,外波山文明,長尾和宏,くらんけ,友近,gb,田島令子,鈴木砂羽,平田満,余貴美子,奥田瑛二他

MOVIXあまがさきにて、前述の『終点のあの子』の次に。

監督は『夜明けまでバス停で』(2022)や『桐島です』(2025)の高橋伴明監督。原作は終末期医療の重要性を訴えつづける医師であり作家である長尾和宏の同名小説。彼の著作『痛くない死に方』(2020)を映画化したのも同監督です。

安楽死法案”が可決された近未来の日本。若年性パーキンソン病を患うラッパーの章太郎(毎熊克哉)とその恋人でジャーナリストの歩(大西礼芳)は安楽死に大反対。コロナワクチン接種の影響もあって症状が進んだ章太郎が余命半年を宣告された今、安楽死を望んでいると見せかけて安楽死特区の施設に入居すれば、特区の実態を告発できるだろうと考える。しかし、病が進行するにつれて心情に変化が現れて……。

安楽死を望むからと言って誰でも認められるわけではありません。まずそれが本人の意思でなければならないし、耐えがたい心身の痛みを伴っていることも条件のひとつ。章太郎のほかに入所しているのは、末期癌に苦しむ63歳の男性(平田満)と認知症と診断された元漫才師の女性(余貴美子)。前者と離婚を考えていた妻(筒井真理子)は、夫が末期癌だと知らされて別れられなくなります。後者は記憶がすべて失われる前に死にたいと切に願う。条件をクリアして入居が叶ってもすぐに安楽死できるわけではなく、奥田瑛二加藤雅也板谷由夏らが演じる医師と何度も面談をおこないながら、本当に安楽死したい気持ちが変わらないかを確かめられます。

エンドロール後に長尾医師とかつて安楽死を望んでスイスへと渡った女性の対談が収められています。30歳で安楽死を決めたけれど、父親が泣いて泣いて結局安楽死をやめたそうです。死にたいエゴと死なせたくないエゴ。難しい。やっぱり、自分では何もできなくなる前に死にたいかな。

『終点のあの子』

『終点のあの子』
監督:吉田浩太
出演:當真あみ,中島セナ,深川麻衣,石田ひかり,平澤宏々路,南琴奈,新原泰佑,小西桜子,野村麻純,陣野小和他

仕事帰りにMOVIXあまがさきまで行くのは結構面倒なのですが、観たかった2本をハシゴするにはここしかありませんでした。職場からこの劇場まで往路はいつもすんなり行けるけれど、復路はなぜか毎回思い描いていた道に出ることができず、伊丹から帰りたいのに園田経由で帰るはめになります。嗚呼、方向音痴はツライ(泣)。

原作は柚木麻子のデビュー小説。監督は『女の穴』(2014)や『夜、鳥たちが啼く』(2022)の吉田浩太。ちなみに柚木麻子といえば昨年『Butter』が英国推理作家協会主催のダガー賞の候補にもなりました。ダガー賞は1950年代に創設された由緒正しい賞で、当時は英国作品もそれ以外の国の翻訳作品も同賞の対象としていましたが、2006年からはそれらを分けて審査しています。翻訳作品を対象とするインターナショナル・ダガー賞を2025年に受賞したのは王谷晶の『ババヤガの夜』。過去にはパトリシア・コーンウェルだとかミネット・ウォルターズだとかサラ・パレツキーだとかピエール・ルメートルだとか、世界的に有名な作家が受賞者として名を連ねるダガー賞で、日本人女性作家が2名もノミネートされたのは快挙ですよね。ついでながら、日本人男性作家でノミネートされたことがあるのは横山秀夫東野圭吾伊坂幸太郎です。

中高一貫の私立女子高校で内部進学した希代子(當真あみ)。目立ちすぎることなく周囲に合わせた学校生活を送っていた彼女の前へ、外部から入学してきた朱里(中島セナ)が現れる。有名なカメラマンである父親に同行して海外暮らしも経験してきた朱里は自由奔放。当然クラスでは浮き気味となった朱里は、なぜか希代子に声をかけてくる。希代子は朱里といるのが楽しくて、中学時代からの親友・奈津子(平澤宏々路)とはついつい距離を置きがちに。

