『万事快調<オール・グリーンズ>』
監督:児山隆
出演:南沙良,出口夏希,吉田美月喜,羽村仁成,黒崎煌代,大政凜,櫻井健人,小坂竜士,池田良,Pecori,和田庵,テイ龍進,松岡依都美,安藤裕子,金子大地他
イオンシネマ茨木にて、『ウォーフェア 戦地最前線』→『長安のライチ』→本作。上映終了は23:45。月曜日だというのにへろへろだ(笑)。原作は第28回松本清張賞を受賞した波木銅の同名小説。児山隆監督の作品を拝見するのは初めてです。
茨城県那珂郡東海村。朴秀美(南沙良)、矢口美流紅(出口夏希)、岩隈真子(吉田美月喜)は同じ工業高校の機械科に通う2年生。秀美の父親は家族への暴力が耐えない。秀美自身はその被害に遭わずにいるものの、学校にも家にも居場所はなく、唯一自分を出せる場がラップをやっているとき。美流紅は可愛く社交的でスクールカーストのトップの存在だが、家には精神に異常を来して年中頭の中がお花畑の母親(安藤裕子)が待っている。真子は農家の一人娘で、養子を取って家を継ぐことが当たり前のように思われている。3人とも、とっとと早く家から、そして村から出て行きたい。
ある日、秀美のラップに興味があるというDJノスフェラトゥ(金子大地)から呼ばれて出向いてみると強姦されそうに。反撃した秀美は、ノスフェラトゥが気を失っている間に金庫の中にあった大麻の種を持ち逃げする。大麻を育てて売りさばけば相当の金になるはず。秀美はたまたま街で出会った美流紅と真子を誘い、園芸部を立ち上げて大麻の栽培を始めるのだが……。
こんなヤバイ相手から大麻を持ち逃げして無事でいられるはずもないのに、若さゆえの浅はかさというのか。それでも、居場所のなかった3人がこんな形で巡り会い、生き生きとした表情で学校生活を送る様子には、彼女たちにこんな日が一日でも長く続きますようにと思わずにはいられません。キラキラネームの美流紅の由来がハーヴェイ・ミルクだとわかるシーンは良かったし、映画オタクの美流紅の口から『哀れなるものたち』(2023)やゴダール、カサヴェテスの名前が出るところも楽しかった。高校生でこんな趣味の友だちから映画に誘われても困りますけれど(笑)。
彼女たちはどこへ向かうのか。居場所が見つかるといいのになぁと思います。
『長安のライチ』
『長安のライチ』(原題:長安的荔枝)
監督:ダー・ポン
出演:ダー・ポン,バイ・コー,ジュアン・ダーフェイ,テレンス・ラウ,チャン・ユエン,ヤン・ミー,チャン・ルオユン,アンディ・ラウ他
イオンシネマ茨木にて、前述の『ウォーフェア 戦地最前線』の次に。監督が『熱烈』(2023)のダー・ポンであることと、テレンス・ラウが出演していることに惹かれて観に行きました。観終わってから知る、えっ、主演も監督ご本人だったの!? 私としてはテレンス・ラウみたいなイケメンが主人公のほうが嬉しいのは嬉しいけれど、本作の主人公にイケメンは似合わない。監督こそこの役にピッタリの風貌。原作は中国の人気作家マー・ボーヨンの同名小説なのだそうです。
中国、唐代。算術が得意な李善徳(ダー・ポン)は算学家として官僚となる夢を果たすが、愚直なまでの人柄ゆえに不正を絶対に許さない。そのせいで周囲から疎まれていることに本人は気づかず。難儀な仕事はすべて押しつけられ、出世することもなく、下級官吏として勤めて18年。
あるとき、楊貴妃の誕生日に間に合うよう、長安の遥か南方の嶺南から生のライチを取り寄せるように皇帝が命じる。ライチの賞味期限は非常に短いことが知られており、長安から嶺南までの道のりは2週間は見なくてはならないのだから、新鮮なまま持ち帰るなど無理に決まっている。しかし皇帝に向かって無理だとは言えず、皆が考えたのはこの任務を李善徳に引き受けさせること。皆からおだてられてまんざらでもない李善徳は、蜜漬けのライチを運べばいいのだと信じ込まされて書状に署名してしまう。その後、生のライチであると知らされて愕然。
断ることは許されず、ライチを運べずに死罪をなるのは確実。だが、どうせならやれるだけのことはやってどこまで成功に近づけるのかは試したい。覚悟を決めると愛する妻子に別れを告げて向かった嶺南で出会ったのは、商船を保有する商売人の蘇諒(バイ・コー)。李善徳が持つ嶺南の通行証目当てに近寄ってきただけだったが、李善徳の話を聴いて面白そうだから投資すると言い……。
