仕事帰りにひょいと寄れる範囲内の劇場まで行くとき、特に駐車料金が発生する場合だと映画1本だけで帰るのがもったいなくて2本以上観ます。前述の『スーパーマン』を観たのはわが家から最も近い109シネマズ箕面だし、それ1本で帰ってもよかったのに、『F1/エフワン』をもう一度観たくなりました。しかしここは最悪の駐車サービスじゃあないですか。間で一旦出庫せなあかん。もうええかげんなんとかしてほしいものだけど、そもそもこの劇場で映画をハシゴする人が少ないのかなぁ。
20:55からの回で上映終了は23:40だというのに、30人ぐらいは客がいました。観たのは『スーパーマン』と同じくScreenX版。18:10からの上映だった『スーパーマン』には客5人ぐらいしか入っていなかったんですけどね。やっぱり俳優の知名度によるのかもしれません。
1回目に観たとき、ブラッド・ピット演じるソニーぐらいの年齢まで走っていたカーレーサーがいるのかどうか気になっていました。作品の中で名前が出たことも覚えていなくて。2回目ではっきり出てきたその名前を覚えて帰る。ルイ・シロンというモナコ出身のドライバーなのですね。1899年生まれで1979年没。本作では確か57歳という年齢が出てきたかと思いますが、55歳と9カ月でF1史上最高齢の完走を記録、58歳で引退したそうです。凄い。
エンディング、バハに乗り込んだときのソニーを見る現地の人たちの顔はどう捉えればよいでしょう。彼らはソニーのことを昨日F1で勝ったばかりの奴だとわかっていたのかどうか。わかっていて「こいつ何考えてるねん」と思われていたと私は思いたい。ソニーがいつまでもレースを続けて、走った先でみんなとまた会えたらいいなぁ。
左右不揃いの靴下を穿きたくなりますよね。
『スーパーマン』
『スーパーマン』(原題:Superman)
監督:ジェームズ・ガン
出演:デヴィッド・コレンスウェット,レイチェル・ブロズナハン,ニコラス・ホルト,エディ・ガテギ,アンソニー・キャリガン,ネイサン・フィリオン,イザベラ・メルセド,スカイラー・ギソンド,ウェンデル・ピアース,ミカエラ・フーヴァー,ベック・ベネット,マリア・ガブリエラ・デファリア,サラ・サンパイオ,フランク・グリロ他
“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”シリーズのジェームズ・ガン監督、かなり好きです。だけどDCコミックスのスーパーヒーロー、“スーパーマン”といえばクリストファー・リーヴの後を継いだヘンリー・カヴィルでしょ。もうイメージができあがっている彼を起用せずにデヴィッド・コレンスウェットが演じることになった理由は何ですか。気になって調べたら、『マン・オブ・スティール』(2013)の続編もヘンリー・カヴィル主演と決まっていたのに、『ジャスティス・リーグ』(2017)を挟んだせいで本筋の“スーパーマン”の進行に影響が出た模様。10年経っても話が前に進まないから「やんぴ!」となったそうな。それにしたって、主演はそのままでよかったのではないかと思うけれど、この10年でヘンリーも歳を取りました。彼より10歳下のデヴィッド起用となったのはやむを得ないことなのかも。
どうせ観るならと、109シネマズ箕面にてScreenX版を選択しました。冒頭、3世紀前に始まり、3千年前、3百年前、3年前と、「3」刻みに何があったか早足で描かれ、3週間前にはスーパーマンがアメリカの同盟国ボラビアによる隣国ジャルハンプール侵略を阻止したという説明があります。そして3分前、スーパーマンが初めて敗北。相手はスーパーマン抹殺を目論む億万長者レックス・ルーサー。金をばらまいて要人たちを取り込み、スーパーマンを危険な存在として吹き込み続けています。
デイリープラネット新聞社に勤務する記者クラーク・ケントの真の姿はスーパーマン。それを知っているのは同僚で恋人であるロイスだけ。彼女はスーパーマンに直接取材可能な唯一の人物としてほかの同僚たちからも認識されていますが、恋人関係であることはひた隠しにしてきました。ふたりで過ごす時間に「取材ごっこ」を始めると、ロイスは思いのほか攻撃的な質問を寄せます。国民の代表みたいな顔をしているけれどどういうつもりなのかとか、侵略を阻止するさいに大統領の許可を得ていないじゃないかとか、そんなこと。お互いに腹を立てて喧嘩別れ。
初の敗北で大怪我を負ったスーパーマンではありますが、お世話ロボットたちのおかげで治癒。執拗に攻撃を仕掛けてくるレックスに、スーパーマン、そしてグリーン・ランタン、ミスター・テリフィック、ホークガールで構成される“ジャスティス・ギャング”が対抗するも、ハイテクを駆使するレックスは手強い。しかも、スーパーマンが留守の隙を狙って彼の要塞に侵入したレックスは、スーパーマンが地球を侵略しようとしている証拠を入手したと主張。それを国民までもが信じてしまうのでした。