ある日、希代子は朱里から学校をさぼって江の島へ行こうと誘われるが、途中で怖じ気づき、朱里と別れて学校へと戻る。それをよく思わなかったらしい朱里は日記に希代子の悪口を書き綴り、その日記を見つけてしまった希代子が朱里を避けるように。日記には希代子以外のクラスメートたちの悪口も書かれていたため、希代子はわざとその日記を皆の目につくところに置き、朱里を仲間はずれにしようとする。スクールカーストのトップにいる恭子(南琴奈)も自分の大学生の彼氏と朱里が親しげにしていることに腹を立てていたから、今まで目も向けなかった希代子を持ち上げはじめて……。

私にはちょっと難解。朱里は明らかに異質な存在で、ひたすら息を潜めて生きてきた希代子が憧れる気持ちもわからなくはないけれど、別に可愛くもない朱里がクラスメートたちのことを見下して悪口書き放題。それがバレたらそりゃ一緒にいるのは嫌になるでしょう。朱里の自業自得に思えます。恭子とその取り巻きたちは、希代子を散々ヨイショして朱里を外し、いざこれが問題となると、すべて希代子のせいにしようとします。謝罪するならばむしろ朱里のほうだと思いますが、朱里は絶対に謝らないし、希代子が朱里とどうなりたいのかはわからず。

最後に唐突にふたりが踊り出すのも陳腐に映ってしまい、女子の嫌な部分のみが頭と心に残りました。

『パンダプラン』

『パンダプラン』(原題:熊猫計劃)
監督:チャン・ルアン
出演:ジャッキー・チェン,ウェイ・シャン,シー・ツェー,ハン・イェンボー,ジャ・ビン他

なんばパークスシネマにて、前述の『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』の次に。ジャッキー・チェンが本人役で主演しています。

世界中で大人気の映画スター、ジャッキー・チェンがこのたび誕生した赤ちゃんパンダの里親になることに。赤ちゃんパンダのダーバオが飼育されている動物園で開催される式典に出席したジャッキーとマネージャーのデビッド。ジャッキーの来園に沸きに沸く動物園。ダーバオの飼育係シャオジューもジャッキーの大ファンで、園内をうろつくジャッキーと遭遇して大はしゃぎ。

そんな雰囲気の裏で、不穏な動きがある。アラブの大富豪からダーバオを盗むように依頼を受けた国際的犯罪組織が動物園に侵入しようとしているのだ。実行犯は地下格闘技に参加する傭兵たち。傭兵のリーダーであるクンは、最初こそ自分たちのような腕に自信のあるものがパンダを誘拐するだなんてと抵抗するが、報酬が1億ドルと聞いてすぐに態度を変える。

動物園へと乗り込んだクンたち傭兵軍団は、職員や客を拉致すると、コンピュータの制御室を乗っ取る。ジャッキーとシャオジューはダーバオを渡してなるものかと奮闘するのだが……。

たいした作品ではないとはいうものの、楽しい。映画スターは本当に強いわけではないという傭兵たちの印象を覆すジャッキーの頼もしいこと。また、傭兵の中にはジャッキーのファンもいて、しまいには味方につきます。ダーバオは思いっきりCGだけど、やっぱりパンダは可愛いんだよ。アラブの大富豪が赤ちゃんパンダを手に入れようとしていた理由は泣けます。

映画に出続ける原動力は何かとシャオジューから聞かれたジャッキー。「アクション」というその声だと答えるのは、真実なのでしょうね。これからもジャッキーを見たい。

『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』

『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』(原題:Den Stygge Stesøsteren)
監督:エミリー・ブリックフェルト
出演:レア・ミレン,アーネ・ダール・トルプ,テア・ソフィー・ロック・ネス,フロ・ファゲーリ,イサーク・カムロート,マルテ・ゴーディンゲル,ラルフ・カールソン,アダム・ルンドゲレン,カタジナ・ヘルマン,セシリア・フォルス,アグニェシュカ・ズレフスカ他