めちゃめちゃ面白かったです。ライチ園を営む若くて綺麗で厳しい阿僮(ジュアン・ダーフェイ)に指南し、李善徳はライチの輸送方法をあれこれ考える。ライチは保(も)って3日。それを過ぎると香りや匂いが落ちたり腐ったりします。壺に水を入れて漬けるなどしても最大で5日。李善徳はまず4経路を考え、どの経路を選べばいつまでライチが保つのかを調べる。皇帝の命令でこんなことをしているというのに、朝廷は金を出しません。嶺南の通行証と引き換えに李善徳に投資することにした蘇諒が「必要経費はいくらだ。その3割増しの金を出す」と言うと、李善徳は「366元」と答え、「んじゃ3割増しで1000元出すよ」と言う蘇諒に、李善徳が「いや、366元の3割増しは996元だ」と答えるシーンなど笑いました。どれだけ真面目なんだ(笑)。
お目当てのテレンス・ラウの役どころは嶺南で酷い目に遭わされていた奴隷の林邑奴。李善徳にこの任務を完了されては自分たちの立場がなくなると思っているお偉方が、李善徳を見張る目的で林邑奴を放ちます。最初は言われるがままに李善徳を見張っては報告していた林邑奴がやがて李善徳の同士になる。憎たらしい宰相役のアンディ・ラウ、許しません(笑)。李善徳の妻を演じるヤン・ミーの美しさには目を見張る。杜甫役のチャン・ルオユンも凄くよかった。
おそらく今年が終わる頃にも思い出す作品だと思います。100点。
『ウォーフェア 戦地最前線』
『ウォーフェア 戦地最前線』(原題:Warfare)
監督:アレックス・ガーランド,レイ・メンドーサ
出演:ディファラオ・ウン=ア=タイ,ウィル・ポールター,コズモ・ジャーヴィス,キット・コナー,テイラー・ジョン・スミス,マイケル・ガンドルフィーニ,アダイン・ブラッドリー,ジョセフ・クイン,フィン・ベネット,ノア・センティネオ,エヴァン・ホルツマン,エンヒキ・ザガ,チャールズ・メルトン他
イオンシネマ茨木にて17:05からの回にまさか間に合うように行けるとは思いませんでしたが、この日の万博外周道路と中環はガラ空きで、17:15に到着。本編に間に合うなら観ようじゃないかと、結局仕事帰りに3本ハシゴすることになりました。
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024)のアレックス・ガーランド監督が、同作で軍事アドバイザーを務めたレイ・メンドーサを共同監督に迎えて撮った作品。メンドーサがイラク戦争で体験した実話に基づく。メンドーサはイラク戦争中、JTAC(Joint Terminal Attack Controller=統合末端攻撃統制官)として戦場の最前線にいました。JTACとは、前線航空管制業務を遂行するための特別な認定資格を有する軍人で、航空機を適切に誘導し、誤爆を防いで地上部隊の安全を確保する役目を担っているそうです。本作ではメンドーサ役をディファラオ・ウン=ア=タイが演じています。
2006年のイラク。メンドーサを含む米海軍特殊部隊シールズのアルファ1小隊8名は、敵陣を眺めるのに手頃な家屋を見つけて侵入。怯える民間人家族におとなしくしているように説き伏せると、そこに潜伏して周囲の建物を見張る。怪しい動きをする者を見つけたらすぐに撃ち殺せるようにスナイパーのエリオットがスタンバイしていたが、アルファ1の潜伏を察知した敵兵が先に動きはじめる。聖戦(ジハード)開始が宣言されたと見られ、あっというまに民間人は街から姿を消す。すると、アルファ1が潜伏する家屋に手榴弾が投げ込まれ、エリオットが負傷。隊長のエリクはすぐさま緊急脱出のための車両を要請するが、その車両に負傷兵を乗せようとしたさいに車両もろとも爆撃を受ける。エリオットはさらに深い傷を負い、下士官のサムも両足を激しく損傷。ほかの者たちもパニックに陥る。指揮を執れる状態ではないエリクは、駆けつけたアルファ2の隊長ジェイクに後を任せるのだが……。
地獄です。最初は士気を高めるべく陽気にふるまっていたアルファ1の面々。潜伏先として白羽の矢が立てられた家屋の住人はたまったものではありません。幼い子どももいるというのに寝ているところを叩き起こされ、壁もぶち破られて、勝手にそこを基地にされる。挙げ句の果てに最後は「敵しかおらんから」と米軍によって家屋ごと爆破されてしまうのです。ま、このときは屋上のみが砲撃されるので、1階にいるようにとは言われるのですけれど。それにしたって何の罪で入居中の家がぶっ潰されてしまうのか。