レックス役のニコラス・ホルトが憎たらしすぎて嫌いになりかける(笑)。彼が『トップガン マーヴェリック』(2022)のルースター役として名前が挙がっていたことを思い出すたびに、『アバウト・ア・ボーイ』(2002)の子役だった頃や『ウォーム・ボディーズ』(2013)で切なさいっぱいのゾンビ役を演じた姿が懐かしくなります。なのに今はどうしてこんなに憎たらしいの。
実親に対する特別な想いはありましょうが、今も愛情をたっぷり注ぎ続けてくれている育ての親の存在が大きい。実親が自分に託した役目を果たせないと嘆くケント/スーパーマンに、養父が告げる言葉がとてもよかった。「親は子の役目を決めるものではない」。手段を教えることはあっても、役目を押しつけてはいけない。子どものやり方を見守るもの。
キャストに知名度の高い俳優がいないうえに、めっけもんと思えるような男前とか美人がその人たちの中にいないんだなぁ。いちばんカワイイのはクリプトだし。そんなこんなでイマイチ楽しい気分にはなれないけれど、ま、ガン監督の作品はやっぱり好きです。
『HYBE CINEMA NORAEBANG』【応援上映】
『HYBE CINEMA NORAEBANG』(英題:HYBE Cinema Noraebang)
HYBEといえばBTSを輩出した韓国の大手総合エンタテインメント企業。創設者のパク・シヒョクは、もともとは2PMやTWICE、NiziU、Staray Kidsなどを擁する別のエンタテインメント企業に所属していた作曲家だったところ、2005年に独立して起業。2013年にBTSを輩出するまではずいぶん苦労したようです。
そんなHYBEが抱えるK-POPグループのアーティストたちのコンサート映像を上映する“HYBE CINE FEST IN ASIA”が期間限定の週替わりで上映されています。本作はそのオマケ的な特別上映作品で、各グループの代表曲のMV(ミュージックビデオ)をひたすら流すというもの。
人気グループ10組と言われても、私は読み方さえわからないグループがほとんど。もちろんお目当てのBTSはわかるとして、過去になんらかの形で観たSEVENTEENとTOMORROW X TOGETHERもわかる。それ以外によく見かけるENHYPENも読み方知らず、帰宅後に調べる始末(笑)。あとはLE SSERAFIM、&TEAM、BOYNEXTDOOR、TWS、ILLIT、KATSEYEが登場します。BTSは残念ながら最初と最後の2曲のみ。SEVENTEEN、TOMORROW X TOGETHER、LE SSERAFIMの曲が多かった印象。ENHYPENも何曲かありました。
「NORAEBANG(ノレバン)」とはカラオケのことだそうで、本作のMVは歌詞付きの上映だから、大画面のカラオケを体験しているかのよう。スクリーンの左上端には次にかかる曲が表示され、右上端にはあと何曲かの表示も。ただし、日本語字幕は無しで、韓国語とその読みをアルファベット表記した字幕だけだから、ある程度歌えなきゃどうしようもないし、歌の意味もわかりません。発声OKの応援上映だったにもかかわらず、客があんまりいないこともあり、みんな恥ずかしいのか歌わない。でもイケメンとカワイイ女子が歌い踊るのを大画面で観られるのっていいですね。ただただニヤける。
応援上映の醍醐味は感じられなかったけれど、ひとりで観に来ていた若い男性客が、退場後に“Dynamite”を口ずさみながら歩いているのが聞こえてきて、なんだかちょっと嬉しくなったのでした。
『この夏の星を見る』
『この夏の星を見る』
監督:山元環
出演:桜田ひより,水沢林太郎,黒川想矢,中野有紗,早瀬憩,星乃あんな,和田庵,萩原護,秋谷郁甫,増井湖々,安達木乃,蒼井旬,松井彩葉,中原果南,工藤遥,小林涼子,上川周作,河村花,朝倉あき,清水ミチコ,ビスケッティ佐竹,堀田茜,近藤芳正,岡部たかし他
イオンシネマ茨木にて、前述の『愛されなくても別に』とハシゴ。
辻村深月の同名青春小説を映画化した山元環監督は大阪芸術大学出身。卒業制作として撮った『ゴロン、バタン、キュー』が2015年度のPFF(ぴあフィルムフェスティバル)アワードをはじめとするいくつものコンクールで受賞。その後、ショートフィルムやTVドラマの脚本・演出・監督を務めてこのたび本作の公開に至る。
茨城に住む高校生・溪本亜紗(桜田ひより)は入学するや天文部へ入部。同学年の飯塚凛久(水沢林太郎)や先輩たちと共に空へと想いを馳せながら部活動に没頭していたが、コロナが襲来する。緊急事態宣言の発令中は登校もできず、制限が緩和された後も部活動は自粛の方向。2020年の夏は楽しみにしていた合宿さえも中止になり、何かできないことはないか考えはじめる。