毎年恒例の全館停電で職員全員休みの日、なんばパークスシネマにて。

『シンデレラ』をモチーフとする本作は、邦題からしてえげつなそうだからスルーするつもりでいました。ところが、ノルウェーの新鋭エミリー・ブリックフェルト監督によるノルウェー/デンマーク/ポーランド/スウェーデン作品だと知ってスルーできなくなる。スペイン語圏やポルトガル語圏のホラーと同様に、北欧のホラーは気になるもので。しかし考えてみると、北欧ホラーのうち、『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)は好きでしたが、『フィンランド式残酷ショッピング・ツアー』(2012)とか『ボーダー 二つの世界』(2018)とかは気味が悪くて、面白かったけれど決して好きだったわけではないですね。

ネタバレ全開で行きます。

エルヴィラとアルマ姉妹の母親レベッカが、アグネスの父親オットーと再婚。エルヴィラとアルマとアグネスは義姉妹となる。立派なお屋敷に引っ越すことができて喜びを隠せないエルヴィラ。しかも窓を開ければ遠くに見えるのは、憧れのユリアン王子が暮らす城。ユリアンが書いた詩集を肌身離さず携えているエルヴィラは、王子と結婚したいと本気で思っている。

挙式の後、新しく家族となった面々は食卓に着いていたが、オットーが突然吐血して急死。そのとき、富裕だと思っていたオットーが実は一文無しで、レベッカの資産目当てで再婚したことがわかる。屋敷も何もかも差し押さえられ、必要な金を支払えばレベッカにももう幾らも残らない。生活を維持するためには何が何でもエルヴィラを王子のもとへ嫁がせねば。

馬番のイサクと恋愛関係にあったアグネスが馬小屋で情事に及んでいたところを目撃したエルヴィラがレベッカにそれを告げ口した結果、イサクは追い出され、アグネスは汚らわしい娘と罵られる。今までは女主人然としていたところ、レベッカとエルヴィラから“シンデレラ”と呼ばれ、使用人扱いされるようになったアグネス。

アグネスが美人であるのに対し、エルヴィラは小太りのブス。王子と結婚させるために美しく変身させようと、レベッカは美容整形の医者を呼んでエルヴィラの鼻筋を変える。また、レベッカから賄賂を受け取った淑女学校の教師は、エルヴィラにサナダムシの卵を渡し、これを飲めば腹の中に入るものをサナダムシがすべて食い尽くしてくれるから太らないと言う。アルマが止めるのも聞かず、サナダムシの卵を飲み込んだエルヴィラは本当に痩せ、美しく生まれ変わるのだが……。

シンデレラをモチーフにした作品にはB級ホラーの『シン・デレラ』(2024)もあります。本作はどちらかといえばそっち寄りで、めちゃめちゃおぞましいけれど、困ったことに面白い

エルヴィラの鼻筋を通すために鑿(のみ)を打ち込むところがまず最初のえげつないシーン。サナダムシの卵を飲み込むシーンにもオエーッ。極めつきはシンデレラの靴を履けるようにエルヴィラが自分の足の指を切るシーン。しかも彼女が反対の足の指を切ってしまったのを見て、レベッカは逆の足の指も切り落とします。もうこんなの直視できません(笑)。まともなのはアルマだけで、動けなくなったエルヴィラを連れて、レベッカのもとからアルマが逃げ出すラストシーンには救いがあります。

凄い監督が出てきたものです。ヨルゴス・ランティモス監督のような路線に進みそうな。怖いもの見たさでついつい観たくなる手合い。ルッキズムを扱った作品として『サブスタンス』(2024)と双璧を成すと評されたそうですが、本当にそう。どちらも二度は観たくない。

サナダムシ、どんだけ育っとってん! 気持ち悪すぎて笑いました。