兵士たちも百戦錬磨というわけではないから、攻撃を受けてビビる。負傷した兵士の足からは骨が見え、痛みに耐えかねて「モルヒネをくれ」と叫ぶ。阿鼻叫喚の中からどうやって脱出するか。音楽による演出はなし。米兵の英雄視もなし。ドラマティックな盛り上げも皆無で、ただただ戦場の惨状が描かれています。
戦争は何のため? 誰のため? 猛烈に疲れました。凄かった。
『見はらし世代』
『見はらし世代』
監督:団塚唯我
出演:黒崎煌代,遠藤憲一,木竜麻生,菊池亜希子,中山慎悟,吉岡睦雄,スー・ユチュン,服部樹咲,石田莉子,荒生凛太郎,中村蒼,井川遥他
TOHOシネマズ西宮で『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』→夙川でひとりランチ(当然昼呑み)→シアターセブンで本作を。『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』はまぁまぁ早朝からの上映だったにもかかわらず睡魔に襲われることはありませんでしたが、これはボトルワイン1本空けた後の鑑賞だから、そりゃ寝ますよね。(^^;
短編『遠くへいきたいわ』(2021)で注目された団塚唯我監督の記念すべき長編デビュー作とのこと。『遠くへいきたいわ』は未見ですが、団塚監督はまだ28歳。26歳のときに本作を撮り、カンヌ国際映画祭監督週間に日本人最年少で選出されたそうです。『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』のフレディ・マクドナルド監督といい、若くても凄い人は凄い。ちなみにオリジナル脚本です。
再開発が進む東京・渋谷。胡蝶蘭をメインに扱う花屋の配送係として働く青年・高野蓮(黒崎煌代)。あるとき、配送先に父親・初(遠藤憲一)の職場が挙がっているのに気づいて蓮が届けることに。初は売れっ子のランドスケープデザイナー。何時も仕事優先で、母親・由美子(井川遥)が亡くなったときもその場にいなかった。由美子の死後、自分と姉・恵美(木竜麻生)と疎遠になっていた初を久しぶりに訪ねてみたものの、声をかけることはできず……。
本作を観に行ったのは、主演の黒崎煌代に興味があったからです。『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(2024)で主人公の友人役を演じていて、ちょっと面白い役者だなぁと思っていました。後で調べたら、最初は女優の名前だと思い込んでいた「煌代」が彼の名前で、「こうだい」と読むことを知りました。全体的にほわんとした印象なのに、目つきが変態も演じられそうな感じ(笑)。声も顔から想像するより低くて、いろいろと興味を惹かれます。
母親の亡き後、娘と息子から逃げた父親。今は事務所の若い社員(菊池亜希子)と結婚まで考えている。そんな父親のことを娘は無視しているのに、息子は固執していて、父親の周りをうろついたり連絡を取ろうとしたりする。父子3人で出かけた折に現れるのは母親の幻影か幽霊か。家族に目を向けない父親であっても、夫の仕事に打ち込む姿が好きだったと亡き妻から言われた初がむせび泣くシーンはちょっとよかったかな。蓮が自分の中で気持ちに整理をつけていこうとする姿も。
最初の何分かおそらく私は寝ていたと思うんですが、あんまり影響なかったと思われます(笑)。
『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』
『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』(原題:Downton Abbey: A New Era)
監督:サイモン・カーティス
出演:ヒュー・ボネヴィル,ジム・カーター,ミシェル・ドッカリー,ポール・ジアマッティ,エリザベス・マクガヴァン,ペネロープ・ウィルトン,ローラ・カーマイケル,ラケル・キャシディ,ブレンダン・コイル,ケヴィン・ドイル,マイケル・フォックス,ジョアンヌ・フロガット,ハリー・ハデン=ペイトン,ロバート・ジェームズ=コリアー,アレン・リーチ,フィリス・ローガン,ソフィー・マクシェラ,レズリー・ニコル,ダグラス・リース,アーティ・フラウスハン,アレッサンドロ・ニヴォラ,サイモン・ラッセル・ビール,ドミニク・ウェスト他
仕事帰りに行くには遠く感じてめっきり行くことが少なくなったTOHOシネマズ西宮へ、休日のひとりランチの前に。