東京の中学生・安藤真宙(黒川想矢)はサッカーが大好きなのに、コロナで活動できないままサッカー部が廃部になってしまう。放課後ひとりでボールを蹴る真宙にしつこくつきまとうのが理科部の中井天音(星乃あんな)。唯一の新入生である真宙にどうしても理科部に入ってほしいから。最初はウザくてたまらない真宙だったが、かつて一緒にサッカーをしていた先輩・柳数生(秋谷郁甫)が今は宇宙に夢中だと知り、天音の話を聴いてみることにする。
長崎の五島では、女子高生の佐々野円華(中野有紗)が急に親友の福田小春(早瀬憩)から避けられるようになって悩んでいた。理由は円華の実家である旅館が県外からの宿泊客を受け入れているせいで、コロナ感染を心配する小春の親が円華とつきあわないように言っているらしいとわかる。落ち込む円華に星を見に行こうと誘ったのが県外からの留学生・武藤柊(和田庵)。
手作り望遠鏡で星を探すイベント“スターキャッチコンテスト”なるものがあることを知った真宙は、チラシに記されている高校の天文部に問い合わせ。たまたま電話に出た亜紗は「中学生でもスターキャッチができるか」と真宙から聞かれて、オンラインでコンテストを開催することを思いつき……。
126分を140分ぐらい冗長に感じて、個人的にはちょっとしんどい。これで終わりかと思ったときが何度かあり、そのたびにアララまだ続くんだとも思いました。車椅子に乗る家族に自作の望遠鏡で星を見せたいというのもお涙頂戴に走りそうな気配があり、私は正直なところ、あんまり得意じゃない。
感動的な場面でいちいちマスクを外して抱擁とかも好きになれなかったけれど、でもでも、せっかくの青春期の大半をコロナ下で過ごした学生たちの「マスクを取って笑い合いたい」、そんな心境をこれで表していたのかもしれません。何よりも夜空がとても美しい。たとえ画面越しであっても同じ想いの人たちと繋がり、同じ星を追いかける。これ以上にない素敵なイベント。宝物になると思います。この映画にケチをつけちゃいかんのだよ、私。
『遠い空の向こうに』(1999)を思い出しました。
『愛されなくても別に』
『愛されなくても別に』
監督:井樫彩
出演:南沙良,馬場ふみか,本田望結,基俊介,伊島空,池津祥子,河井青葉他
イオンシネマ茨木にて。
原作は“響け!ユーフォニアム”シリーズの武田綾乃による同名小説で、吉川英治文学新人賞の受賞作。井樫彩監督の作品を観るのは私は初めて。公開から1週間以上経っていて、もうじき上映が終了してしまいそうなとき。スルーしかけていたのですが、観てよかった。
大学生の宮田陽彩(ひいろ)(南沙良)は幼い頃に両親が離婚して以来、母親(河井青葉)と2人暮らし。働きもせず家事もせず家に男を連れ込む母親に代わって家計を担わなければならないから、宮田は授業の時間以外をほぼすべてコンビニでのアルバイトに費やしている。
体調不良で授業を欠席した日のレジュメを後日もらおうと先生に直談判するが、いかなる理由でも欠席者のフォローはしないと冷たく言い放たれてガックリ。ノートを見せてほしいと頼める友人などいない宮田は、教室でよく見かける木村水宝石(あくあ)(本田望結)に声をかける。あなたにノートを見せて私に何の得があるのかと言う木村と話すのが面倒になって立ち去ろうとすると、宮田と同じコンビニで働く江永雅(みやび)(馬場ふみか)とはつきあわないほうがいいと木村が忠告してくる。江永の父親は殺人犯だからだと。
江永とは大学も同じだが、見た目が派手で愛想皆無の彼女とはバイト先で会っても必要最低限のことしか話したことがない。木村の話を確かめたくなった宮田が江永に単刀直入に聞くと、江永の答えは想像の遥か上を行くもので……。
宮田と江永と木村、三者三様に毒親のもとで育っています。木村だけは毒親というのは当てはまらないかも。地方から東京へ出てきた娘のことが心配で2時間毎に電話をかけてくるという異常に過保護な親だけど仕送りもたんまり。その金を木村は新興宗教につぎ込んでいます。一方の宮田は何が何でも大学は出ないと良いところに就職できないと思って頑張っているけれど、実は母親は娘の奨学金も元夫から受け取る養育費も全部遊興費として使っている。娘に向かって絶えず発する「愛している」という言葉の薄っぺらいこと。また、江永は轢き逃げを犯して逃走中の父親から性的虐待を受け、味方だと思っていた母親からも実は疎まれていたことに気づいて家を出た身。自分こそ最も不幸だと思っていた宮田は江永の話を聴いて愕然とします。
宮田が実家暮らしだと聞いた江永が「いいね、殺したいときにいつでも殺せる」という台詞が衝撃的すぎて笑ってしまったほど。本当に母親を殺したくなった宮田が家を飛び出し、頼る相手は江永しかいません。こうして始まるふたりの生活。
江永が父親の殺した相手の息子(伊島空)につけ狙われたり、木村が通う新興宗教の教祖に会いに行くと木村の母親が乗り込んできたりと不穏なシーンがいっぱいですが、不思議と荒んだ気持ちにはなりません。愛されたいと思っているわけじゃない、愛されなくても別にいいし、別にいいんだよと思わせてくれる人がいてほしい。
南沙良と馬場ふみかの演技が最高です。このふたりをいつまでも見守っていたくなる。