2010年から2015年まで放送された英国の大人気TVドラマ“ダウントン・アビー”シリーズを私が知ったのは、劇場版第1作の『ダウントン・アビー』(2019)が公開されたときのこと。『ゴスフォード・パーク』(2011)みたいだなぁと思いながら観はじめたのをよく覚えています。きっと睡魔に襲われるだろうと思っていたのにまったく眠くならず、大好きなシリーズになりました。かと言って過去の放送を遡って観るような時間も馬力もなく、劇場版を観るだけに留まっています。この劇場版第3弾の監督は、第2弾『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』(2022)に引き続きサイモン・カーティス。
劇場版を観るのみで予習も復習もしていないから、毎回イチからのスタートになります。私が覚えているのは、クローリー家の先代伯爵夫人である婆様ヴァイオレットを演じていたのがマギー・スミスだということだけ。彼女が一昨年本当に亡くなって、今回は肖像画で登場。いい女優でしたね。あらためてご冥福をお祈りします。
さて、イチからスタートした私には誰が誰やらわからないのですが、観ていればわりと早いうちにその関係を思い出す。今回の主役はヴァイオレットの孫娘に当たるメアリー(ミシェル・ドッカリー)。現在当主を務めているのはヴァイオレットの息子でありメアリーの父親であるロバート(ヒュー・ボネヴィル)。いよいよ引退してメアリーに当主を引き継ぐべき時が来ている。メアリーは当主としての資質をじゅうぶん以上に持ち合わせているし、任せることに何ら問題はありません。ところがメアリーが親にも内緒で離婚したことがわかります。うろつく記者たちのせいでクローリー家の使用人たちすら知っていたことなのに、新聞でその事実を知ったロバートは仰天。なんといっても1930年の英国。離婚はご法度で、王族が出席するパーティーなどには「離婚女」が同席することは禁じられ、どこへ行っても白い目で見られます。近隣の貴族たちを招いて晩餐会を開こうとしても欠席の返事ばかり。
こんなとき、頼りになるのがメアリーの妹イーディス(ローラ・カーマイケル)。親交のある人気舞台俳優ガイ・デクスター(ドミニク・ウェスト)と超売れっ子脚本家ノエル・カワード(アーティ・フラウスハン)をまずは招待。それを信頼のおける侍女アンナ(ジョアンヌ・フロガット)に相談すれば、あとは使用人が暗躍(笑)。アンナはもうひとりの侍女フィリス(ラクエル・キャシディ)と出かけた先でほかの貴族に仕える使用人たちとばったり出くわしたふうを装い、「ウチの晩餐会にはガイとノエルが来るのに、御宅の主は欠席だなんて残念ねぇ」なんて感じで。アンナたちがクローリー家に戻るよりも前に、欠席を撤回する連絡が舞い込んでいるという有様です(笑)。
これだけの邸を維持していくには財力が必要。邸もこれひとつじゃありませんからね。ロンドンの家とか、どないしてこれから維持していくねんと思ったところで誰かが死ねば、巨額の遺産が入る。本作の好きなところは、皆さん育ちが良いからか、金の亡者みたいな人がいない。しかし彼らを取り巻く人の中にはその金を狙う輩がいる。ロバートの妻コーラ(エリザベス・マクガヴァン)の弟ハロルド(ポール・ジアマッティ)がまさにその罠にはめられた人物。自分が託されていた遺産の大半を詐欺師ガス(アレッサンドロ・ニヴォラ)に騙し取られたことに気づいておらず、また、ガスがあまりに感じの良いオッサンだったものだからメアリーまでコロリと行って一夜を共にしてしまうのでした。メアリー、脇甘すぎ。(^^;
ここでも被害を食い止めたのがイーディス。クローリー家の元運転手トム(アレン・リーチ)が入手した「ガスは詐欺師」というネタをもとにガスに手を引かせ、メアリーを脅そうとしていたガスに強烈な言葉の一発を食らわせます。なんかカッコよかったなぁ、イーディス。厨房で奮闘する新料理長のデイジー(ソフィー・マクシェラ)、前執事で今はガイの付き人を務めるトーマス(ロバート・ジェームズ=コリアー)、ヴァイオレットの良き理解者だったイザベル(ペネロープ・ウィルトン)もほっこりさせてくれます。
本作のイメージが強すぎて、ほかの作品で見ると「えーっ、あの人!?」と驚くこともよくあります。メアリー役のミシェル・ドッカリーは『フライト・リスク』(2025)を観ればたまげること請け合い(笑)。楽しみ方いろいろの“ダウントン・アビー”が大好きです。
本作を観ているといつもイギリス英語って耳に温かく響くなぁと思います。ちゃんと勉強したいけど、続かない。(^^;





